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第十四話「無人島の獣人」

「まさか、無人島にいるとはな」


 次元がボロボロになり、各世界から異世界人が地球へと誘われている。そもそも、なんで無限にあるだろう世界の内、地球に誘われるのか。

 その原因は、次元の管理者さんにもわからないようで。

 すごく気になるが、今は地球に誘われた最初の五人の内、三人を回収しなくてはならない。


 それで、一番近いのがまさかの無人島。

 そこまで大きくない無人島で日本列島から南に下ったところにあった。


「それで、ロッサ。気配を感じるか? ……おい、ロッサ」

「なんで、我が貴様に協力せねばならぬのだ。我は、気が乗らん」


 とぶつくさと呟きながら、浜辺に立っていた。


「しょうがないだろう。今地球で次元を操れるのは、ニィの他にお前しかいないんだから」


 次元の管理者も、ニィも世界を救うために必死になって自分にできることをしている。だから、手が離せない状態なんだ。


「ならば、我を使わず公共の移動手段を使えばよかろう」

「それだと時間もかかるんだ。迅速に、地球に来た異世界人を回収しないと色々と大変なことになるかもしれないんだ」

「我には、関係ないことだな。やるなら、貴様らだけでやるがよい。我は帰らせてもらう」


 そう吐き捨て、次元ホールを開き帰ろうとする。


「いいのか? このままだと世界が崩壊するんだぞ」

「むしろ、我としてはそっちのほうがいいと思っているがな」

「……いいのか。おいしいものが食べられなくなるぞ」


 すると、ロッサの動きが止まった。よし。後一押しだな。

 特大の餌で釣り上げてやるよ。


「これが終わったら、お前と本気で戦ってやるよ。もちろん、ゲームとかじゃない。生前の時のように、マジの戦いだ」


 それを聞いた、ロッサは残像ができるほど思いっきり振り返る。


「それは、本当か?」

「ああ、嘘はつかない。だから、頼むロッサ。今だけでいい。俺に協力してくれ」


 最後の最後に、俺は頭を下げる。まさか、こいつに頭を下げる時が来るとはな。だけど、今はそれだけ緊迫した状況下に置かれているんだ。


「ふん。まさか、貴様に頭を下げられるとはな。勇者として恥ずかしくないのか?」

「別に恥ずかしくなんてない。これが、世界を救うためならな」

「……さっきの言葉、信じていいのだな?」

「ああ。勇者として宣言する。世界を救った後で、お前と真剣勝負をするってな」


 頭を上げて、俺は手を差し伸べる。

 ロッサは、俺の手をじっと見詰め。


「よかろう。貴様がどうしてもと言うのであれば、今回だけ特別に協力してやる」


 こいつとは、初めて手を繋いだかもしれないな。……小さい手だな。だが、今のこいつの手は、とても大きく頼もしい力を感じる。

 気づくと、俺達は見詰め合ったまま自然と笑っていた。


「まさか、勇者に協力をする日が来るとはな。生前の我からは考えられない行動だ」

「協力なら、結構していただろう。それに、その言葉俺も同じだ。まさか、お前が女の子になって、しかも大食いキャラだったなんて。あの魔帝がな」

「これも、それも、貴様に殺されてから全てが変わったのだ。責任を取ってもらうぞ。この後の、真剣勝負でな」


 手を離し、ロッサは無人島の緑生い茂る森の中へと目をやる。


「……ふむ。どうやら、我等が探している異世界人はこの島の奥にいるようだな」

「よし。それじゃ、さっそく行くぞ」


 次元ホールを開き、俺達はこの無人島にいる異世界人の下へと向かった。そうそう、俺達がこうして無人島に行っている間、有奈達も行動しているんだ。

 天宮家の協力の下、次元の管理者が示した場所へと俺たちよりも先に行き、問題を起こさないように保護するため。

 とはいえ、言語に問題がある。俺がヴィスターラへと召喚された時は、異世界召喚の影響で普通に話せていたが、ティッタやエリファの例もある。

 その時は、穏便に俺達は敵じゃないと伝えるようにするとなっているが……大丈夫だろうか。心配だし、こっちを早く済ませないとな。


「あそこだ」

「洞窟か」


 次元ホールを通り、しばらく進むと洞窟を発見した。いきなり、本人の目の前に出てしまっては絶対警戒されるからな。

 さて、異世界人は。


「出てきたか」


 俺経ちの気配に気づいたのか、洞窟の奥からそいつは姿を現す。

