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第十三話「次元の管理者」

 あれから、ティッタとエリファは天宮家に預けることにした。同じ獣人同士仲良くしてくれるだろうという考えで。

 最初、エリファのことは天使だと思っていたが鳥獣族という立派な獣人だったのだ。聞いた話のところ、エリファの一族は、エリファぐらいの歳になると巣立ちさせ、立派な大人になるために世界中を旅することになっているらしいのだ。

 それで、その途中次元ホールに吸い込まれてこっちの世界へ。


 ティッタのほうは、まだまだ心を開ききってくれていないので、全ては話してくれていない。ただ、とても暗く辛い場所から逃げ出してきたとは言っていた。

 イズミさんは、それを聞いて険しい表情をしつつも、ティッタを優しく抱きしめていた本当の母親のように。


 そして、俺は現在色んな世界で次元ホールがどうして出現し、地球へと誘っているのかニィやリフィルと共に調べていた。

 状況を聞いたオージオは、グリッド共に原因を調べてくれているようだ。

 俺達も、俺達で頑張らないとな。


「へえ、あの犬っころがそんなことを言っていたんだ。たくっ、面白そうだからって入るとかどうかしてるわね」


 フェリルのことを話していると、リフィルはどうやって自分がこっちに来たのかを忘れているかのようにポッキーを齧り笑っている。

 そんな彼女を見て、ニィは。


「どの口が言うのですか。あなたも、同じようにこっちに来たはずなのですよ」

「さ、さあどうだったかしら?」

「まったく……ですが、これは大事件なのです。もし、このまま色んな世界から住人達が誘われ続ければ地球中が大騒ぎなのです」


 確かにそうだ。今のところは、あまり害が無い子供達ばかりだが。これが、害のある種族。もしくは魔物なんて誘われたら……。

 地球中が大混乱だ。

 早急に対策を練らなければならない。


「……」

「……」

「……ねえ」

「あぁ、わかってる」


 俺達が会議を開いているのは、ニィ達が作った聖域の中。

 なので、普通ならば神々やその許可がない者達は入ることができない。そんな聖域の中で、コタツに入りながら語っていたのだが。


「ずずず……」


 当然のように聖域へと侵入し、コタツにも侵入。

 俺の湯のみを勝手に奪い緑茶をのん気に飲んでいる者。

 アイマスクをしており、目が見えていないと言うのに、普通にみかんの皮を剥いている。白と黒が交じり合った不思議な色の長い髪の毛に、これまた白と黒の半分の色合いの服を身につけていた。

 しばらくの沈黙の後、リフィルが切り出す。


「ちょっと、あんた。何者よ」

「ぱく」


 しかし、無視をしてみかんを口の中に放り込む。


「ちょっと! 聞こえてないの!」

「ぱく」


 しかし、これも無視してしまう。

 眉をぴくぴくっと動かし、リフィルは聞こえていないのだと思い、思いっきり意気を吸い込む。


「聞こえてんでしょ!!! アイマスクのあんた!!!」


 さすがに、これは聞こえたらしく。みかんを食べるのをやめて回りを見渡す。そして、視線が集まっていることにも気づき、自分? と言いたげに指差す。


「あんたに決まってるでしょ。アイマスクをしている奴なんて……」


 あぁ……なるほど、と右手に左手を打ちつける。なんなのよ、こいつとリフィルが呆れる中、脳内に声が響き渡る。


『初めまして、私は次元の管理者です』

「次元の管理者? いや、それよりもなんで念話なんだ?」

『口を動かして、喋るのが面倒なので』

「あ、そう」


 別に興味は無いと言いたげなリフィルだったが、次元の管理者は話を続ける。


『本日、私はこうして次元空間からやってきたのは、現在起こって言う問題について。あなた方にお話があるからです』

「色んな世界の住人がやってくるっていうやつか」

『はい。これは次元の管理者としては見過ごせない問題。なので、早急に解決をしたくこうして引きこもるのをやめ……いえ、大忙しの中出てきたんです』


 さっき、引き籠るとかなんとかって聞こえたけど。今は、置いておこう。


「それで、今の問題。次元の管理者から見て、どうなんだ? やっぱり、相当やばいのか?」

『そうですね。昔から、色んな世界に色んな者達が行き来しているのを見てきました。その度に、次元が歪むので管理する私としては相当大変でしたよ……ふう、まったく少しは考えて次元を渡って欲しいものですね』


