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第十九話「ショッピングモールの戦い」

「俺は欲する。強き者を」

「へぇ。お前は変態じゃないみたいだな」


 出現した欲望の仮面人間を倒し、大物のところに辿り着くと大きな剣を構え喋りだした。それは、エロ方面の欲ではなく。

 強者との対戦を望むというものだった。

 こういう大物は、普通の仮面人間とは違った欲望があるのだろうか。


「俺は欲する。貴様との戦いを!」


 ダン! と大地を蹴り、その巨体からは考えられないスピードで近づいてくる。

 振り下ろされた大剣を、俺は剣で受け止めにっと笑う。


「いいぜ。そんなに戦いたいのなら……」


 大剣を弾き、至近距離で銃を構える。


「戦ってやるよ」

「ぬっ!?」


 咄嗟に大剣で防御をしたことで、一発だけで済んだ。

 巨体のわりにいい反応速度だ。

 これは、有奈には荷が重いだろう。


「有奈! 先にショッピングモールの中に行くんだ! 俺はこいつを倒してから、後で追う!」

「わ、わかった! 気をつけてね! お兄ちゃん!!」

「心配するな。お兄ちゃんは、勇者だ!」


 先にショッピングモール内へと入っていく有奈を背に、俺は欲望の仮面人間(大)へと切りかかる。

 ここからは、ギアを二速ぐらい上げていくぞ。

 試しに、俺の魔法や魔力の篭った攻撃で仮面人間達に攻撃を加えてみた。だが、ダメージが通っているようには見えなかった。

 最初に説明されたように、こいつらにはこの剣と銃による攻撃しか効果が無い。


「ぬん!」

「残念」


 両手で思いっきり振り下ろされる大剣を背後へと回り込むことで回避。

 渾身の力を込めて、剣を振るう。


「ぐうっ!?」

「っと。さすが巨体。一撃じゃ、倒れないか」


 身体能力上げなどは、問題無い。

 このゲームは、魔力や霊力を身体能力上げや、相手の足止めにしか使えないだろう。純粋に、用意された武器で戦えってことだ。

 まるで、ゲーム世界にでもいるかのような感覚。相手の名前に体力ゲージ。ダメージを負わせる度にそれはどんどん減っていく。

 そして、倒せばそれだけポイントが入り、ボスへの道が開かれる……本当にゲームだな。こういう状況でなければ素直に楽しめるんだが。

 いや、違うな。


「お前を倒せば、何ポイントになるんだろうな?」

「俺は欲する。貴様の死を!!」


 こんな状況でも、俺は楽しんでいる。

 このゲームをクリアしなければ時は動き出さず、新年を迎えられないというのに。でも、あの帽子は言っていた。

 これはゲームだと。それに、負ける気がしない。これまで、関わってきた仲間達が一緒に戦ってくれている。皆強い人達だ。


「はっ!!」


 真正面から振り下ろされた大剣を剣で受け流し、隙だらけになった仮面に俺は銃口を突きつけた。


「終わりだ!!」


 この銃は一発一発はそこまでの力があるわけじゃない。だが、それは普通ならばの話だ。この銃の横には、威力ゲージというものがついている。

 銃のエネルギーは、十秒で一発。最大で十発まで装填できる。威力ゲージは、一から三まであり、三に上げると。


「ぐあああああっ!?」


 最大十発の銃弾を一度に消費し、太い光線のようなものを放つ。射程は、およそ三十メートル。光線の太さは約一メートルちょっとといったところか。

 さすがの巨体も、ダメージが蓄積されていたようで、最大威力の光線をくらい粒子となって四散した。

 威力ゲージを一に戻し、俺は端末を確認する。


「あいつ一体で、六ポイントか」


 現在のポイントは五十八ポイント。半分は超えた。この調子で、ショッピングモールにいる敵を倒しにいくか。


「いやぁ、アイオラスなくても相変わらず強いねぇ刃太郎は」


 のん気に俺に擦り寄ってくるフェリル。

 軽く撫でてやり、俺はショッピングモール内へと向かっていく。端末で確認した限り、コトミちゃんとコヨミが大物と遭遇しているようだ。

 有奈は、他の仮面達に囲まれている。今行くぞ、三人とも。






・・・☆・・・






「おりゃ! せりゃあ!!」

「コトミ! あんまり飛ばすとバてるよ!」

「大丈夫! 大丈夫!! これぐらいじゃ、私は疲れない! それに……私達の時間を止めたことすっごく怒ってるんだからー!」


 突如、時間が停止し、天宮家で動けたのは卓哉、イズミ、コトミ、コヨミ、サシャーナと他数名の獣っ娘達だった。

