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第十四話「今年も後」

「四です! 一、二、三……ハッ!? ひゃうわぁっ!? アカウントが乗っ取られて炎上してしまいましたぁ!?」

「ええぇ……」


 クリスマスも終わり現在は十二月二十八日。

 今年も後三日といったところまで迫っていた。

 そんな中、冬休みに入った有奈達と共にコトミちゃんの部屋に遊びに来ていた。そこで、リリーが獲得した俺のプレゼント。

 つまり、人生ゲームで遊んでいた。

 最近の人生ゲームというのは、どんなものなのか。興味本位……いや、皆で楽しめるものを選んだ。しかし、やってみるとこれは予想以上に、すごくなっている。


「だ、大丈夫だよ! サシャーナ!! まだまだ取り返せる! はず」

「はず!? むむむ……次は、有奈様です!」


 アカウントが乗っ取られそれを使い誰かが問題を起こし、知らぬ間に炎上。そんなありそうなリアルなことが起こったことにより、次のプレイヤーである有奈は緊張した表情をしている。


「えい!」


 中央でくるくると回るルーレット。

 止まった数字は。


「五だね。一、二、三、四……よ、よかった。営業で大活躍、給料がアップ!!」


 どうやら、有奈には危機は及ばなかった模様。

 そして、次のプレイヤーであるコトミちゃんだが。

 ルーレットで止まった数字は、三。

 その先には……ゴールが。そう、コトミちゃんは俺達よりも人生勝ち組な感じに進み、順調にゴールに迫っていたのだ。


「やったー!! ゴール!!!」

「うーん。やっぱり、コトミちゃんが一着かぁ。予想通りというか、なんというか」

「一人だけ、すごい勝ち組コースだったもんね」


 コトミちゃんがゴールしたことで、一段落。 

 しばらく休憩を取ることになり、最近の人生ゲームの凄さに疲れ果てたのか。一同、若干ぐったりである。


「す、すまん……まさか、ここまでのものだったなんて」


 俺はまず謝罪を入れた。

 こんなゲームを買ったのは俺だから。しかし、リリーは首を全力で横に振る。


「そ、そんな謝らないでください! 持ってきて、やろうって提案したのはあたしなんですし。それに、刃太郎さんは皆で楽しもうって思って買ったんですよね?」

「まあ、うん」

「確かに、疲れちゃいましたけど。あたしは楽しめました!」

「私もだよ、お兄ちゃん。なんていうか、今後の身の振り方の勉強になったっていうか」

「うん。こんな風にならないように頑張ろうって思ったかな」


 確かに、あんな人生絶対送りたくないって思った。

 人生ゲームというのは、そういうリアルでこうはなりたくないということを教えるゲームでもあるんだなって初めてプレイしたが。

 そう思ったよ。コトミちゃんは、リアルでもゲームでも勝ち組だったけど。それに大してサシャーナさんは……。


「刃太郎様ぁ……! 私はもうだめだめですぅ! 人生負け組なんですぅ……!!」

「何を言っているんですか、サシャーナさん。あなたは、リアルでは勝ち組ですよ。天宮卓哉さんの秘書なんですから」


 ゲームではボロボロだったサシャーナさんは、俺に絡みつくようにくっ付き泣いている。

 まあ負け組だったのはゲームだけ。

 リアルでは十分な勝ち組だろう。

 社長秘書なんて、そうなれるものじゃないからな。


「あっ、話は変わりますが。皆さんは、年末年始はどうお過ごしになるおつもりですか?」


 切り替えが早いな。

 年末年始か……いつも通りなら、家族と一緒に年を越して、家族と一緒に年を始めるかな。じいちゃん達のところにも帰るだろうし。

 帰るとしたら、年を越してからかな。


「あたしは、普通に家族と過ごす、かな。でも、来年になったら皆で集まって大きなことをまたやりたいなぁって」

「私も家族と過ごす、かな。もしかしたら、依頼の途中で年を越してしまうってこともありそうだけど。昔は何度かそういうことあったから」


