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第二十一話「温と水の欲望」

 俺達の目の前にいる欲望の仮面人間(温)は、他の仮面とほとんど同じ。違うところをあげるとすれば、若干大きいというところだろうか。

 それにしても、温もりが欲しい? それがあいつの欲望。

 他の奴らと比べるとまだ優しい方面の欲望だと思うが……。


「さあ、私に温もりをくれ!!」

「温もりを? そういうのは、こんな人様に迷惑をかけるようなことをしていたらもらえないぞ!」

「心配はいらない。温もりは自ら掴み取るもの」


 そう言って、なぜか俺に視線を向ける。

 お、おいまさか掴み取る温もりって。

 最初の奴の言葉と、今の視線からは俺の脳裏に嫌な予感が過ぎった。


「なかなかいい男。そして、いい筋肉……! あぁ……さあ! いざ、私と肌と肌を!!」

「するかあぁっ!!!」


 飛び掛ってくる欲望の仮面人間(温)を迎え撃つ俺。

 剣で一撃、というわけにはいかなかった。

 ひらりと簡単に回避してみせる。

 やっぱり、他の奴らとは違う。

 あぁ……そうとも、他の奴らと違ってこいつは!


「なぜ私を拒む! 肌と肌を重ねあう! そうすることで、お互いに温もりが溢れ、幸せな気分になるのだぞ!!」

「ふっざけるな!! 誰がお前なんかと!!


 声、そして肉体を見る限りこいつの性別は男。つーか、股間の辺りがもっこりしているから絶対男だ。女の子ならともかく、こんな奴にやられるとかトラウマもんだ!


「やましい気持ちなどない! ただ私はお前と肌と肌を重ね合いたいだけだ!!」

「うるさい!! そんなに重ねたいなら周りに居る他の仮面人間達とやればいいだろ!」

「あいつらはだめだ。私の趣味に合わない」


 なんじゃそりゃ。

 ただ温もりが欲しいなら、他の奴らとでもできるだろ。まだ、ニィぐらいの可愛さなら我慢できる。だが、こんな全身タイツでくねくねしているようなもっこり変態仮面なんかと肌なんて重ね合った日には……あぁ! 想像しちゃだめだ。

 こんなおぞましいことを。


「お兄ちゃん! 今、私が!!」


 俺の別の意味のピンチに危機を感じてくれたのだろう。有奈は、鋭い目つきで欲望の仮面人間(温)へと突っ込んでいく。


「女はお呼びではない!! お前達!! 思う存分可愛がってやるんだ!!」

「ひゃー!! おっぱい! おっぱい!!」

「ぷるん! ぷるん!!」

「ひっ!?」


 だが、変態どもに阻まれてしまう。腰を必要以上に集団で振っている姿に、有奈は怖がっている

 あの仮面ども、よくも俺の妹を……。


「さあ、私達は私達で思う存分楽しもう」

「だーかーら!!」


 これ以上は無理だ。有奈のピンチだ。こういう奴はさっさと。

 練り上げた魔力を足に集中させ、一気に距離を詰める。


「おおっ!? さあ、私の手の中に!」

「黙れ!!!」

「ぐはっ!?」


 怒りの銃撃を、股間に集中させる。怯んだところで、大降りの一閃にて両断。


「あぁ……なんと温かい一撃……!」

「どういう神経してんだ、お前は」


 怒りの連撃にてでかい奴を倒し、有奈を阻んでているその他へと近づいていく。


「さあ、変態ども。覚悟はいいな?」






・・・☆・・・






 刃太郎達と分かれた、流れるプール側へと訪れていたサシャーナとその妹ミミ。 

 流れるプール以外にも、普通の広々としたプールもあり、ここは今年の夏。刃太郎達と楽しい思い出を作った場所のひとつ。

 そこが今、欲望の仮面人間達に占領されていた。


「これは思った以上にいますね」

「お、お姉ちゃん! あそこ!」


 ミミが指差す方向に視線を向けると、そこには明らかに他とは違う雰囲気と姿をした仮面人間がいた。


「水! 水だ!! 全ての水は我のものなりぃ!!!」


 ビート坂の上にものすごいバランスで立っている仮面人間。仮面の額部分には水命と書かれている。


「なるほど。あの仮面人間は、水を欲する者、というわけですね」


 念のためにサーチで確認する。

 名前は、欲望の仮面人間(水)と表示されていた。


「いいか! そこのウサギ達よ!!」

「ひうっ!?」


 いきなり、大声とともに指を指されたことで、ミミはサシャーナの後ろに隠れてしまう。


「この世で一番大事なものはなんだ? 金か? 愛か? 友情か? 否!! 水だ! 世界は水が無ければ滅びると言ってもいい!! 人の体も約半分が水でできている! 作物を育てるのも水が必要だ! お湯も、元は水を温めてできたもの! そう! なにをしようにも水は重要。そんな水を我だけのものにする! なにせ、我は水が大好きだからだぁ!!!」


