第六話「除霊完了」
現在、この作品に大きくかかわる話を書いています。
まあぶっちゃけ、刃太郎の異世界での話です。
しかし、ちょっとびびって短編で投稿しようと考えています。近日投稿! ということで、以上報告でした。
「くそぉ!! くそぉ!!! リア充なんで爆発すればいいんだぁ!!!」
「てめぇらに楽しい聖夜なんて過ごさせねぇぞ!!!」
「鬱陶しい」
魂の叫びを大空洞中に響かせる魂達を、ロッサは冷たい一言を浴びせ、消滅させた。除霊が開始されてから、もう十分ぐらいは経っている。
大分減ったように見えるが、勢いはまだまだ凄まじいものだ。
仮にも、この一年間で集められた怨念だ。
そう簡単に全てを除霊できるはずがない。
「あー!? うらやましい!! 家族と一緒に!! 友達と一緒に楽しくしている奴らが羨ましいぃ!!!」
「そう思うなら自分から積極的にいけよ」
「それが出来たら苦労しないわぁ!!! って、ぎゃあああ!?」
ちなみに、怨念と言って死した者達の者だけではない。生きた者達の不の感情なども多く含まれているので、これだけの量になっているらしい。
まあ、大半は生きている者達のものが多いらしいが。
「刃太郎よ! 貴様は何体倒した! 我か? 我はすでに四十もの霊を倒したぞ!!」
「そうかそうか」
と、言いながら、俺は近くにいた怨念を魔力を帯びた人差し指で弾いた。
それを見て、ロッサはぷふっと吹いてしまう。
「ふはははは!! なんだ、その貧弱な攻撃は? それでは、ろくに倒せてはいないであろうな」
本当、元気な奴だな。
腹を抱えてすでに勝ち誇っている慢心な魔帝さんに俺は教えるべく、弾いたさっきの怨念を指差した。なんだ? と視線を送ると。
「ぎゃっ!?」
「ふぎゃっ!?」
「うわああ!?」
「な!? 霊どもが、どんどん連鎖し、消滅していく……だと?」
最初の一体から次々に連鎖し、一発で十体もの怨念を除霊完了。驚いているロッサを見て、俺は薄く笑いながらちなみにと切り出し。
「俺は、もう六十体もの怨念を除霊している。ま、頑張れよ魔帝さん」
「ぐぬぬ……! 見ていろ!! その程度の数、すぐに追い抜いてやるわ!! 勝ち誇るのはまだ早いぞ勇者よ!!!」
扱いやすい奴だ。
だが、これで奴も更にやる気になって怨念を除霊するはずだろう。響も順調に除霊をしているようだし、他の人達も大丈夫だな。
隆造さん達のほうも心配はないだろうけど。
この仕事を毎年やっているのか。
なんというか。
「あら、いい男じゃない。ねえ、お姉さんと楽しい聖夜を過ごさない?」
「すみません。先約があるので」
「それじゃあ、お姉さんとどう? いい夢を見させてあげるわよ?」
「いや、あなた男でしょ」
これ、怨念ばかりじゃないな。なんか生霊みたいなのも混ざってないか? ただ除霊するだけならともかくとして大空洞中には、魂の叫びや俺達を聖夜に誘うような声が飛び交っている。
中には、ものすごく悩んでいる人もいたり。
さっきも言ったが、ここには怨念だけではなく生霊のようなものも混ざっている。だから、おそらくだが独身の人がちょっと美人な生霊を見つけて、誘惑される。
生霊ならば、生きている人間。つまり、どこかに本人がいる。これはリア充になるチャンスなのでは? と本当に真剣に悩んでいるんだ。
しかし、すでにリア充の人達や、そんなもの気にしていない人達は、これは仕事だぞ! 気をしっかり持て!! と容赦なく除霊していく。
ちなみに、除霊にも二種類あるらしく。
怨念。つまり、害をなす霊には攻撃的な除霊方。そして、害をなさない生霊のような存在には元の体に戻るような導きの除霊をする。
俺達はそんな高等技術は持ち合わせていないので、怨念達だけの除霊をしている。一応、ロッサに怨念だけをって言っておいたけど、大丈夫だろうか。
「う、うわあああ!? な、なんだこいつはぁ!?」
除霊は順調に進み、このまま仕事は終わるかと思っていた。
しかし、大空洞奥から響き渡る悲鳴。
それと同時に、ここにいる怨念とは比べ物にならないぐらいの力を感じ取った。これは、大物が出てきたようだな。
「刃太郎さん! この気配は」
「ああ。大物が出てきたようだな」
悲鳴に誘われるように、俺は体が動いていた。それは、他の者達も同じだった。響や、そしてロッサまでもが俺と平行して走っている。
