第十二話「雪の中のサンタさん?」
クリスマスパーティーは、盛り上がっている。
ハロウィンとは違いなんだかゆったりとまったりとしていた。どうやら、テレビゲームもあるらしく、コトミちゃんやコヨミ、ロッサは最新作のゲームを笑顔でやっていた。
そこに、一人だけ大人が混ざっているけど。
いや、ロッサも実年齢的には大人だけどな。
「甘い! 甘いわよ!! 今食べている特製ケーキ以上に甘いわよぉ!!」
「あわわっ!? こ、コヨミ! ヘルプぅ!?」
「任せて!! と言いたいところだけど、こっちもちょっとやばいかも!」
「ふははは!! 慣れてきた! 慣れてきたぞ!! やはり我には才能があるようだな!!」
「お、おお……これが、戦争!?」
本当に楽しそうだな、あそこは。
ちなみにやっているのは、サバイバル系のゲームだ。銃やナイフなど色んな武器を駆使し制限時間内にどれほど相手を倒せるか。
シリーズもので、もう五作品目にもなるが、かなりの人気を誇っている。リフィルは、かなりやり込んでいるようで。子供だろうと、初心者だろうと容赦が無い。
というか、千歳ちゃんの教育に悪いような……いや、あの親だからなぁ。このメンバーに関わっている時点でもう。
「ふう……なんだか、すごくまったりできるな。今回の会場は」
「これも神様の力、というやつなのかな?」
「そうとしか思えませんな。出なければ、俺の熱き心がここまで静まっているの珍しい」
「せっかくのクリスマスなのですから。これぐらいのまったりな雰囲気が私は好きですね」
各お家の大人達が、酒を酌み合いながらとてもまったりと過ごしている。舞香さんは、前回のことを反省しているのか酒を控えているようだ。
俺的にこういう場だからこそ、普段飲まない酒を飲んでもいいと思っているんだが。
そんな舞香さんを気遣って、山下夫婦もジュースで我慢している模様。
「昨日のイヴが嘘みたいな静けさだね。クリスマスは」
「うん。私はてっきりハロウィンの時のように騒がしくなると思っていたんだけど」
「あ、刃太郎さん。ジュースのおかわり如何ですか?」
「悪いな。頼む」
学生組も大人達のようにまったりとしている。テーブルは、主に四つに分けられており、大人組と学生組に子供組。
そして、色々組だ。
そこでは、雪音さん、駿さんに光汰など色んな年齢の者達が席に座っている。俺は、学生組と言うよりも色々組に入るんじゃないか? と思ったんだが、響に助けを求められガードマンをすることになった。
すぐ隣の端っこ。
そこで雪音さんは俺のことを敵のように睨んでいる。
「はあ……この空間のせいなのか。雪音もなんだかいつもより大人しいけど。ここから出たらどうなるか……」
「ちゃんと話し合えば、襲われることはないんじゃないか?」
ガクブルな響に対して、俺はそう言うが。
「もう十分話しあったすよ。でも、雪音の奴は、全然言うことを聞かないんす……」
「でも、基本的に雪音さんは鳳堂家では人気なんですよ。家事全般も徐々にこなせるようになっていって。元からそういう才能があったからなのかもしれませんが。お手伝いさん達も、とても喜んでいました」
と、華燐が雪音さんのフォローを入れるが。
「違うぜ、華燐姉ちゃん。あいつは、そうやって信用を得て鳳堂を乗っ取るつもりなんだ。内側から崩して、俺を……!」
これは、重症だ。
完全に、虐待を受けたみたいに雪音さんを恐怖にしか思っていない。雪音さんは、雪音さんで響に振り向いて欲しい一心なんだろうけど。
この二人の関係は、今後どうなるんだろうな……。
「負けたぁ!!」
「あたしに勝とうなんて一億万年早いわね!!」
「むぅ……あっ! じゃあ、次は雪合戦で勝負だ!!」
