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第二十三話「あっという間に」

 ポイントももう九十四になった。

 もうちょっとで、百ポイントというところで俺達はいかにも怪しいものを発見した。それは、テレビ局も近くにあるとある小屋。

 そこは、かなりボロボロなところだが、入り口のところにはなにやら最新式の機械が設置されている。俺達が持っている端末がすっぽりとはまるぐらいの窪みがある。

 つまりこの小屋が……。


「まさか、ラスボスの城がこんなにも小さいところだったとはな」

「……でも、これを見る限り百ポイントは必要ないみたいだな」


 ドアの隣に張られていた張り紙を見て、卓哉さんが呟く。俺達も、それを確認すると確かに”この小屋に入るだけ”なら百ポイントは必要ないようだ。

 張り紙にはこう書いている。


 この小屋には入るためには九十ポイントが必要だ。けど、僕の部屋に入るには百ポイントが必要だ。


 つまり、この小屋は見た目だけ。

 ニィの聖域のように空間が捻じ曲げられており、かなり広いものとなっている。そして、この小屋はあくまで入り口に過ぎないということか。


「ふん。そういうことなら、俺達全員がここに入る資格を持っているということだな」

「まったく、あんな変態さん達を四十近い回数倒すだなんてめんどくさかったわ……」


 静音さんの言うことは、皆が共感している。

 とはいえ、男である俺や卓哉さん、隆造さんにはなんら被害は無かった。というか、出てきた仮面人間達が全員性別が男だったために、俺達には興味を……いや、一応居たけどさ。


「まさに。そもそも、奴らはなんだったのだ。コトミ、コヨミ大丈夫だったか?」

「うん、私達は全然大丈夫だよお母さん」

「あんな奴らに遅れを取るような僕達じゃないよ」

「話すのもそれぐらいにしておくがいい。今は、この小屋にいる首謀者を倒すのが先決だ」


 ロッサの言うとおりだ。

 この中にいる首謀者を倒さない限り、この止まった時間は動き出さない。そのために、俺達は変態達を倒してポイントを稼いだ。

 俺は、皆の覚悟を確認し、先陣をきる。

 端末を窪みにはめ込むと、ぴぴぴっとデータを読み込む音が鳴り。


『ようこそ、僕の城へ。九十ポイント稼いだのなら後もうちょっとだ。さあ、時間を取り戻したいのなら僕のところまでくるんだ』


 あの帽子の声だった。

 その言葉が終わると、ドアが自動で開く。外からでは、真っ暗で何も見えない。やはり、空間が捻じ曲げられているようだな。


「ふん。来るんだ、だと。偉そうな奴だ」

「お前が言えたことかよ……とりあえず、俺が先に行きます」

「待て。我が先に行く!」


 そう言って、俺よりも先に入っていこうとするロッサだったが。


「ふぎゅっ!?」


 見えない壁に阻まれてしまう。


「なるほど。入るにはちゃんと九十ポイントあることを示さなくちゃならないってことか」


 うんうんと理解したように卓哉さんは首を縦に振る。

 鼻を押さえ、尻餅をついている魔帝さんに、俺はそういうことだと言い残し先に小屋の中へと入っていく。

 俺が入ると空間がぐにゃっと捻じ曲がり、背景が現れる。


「まるでSF世界の秘密基地みたいだな」


 木材のボロい小屋だったが、入ってみればそこは機械な空間。多くのモニターがあり、俺達が戦った仮面人間達のデータが表示されていた。

 俺は、そのうちのひとつに近づいていく。

 最初に戦った大きな奴のデータだ。


「ここで、あいつらは作られているってことか」

「うわー! なにここ! すっごく広い!!」


 俺が入って、一分も経たないうちに、他の人達が次々に入ってくる。まったく、もう少し待ってから入ってきて欲しいものだ。

 どんな危険があるかわからないのに。

 まあ、ここまで戦ってきたんだ。それぐらいの覚悟はできているよな、当たり前に。


「ほう! これは中々滾ってくる場所ではないか! まるで秘密基地!!」

「あらあら、隆造さん。ここは敵地ですよ」


 そう言って、静音さんは容赦なく近くにあったモニターのひとつを剣を叩っ切った。


「お母さん!? いきなり何してるの!?」

「ふふふふ……さぁってどうしてかしらねぇ」

「ふむ。その気持ち、わかるぞ。それにここは敵地。私達の敵がここで作られているというのなら!」


 そう言って、イズミさんも近くにあったモニターを一刀で二つも切ってしまう。


「わー! 楽しそうに! 私も私も!!」

「だ、だめだよ! まだボスも倒していないんだよ!」

「そ、そうそう! 皆とりあえず落ち着こうよ! まだ百ポイント溜まっていないんだよ? ここで、この仮面人間達の製造が止まったら」


 そう、リリーの言うとおりだ。

 確かに、この仮面人間達を見ていると非常にむかっとくるが、俺達はまだラスボスの部屋に辿り着くためのポイントを溜めていない。

 ここで、こいつらの製造が止まってしまったら今後ポイントが溜まらなくなってしまうかもしれない。


「ま、まあまあ。イズミ! 落ち着くんだ! 気持ちはわかるがここは一旦落ち着こう!」

「静音もだ! 夫としても、確かにあいつらは許せないがまず落ち着こう!」


 夫達が、必死に嫁達を止める。

 いったい俺達の見ないところでどんなことがあったというんだ……。


「まったく、君達には落ち着きというものがないのか? そんなことだから時間を奪われるのだよ」


 奥の自動ドアから出てきたのは、仮面人間だ。

 体の中心に時計がついており、赤いマントを羽織っている。

 サーチすると……なるほど。


「お前が、時間を止めた張本人か?」

「その通りだ。そして、この奥の部屋へと入るための残りのポイントを与える者でもある。私を倒せば、全員に十ポイントを」

「我がもらったぁ!!」

「私が先!!」

「やっちゃいましょうー!!」

「仮面を叩き割ってあげます!!」

「覚悟しろ!! 変態!!」


 もはや、俺達は唖然していた。いや俺達だけじゃない。説明をしていた欲望の変態仮面(時)すらもあまりの急展開に硬直してしまった。

 それもそのはずだ。

 数人の女性達が、一斉に襲い掛かったのだから。

 まず、ロッサが飛び込み。

 コトミちゃんが続き、サシャーナさんが、静音さんが、イズミさんが同時に飛び込んだ。俺、卓哉さん、隆造さん、有奈、リリー、華燐の六人は唖然し。

 コヨミに、獣っ娘達は苦笑していた。


「説明の途中だろうがああああっ!?」


 呆気なく倒されてしまった欲望の仮面人間(時)に対して、ロッサはこう吐き捨てた。


「我は、早いところ蕎麦にうどん、餅に御節など食いたいのだ」

「名前的に厄介そうですからね。速攻でやらせてもらいましたわ」

「もう貴様達の顔を見ることには飽き飽きだったのだ」

「私は面白そうだったからー!」

「右に同じく!」


 まったく、俺の周りの女性達はなんというか怖いな。とはいえ、これで俺達全員に十ポイントが来て、晴れて百ポイントになるはずだ。

 そして、止まった時も……戻らないな。


「時間が再び動くのに、しばらくかかるということでしょうか?」

「たぶんそうだろうな。それか、やっぱりこの奥に居る首謀者をどうにかしないと、か」


 欲望の仮面人間(時)が出てきた自動ドアを潜り抜けると、そこにはまたあの端末をはめ込む機械が設置されていた。

 さあて、テレビ画面でしか対面しなかった首謀者さん。

 直接のご対面だ。

次回、第七章完結! そして……。

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