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第十六話「新年を迎えるために」

「ゲーム、だと?」


 そいつは、突如としてテレビの中に現れた。

 帽子を深々と被っており、顔は見えない。

 これもボイスチェンジャーで変えているようだ。ただ、只者ではないのは確かだ。時を止め、テレビをジャック。

 そして、選ばれし諸君、ということはもしかしたら俺達以外にも動ける者達がいるかもしれない。


「なにが選ばれし諸君よ! 偉そうに!! あんた、一度オージオ様に負けるんでしょ!?」


 体の痛みに堪えながらも、リフィルは叫ぶ。

 オージオに? この帽子がか。


「あなたの仲間は私達が倒したのです。助けは来ないのですよ」


 やっぱり、こんなにボロボロだったのは戦っていたからだったのか。しかし、この数ヶ月かなり平和な暮らしをしていたとはいえ、これほどまでにやられるとは。

 この帽子の仲間はかなりのやり手みたいだな。

 そもそもオージオに挑むだけで、かなりの強さ、そして度胸がある。


『そんなものは関係ない。僕は、ただゲームをやりたいだけだ』

「よほどのゲーム好きってことね……敵じゃなければ、仲良くできたんでしょうに。だったら、さっさとゲーム内容とルールを説明しないさいよ! 負け犬!! いたたっ……」


 まったくまだ完全に傷が癒えていないのに叫ぶから。

 仲間がやられた。

 助けが来ない。

 それなのに、これだけ冷静にいられると言うことは……これから発表されるゲームとやらは相当難しく負けない自信があるのか。


『ルールは簡単。これから、君達が住んでいる街は、バトルフィールドとなる。そこに出現する敵を専用の武器で倒し、ポイントを稼いで、僕の元へ辿り着く。これだけだ。簡単だろ?』

「つまり、お前のところに行くには敵を倒すことで得られるポイントが必要ってことか」

『そうなる。今から君達のところに、必要な道具を送る。それを装備し、必要ポイントを稼いで、僕の元へ来てくれ。……さあ、準備はいいか? ゲームをクリアしないと君達には永遠に新年はやってこないと思ってくれ』


 それは困る。

 だが、こいつには感謝しないとな。こいつが時間を止めてくれたおかげで、ニィともリフィルとも一緒に新年を迎えれそうだ。

 一度オージオに負けているっていうなら……これがゲームだって言うなら。


「クリアしてやるよ。オージオに認められし、勇者刃太郎と仲間達がな!」

『……それは楽しみだ。では、ゲームをスタートしよう!! 健闘を祈っている!!』


 その言葉を最後にぷつんっとテレビは消え、俺達の近くの空間が歪む。

 そこから現れたのは、大き目の箱。


「も、もしかしてこの箱の中にゲームに必要な道具が?」

「おそらくな」


 俺が率先して箱へと近づき、開けて中身を確認する。

 入っていたのは、二人分の道具。

 ひとつは刀と銃。

 もうひとつは、スマホぐらいの大きさはある端末。二人分ってことは、俺と。


「私、みたいだね」

「やっぱり神様達は参加不可能ってことか」

「まあ、そのための足止めだったんだろうし。予想はしていたわ」

「お願いなのです、二人とも……」


 それは言われなくても。

 ただ、その前に少し気になっていることがある。それは、舞香さんの時間が停止しているのに、どうして有奈は停止していないのか、だ。

 選ばれし諸君と言っていたが、それはいったいどういう基準で選ばれたのか。

 若さ? いや、違う。

 経験? いやそれも違うような気がする。


「どうして、私なんだろうね」

「それは、有奈に神力が宿っているからなのです」

「はあっ!?」


 俺は思わず、声を上げてしまった。


「有奈に神力が? どういうことなんだ! ニィ!!」


 世界がかかっているゲームの最中に、衝撃な事実が発覚。

 当の本人は……それほど驚いていない。

 やっぱりそういうことなんだ、という風な反応だ。まさか、有奈自身は、自分に神力があることを理解していたのか?