 なんだか愚痴が始まってしまった。

 やっぱり、俺や卓哉さんのほかにも異世界召喚を体験している人達っているんだな。


『まあ、愚痴は後で聞いてもらうとして』


 後で、聞くことになるのか……。


『そんなことがいつまでも続くものだから、管理する私は作業が追いつかず、次元はボロボロになってしまいました』

「まさか、それが原因で色んな世界に次元ホールが?」

『まさに。まあ、最後のトリガーはあなた方なんですけどね』

「え? 俺達?」

『そうです。まあ、好き勝手に地球で魔法やら神の力を使ったり、次元を勝手に渡ったり、別空間を作っては派手に消滅させたり……これで、次元に何も影響が無いと思っていたんですか?』


 次元の管理者に言われたことは、俺達が過去やったことだろう。

 俺がアイオラスを二回ほど抜いたり、魔法を数え切れないほど放ったり、神力や魔神力を使ってしまったり。

 別空間に関しては、完全にニィのことだろうな。

 チラッと見れば、さすがのニィもぐうの音も出ない様子。


『というわけで、あなた方には全面的に協力をしてもらいます』

「それはまあ、初めからこの問題を解決するつもりだったからいいけど。具体的にはどうしたら良いんだ?」

「そうなのです。それと、このまま別世界の住人が誘われ続ければどうなってしまうのですか?」


 おっと、そういえばそうだったな。

 問題を解決するのは良いが、今の状況とこのままだとどうなるのかを聞いていたほうが良いな。


『まあ、世界同士の境界線がなくなって、色んな世界が入り混じった空間となるでしょうね。最悪の場合

世界同士が衝突しあって、消滅します』


 そんな真面目なことを語りながら、時限の管理者は皮を剥いたみかんを一口で平らげてしまう。おそらく、彼女なりの世界が消滅した表現だったのだろう。

 だが、世界消滅か。

 これは思っていたよりも、大きな問題だ。ヴィスターラがあのなんちゃって魔帝に侵略される以上の問題だろうな。

 なにせ、複数の世界が消滅するかもしれないんだ。


『まあ、そこまで深刻にならないでください。すでに、解決策のほうは考えていますから』

「さ、さすが次元の管理者。それで、どうしたらいいんだ?」

『まずは、ゆっくりと次元の修繕をできるように、色んな世界から誘われる者達を一箇所に集めなくてはなりません。そうでないと、修繕を終えた後に元の世界へ帰す時めんどう、大変ですからね』


 めんどくさいって言いそうになったぞ、この子。

 だけど、それは一理ある。

 このままじゃ、世界中に異世界人達が出現することになる。もし、次元の修繕が終わったとしても、今度は異世界から誘われた者達を探さなくてはならない。

 もしかしたら、その間に地球で問題を起こしたり、地球側が異世界人に何かをするかもしれない。

 そうならないためにも、一箇所に集めなくてはならない。

 だが、どうやって……。


「そのことは、私に任せて欲しいのです」

「ニィ?」

「こうなったのも、私達の。いえ、大半が私のせいかもしれないのです。だから、その責任を取るために誘われる者達を一箇所に集める方法を私がやり遂げて見せるのです」

『お任せしてよろしいのですね?』

「任せるのです。リフィル」

「……ふっ。しょうがないわね。あたしも、神様として本気を出そうかしら」


 さて、誘われる者達を一箇所に集める方法はニィ達がなんとかするようだが。


『あなたには、他の方々と一緒にすでに誘われてしまった者達の回収をやってもらいます。今のところ、地球に誘われたのは全部で五人です。ちなみに、その内の二人はすでに保護しているようですね』


 ティッタとエリファの他に三人も誘われていたのか。


「わかった。任せてくれ」

『では、今から残り三人の居場所をあなたの脳内に送ります。そして、移動手段は』


 そう言って、次元ホールを出現させ手を突っ込み。


『この大食いさんの次元ホールをお使いください』


 焼肉丼を食べていたロッサを引っ張り出してきた。

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