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第四話「地図が示す場所へ」

 アルバムから謎の地図と封印札を見つけ出して、数日。

 千代子さん達の努力により、その地図の場所がわかった。やはり、予想通りそこはかつて威田一族が封印した悪しき者が眠っている場所だという。


 俺はそれを聞き、今そこへと向かっている。

 あれから二百年……鳳堂家の封印すら解けているんだ。もしかしたら、そこの封印も。それに、この世界では色んなことが起こり続けている。

 その影響で、もしかしたら封印が緩んでしまっている可能性だって。


 新幹線に乗り、その場所の近くまで移動している俺。

 しかし、どうにも騒がしい。


「は、早いぞこの乗り物!? これが新幹線というものなのじゃな!!」

「旋風丸ちゃん。あんまり騒ぐと周りのお客様に迷惑だから。ね? ほら、チョコあるよ」

「わしは、そこまで子供ではないのじゃ。まあ、じゃが。施しは素直に受け取るとしよう」

「なんでお前がついてきているんだよ……」


 有奈は、威田が関わっているなら私もいく! と断固として折れなかったので仕方なく。まあ、今では神力の使い方もかなり上達しており、護りや回復などもこなせるようになってきている。

 力を手に入れる前なら、絶対連れてこなかっただろうが。

 有奈も、もう子供じゃないし、護られる側でもなくなってしまった。それに、ある意味の里帰りだ。威田一族の里へ向かっているんだからな。


 問題は、騒いでいる天狗様だ。

 鳳堂家での会話を聞いていたのか。先回りされていた。後で、華燐に電話をしたところ、華燐達もいつの間にか旋風丸がいなくなっていて探していたらしい。


「これから、刀児の故郷へと向かうのじゃろ? ならば、わしもついていくのは当たり前というやつじゃろ!」

「なにが当たり前なんだよ」

「そういえば、旋風丸ちゃんが封印されていたところって今から向かう場所じゃないんだよね?」


 と、旋風丸の口のチョコを運びながら有奈が問いかける。

 それを素直に食べ、旋風丸も語り続けていた。


「うむ。わしが封印されていたのは、ここからずっと西側のほうじゃ。どうやら、刀児は故郷から離れ、術士だということを隠しながら暮らしていたようなのじゃ。そこへ、わしがちょっかいを出しに行ったら」

「封印されたと。情けない奴だなぁ、お前」

「な、情けなくないのじゃ!! あの時は、わしが完全優勢だったのじゃぞ! それを、不意打ちのように封印の札で封印しおってからに……!」


 これも後で聞いたことだが、父さんとその家族はすでに術士としては隠居していたらしい。とはいえ、知らないだけで本当は、生き残りがいるかもしれない。

 まあ、父さんの父親と母親はもう亡くなっているそうだけど……。


「そうじゃ。ずっと気になっていたことがあったのじゃが」

「なんだ?」

「刀児は、なぜ死んだのじゃ? わしと戦い、封印するほどの術士じゃ。そう容易く死ぬとは思えぬのじゃが」


 その問いかけに、俺達はしばらくの沈黙に入り。


「……父さんは、事故死だって聞いている。母さんと一緒にだ」

「それはまことなことなのか?」


 俺だって、よくわかっていない。子供の頃にそう聞いただけで。ニュースにだってなっていなかった……と思う。

 父さんが術士だって聞いてからは、尚更父さん達の死に疑問を思っている。本当に、事故死だったのかって。そもそも、子供二人を家に置いていって、出かけるか?

 それもまだ一ケタ台の子供二人を。


「俺達の記憶ではそうなっている。昔のことだし、子供の頃の話だから。それに、父さんが術士だってことも知らなかったからな。俺達も正直、わからないんだよ」

「ふむ、さようか。……じゃが、今から向かうところへ行けば何かわかるやもしれぬぞ! さあ、元気を出すのじゃ!! そうじゃ! トランプを持ってきてやったぞ!」


 まさか、敵であるはずの俺を元気付けるとは。

 それからは、旋風丸が持ってきたトランプで遊びながら時間を潰した。

 そして。


「……ここが、そうか」


 新幹線を降りて、タクシーで更に目的地近くまで移動。

 すでに、数時間は経っていたが。

 ようやく、地図に記された場所の近くまで辿り着いた。


「なにも、ないね。予想はしていたけど」


 見渡す限りの山。

 木々が生い茂り、舗装されている道路はあるにしろ。俺達が向かうのは、道なき道。獣道らしきものもなければ、結構な急斜面である。

 タクシーの運転手さんも、どうしてこんななにもないところに? と首を傾げていたっけ。

 ……うん、どうやら、ここからだとギリギリ電波が通じるようだな。

 最初に決めたように、帰りはニィに頼むとするか。


「それじゃ、行くぞ。二人とも」


 スマホをポケットに仕舞い、俺は地図片手に森の中へと入っていく。

 やはりというか、なんというか。

 手数の自然。

 草木が生い茂り、進む時も草を掻き分けていかなければならない。


「こう草木が生い茂っていると、その地図も役に立たぬのではないか?」


 確かに、旋風丸の言いたいことはわかる。

 この地図も相当古く、二百年も経っているんだ。何か書き足した後もあるから本当に大事にしていたのだろうけど……ん?


「そうでもなさそうだぞ」


 しばらく進んだところで、視界に入ったのは仏像だった。小さいものだが、この地図にも書かれている。


「ということは、この仏像様から左に進めば良いってことだよね?」

「そうなるな」


 今のところは風属性の魔法で草木を切り裂きながら進んでいる。仏像があったところから左へとしばらく進むとまた分かれ道があるらしい。

 とはいえ、どれくらいの距離を進めばいいのかわからない。

 いや、どうやらわからなくもなくなったな。


「ほう」

「これって」


 二人もどうやら感じているようだ。かなり微量だが、感じ取れる。邪悪な気配を。まるで、隙間から徐々に漏れ出しているかのように。

 この上から確かに、感じる。


「これは、来て正解だったみたいだな」

「封印が解けかかっている、ってことだよね。神力を得てから、色々と感じ取れるようになったけど。凄まじい邪気。怨念が込められている……」

「この気配が、わしよりも前の奴か。これは、わし以上に怒っているようじゃな」


 お前は、怒っていたと言っても、子供が怒っているみたいな感じだっただろ。と突っ込みを入れることなく、俺達は上から漂ってくる気配の方向へと進んでいく。


「ん?」

「今度はどうしたのじゃ?」


 すでに山を登って十分は経っただろうか。そろそろ辿り着いてもいい頃という時に、俺は懐かしい気配というんだろうか。

 なにかこう、知っている。

 その気配を頼りに、俺は周りを探す。そして、近くの岩の近くで見つけたんだ。


「……」

「なんじゃ、その小さな剣は。なにやら、霊力が込められておるようじゃが」


 見つけたのは、本物の剣じゃない。

 粘土で作られている剣だ。

 しかも、霊力の結界のようなものが張られている。おそらく、これのおかげでこいつは長い間放置されていたのにも関わらず、作られたばかりの状態で残っていたのだろう。


「これは、俺が子供の頃に作って、父さんにプレゼントしたものだ」


本当に子供が作った。ちょっと歪な、手のひらサイズぐらいの柄が赤色の。


「え? じゃあ」

「ああ。父さんはここに来ていたんだ」


 俺は、粘土の剣をぐっと握り締め山の山頂付近へと視線を向ける。


「行くぞ、二人とも。目的の場所は、もうすぐだ」


 父さん……。

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