 褐色の肌、青みがかった銀色の髪の毛に獣の耳と尻尾。

 鋭き眼光は、明らかに警戒心バリバリという感じだ。


「なんだてめぇらは!」

「俺達は、お前を助けに来たんだ」

「助けに?」

「そうだ。俺は、刃太郎。そしてこいつはロッサだ。なあ、お前。どうやってここに来たか。覚えているか?」


 まずは、警戒心を解かないといけない。焦らず、慎重に話し合いで。


「黒い渦に吸い込まれたんだよ。たくっ、せっかく気持ちよく昼寝をしていたってのよ。最悪な気分だぜ。……つーか、お前達。特に、そこのちび」

「まさか、我のことを言っているのか?」


 なるほど、機嫌が悪いのは昼寝を邪魔されたからなのか。そんな目覚めが最悪な獣人は、ロッサのことを指差す。

 まあ、この中でちびって言ったらこいつだよな。


「そうだよ。てめぇからは、邪悪な臭いがする。てめぇ、人間じゃねぇな?」

「ほう。どうやら、獣ゆえに鼻が利くようだな」

「そして、お前! お前は確かに人間みてぇだが、そこのちびとは違った臭いを感じる。今まで感じたことがねぇもんだ。そんな怪しい奴らの言葉を、俺は簡単には信じねぇからな!」


 イズミさんみたいな感じだろうか。

 俺達にはよくわからない獣人達特有の気配の感じ方。厄介だな……とはいえ、今更ロッサを下げても無駄だろうし。


「確かに、ロッサは魔族で俺は普通の人間じゃない。だが、信じてくれ。俺達はお前に危害を加えるつもりは無いんだ」

「はっ! だから言っただろ、俺は簡単にてめぇらの言葉を信じねぇってな! どうしても、言うことを聞かせたきゃあ……俺を力を屈服させるんだな!!」


 毛を逆立て、光の鉤爪を両手に纏わせる戦闘態勢に。

 見た目から、そういうタイプだって予想はしていたけど。戦いは避けられなかったか……仕方ない。ここは、あいつを倒して大人しくなったところでもう一度話し合うとするか。


「貴様は下がっていろ。ここは我がやってやる」


 前に出ようとしたら、ロッサが手で制す。


「言っておくが、殺すなよ?」

「わかっている。貴様との真剣勝負のため、今は貴様に協力してやると誓ったからな。まあ、見ていろ。貴様と戦う前に、準備運動だ」

「言ってくれるじゃねぇか! 魔族!! 言っておくがな、俺はこの鉤爪で数え切れないほどの魔族を切り裂いてきた! てめぇもその内の一人に加えてやるよ!!」


 血気盛んに、飛び込んでくる獣人。

 だが、ロッサは全然焦ることなく腕組みをしたまま迎え撃つ。


「ほう。それは楽しみだな。だが……」


 右手を突き出し、魔力を高める。


「三枚に切り裂いてやる!!」


 襲い掛かる鉤爪に、ロッサは魔力の障壁を展開。

 ガキィン!! 

 本当に薄い膜のような障壁だったが、用意に獣人の攻撃を防いでしまった。予想外の展開に、獣人も驚きの表情である。


「どうした? 三枚に切り裂くのではないのか? まさか、それが全力ではなかろう?」

「当然、だぜ!! おらあ!!」


 ロッサの挑発に、獣人は足にも光を纏わせ真横から全力の回し蹴りを繰り出す。

 しかし……それでも、ロッサの障壁は破れなかった。

 圧倒的な力を知らしめた後、ロッサは小さく笑い魔力を収束させる。


「吹き飛べ、獣」

「ぐっ!?」


 咄嗟に、光の鉤爪を重ね合わせガードするもその勢いは止まらない。周りの木々を巻き込みながら洞窟の出入り口の壁に激突する。


「がはっ!? な、なんつぅ威力だよ。あんな小せぇ玉で……!」


 膝をついた獣人に近づき、ロッサは見下すように笑った。


「これで、思い知ったか? 力の差と言うものを。言っておくが、今の我はこれでも力が下がっているのだ。そして、そこにいる刃太郎は我よりも強いぞ? たぶんな」

「たぶんってなんだよ」


 俺は、全盛期のお前を倒した男なんだが。

 ロッサの言い分は、今は無視し俺は膝をついている獣人に手を差し伸べる。


「少しは落ち着いてくれたか?」

「……ベイクだ」

「え?」

「俺の名前だよ!! てめぇらの話、聞いてやる。俺も、自分に何が起こったのか気になっていたところだからな!」


 声を荒げながらも、俺の手を取るベイク。少々荒いやり方だったが、俺は今起こっていることをベイクに詳しくだが、そう時間をかけずに説明した。

 まだ、全員の回収ができていないからな。

 次に向かわないと。

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