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第十一話「雪世界の暴走神」

「せりゃああああ!!」

「ハッ!!」

「あぶっ!?」


 完璧だった。サシャーナさんが、雪玉を投げると同時に俺も雪玉を投げ、回避する。見事なカウンターを決めてやった。

 これで、サシャーナさんのライフゲージは二つ。

 さて、ラストスパートと言ったところか。


「ちゅ、ちゅめたい……ですが! これでこその雪合戦ですよ!! 雪塗れになりながらも、熱い攻防を繰り広げる!! 予想していた通り、一方的にやられていますが。私は楽しいです!」

「それはよかった。でも、あまり時間をかけているとあっちの戦いも終わりそうなんで。早めに終わらせてもらいますよ」


 未だに、ロッサとコトミちゃんは戦っている。どうやら、ロッサのほうが優勢のようだ。ロッサのライフゲージが残り四つに対し、コトミちゃんは三つだ。

 これ以上、何も考えずに戦っていては確実にやられる。そう考えたのか、コトミちゃんは真っ向から挑まず、隠れながら確実に戦っている。


 ちなみに、旋風丸もコヨミとかなりの接戦を繰り広げている。

 とはいえ、さすがコヨミ。

 旋風丸が苦戦している。コヨミのライフゲージは三で、旋風丸が二つだ。

 というか、穴ぼこだらけだな。……ん? この気配は。


「ふっふっふ。そうはいきませんよ。まだまだ私達の雪合戦はおわら---ぶはっ!?」

「サシャーナさん!?」


 見知った気配が近づいてくるのに気づいた時だった。

 真横から二つの雪玉を飛んできて、残り少なかったサシャーナさんのライフゲージが消えてしまう。と、同時に俺のところにも飛んでくる。


「あたたた……」


 有奈が。俺は見事受け止めることができたが、有奈のライフゲージもゼロだ。しかも、結構疲労しており神力もほとんど残っていない。


「大丈夫か? 有奈」

「じ、刃太郎様……わ、私の心配は……がくっ」


 すみませんサシャーナさん。すぐ助けますから。


「だ、大丈夫だよ。お兄ちゃん……あっ」


 笑顔で立ち上がる有奈だったが、足腰が限界にきているらしく、膝をついてしまう。

 その原因は……あいつか。


「これで二人なのですー!! さあ、次の獲物は誰なのですかー!!」


 この雪合戦の主催者ニィ。

 ライフゲージは、まったく減っておらず元気も有り余っていた。まるで、遊びに飢えているかのようでオーラが半端ない。


「む? 貴様は」

「次のターゲット発見なのですぅ」


 コトミちゃんを追い込んでいたロッサが丁度近くに降り立った。目に映ったものは全て倒すみたいな、バーサーカーモードに入っているニィは雪玉を手にロッサへと突撃していく。


「くっ! 妖怪を倒すのに忙しいというのに……厄介な相手に目をつけられたものだ!!」


 迎え討たんと、雪玉を投げつける。

 ただの雪玉ではない。

 魔力を纏っており、ロッサの意のままに操れるのだ。


「沈め!!」


 なので、不規則に動くことだった可能。二つの雪玉は、蛇のようにくねくねと動きながら、背後と右横から襲い掛かる。


「無駄なのです!!」


 だが、ニィには効かなかった。跳躍し、雪玉を回避。ギリギリのところで回避したため、雪玉同士がぶつかり砕ける。


「予測済みだ!!」


 跳躍したニィ目掛け、ロッサは三つ目の雪玉を顔面目掛け飛ばしていた。どうやら、ニィが上に逃げるのを予測していたようだな。

 普通ならば、空中で避けるのは難しい。

 まあ、普通ならな。


「効かないと言っているのですよ!!」

「くっ!」


 完全に空を飛んでいる。

 容易に雪玉を回避し、反撃。足元にある雪が一瞬のうちに、十数個もの雪玉へとなり、ロッサを囲んだ。

 うわー、全力で楽しんでるなーあいつ。


「ヴィスターラでは、立場上倒せませんでしたが……今はそんなもの関係ないのですー!!」

「やはり、厄介だな。神というのは!!」


 一斉に襲い掛かってくる雪玉の嵐。

 逃げ場が無い。

 上も、右も、左も、後ろも、前も。しかし、ロッサにはあれがある。逃げられないのなら、と手をかざし次元ホールを出現させる。


「貴様に返すぞ!!」


 次元ホールは、ニィの周りに出現し、そのまま雪玉が……出てこない? 