まあこいつの場合は、助けにいくというよりも。
「大物か! どちらが先に倒せるか勝負といこうではないか!!」
やっぱりな。とりあえず、こいつは無視するとして。
悲鳴はこの先から。
この大空洞は、かなりの洞窟がある。その洞窟ひとつひとつに怨念達が潜んでおり、一箇所の除霊にも時間がかかる。
「刃太郎さん! あれは!!」
「思っていたより大きいな」
辿り着いたところには、少し広い空間だった。
そこには、とても不気味な球体があった。
人の顔が、いくつも集合しておりおー! おー! と声を上げている。怨念ボールってところか。
「どうやら、ここは霊石のある場所らしいな。つまり」
「こいつがラスボスか。姿形だけなら、百年満点をやってやりたいほど不気味よな」
怨念ボールの背後には、青白く輝く霊石があった。
あれが、この大空洞に怨念を集めている。
それが集まり、こんな球体になったと。
「そんじゃ、そのラスボスを倒すとするか。こいつを倒せば、少しは怨念達も大人しくなるだろ!」
「そうっすね。親父達はまだ来ていないようですし、俺達だけでやってやりましょう!」
「ふん。こんな球体など我だけで十分だ!!」
そう言って、出力を上げた魔法を解き放とうとするので、俺はその魔法陣を発動する前に叩き割った。
「なっ!? 貴様ぁ! なにをする!?」
「出力が高過ぎるんだよ。大空洞を破壊するつもりか」
さっきのは、闇属性魔法の中級に属する魔法。名前をダーク・ライザー。簡単に言えば、闇の力を刃と変えて両断する魔法だ。
しかし、中級と言っても使う奴が使う奴なので威力は上級に匹敵する。もしあのまま放っていれば、確実に怨念ボールは倒せていただろうが。
下手をすれば大空洞は崩れ、今後ここに怨念達を集めれなくなってしまう可能性があった。
「ならば、貴様はどうすると言うのだ」
「俺か? そうだな……うん」
ロッサに言われ俺はゆっくりと怨念ボールへと近づいていく。その間も、俺を近づけまいと怨念で攻撃をしてくるが、魔力による障壁で弾いていく。
そして、目の前まで来た俺は指先に魔力を収束させ、つんっと怨念ボールを突付く。
「これでいいだろ」
「い、いやいや! 刃太郎さん! それじゃさすがに」
しかし、怨念ボールは突如として挙動がおかしくなり、徐々に中心部から光が満ちていき……パン! と風船のように弾けた。
残った怨念も、魔力の光により自然と消滅していく。
「な? 大丈夫だったろ」
「は、はいっす」
「ふん。勇者にしては、えげつない攻撃だ。内部破壊とは」
「破壊したんじゃなくて、浄化したんだよ。人聞きの悪いことを言うな。ほら、まだ怨念達は残っているんだ。まだ気を抜くんじゃないぞ」
その後、無事に除霊は完了し集まった霊能力者達や陰陽師達は、やりきった! という清々しい表情をしていた。
これで、家族と友達とクリスマスを過ごせると。
「よう! そっちは大変だったようだな! 霊石のほうに大物が出たんだろ?」
「まあな。けど、刃太郎さんが一撃で除霊しちまったぜ。いやぁ、親父達にも見せてやりたかったぜ! あの圧倒的な強さを!!」
大空洞からはもう出て、現在はお疲れ様モード。
すでに、帰っていく者達もいるようだが。まだ残って後処理などをしている者達もいる。俺達は後者のほうだな。
「まあ、そっちには刃太郎さんがいるから心配はないって思っていたけど」
「ものすごい力を感じたのに、一撃なんて。す、すごいね刃太郎くん」
「俺もクリスマス、楽しみにしていますからね。そういえば、皆も誘われているんですよね? ニィ主催のクリスマスパーティーに」
問いかけると、もちろん! と頷いた。
「ハロウィンパーティーもすごかったからなぁ。クリスマスも楽しみでしょうがない!!」
「けど、大丈夫なんすか? この前みたいに、いきなり空間ごと消滅とかってことは」
やっぱり、そこを心配しているみたいだな。俺も、そう思ってニィに聞いたところ今回は、そんな失敗はしないのです! と断言してくれた。
それを伝えると、とりあえずは一安心してくれたようだ。
「それじゃあ、クリスマス当日。楽しみにしているぞ。そして、今日はありがとう。お疲れ様だ!!!」
クリスマスまで後一週間。
どんなパーティーになるのか。あ、その前にプレゼントだな。まあそこは、リリーと一緒に買いに行くから問題はないかな。