「雪合戦か。ふっ、いいだろう。この日のために、雪山で鍛えた技を見せてやろう!!」
お前は、本当に真面目っていうか。よくわからない努力をするやつだな。
どうやら、ゲームの決着がついたようで。
次は雪合戦で勝負をしようとコトミちゃんが言い出す。まあ、確かにせっかく雪が積もっているわけだし、今の時期にぴったりな勝負事だろうな。
しかし、外に出たくないリフィルはあからさまに嫌そうな顔をして視線をテレビに向ける。
「あ、そういうのはいいわ。あたしは、ここでゲームをしているから。あんた達だけで、やってきなさい」
「だめだよ。勝ち逃げは許さないから」
と、コヨミがリフィルの右側を掴み。
「神が逃げ腰か? それでは、上に立つ者として示しがつかぬぞ」
残った左側をロッサが掴み、完全に連行されるかのような格好になる。
「さあ!! 外で雪合戦だ!!!」
「おお!!」
千歳ちゃんもやる気のようで、元気に外へと出て行く。
「や、止めなさい!! あたしは外になんて出たくないわ!! 待ちなさいって!! せめて、着替えさせてよぉ!!!」
とても寒そうなサンタコスのままリフィルは外へと強制的に連れて行かれた。たまには、外で動くのもいいものだぞ、リフィル。
「雪合戦かぁ。そういえば、子供の頃にはよくやっていたけど。今は全然やっていないっけ」
大きな窓から子供達が楽しそうに雪合戦をしている光景を見て、リリーが呟く。そういえば、俺も中学二年生ぐらいまでは、普通に雪合戦をやっていたけど。
そこからやった記憶はないな。
「私達は、中学生になってからはやると言っても、雪で何かを作るだけだったからね」
「大きくなっていくと、そういうこともやらなくなって。家とかどこかの店でって感じだし」
「……おし。それじゃ、俺達も参加するか。雪合戦」
俺は、立ち上がりどうだ? と有奈達を見渡す。すると、一斉に立ち上がり気合いが入った表情で頷いた。
「おし、それじゃあ。しっかりと防寒着を身につけて外に出るぞ!」
「そういうことなら、これを着るのです!」
パチン! とニィが指を擦るとそれぞれの体に防寒着が。さすが神様。用意がよくて助かる。もう一度気合い入れたところで、俺達は一斉に外へと駆け出していく。
今まで、温かいところに居たために、外の寒さは防寒着を着ているとはいえかなりきつい。しかし、動いている内にそれも気にならないはずだ。
さっそく雪玉作って……と思ったのだが。視線の先には、コトミちゃん達がとある場所で固まってしゃがんでいる。
どうしたんだろう? と俺達は近づいていく。
「コトミちゃん。どうしたんだ?」
「あっ。刃太郎お兄ちゃん。実はね、おじいちゃんが倒れているの」
「おじいちゃん?」
どういうことだと、覗いてみると。
「おーい。爺さん、生きてるー?」
「ど、どうしたんでしょう? もしかして生き倒れ!?」
「……生命は感じるから、生きてはいるみたいだけど」
確かに、お爺さんが倒れていた。しかも、なんという特徴的な格好だろうか。赤い服にズボン、帽子。それに白く長い髭を生やしている。
もうなんていうか、あの人ですよね。
「な、なんでサンタさんが?」
「コスプレ、だよね。あ、でもここってそう簡単に来れるような場所じゃないし。このお爺さんは、どうやって」
「か、考えるのは後だよ! 早くお爺さんを家の中に連れて行かないと!」
確かにそうだ。
有奈の言葉に、俺は倒れているサンタコスのお爺さんを背負う。うおっ!? 結構重いぞ、このお爺さん。見た目はちょっと太っているが、見た目以上の重量だ。
それにしても、華燐の言うとおり、このお爺さんは何者なんだ? この空間に来るには普通の人間には無理なはずだが……。