 リリーは普通だが、華燐はちょっと特殊かな。

 やっぱりクリスマスとはまた違った感じに、霊達が活発になるんだろうか年末年始は。

 もしかしたら、また手伝うことになるかな。


「私も家族と過ごす! 今年は、コヨミがいるからもっと楽しくなるよ!」

「前まで、コトミの中でしか越さなかったけど。今年からは一緒だね」

「一緒だね~」


 天宮家の皆も家族と。

 まあほとんどが家族と過ごすよな。俺が異世界へ行くまでは、年を越したら一斉にクラスメイトから明けましておめでとうのメールが届いたっけ。

 今年は、LINKから一斉に届くんだろうな。あの時とは比べ物にならないぐらい知り合いが増えたから、とんでない数になりそうだ。


「ふっ。我は、またあのちびっ子神が何かをするんじゃないかと期待してやっている」

「いや、さすがにクリスマスをやってから一週間ちょっとじゃ、準備とか考える時間もないんじゃ……」


 と思いつつも、皆どこかでニィならばやりかねないと思ってしまっている模様。

 ロッサは、騒ぐの好きというか。

 単純に、それに出てくる料理が目当てなんだろうけど。


「おっ、噂をすればって感じだな。ちょっと電話してくる」


 ニィから電話がかかってきたので、俺はコトミちゃんの部屋から出て行き少し離れたところ。階段付近で通話ボタンを押し耳に当てる。


「もしもし? どうしたんだ」

『はい。実は、オージオ様にヴィスターラへ帰ってくるように言われたので、しばらく家を空けてしまうのです』

「また何かあっちであったのか?」


 年末年始前のこのタイミングで……あっちは確か現在夏真っ盛りだったな。


『まだ詳細なことは聞いていないのです。ただ、年末頃には帰ると思うのです。刃くん達と一緒に年越しうどんを食べたいのです!』

「あははは。それは、早く戻らないとだな。リフィルは?」

『リフィルも戻ることになったのです。とてもめんどくさがっていますが』


 リフィルも召集するってことは、やっぱり何かがあったんだな。こっちは年末年始近く。何もなければいんだけど。


「わかった。有奈達にもそう言っておく」

『よろしくなのです。絶対年末には戻ってくるのですー!! リフィル!! さあ、いつまでもぐだぐだ言っていないで行くのですよ!!』

『えぇ……めんどくさぁーい。あ、いえ! なんでもないです! だから、その縄は』


 リフィルの悲鳴が聞こえたような気がしたが、通話は途中で切れてしまった。まるで、ドラマで出てくるシーンみたいに。

 今月は平和に過ごせるって思っていたけど。

 少し不安になってきたな。

 警戒はしておいたほうがよさそうだな……電話を終わった俺はポケットにスマホを仕舞い、皆の下へと帰っていく。


「あ、お帰りなさいお兄ちゃん。ニィはなんて?」

「ああ。どうやら、リフィルと一緒に一度ヴィスターラに帰るらしいんだ。でも、年末には絶対戻ってくるって言っていたな」

「なんだか、久しぶりにヴィスターラに戻るよね、ニィ達」

「うん。なんだかんだで、最初からこっちにいたみたいに馴染んでいたから、改めてヴィスターラの神様だって気づかされたかも」


 華燐の言うとおり、ニィとリフィル、それにロッサはこっちに馴染み過ぎた。それは、別に悪いことじゃない。むしろ良いことだ。


「では、休憩もここまでにして。人生ゲームを再開するぞ! 次こそは我が人生勝ち組となり、一着でゴールしてやろう!!」

「私だって、次も一着でゴールしてやるぞー!!」


 日常がかなり変わってしまったが、俺も皆も楽しんでいる。

 だから、あいつらにも感謝している。

 だから、年末年始もあいつらと過ごしたいそう思っている。

リアルではまだ二ヶ月ちょっとありますが、今年ももうちょっとで終わりですね……。

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