表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/214

外伝2~異世界から帰還したら妹が総統になっていました~

外伝2です。今回は、もし異世界から帰還した時、妹が世界に影響を与えるような人物になっていたら? という感じに考えて書きました。

「やっと帰ってきたぞ……」


 俺の名は、威田刃太郎。今年で十七歳になった。ぶっちゃけると、俺異世界召喚で異世界に行っていたんだ。一年間ぐらい。

 それは突然だった。

 いつものように、妹の有奈と一緒に帰っていて、途中トイレに行きたくなりコンビニのトイレに入った瞬間だった。足元に突然魔法陣が展開し、気づいた時には……異世界。俺を召喚した召喚師達と王様の前に尻餅をついていた。

 そこからなんだかんだあって、お供に天才魔法少女を連れて、世界を危機に貶めている魔帝とやらを倒す旅に……最初は苦労したが、今こうして目的を達して俺は帰ってきた!


 両親を早くに失い、唯一残った妹の有奈。

 いつも俺にべったりで、俺もあいつにべったりだった。俺達を引き取ってくれた母さんの妹の瀬川舞香さんと共に、俺のことを心配しているはずだ。


「鍵は、開いていないみたいだな。ま、当たり前か」


 俺達三人が暮らしているマンション。瀬川と書かれた表札。俺は、ずっと大事に持っていた合鍵を鍵穴に入れる。

 そして、ドアノブを捻った。

 二人の靴はない。

 出かけているんだろうか。中に入ると……何にも変わっていない。俺が異世界へと召喚される直前の風景と一緒。そのままだ。

 すぐ、カレンダーを見る。今は、六月か。俺が召喚された時は、確か五月だったはずだから。一年……ん? 


「え? ちょっ、え?」


 俺は自分の目を疑った。

 それはカレンダーに書かれている年。俺はてっきり一年経っていると思っていた。だって、あっちでは一年だったからだ。

 だけど、このカレンダーが本当なら。


「あれ? 鍵が、開いてる?」


 刹那。

 懐かしい声が玄関から聞こえてきた。舞香さんだ。


「閉め忘れた……わけじゃないわよね。……こ、この靴って。まさか!?」


 ドタドタと慌てた様子でこっちに近づいてくる。そして、俺は再会した。俺達をここまで育ててくれた舞香さんに。

 相変わらず美人だな。黒髪のポニーテールがよく似合っている。

 しばらく、俺達は見詰め合ったまま硬直していた。

 が、俺が照れくさそうに。


「ただいま、舞香さん」


 と、言うと。


「おかえり、なさい……刃太郎!!」


 大粒の涙を流しながら、俺に抱きついてきた。すごい勢いだったけど、俺は難なくそれを受け止めることができた。

 骨が折れるんじゃないかというほどの全力の力が俺の体に込められる。だけど、これは仕方のないことだ。突然消えて、長く待たせ過ぎた。

 そう……一年じゃなかったんだ。

 カレンダーが嘘をついていなければ、こっちの世界。つまり地球では……四年も経っていることになっている。


「もう! いったい今までどこに行っていたの! 本当に心配したんだからね!!」

「ご、ごめん。色々とあってさ」


 ひとしきり泣いた後は、俺から恥ずかしそうに離れる舞香さん。さて、これからいっぱい話そう。俺がこれまで何をやっていたのか。

 そして、俺がいない間に地球はどう変わったのかを。


「……刃太郎。帰ってきて早々なんだけどね。あなたに何とかして欲しいことがあるの」


 涙を拭い、舞香さんは真剣な表情になる。

 何とかして欲しいことか。

 こんな舞香さんの真剣な表情は、初めて見たかもしれない。四年間も心配させていたんだ。俺にできることならなんでもやる。

 そのことを伝えようとした時だった。

 独りでに、テレビが点いた。それに気づいた舞香さんは、丁度いいわとばかりに俺を連れてソファーに座る。なんだ? 四年が経つと自動でテレビが点くようになるのか?

