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第十六話「ボタンは危険」

十月です!! 今年も後少し……なんだか一年が過ぎるのが早いように感じますねぇ。

皆さん、これからどんどん寒くなっていくので、風邪などを引きませんようにお気をつけください!

自分も、体調管理に気をつけつつ執筆を続けていこうと思います!!

「では、我に続け者ども!!」

「おおー!」

「それにしても、薄暗いねこの廊下」


 パーティー会場から出ると、廊下は雰囲気がばっちりな空間となっている。でかい窓ガラスから、月明かりが差し込んでおり、それが廊下を照らしている。

 まあ、小さなろうそくの灯もちゃんとあるけど。

 赤い絨毯がどこまでも続く廊下を進んでいく。俺は離れないように千歳ちゃんと手を繋いだまま歩いていた。

 先頭は、ロッサ。その後ろをコトミちゃん、コヨミとなり俺と千歳ちゃんの順だ。


「ニィが言うには、雰囲気を重視に作ったんだってさ」

「確かに、雰囲気はバッチリだと思う。家なんて、どこまで明るい廊下が続いているからね」

「夜、おトイレで起きた時も、すぐ灯りが点くしね!」


 さすが天宮家。天宮家が現代の城だとしたら、ここは昔の城ってところか。更衣室を通り過ぎ、角を右に曲がる。すると、そこからろうそくの灯だけで廊下が照らされていた。

 月明かりはここまでは届かないか。

 いくつか木製のドアがあり、ロッサはそのひとつを早速開けていく。


「ふむ。ここは、寝室か。となると、この辺りもそうか?」

「ここも寝室だー!」

「ここもだよ」

「こっちもだな」


 それぞれ廊下に連なるドア開けていき、確認したところ一通りの寝室。一晩で消えるのに、こんな細かいところまで。

 見る度に、もったいない気持ちが湧き上がってくる。


「あの、お兄ちゃん」

「どうした?」


 探検の途中、千歳ちゃんが俺にこんなことを問いかけてきた。


「お兄ちゃん達って、不思議な力を持っているんですよね?」

「うーん、まあそうだな。やっぱり、お父さんとお母さんに聞いたのか?」

「うん。千歳も、メルヘンなお話は大好き。昔からお父さんやお母さんから、聞かせれてきて夢でもよく見るから」


 さすがの英才教育だな、あの二人は。

 それに、書店で両親が働いているということで色んな本に触れることが多いからかもしれない。


「だから、本物の魔法使いさんに出会った時は感動でした」


 そういえば、会場でナナミとかに魔法を見せてもらっていたっけ。子供ながら、丁寧な言葉遣いで、だがそれでいてメルヘンな世界に憧れている子供のように語っていく千歳ちゃん。

 繋いでいる手にも自然と力が篭ってきていた。


「ふん。あの程度の魔法は序の口だぞ、千歳よ」


 突如として、立ち止まりロッサは魔力を練り上げる。


「あんな小娘の魔法よりも、我の。魔族の魔法のほうがより派手で強いということを証明してやろう!!」


 練り上げた魔力は、炎や電気、水の塊となりロッサの周りに出現する。


「おい、その魔法をどうするつもりだ?」

「知れたこと。見よ、あそこに丁度いい的があるであろう」


 T字路に差し掛かり、その左奥に羽が生えた獣の石像があった。右側も確認すると、同じ石像が設置されておりそれを見たコトミちゃんは、すごくわくわくした表情になる。


「面白そう!! 私もやる!!」


 そう言って、魔力を練り上げロッサと同じく三属性の塊を作り出した。


「いいだろう。ならば、同時に放ちどちらが先にあの石像を破壊するか。勝負するか?」

「オッケー!!」

「お、おい。待てって。迂闊にこの城のものを破壊するのは」


 注意するも一歩遅かった。

 二人は、左右の石像へと魔法を放つ。俺も魔法を放ち止めようとするも魔法に興味津々な千歳ちゃんの表情を見た時、止めていいものかと。

 一瞬の戸惑いが生じて、二人が放った魔法を止めることができなかった。

 案の定、石像は糸もたやすく破壊される。


「ふむ。同時か」

「むぅ、おしかったなぁ」


 おしかったじゃないって。もし、あれが変なことに繋がるものだったら……ん?

