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第九話「まだまだ続く雪合戦」

「貴様ら! 我よりも先に刃太郎を倒そうとは、愚かな考えよな!!」

「何を言いますか!! 刃太郎様を先にロックオンしたのは、私です!! お二方こそ、邪魔をしないでくださいますか!!」

「それを言うなら、わしとて開始前からそ奴を見詰めておったわ! 獲物を狩る獣のように!!」


 雪玉を持った三人の美少女に囲まれたまま、その言い争いを聞いている俺。

 正直、隙だらけのように見えるがそうでもない。

 ここから一歩でも動けば、彼女達は必ず一斉に襲い掛かってくるだろう。なので、しばらくは彼女達の口論をど真ん中で聞きつつ、この陣形が崩れるのを待つ。


「何が獣だ。貴様など、ただのそよ風を操る妖怪風情ではないか」

「なにをぉ!? わしの風を受けもしないで、よくそんなことを言えるな小童が!!」

「小童だと? 言っておくが、我は貴様などよりも長く生きている。百年程度では我こそ、小童と言ってやるぞ?」


 ロッサは、少なくとも八百年近くは生きている。

 どうにも魔族というのは、時の流れの感覚が俺達とは全然違うようで。肉体の成長も遅く、寿命だって魔族は人間の何百倍もあるとか。

 旋風丸は、確か二百年ちょっととかこの前チェスをしていた時に呟いていたような気がするな。


「年齢なんて関係ないですよ! 今は、いかに刃太郎様に対して好戦的なのかということです!」

「ほう、うさぎよ。良いことを言うではないか。そうじゃとも! 今は、年齢など関係ない。今は!」

「ふっ。そういうことにしておいてやろう。今は!」

「はい! 今は!」


 あれ? なんか、待っていたら崩れると言うよりも、三人の結束が深まってしまったような……ぎらりと一斉に光る三人の目。

 俺は、自然と身構えるが。


「おりゃああ!!」

「むっ!」


 四人目が登場し、ロッサへと雪玉を投げつける。


「コトミ様!? それに、コヨミ様も!?」


 現れたのは、チームを組んだコトミちゃん、コヨミ。耳と尻尾を隠すことなく、全力の姿で雪玉を投げつけている。

 地面に着地したロッサはふっと笑い顔面に飛んでくる雪玉へと雪玉を投げつけ防ぐ。


「コトミよ。我の邪魔をするということがどういうことになるのか、わかっているのだろうな?」


 魔力を高めるロッサに対し、コトミちゃんは臆することなく魔力を高め対抗する。


「もちろんだよ! クリスマスの時は、不完全燃焼だったから! ここで決着だよ! ロッサ!!」

「くっくっく……! よかろう! 刃太郎の前に、貴様から雪塗れにしてくれるわ!!」

「やれるものならやってみろー!!」


 ……とりあえず、ロッサは退場っと。

 向こう側で、雪玉以外にも雷やら風やら色々と飛び交っているが、あの二人なら大丈夫だろう。

 後は。


「で? お前は、どうするつもりなんだ」

「さーて、どうしたものかな」


 未だに、サシャーナさんと旋風丸。それにコヨミがその場に残っていた。


「こ、コヨミ様! 申し訳ありませんが、ここは私にお譲りください! そして、厚かましいお願いでありますが。旋風丸様のお相手をして頂けるとありがたいのですが」

「そうだねぇ……」


 サシャーナの真摯なる願いを聞き、コヨミはくるっと旋風丸の方へと体を向ける。


「やるつもりか、きつねよ!」

「日本の妖怪さんか。ふふ、ちょっとがらにもなく血が騒いできちゃったかな」


 がらにもなく、ね。あえて言わないが、まあ普段のコヨミだったら、あまり好戦的ではないから。そう言えるだろうけど。


「邪魔をするというのであれば、お主を先に潰してやろうぞ!!」

「やれるものなら!」


 刹那、二人の姿は消える。一瞬のうちに、跳躍し空中で激しい攻防戦を始めていたのだ。


「おーい。お前達ー、これは雪合戦だからなー。それを忘れるなよー」


 一応、言っておいたが、ちゃんとわかってくれるだろうか。


「っと。背後からとは、容赦ないですね」


