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第五話「聖夜を護るため」

「いやぁ、すまんな刃太郎くん。俺達の仕事を手伝わせるようなことをして」

「いえ。俺も、華燐達にはお世話になっていますし。これぐらいのことなら、どうってことはないですよ」


 クリスマスも後一週間という時だ。

 華燐を伝わって、隆造さんから俺に依頼が来た。それは、鳳堂家だけではなく他の霊能力社達や陰陽師達が毎年参加するもので、本来ならば俺に頼むほどではないようなのだが。

 やはり、今年は何かがあるかのようにものすごい勢いとものすごい強さがあるらしく、一人でも力のある者の協力が必要と判断したらしい。


 ちなみに、その依頼の内容なんだが。


「それにしても、随分と遠い場所に来ましたね」


 俺達が訪れた場所は、電車で二時間ほどのところで。

 ほとんど人気のない山中。

 当然、俺以外に御夜さんや華燐、響も参加している。


「ああ。ここは、俺達にとっては有名な場所でな。霊などがよく集まる霊山なんだ。それで、この先にある大空洞。そこには、とある霊石があるんだが……」


 空を見上げると、黒い靄が青々とした空を覆っているのがわかる。普通の人には見えないのだろうが……あれが、怨念か。


「その霊石には、日本中の不の念が集められるんだ。ただ、日本中ということで、集め切れないのが難点。しかも、こういう時期が近づくとその怨念は膨大なまでに膨れ上がるから厄介だ」

「それって……あれですか? クリスマスが近いからとか」

「その通りだ! おそらく、怨念達は楽しい楽しい聖夜を過ごしたいが過ごせない。羨ましい、笑顔で過ごしているのが! その他にも、独身男性、独身女性達が、その日にはしゃぐリア充達を呪い殺さんとばかりに……! っと、そうこう言っているうちに目的地に到着したみたいだな」


 うん、まあ大体わかった。

 つまり、この先にある霊石には悲しき者達が集まっており、クリスマスという一大イベントを邪魔すべく力を高めている。

 それを隆造さん達霊能力者達や陰陽師達が毎年護らんとここに来ている、と。


「おお! 鳳堂家が来たぞ!」

「今年は、かなりの怨念だぞ。気を抜くなよ! お前達!!」

「任せてください! 今年のクリスマスも家族と楽しむためここで大仕事を片付けたいですからね!!」

「おや? そちらの少年は……まさか噂の?」


 大空洞に入っていくと、すでに他の霊能力者達や陰陽師達が集まっていた。やはり、鳳堂家はかなりの人気らしく入る大歓迎の嵐だ。

 そこで、鳳堂ではない俺に視線が集まる。やっぱり、噂になっているのか。まあ、あれだけのことをすればな……。

 鳳堂に封印されたいた悪鬼に加えて、温泉旅行先での事件。


「ああ。今年は、お前達もわかっての通り。怨念がかなり強大だ! だが、ここに最強の助っ人が居る!! 今年は、もしかしたら俺達の出番はないかもしれないぞ!!」

「はっはっは!! それは困るな。どれ、俺達も負けずに頑張るとするか!」

「まだまだ若い者には遅れはとらんぞ!!」


 元気のいい人達だな。

 でも、この明るさは好きだ。なんだかこっちも元気に……ん? あれ、なんだか見覚えのある気配。

 奥に進んでいくと、見覚えのある後ろ姿。


「あれ? 刃太郎さん。あの後ろ姿」

「なんだか見覚えがあるな」


 銀色のツインテールを揺らし、周りを見渡していた。そして、俺に気づくと真っ直ぐこっちに駆け寄ってくる。


「なんでお前がここにいるんだよ」

「うむ。暇だったのでな。次元ホールでぶらりと旅をしていた途中。なにやら人がこの洞窟に集まっていくではないか。何かの祭があると思って入ってきたのだが……どこにも屋台がないぞ」


 いや、あるわけないだろ。

 突っ込みどころが満載な魔帝さんに呆れながら、俺が言葉を続ける。


「あのな。お前には、この怨念が見えないのか? ここはそういう楽しいところじゃないんだよ」

「見えているに決まっているだろ。第一、こんな奴らなど我にとっては雑魚当然。気にするまでもない」


 さようですか。


「皆さん!! そろそろ除霊を開始します!! こちらに集まってください!!」


 おっと、そうこうしているうちにどうやら始まるらしいな。俺達以外は次々に集まっていく。俺達も遅れないようにしないとな。


「それじゃあな。俺達は仕事があるから。お前は大人しく帰っておでんでも食べてろ」

「おでんなら、ここに来る間に食べたぞ」


 はいはい。そんなロッサのことを無視して俺達は前に進んでいく。


「……なんでついて来る」

「言ったであろう? 暇だと。我が思っていた祭とは違うようだが。それでも面白そうだ。我も特別に付き合ってやる。いや、勝負だ! 刃太郎よ!! 今から、ここにいる悪霊どもを殲滅するのであろう? ならば、どちらがより多く倒せるかしょう」