 嫌な予感がした。

 足元がこの力の流れ。

 あの石像から流れてきて、徐々にこっちに近づいて来ている。何かが起こる? と思っていたが、何も起こらない。

 不発? それともこことは違うところで何かが起こったのか? だけど、力の流れはこっちに近づいていたんだけどな。


「す、すごいです! 千歳も、魔法を使ってみたいです!」

「ふむ! ならば、特別に我の弟子にしてやろう。なに、我の弟子となり修行をすればすぐにでも魔法を使えるようになるであろう」

「本当ですか! ありがとうございます!」


 ふふんっと、自慢げに壁に背を預けていたロッサに喜ぶ千歳ちゃんが勢いよく抱きつく。

 すると。


「ぬっ?」

「えっ?」


 壁がなくなり、ロッサと千歳ちゃんが落ちていく。悲鳴を上げることなく、ただただ静かに。静寂に包まれた空間で、俺は頭を抱えた。


「やっぱり、何かが起こったか……よし、千歳ちゃんを助けにいくぞ」

「あれ? ロッサは?」

「千歳ちゃんを助けに行けば自動的にロッサもいるだろ」

「こんこん。こんこん……全然動かないよ?」


 と、ロッサと千歳ちゃんが落ちていった壁を叩きながら確認するコトミちゃん。もしかすると、どこか違うところにここと同じ場所があるかもしれないな。

 とりあえず、一度ニィにこのことを知らせるか。

 そう思った刹那。 

 ちょっと、ほんのちょっと目を離した隙に。


「あっ」

「え?」


 再び壁がなくなり、今度はコトミちゃんとコヨミが落ちて行った。まるで、吸い込まれるかのようにすごい勢いで。そういえば、ロッサと千歳ちゃんの時も落ちていったというよりも吸い込まれていったように見えた。

 ついに一人になってしまった俺は、内心焦りながらもニィに念話でこのことを伝えることにした。


『はいなのですー。何か問題でも起きたのですか?』

「ああ。起きた。気づかないか?」

『……あっ!? こ、これはやばいのです!!』


 珍しくニィが焦っている。

 いったい何がやばいっていうんだ? 