 これは、ものすごい欲望だ。

 この調子では、刃太郎側もかなりの欲望を持った仮面人間がいるはず。早く、倒して駆けつけたかったがそううまくいくかどうか。


「一人いじめなんて、だめですよ! 水は皆のものです!!」

「ふん。皆のものだと? 人間どもは、水を無駄使いする! 汚す!! 我はそれが許せない! だからこそ、我が全ての水を支柱に納め、必要な時に水を分け与える!」

「そんなことがさせません! ミミ! 行きますよ!!」

「はいです!!」


 剣と銃を構え、二人は仮面人間達へと立ち向かっていく。

 彼女達は、獣人。

 獣の身体能力を持った人。見た目からは、想像もできない体力と筋力、瞬発力を持っている。


「獣っ娘のうえにメイドさんだぁ!」

「ちっちゃい子は、俺のペットにしてやるぜぇ!!」

「ならおっぱいは俺のものだぁ!」


 だからこそ、こんな単純な行動しかできない者達に、後れを取るはずが無い。二人は、仮にも最強の姫騎士と呼ばれていたイズミの部下。

 ミミは、この世界で育ったと言ってもいい。しかし、それでも。


「てやっ!!」

「ぶべえっ!?」

「そこです!!」

「ぎゃああっ!?」


 姉であるサシャーナに負けないぐらい、戦える。そして、姉妹だからこそ。


「そこ!」

「そっちもです!」


 お互いを護りながら、何も言わずとも連携が取れる。

 そして、ウサギの獣人にとっての最大の武器である耳。それで、どんな小さな音でも拾い。


「これで、ラストです!!」


 静かに近づいてくる敵も感知できる。あっという間に、欲望の仮面人間(水)以外を撃退したサシャーナは、剣の切っ先を突きつけた。


「後はあなただけです。正直、私はぷんぷんです!! 私達の楽しい日々を止めるなんて!」

「やるじゃないか、ウサギ達よ! だが、水に愛された我に。このエリアで勝てると思うなよ!!」


 刹那。足もの水が間欠泉のように上昇し、サシャーナ達へと襲い掛かってきた。


「そんなものくらうはずがありません! ミミ! 一気に畳み掛けますよ!」

「はいです!!」


 襲い掛かってくる水を回避し、どんどん距離を詰めていく。


「自分で言っておいて、あなたも水を無駄使いしているではありませんか!」

「無駄使いではない」


 パチン! と指を擦ると床に四散した水は再度集まり、サシャーナ達の背後から襲いかかってきた。正面からも同じものが来ており、避ける場所はもう横しかない。

 いや、ここは。


「我が水により押し潰されるがいい!!」

「ミミ!」

「お姉ちゃん!!」


 跳躍。

 一度の跳躍で、軽く八メートルは跳び上がった。


「なにぃ!?」

「獣人をあまりなめないほうがいいですよ!!」

「お、お覚悟を!」


 ミミがまず四発のエネルギー弾を放つ。それは見事に欲望の仮面人間(水)の体に、手に、足に命中しビート坂からバランスを崩し、水の中ではなく床へと倒れこんだ。

 やばい! とすぐ立ち上がろうとしたが遅い。


「ゲームオーバーです!!」

「み、水よ!!」

「せいやああっ!!」


 反撃とばかりに、水を操り攻撃させるがサシャーナには関係なかった。そのまま、水ごと切り裂いたからだ。

 多少濡れてしまったが、この程度ならばすぐに乾くだろう。


「水……水……水よおっ!!」

「ふいぃ。すぐに乾くと思いますが、さすがにこの季節はやばいですね……よし! 刃太郎様に温めてもらいましょう! そうしましょう!! というわけで、行きますよ! ミミ!!」

「ま、待ってー! お姉ちゃん!!」


 その後、いきなり抱きつかれたことで刃太郎も濡れてしまった。

 そして、サシャーナは思い出したのだ。

 更衣室に行けば、着替えがあったはずだと。

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