「断る」

「なに!? 貴様、逃げるのか!?」

「元から、勝負する気がないだけだ。良いから、大人しくしてろ。これやるから」


 そう言って、俺は途中でお土産として買ったみたらし団子をロッサに渡す。ふん、この程度で我は大人しくはならんぞ! と言いつつがつがつ食べていく食い意地を張った魔帝だったのであった。


「えー、毎年のことですが。今から皆さんには、これから来るクリスマスのためにここに集まっている怨念達を除霊して頂きます。ですが、今年は何かと異質なことが起こっています。ここも例外ではありません。今年の怨念達は、かなり強大になりました! 皆さん、いつも以上に気を引き締め、除霊をしてください!!」


 進行役を勤めているめがねをかけた陰陽師の人の説明を聞き、集まった者達は霊力を高める。やっぱり、これだけ集まると霊力の密度が半端じゃないな。


「それでは、最後に。鳳堂家当主。鳳堂隆造さんから一言挨拶を賜りたいと思います。では、どうぞ」


 ああ! と元気に返事をして隆造さんは前に出て行く。

 集まった者達の目を見詰め、大きく息を吸い込む。


「いいかお前達! 俺達は、人々の平和と幸せを護るため! そして、家族のため!! この仕事を完遂しなくちゃならない!! 負けるな!! 挫けるな!! これが今年最後の大仕事だ!!」


 隆造さんの一言一言が、体にびしばしと伝わってくる。


「さあ、この大仕事を終わらせて気持ちよく帰るぞ!! そして、皆の聖夜を護るぞ!! いいな!!!」」

『おおお!!!』

「……以上だ」


 すごい。さっきよりも気合の入り方が違う。霊力もより一層研ぎ澄まされており、強大になっている。


「それでは、気合も入ったところで。皆さん!! 行動開始です!!」


 刹那。

 集まった者達は一斉に大空洞の奥へと姿を消していく。そして、すぐに戦いの音が大空洞に響き渡った。


「それじゃ、俺達も行くか。ここでチームを分ける。まずは、俺、華燐、御夜の三人で左側の怨念を倒しに行く」

「うん、了解だよお父さん。お姉ちゃんも、頑張ろうね」

「う、うん! 頑張るよ! 私!!」

「御夜様! クリスマスにはミニスカサンタコスで盛り上がりましょう! せっかくネットで買ったんですから!!」

「そ、それは内緒だって言ったのにぃ!?」


 ほう……ミニスカサンタコスとな。御夜さんも、どんどんコスプレにはまっていっているようだ。鳳堂家の皆にも、ニィの提案したクリスマスパーティーの招待がいっているはずだから。

 当日、見られるのだろうか。


「そして、刃太郎くん、響、ロッサちゃんの三人は右側の怨念担当だ」

「おい。我は刃太郎と協力など真っ平だぞ! 我をそっちに変えろ!」


 だらしなくも、口元にみたらしのたれを付けながら俺と一緒などごめんだと叫ぶ。だが、隆造さんはこう言ってロッサを納得させたのだ。


「協力じゃない。さっき言っていたように、勝負をするんだ」


 頼む! と視線を向けてくる隆造さん。少しでも、さっきも言っていたが少しでも力のある者の協力が必要ということか。

 俺は、わかりましたと首を縦に振りロッサと向き合う。


「特別に勝負をしてやるよ。本気でかかってこいよ? 魔帝」

「……ふは。ふはははは!! 誰に言っている!! 我は常に本気だ!! よかろう。この祭。貴様と我、どちらがより多く倒せるか。勝負といこうではないか!!」


 それを見て、隆造さんはよし! とガッツポーズを取りそれぞれのチームの進むべき道へと体を向ける。


「じゃあ、仕事を終わらせてまたここに集合だ。遅れを取るなよ、響。鳳堂家の意地、見せてやれ!!」

「わーってるよ。親父こそ、もう歳なんだから。無茶して、転んだりすんじゃねぇぞ? 鳳堂家として、恥だからな」


 互いににやっと笑い拳を打ち付けあうの見て、やっぱり親子っていうのは良いものだなと思っていると、華燐が話しかけてきた。


「刃太郎さん。響のことお願いしますね」

「任せておけ。そっちも、頑張れよ。御夜さんも、さくらと一緒に頑張ってください」

「が、頑張る!」

「このさくらがいる限り、御夜さんには指一本触れさせませんからご安心ください!!」


 こうして俺達は、それぞれの戦場へと向かった。さあ、皆の聖夜を護るため。頑張るとするか!

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