・・・☆・・・






「くっ! ……なんだったんだ。おい、怪我はないか」

「は、はいぃ。千歳は大丈夫です」


 突然壁がなくなり、吸い込まれる感覚を覚えたと思いきや、どこまでも続く滑り台を滑り辿り着いたのは、妙な雰囲気のある空間だった。

 そこまで広くはなく、刃太郎が住んでいるマンションのリビングぐらいだろうか。

 無駄な装飾はなく、あるのはなにやらすごく押したくなるようなボタン。

 落ちてくる時に、風の魔法でなんとか勢いを殺しおかげほとんど怪我はない。


「どうやら、出口のようなものは見当たらないな」

「ち、千歳達は閉じ込められちゃったんですか?」

「ふむ。心配はいらない。この程度、我の次元ホールで」

「わああああ!?」


 手をかざし、次元ホールを発現させようとした刹那。

 背中を襲う、強い衝撃。

 バルトロッサ達と同じく滑り落ちてきたのはコトミとコヨミだった。その勢いのまま、バルトロッサと共に数メートル転がり壁にぶつかって止まった。


「あいたたた……よ、よかったぁ。クッションがあって!」

「よ、よくはないわ。貴様ら、落ちてくるのなら勢いを殺してくるがよい」

「わっ。ロッサがクッションになっていたんだね。ごめん」」


 乗っかっていた二人は、バルトロッサから離れ素直にごめんと謝る。

 バルトロッサも、まったくと息を漏らしながら立ち上がるが……そこで、気づく。


「……」

「お、押しちゃいました」


 なにやら、怪しい雰囲気を放っていたボタンをさっきの勢いで押してしまっていたことに。コトミとコヨミがどうしたの? と覗き込んだ時だった。

 次元ホールが出現し、そこから刃太郎とニィーテスタが姿を現す。


「お、遅かったのですぅ!?」


 いつも飄々としており、笑顔が絶えないニィーテスタだったが今回はなにやら相当焦っている様子。おそらくその原因となったのは、背後にあるボタン。


「お、おい! 説明してくれ! いったいこの部屋はなんなんだ!」

「この空間は、ハロウィンが終わったらなくなるって説明したと思うのですが」

「あ、ああ……ハッ!? まさか!!」


 刃太郎は、いやこの場に居る者達は全てが察した。

 ニィーテスタは、ふふふっと笑い告げる。


「このボタンこそ、空間消滅させるためのボタンだったのです」

「つ、つまり」


 ドドドド……! 城全体が。いや、空間が激しく震動する。


「そろそろ消滅しちゃうのです!! というわけで、逃げろー!!!」


 刃太郎達は、次元ホールに入り込み会場へと向かう。


「お、お兄ちゃんこれはいったい!?」

「説明をしている暇はない!! 皆!! 次元ホールに飛び込むんだ!!」

「よ、よくわかりませんが。すごくやばいってことはわかります! とおりゃあー!!」


 一目散に飛び込んでいくリリーに続き有奈、華燐、ナナミと次元ホールに近い順に入っていく。そして、最後の一人が飛び込んだところで刃太郎達も飛び込んだ。

 すでに、崩壊寸前だったためもう少し判断が遅れて入れば今頃……。

 逃げ込んだ先は、ニィーテスタとリフィルの聖域。

 空間消滅の衝撃が来ないようにすぐ次元ホールを閉じたことで、なんとか事なきを得た。


「あ、危なかった……」

「いったいなにが起こったんだ? 刃太郎くん」

「まだハロウィンは終わっていないっすよ!」

「ど、ドッキリにしてはちょっと派手すぎませんか?」


 小刻みに震えているサシャーナを見て刃太郎は、頭を掻く。

 ドッキリなんかじゃない。不慮の事故……そうとしか言いようがない。


「……あ、あれ? お兄ちゃん!!」


 兎に角、皆無事でよかった。

 パーティーなら、またやり直せばいい。そう思ったところに、有奈が声を上げる。どうしたんだ? と全員が視線を向けた。


「ど、どうしたんだ? 有奈」

「大変!! り、リフィルさんがいない!!」


 確かに、リフィルの姿が見えない。

 まさか……と、いやな予感がした。

 だがまだ終わらなかった。


「刃太郎くん!!」


 今度はナナミが叫ぶ。今度はどうしたんだ? と再び全員が視線を向ける。


「リリアさんも……いないよ」

「そ、そういえば二人とも。もっと面白いゲームはないのかってパーティー会場から出て行った気がします……」


 青ざめた表情で、語るアデルトの言葉に全員が口を閉ざし沈黙する。

 つまり、この場にいない二人は消滅していく空間の中に……。

 すでに、消滅しているハロウィンゲートがあったところを見詰め刃太郎はニィーテスタに問いかける。


「なあ、こ、この場合二人はどうなるんだ?」

「えっと、死にはしない、と思うのですが。何もない空間を迷いに迷って……出口を見つけたとしても、それがどこに繋がっているのかわからないのです。もしかしたら、地球でもヴィスターラでもない世界に行くかも……だから、今から探しに行くのです!! 私が責任をもって!!」

「た、頼む」


 その後、リフィルとリリアは次の日の朝にゾンビのように徘徊しているところを発見され、無事地球に帰還した。

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