「ど、どうして?」


 疑問に思っていた有奈を回収班であるリフィルと駿さんが持ってきたタンカに乗せながら、俺は答えた。


「そうだな……次元ホールってロッサだけが使えるものか?」

「え? それは……もしかして」


 わかったようだ。そう、次元ホールを使えるのはロッサだけじゃない。戦っているニィも使える。なので、雪玉は。


「はぶうっ!?」

「詰めが甘いのです。魔帝バルトロッサ、討ち取ったりー! なのです」


 ロッサの次元ホールに気づかれないように、自分の次元ホールを重ねていたみたいだ。それにより、結局雪玉の嵐は、ロッサを襲った。

 これにより、ライフゲージ四つだったロッサは一瞬のうちに敗北。

 雪の山が積もったロッサは、すごく悔しそうな表情をしている。


「さて……有奈。先に戻っていてくれ」

「お兄ちゃんは?」

「俺は、あの暴走神様の相手をしなくちゃならない」

「く、来るでない!! ふあああ!?」

「あわわ!? コヨミー! すっごいピンチだよー!!」

「ま、待ってて今助けに、うわ!?」

「あはははは!! 私のテンションは今、有頂天なのですよー!!」


 ロッサを倒し、コトミちゃんとコヨミ、それに旋風丸をロックオンしたニィは、とても楽しそうに雪玉を投げつけている。そして、あんなものを目の前で見た三人は、明らかにニィを怖がっていた。


「あれも直に終わるだろう。だからその前に。駿さん、有奈をお願いします」

「はい。承知しております」


 リフィルは、しぶしぶロッサの回収に行っているようだ。あっ、三人がやられた。いくら、ニィでもあの三人を圧倒するとは。

 今のニィは、高まりまくっているようだな。というか、あれ本当に人間の体なのか? 高まり過ぎて神様の体になってないだろうな?


「頑張ってね、お兄ちゃん」

「ああ。やれるだけのことはやってくる。まあ」


 一歩、また一歩と雪塗れになった旋風丸を背に近づいてくるニィに俺は立ち向かっていく。


「相手は神様だから、勝てるかどうかはわからないけどな」

「刃くん。立派な雪化粧をしてあげるのです」

「それは冷たそうだ。正直、願い下げだな!!」


 俺は、走り出す。

 ずっと俺の味方をしてくれていた神様へと挑むために!


 ―――そんなこんなで、挑んだ俺だったが。

 ギリギリのところで、なんとか勝利を掴んだ。勝利、と言えるんだろうかあれは。お互い残りライフが一になるまで、確実に一時間以上は経った。


 そして、お互いに疲労が溜まってきたところにそれは起こった。

 俺が少しフラッとしたのが偶然飛んできた謎の雪玉を回避し、ちょっとぼーっとしていたニィに当たってしまったのだ。

 後で、わかったことだが、その雪玉を投げていたのは響をずっと追い続けていた雪音さんのものだったらしい。

 俺は正直ニィと真剣に遊んで疲れていた。なので、ギブアップを宣言。

 それで、優勝したのは。


「優勝は、御夜なのですー!!」

「え? え!? わ、私!?」


 今日は、雪音さんに倒され、雪音さんはそれに満足したのか。いや、今日の看病をすると言って自らギブアップ。

 そして、最後まで隠れていた御夜さんが無傷に優勝。

 本人も、ただ隠れていただけなので、突然優勝したと台座に上げられ驚いている模様。


「優勝した御夜には、この山盛りカキ氷をプレゼントなのですー。シロップはお好みでどうぞ!!」

「ええー!? こ、こんな寒い時期にこんな量のカキ氷なんて無理ですよー!?」


 まさか、優勝商品があったとは。しかも、びっくりするほど山盛りのカキ氷とか。

 正直、優勝しなくてよかったと皆思っているだろう。


「食べぬと言うのであれば、我が食べてやろう。冬に食べるカキ氷は中々良いものだと常々聞いていたからな」


 あ、一人だけそうでもない奴がいたな。確かに、冬に食べるアイスはおいしいってよく聞くけど。


「それって、暖房とか効いた温かいところで食べるって意味だったような」


 まさに、有奈の言う通りである。


「さ、さすがにこんな寒いところで食べるのはお腹を壊しそうだよね……」

「でも、普通に食べてるねロッサは」


 あいつの胃袋はどうなっているんだが。いやぁ、それにしても今回は疲れたな。特に、ニィの相手をしてだけど……でも、疲れるほど全力で遊ぶのは、良いものだなやっぱり。

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