 背後から俺の頭めがけて飛んできた雪玉を回避し、サシャーナさんと再度向き合う。邪魔者がいなくなった。

 これで思いっきりやれる。

 そんな感情が、伝わってくるほどのやる気のある瞳だ。


「行きますよ、刃太郎様!!」

「相手しますよ、サシャーナさん」


 魔力空間から雪玉を二つ取り出し、俺とサシャーナさんは同時に動き出した。






・・・☆・・・






「……これはひどいね」


 有奈は、神経を研ぎ澄ませながら安全を確保し、進んでいる。

 そこで、明らかに後から盛られたかのような雪の山を発見した。いったいなにがあるんだろうと恐る恐る近づいてみたところ。


「あ、あの大丈夫ですか?」

「じ、刃太郎の妹か……ぐふっ」


 どうやら、息はあるようだが気絶してしまったらしい。倒れていたのは、バルトロッサの部下である光太だった。

 まだ開始して、十分も経っていないのに一人やられてしまった。

 ライフゲージを見るとゼロになっている。


「はいはーい。ちょっと通るわよー」


 このまま放置していたら、確実に凍死してしまう。助けなきゃ、と思ったところにリフィルと駿がタンカを持って現れる。

 リフィルが光太の上に積もっている雪の山を吹き飛ばし、駿が雪を払い毛布で包む。そして、そのままタンカに乗せたのだ。


「じゃあ、あんたも頑張りなさいよ」

「もしやられた時や動けなくなった時は、私どもがお助け致しますので。あ、ですができるだけお怪我のないように。では」


 こうして、有奈だけが残った。

 その後、近くの岩に隠れ考える。


「光太さんは、確かに一般人。でも、こうも簡単にやられるなんて。まだ息はあった……ということは」


 この近くに、光太を倒した者が潜んでいる。

 気配は感じられない。

 この近くにはやっぱりいない? いや、気配を殺しこっちが油断したところを……。


「だあああ!! しつこいってのぉ!!!」


 響の声だ。有奈は、岩からそっと顔だけを出し様子を伺う。


「うふふふふふふっ!! 響くぅーん!! 大人しく、お姉さんの雪に埋もれなさーい!!」

「雪じゃなくて、雪玉を当てろ!! これは雪合戦だぞ!! おらぁ!!」

「おっと。うふふふ、簡単に当たってあげないわ。この季節は私達がもっとも力を発揮できる時期! 雪合戦なんて、玉遊びも当然よ!!」

「玉遊びだけどな!!」


 どうやら、いつものように響は雪音に襲われているようだ。雪、それに雪女……可能性としてはありえることだろうが。


(でも、あの様子だと開始直後からずっと響くんを狙っていたようだし)


 違うかもしれない。

 そんなことを考えていると、二人はさっさとその場から離れていってしまった。


「ふう……ともかく、これは普通の雪合戦じゃない。気を引き締めていかなくちゃ」


 と、気を引き締め岩から姿を出した刹那。


「わわっ!?」


 有奈目掛け雪玉を飛んでくる。しかし、ギリギリのところで回避することができた。尻餅をつきつつも、有奈は雪玉が飛んできた方向。

 つまり、上空へと視線を向けた。


「ふっふっふっふ。よく避けたのです、あっちゃん!!」

「また変わってるし……」


 空中に浮いていたのは、この雪合戦の主催であるニィーテスタだった。己の周りに、十個もの雪玉を浮かせており不敵に笑っていた。

 自分の愛称がまた変わっていることに、突っ込みつつ立ち上がる。


「もしかして、光太さんを倒したのって」

「私なのですー」


 やっぱりそうだったか。あの尋常じゃない雪の量。神であるニィーテスタならば、用意だろう。しかも、宙に浮きつつ容赦のない雪玉の嵐で、と言ったところだろう。


「最初の相手が、ニィなんてね。これは、気が抜けないよ」

「師匠を超えてみるのです! 弟子一号!!」


 ちなみに、二号はリリーである。


「うん。簡単にはやられないよ、師匠!!」


 神力を高め、有奈は師匠を超えるため雪玉を構えた。

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