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プロローグ

さあ、いよいよ最終章開幕です。

「おい」


 新年、と言ってもこれと言って、何か特別なことをしようとはまだ思っていない。さすがのニィも、あの出来事があった後なので割と大人しいものだ。

 現在は、すでに一月中旬。

 年末年始の休みは終わり、すっかりいつもの日常が戻ってきている。


「おい、おぬし」


 それにしても、年末年始の休みは何もないってぐらいぐーたらしていたなぁ。コトミちゃんやコヨミも新年はさすがに家族だけと旅行に行ったみたいだし。

 華燐やリリーもそうだ。

 当然俺達も……まあ、じいちゃんやばあちゃんのところへは今回は、ニィやリフィルを連れて行ったんだけど。


 そうしたら、流れ的に定食屋をまた手伝うことになり。ニィはやる気全開。サシャーナさんに負けないぐらいのファンを獲得した。

 リフィルもリフィルでなんだかんだ手伝ってくれた。

 そうしたら、人々の中では長期休みの時は、美少女美女がこの定食屋に集まるみたいな噂が広まってしまい……次は、春休みか? それとも夏休みか? とすごい聞かれたなぁ。


「おい、無視をするな!」

「ん?」


 まさか、さっきからおいおいというのは、俺に言っていたのか? 聞き覚えの無い声だったから俺じゃないと思っていたけど。

 周りを見渡すも誰もいない。

 気のせいか?


「どこを見ているのじゃ。ここじゃ、ここ」

「……ちっさ」

「なんじゃとぉ!? 誰が豆粒じゃ!!」

「いや、そんなことは言ってないって」


 視線を下に向けると、そこにいたのはバルトロッサと同じぐらいか少し小さい古風な格好をしている黒髪の少女だった。

 なんていうか、巫女服のような服装で、長く大きな袖に手が隠れており、頭には烏帽子だったかな? それを被っていた。

 なんだ? コスプレか? と思ったが、次の少女の言葉に俺は驚愕する。


「ふん。おぬしは、変わっておらぬようだな。刀児よ」

「なっ!? ど、どうしてその名を!」


 驚くのも無理は無い。

 刀児というのは、俺の……父さんの名前なんだ。威田刀児。俺が小学生の頃に母親とともに事故死でこの世を去った男。

 だが今思えば、事故死、というのはたぶん違うような気がする。

 本当に小さい頃だったから、記憶が曖昧であるが、どうして二人は俺達を家に置いて出かけたんだ? 確かちょっと買い物に行って来る、といって言ったような気がするが。

 いやいや、そこも大事だが今は。


「何を驚いておる。わしがおぬしのことを忘れることなどあるはずなかろう。それにしても、おぬしがまだその若さということが、まだ一年か二年であろう? それなのに、随分と様変わりしたものだ」


 そう言って、少女は街を珍しそうに見詰めていた。

 まさかこの子は、俺のことを父さんだと勘違いしているのか? というか、俺の父さんを知っているということは。

 通行人達も、この場ではかなり目立っている姿にちらちらと少女を見ている。


「ちょ、ちょっとこっちにこい!」

「うおっ!? ど、どこへ連れて行くつもりじゃ!?」


 ひょいっと予想通り、かなり軽かったので俺は少女を抱きかかえその場から離れていく。

 そして、今現在人気の無い公園に辿り着き、少女をベンチに下ろす。


「えっとな、まず先に言っておくけど」

「おぬしの強引さは健在のようじゃな。じゃが! おぬしの封印術は、まったくの欠陥術だったようじゃな!! 二十年は確実に封印してやると豪語しておったのに、数年でわしは抜けてきたぞ? はっはっはっは!」

「いやだからな。俺は」

「まあよい。さあ、あの時果たせなかった決着をつけるとしようではないか! 封印されていたとはいえ、我が妖力は健在ぞ!!」

「だーかーらー!!」


 どやっと、戦うポーズを取る少女に対し、俺はぐっと指に力を入れ。


「まずは人の話を聞けやぁ!!!」

「はぐっ!?」


 強烈なデコピンを叩き込んだ。

 弧を描き綺麗に倒れる少女。

 赤くなったおでこを抑えながら、涙目で訴えてくる。


「で、デコピンとはひどいではないか! 術士同士ならば、正々堂々と術で勝負せんか! この馬鹿者が!! おぬしは、この数年でそんな常識も忘れたというのか!? 恥を知れぇ!! ばーか! ばーか!!」

「子供か……はあ」


 それにしても、まさかあの時間停止事件から二週間ぐらいか経っていないのに、また厄介なことが起こるとは。

 しかも、今度の厄介ごとは相当めんどくさそうだ。

 別の意味で。


「馬鹿はお前だ。いいか? まず、誤解を解いてやる。俺はな、刀児じゃない」

「なに? 馬鹿を申すな。おぬしは明らかに……む? お、おぬしいつの間にそれほどの力を!? わしが封印されていた数年でどれほどの修練を!?」


 どうやら、俺の力にやっと気づいたようだが。まだ勘違いをしている。


「あのな。さっきも言ったが、俺は刀児じゃない。俺は、刃太郎。刀児は俺の父親だ」

「父、親? ……まことか?」

「うん」

「で、では刀児は?」

「……もうこの世にはいない。俺が小さい頃にこの世を去ったんだ」

「では、一、二年ではなく」

「ああ。おそらく十年以上は経っていると思う」


 その事実を知り、少女は沈んだ表情になる。

 元気付けてやりたいが、なによりも俺はずっと謎だった父さんのことがやっとわかったことに驚きつつも喜んでいる。

 まさか、術士だったとはな。

 華燐のおばあさん達が、俺の苗字を聞いた時に知っている素振りを見せたのはこういうことだったのか。確かに、何かあるとは思っていたけど。


「おい。お前、名前は?」

「旋風丸じゃ……」

「変わった名前だな。男か?」

「いや、わしは男ではない。証拠を見るか?」


 そう言って、袴を脱ごうとするのでやめいとチョップをして止める。


「それで、落ち込んでいるところ悪いんだけど。俺もこれから買い物に行かなくちゃならないから。ずっとお前に付き合っていられないんだ」


 とはいえ、父さんのことをあまり知らない俺にとっては、俺ぐらいの歳にどんなことをしていたのか聞きたいところではあるが。

 俺の問いに旋風丸は、きっと何かを決意したような瞳で俺のことを見詰めた。


「死したのであれば、仕方あるまい! 奴も人。寿命もあれば、死ぬことだってある! わしら妖怪とは違い体は脆いからな!! おい、息子!!」

「刃太郎だ」

「うむ、刃太郎。わしは決めたぞ! おぬし、刀児の代わりに!」

「いやだ」

「なぜじゃ!? いや、まだ何も言っておらぬではないか!?」


 驚く旋風丸に、俺はめんどくさそうな表情を向ける。だって、確実に父さんの代わりに戦えって言っただろうし。

 なんかこう、そういう奴をずっと相手にしているから反射的に言ってしまう。


「刃太郎よ!! 暇そうにしているな!!」


 そう、こうやって空気を読まずに突拍子も無く現れる馬鹿を相手にしているから……。


「何奴じゃ!!」

「貴様こそ、何者だ。名を名乗れ」


 と、肉まんを食べながら問いかける魔帝ちゃん。


「おぬしこそ、何奴じゃ。名乗らんか」


 あー、会ってはならない二人が会ったような気がする……。

今日はポッキーの日か。

……プリッツを食べながら執筆作業をしよっと。

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