 あー、もしかしてみたい番組を一緒に観て欲しい……わけじゃないか。


『諸君! 元気にしているかな?』


 なんだろうこの子。

 額に妹と書かれた髑髏の仮面を被ったまあ女の子であろう人物が映っていた。長く黒い髪の毛は、腰まで届いており、胸はかなりでかい。

 そして、まるで軍服をデザインしたかのような服に身を包んでおり、赤いマントまで着用している。うーん、ミニスカートに黒のニーソからできる絶対領域は完璧だ。

 しかし、何なのだろうかこの番組は。


『世界中のお兄ちゃん達よ、妹に優しくしているかな? 愛しているかな?』

「……えっと、舞香さん。この番組って何なんですか?」


 背景も、どこかの秘密結社のような雰囲気をかもし出している。よく見ると、彼女の周りにも何人か人がいるようだがけど、よく見えない。


「これは……世界征服宣言の映像よ」

「はい?」


 何を言っているんだと、俺は再びテレビに目を向ける。


『世界中の妹達よ! 今は、幸せか? 兄と仲良くしているか? いまや、世界中で兄と妹の関係は、ラブラブなものとなっているはずだ! 兄妹は仲良く! 兄は、存分に妹を可愛がれ! 妹は、存分に兄に甘えていいのだ!! 兄妹の絆は美しい……。何歳になろうと、大人になろうと関係ない。どんなに変わろうと、兄妹の絆は消えやしない!! さあ、私はまだまだ世界に轟かせてやろう!! 兄の優しさを!! 妹の可愛さを!! あ、そうそう。明日は、大事な会議があるのでブログの更新はできません。はい、定時宣告おわりーっと』


 最後は、なんだか軽い感じで終わりテレビは消えた。俺は、リモコンで再びテレビを点けて、色々と番組を変えていくがさっきのやつはどこにもない。

 テレビを消し、無言の舞香さんに俺は問いかけた。


「もしかして、俺に何とかして欲しいことって……さっきのだったり?」


 いや、さすがにそんなことは。俺は、確かに強くなった。だけど、そのことは舞香さんはまだ知らないはずだ。

 いやいやそれより待ってくれ。どうなっているんだ? 今の地球は。四年の間にいったいなにがあったんだ?

 緊迫する空気の中、舞香さんは静かに首を縦に振った。


「ええ、そうよ。いまや、この世界の女性人口は、妹で埋め尽くされようとしているの」

「……なんですと?」


 異世界に行って、結構常識離れしたことには慣れたつもりだったけど。なにを言っているんだ? と思ってしまった。

 だけど、さっきの映像。舞香さんの表情から、嘘ではないみたいだけど。


「ねえ、刃太郎。今の子、誰だと思う?」

「誰って……変声機を使っていたし、女の子の知り合いなんて少ないっていうか。ほとんどいないし」

「そう、よね。さすがのあなたでも、あそこまで変わったらわからないわよね」

「え? さっきの子って、俺の知っている子だったのか?」


 だけど、あんなスタイルのいい女の子なんて、俺の知り合いにはいないはず。あ、だけど四年も経っているんだ。もしかしたら、公園で仲良くなった子供達だったり?

 もしかしたら、めいちゃん? それとも杏ちゃん? 


「知っているわ。いいえ、あなたは絶対知っている。だって……あなたの家族なんだもの」

「……なん、だと?」


 俺の家族。

 舞香さんの言葉に、俺は脳裏で自然に妹の有奈のことを思い浮かべた。嘘だろ……そんな馬鹿な。さっきのが有奈だっていうのか?

 確かに、四年も経てばあれぐらいにはなりそうだけど。 

 いや、待て。


「ど、どういうことなんだ舞香さん!? さっきのさっきの少女は有奈だっていうのか!?」

「ええ、そうよ」


 舞香さんは、ソファーから立ち上がり窓の外を眺めながら状況を理解していない俺に説明していく。


「有奈はね。あなたがいなくなった後、本当に本当に必死で探し回っていたわ。半年、一年、二年……数年経っても、有奈は諦めなかった。でもね、今年になって突然変わってしまったの。不思議な力を持った女の子達を呼び出して、人々を襲わせて……世界中の人々を妹へと強制的に変えてしまったのよ」