 神々の力は、簡単に感じることはできない。神々達が、わかるようにしないとただの人のように見えてしまう。それほど特殊な力なのだ神力とは。

 それは、有奈に……。


「私も、感じてはいたのです。でも、すごく微量だったので、気のせいだと思っていた。でも、今確信したのです。有奈は、神力を保持していると」

「たぶん、異世界交流バトルが原因でしょうね」


 俺もそれが原因だと思っていた。

 そう、有奈に神力が宿るとしたら……やっぱり。


「【聖鎧の指輪】か。確かに、あれは一般人には使えないのを、持ち主である俺が無理やり許可して使用できるようにしたけど……まさか、そんな」


 これで、有奈は普通の人間じゃなくなってしまった。

 今保持している神力は微量なものだろうが、これから成長するごとに量も増えていくだろう。そうなると、体にも影響が……ま、待てよ。

 有奈がこうなっているってことは。


「電話?」


 嫌な予感がしていた。そんな時、俺のスマホに電話がかかってくる。相手は……リリーだった。俺は、静かに通話ボタンを押してスマホを耳に近づけた。


「もしもし? リリー。お前も動けるんだな」

『よ、よかったぁ……いえ、刃太郎さんなら必ず動いていると思っていましたけど。あ、華燐もどうやら動けるようなんです。でも、あたしの家族は』


 そうか、華燐もやっぱり。

 ということは鳳堂家の人達も、無事だろうな。それを考えると天宮家の皆も。当然ロッサも無事だろうな。今頃、テレビに出てきた奴にふざけるな!! と言いつつ送られてきた武器を手にさっそく外へ向かっている、まで予想できた。


「リリー。大事な話だ」

『……は、はい』

「お前も、神力を持っているんだな?」

『……はい』


 やっぱりか。

 リリーの場合は【風神の腕輪】だろうな。どっちも神聖具。そして、リリーの場合は、兆しがあったんだ。それは、加護が切れた後にリリーが生み出した風。

 当然加護を受ける時間は過ぎていた。

 リリーに魔法が使えるはずがない。

 それなのに、リリーの足には風が纏っていた。


「お、お兄ちゃん。その私達も隠していたのは、悪かったって思ってるよ。でも」

『ちょっとだけ成長してからお知らせしようと思っていまして……だからその』

「別に怒っているわけじゃないないって。それに、お前達をそんな風にしたのは俺の責任だ。謝るのは俺のほうだ。ごめん……」

『……いえ、謝らなくてもいいですよ』

「え?」

『だって、これで刃太郎さん達と同じ土俵に立てるんですもん。いつも一緒だったけど、なんだか自分達は蚊帳の外だなぁっとは思っていたんです。だから、この力が自分に宿った時は本当に嬉しかったんです!!』


 嬉しかった? だが、神力は普通の力じゃない。

 魔力と違って、体に絶対影響を及ぼす。

 そう、このまま成長すれば人間じゃなくなってしまうことだって……可能性は高い。


「お兄ちゃん。今は、後悔するよりも今を見詰めようよ。それに逆にこう考えよう! この力が宿ったおかげでゲームをやる人数が増えたって!」


 有奈は、箱に入っている端末をポケットに仕舞い、剣と銃を手に持った。

 ……本当に、成長したっていうか。変わったな有奈は。

 もちろん良い方向に。

 そうだな。今は、過去にやってしまったことを後悔するよりも今を見詰め前に進む。後のことは、それから考える。

 今は。


「よし! 皆で、ゲームをクリアして新年を迎えるぞ!! リリー、お前もいいな?」

『はい!! もちろんです!! もう準備は万端!! 武器を持って家の外に出ています!!』

「了解。でも、今からそっちに合流する。一人で勝手に動かないように。神力があるとはいえ、まだ普通の人間と変わらないんだからな」

『わかっています。では、家の前で待っていますね』

「ああ」


 通話を切って、俺は端末をポケットに入れ剣と銃を手に持つ。思っていたよりも軽いな。本物、のように見えるが素材は軽めのものを使っているようだな。


「ニィ、リフィル。それじゃ、行ってくる」

「二人は、ゆっくり傷を癒しておいて下さい」

「リリーのところになら、私が送るのです」


 そう言って、次元ホールを出現させた。

 だが、若干小さい。

 それだけ消耗しているということだろう。今は、これが精一杯。最後の力を振り絞って……。


「ありがとう、ニィ」

「えへへ。頭を撫でてくれるなんて、珍しいのです」

「たまにはな。それじゃ、リフィルも無茶しないで大人しくしていろよ」

「わかってるわよ……絶対、クリアするのよ。じゃないと、年末年始のイベントできなくなっちゃうんだからね」

「はいよ」


 さあて、俺達から新年を奪う敵を皆で倒すとしますか。

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