 新年を迎えた後、学校の友達やいつも世話になっている刃太郎達にあけおめの言葉を送る準備ができていた。それなのに、邪魔をされた。

 コトミは、時間を止めた者に怒っている。


「僕も怒っているけど、いつもと違った戦いだから、冷静さも大事だよ」

「むぅ……わかってるよー」


 背中合わせで武器を構え、囲んでいる仮面人間達を睨む二人。


「幼女! 幼女!!」

「獣っ娘!! ロリ!! ひゃあっ!!」

「……なんだか、戦い難い相手だね」

「なんか、呪文みたいに言葉を連呼してる……なんなんだろう、あれ」


 ある意味不気味な連中だと思いつつも、二人は用意された武器で仮面人間達をこのショッピングモールに来るまで何体も倒してきた。


「そういえば、お父さん達のほうは終わったのかな?」

「どうだろうね。二人のことだし、もう終わっていたりして」


 卓哉とイズミの二人は、逆側にある天宮遊園地へと向かっていった。そして、サシャーナは動ける獣っ娘達と共に街中の仮面人間達を。


「くっくっく。実に、実に興味をそそられる!! それほどの小さき体のどこに、そんな力があるのか。知りたい……お前達のことをもっと知りたい!!」


 そんな時だった。

 おもちゃコーナーの奥から、他の仮面人間とは明らかに違う個体が姿を現す。白衣を纏い、巨大なメスを手に持っている。

 その大きさは、まるで剣のようだ。


「わっ!? なんか、また変なのが」

「所謂、特殊個体ってところかな。他とは違うから、注意しようコトミ」

「うん!」

「さあ、お前達。あの二人を捕らえるのだ!! もちろん、手段は問わん!! 生きていればそれでいい!!」


 白衣の仮面人間の命令により、他の仮面人間達は一斉に襲い掛かってくる。


「コヨミ!」

「うん!」


 やられる前にやる。

 その勢いで、仮面人間達に詰め寄り剣を振り下ろし、銃を撃つ。次々に、倒されていく仮面人間達。それを見ていた白衣の仮面人間は。


「おお! おお!!! すごい、すごくいい!! それほどの力、余計に知りたくなった!! こうしてはいられない。私も、自ら赴くとしよう!! やはり、研究対象は己で捕まえるのが一番だ!!」


 仮面人間達を掻き分け、近寄ってくる白衣の仮面人間。

 見た目も、言動も研究者。

 それほどの戦闘力があるとは思えない。だが、油断はできない。他の仮面人間達に命令を出せるぐらいだ。他とは違った能力があると思っていいだろう。


「やられる前に!!」


 真正面から切りかかっていくコトミ。

 コヨミは、銃の威力ゲージを二にして、援護射撃を放った。


「甘い! 甘いぞ、小娘どもぉ!! 私をただの研究者だと思わないことだなぁ!!」


 威力を二まで上げているエネルギー弾二発を巨大メスで簡単に弾いてしまう。やはり、他とは違いかなり戦えるほうのようだ。


「さあ、大人しく私の研究対象として捕まれぇ!!」

「べー! だ。そんなものになんてならないもん! ちょっと、本気を出しちゃうから!!」


 刹那。

 コトミの姿が三人に分かれる。


「なあっ!?」


 一瞬の出来事に、体が硬直してしまう。それを見逃さず、三人のコトミは一斉に切りかかった。


「どうだぁ!」

「ぐ、あぁ……なかなか、面白い。まずます興味をそそられてしまうじゃないかぁ」

「あれ? 倒れてない」


 三人で切ったはずなのに、まだ消えていないことにコトミは首を傾げる。


「分身しても、この武器の威力はひとつ分ってことなのかな……」

「では、一時退散するとしよう。だが、お前達を諦めたわけじゃない! 必ず、戻ってきて!」

「そい」


 捨て台詞を言っている最中だった。

 白衣の仮面人間の目の前に有奈を抱えた刃太郎が落ちてきた。そして、有奈がそのまま剣で最後の一撃を与え。


「ああああっ!? そんな馬鹿なあああああっ!?」


 粒子となって四散してしまう。


「言っただろ? コトミ。油断するなって」

「刃太郎お兄ちゃん! 有奈お姉ちゃん!!」

「ふう……もうお兄ちゃん。寿命が縮むところだったよ、さっきの」

「あははは、すまんすまん」

「助かったよ、二人とも。でも、驚いたな。まさか有奈が動けているなんて」

「それに関しては、後で説明する。とりあえず、今は」


 周りにはまだ数体もの仮面人間達が残っている。コヨミはそうだね、と頷き武器を構えた。


「突撃ぃ!!」


 コトミの掛け声で、刃太郎達は動き出し、あっという間にショッピングモールにいる仮面人間達を倒した。

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