「……そ、そうなのか」


 人々を強制的に、妹へ? なんだその怪物は。


「正直に言えば、命を失うとかそういうことはないの。中には、若返っていいなぁとか。そういう意見もあるわ」


 なるほど、妹になるってことは若返ってしまうってことなのか。そりゃ、歳を取った人達は普通にうらやましがることだろうけど。


「そ、それでどうして有奈はこんなことを?」

「わからないの。あの時は、こうしか言わなかったわ。私は、最強で最高に可愛い妹になってみせる!! てね」

「……我が妹よ、本当に何があったって言うんだ」


 もしかしなくとも、俺のせいなのか? 俺が四年間もお前を放置していたから……。


「刃太郎!! 有奈を救ってあげて!! あの子を救えるのは……兄であるあなただけよ!!」


 何があったのか。

 どうしてこうなったのか。色々と考えさせられることはあるけど、今は有奈をどうにかするのが先か。


「もちろんだ。今の俺なら、どんな相手にだって負けはしない。それで、有奈がどこにいるとかはわかっているのか?」

「それがわからないの。あ、でもこれ」


 舞香さんが取り出したのは、携帯電話だった。

 それもピンク色の。

 なんだろうか。携帯電話のはずなのに、ボタンが一個しかない。これはもはや携帯電話じゃなくて、無線だよ。


「このボタンを押せば、有奈の居る場所に繋がるわ。家族だからって、私とお父さん達だけに渡してきたの」

「なるほど。それじゃさっそく」


 ボタンを押すと、SF映画のようにディスプレイから半透明の映像が出現。そこには、眠たそうな目つきをして、人形を抱いている少女が映った。

 なるほど、脱力系妹ってところか。


『はい。こちら、秘密結社イモウトです。あれ? もしかして、総統の兄上様ですか?』

「あ、うん。よくわかったね」


 というか総統って呼ばれているんだ。


『そりゃ、毎日のように映像つきで観ていますから。いやぁ、本物さんに出会うのは初めてです。あ、申し遅れました。私、通信、映像、動画編集などを担当しています。床屋ねむと言います』


 ふむ。眠そうな感じだけど、しっかりとしゃべる子だ。

 ……いや、だめだ。

 なんだか普通に眠そうにしている。


「ね、ねむちゃんだっけ?」

『ふぁっ!? ……はい、そうです』

「えっと、有奈と会いたいんだけど。呼び出すことってできる?」

『もちろんです。少々お待ちください。今、繋げますのでぇ』


 ぽちぽちとボタンを押し、映像が変わった。

 そこは、先ほどとは違い、どこかの一室。

 なんだか社長が居そうなそんな雰囲気のあるところだ。


『ん? おい、ねむ。今は忙しいから……え?』


 目が合った。あぁ、成長しているけど有奈だ。すごく大人な体つきになっているけど、なぜかオッドアイになってるけど、俺の可愛い妹の有奈だ。

 どうやら、ねむちゃんは何も言わず有奈のところへと繋げたらしい。まあ、すごく眠そうだったしな。

 声音を低くしていた有奈だったが、俺と目が合った瞬間、高めになってしまう。


「よう、有奈。四年ぶり、だな。ごめんな、突然いなくなって。それにしても、びっくりしたぞ。お前がこんなことをしているなんて」

『……こほん。ふん。なんだ、我がお兄ちゃんではないか。そうだな、四年ぶり。久しいものだ』


 あ、そっちのキャラでいくんだ。しかも、恥ずかしくなったのか。あの妹と額に書かれてある髑髏の仮面を被ってしまった。


「有奈。どうして、こんなことをしたんだ? やっぱり、俺がいなくなったのが影響しているのか?」

『……そうだな。私は、お兄ちゃんを必死で探して、探して、探し続けた。でも、四年も経ったのに、手がかりすら見つからなかった。だが、そんな時だ。声が聞こえたんだ。力が湧き出てきたんだ。声はこう言った。お前が、最強の最高に可愛い妹になれば兄は帰ってくると』


 声か。どこの誰かはわからないが、俺の妹を誑かしやがって。見つけ出したら、絶対ボコボコにしてやる。


『だから、私は最強で最高に可愛い妹になるために。妹力を高めるため、世界中の妹力を集めることにした』

「有奈。もうそんなことをしなくてもいいんだ。俺は、帰ってきた。また、三人で仲良く暮らそう。な?」

『……もう遅いよ、お兄ちゃん。もう止まれない。もし、止めたいのなら』


 パチン! と指を擦ると、周りに同じ仮面を被った少女達がどこからともなく現れる。その数、四人。中にはさっきのねむちゃんも混ざっていた。


『私達と戦って、勝利して見せよ!! さすれば、世界中の人々を妹から解放してやろう!! さあ、かかってくるがいいお兄ちゃん!!』

「刃太郎」

「……わかってる。ああ、いいぜ。こうなったのも俺の責任だ。その挑戦受けてたつ。待ってろよ、有奈! お前を絶対止めてやる!!」


 こうして、俺の妹を止めるための戦いが始まった。

 大丈夫だ。

 俺は異世界を救った勇者。どんな力を持っていようと、絶対勝利してみせる。全ては、有奈のために。四年間も心配させた罪滅ぼしだ!

なんだろう。前回もそうだったけど、小休憩のはずなのに、すごく書き込んじゃう……ちゃうんや。指が止まらないんや。

書きたい……書きたいって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