プロローグ
新章開幕です。
それと、アルファポリス様にも掲載しました! 一応、青春カテゴリーで。ファンタジーにしようかと迷いましたが、青春でいくことにしました。
よろしければぽちっと気軽に。
「んー!! はぁ……」
俺が異世界から帰還して、もう二週間が経とうとしている。
あれからというもの、有奈を拉致した男達は逮捕された。案の定、記憶が欠落していたらしく、どうして自分がボコボコにされたのかも、全裸にされていたのかも覚えていないと証言したそうだ。
そんなニュースを見て、ほっとしていた俺だったが……なんと、テレビが俺のところへ来た。
どうやら、行方不明であった俺が帰還したことを耳にして、突撃取材をしにきたんだそうだ。
いっぱい聞かれたよ。
いったいどこに行っていたんですか? とか。どうやって帰還したんですか? とかさ。
だけど、俺は全部記憶がない、とだけ言って押し通した。
素直に異世界に召喚されて勇者やってました、と言っても信じてはくれないだろう。最悪、麻薬でもやっているんじゃないか? なんて思われたりしたら。
結果。
「神隠し、ねぇ」
俺は神隠しにあって、記憶を失ったまま帰還したとなった。まあ、妥当なところだろうが。これにより、神隠しは本当にあった! 帰還した男! とか、今でも報道されている。
ネットでは、本当は異世界に行っていたんじゃね? とか呟かれているし。その通りです! と言いたいところだが、異世界召喚はこっちでは空想のものであるからしてな。
それと、俺がテレビに出たことで、高校の時に仲が良かった奴らから電話が結構かかってきた時は、なんだか感動したな。
皆、俺のことをマジで心配してくれていたから……。
「大変だったでしょ? 色々と」
「ははは……まあ、勘違いしてくれたならこっちとしても良い事なんですがね」
念のため、俺は健康診断を受けた。
魔力を感知されるんじゃないかとドキドキしていたが、まだ医療機器もそこまで発展はしていなかったというか、まあ感知はされなかった。
ただすごく健康です! とだけ言われたな。
ちなみに、俺は書店のアルバイトして働き始めている。
だけど、テレビに出たことで俺はちょっとした有名人になってしまった。街を歩けば、噂され。こうして店番をしていても、一目俺を見ようと色んな人が集まってくる。
「すみません。俺のせいで」
「いやいや。これで、うちの店がちょっとでも有名になればそれはそれで大助かりだ」
実際、今までこの山下書店を知らなかった人達が、古い漫画や小説などを買いに訪れるようになっている。訪れているとはいえ、他の有名どころと比べると平和なものだ。
「そう言ってもらえると、ちょっと救われます」
「どういたしまして。おや? お客様が来たようだぞ」
と、言われたので顔を向けると。
「あ、あの! これください!!」
一瞬見惚れてしまうほどに綺麗なブロンドを靡かせ、現れたのは有奈の友達リリーだった。いつものように赤渕のメガネをかけ、通っている麻宮女子校の制服に身を包んでいた。
後ろでは、同じく麻宮女子の華燐がちらっとこちらを観察しながら、本を選んでいる。
「お。また来てくれたんだ」
「は、はい! 刃太郎さんにオススメされた漫画、とても面白くて! つい続きが読みたくなっちゃうんです!!」
あれ以来、有奈とも少しは仲良くなった。そして、リリーや華燐ともちょっとずつだが関わりを作っている。
俺のシフトは、昼の十二時から夕方の十八時までで、週四日。ちなみに、山下書店の閉店時間は、十九時となっている。毎日ではないが、リリーはよく山下書店で漫画などを買っていってくれているんだ。
俺も、漫画好きとして、自分が面白いと思った漫画を教えている。
「それはよかった。一冊で432円になります」
いつものように、リリーから金を受け取り、そのままレジへ通す。500円玉を貰ったので、おつりとして68円をレジから出し、リリーへと渡した。
「……」
「……えっと」
突然、俺の手を両手で包み込むように握ってきたリリー。
おつりを渡して、ありがとうございました! までいこうと思ったのだが。リリーが俺の手を握ったまま離してくれない。
「ハッ!? え、えっと……失礼します!!」
我に返ったリリーは、逃げるようにその場から去って行く。そして、華燐は一礼をし、リリーを追いかけていく。
なんだったんだろう? と思っていると、何か小さな紙が置いてあるのに気づく。刃太郎さんへ、と書かれていた。
「まったく、刃太郎くんも罪作りね!!」
「げほっ!? な、何のことですか? 絵里さん」
いきなり、背中を叩かれた。
罪作り? ……あっ、これってリリーの連絡先? 置かれていた紙を開くと、そこにはリリーの連絡先が書いてあった。
ちゃんとわかるように名前も記載されていた。
そういえば、連絡先とか交換してなかったもんな。
「勇気を振り絞って連絡先を渡す……乙女ねぇ。しかも、金髪! メガネ! 巨乳! 女子高生!! すごい逸材よ! 彼女は!!」
「い、逸材って……」
「しかも、付き添いで着ていたあの黒髪の彼女……あの子も、中々ね。元気な金髪娘とは正反対のクールな性格……うんうん。付き合うならどっち?」
「いや、なんでいきなり付き合うまで発展しているんですか!?」
「あ、そっか。刃太郎くんには、有奈ちゃんがいたわよねー」
「有奈は妹です!!」
その辺りは、ちゃんと割り切っている。いくら愛していると言っても、有奈は妹。妹と付き合うとか、結婚するっていうギャルゲーチックなことは、現実では無理だ。
そもそも、有奈とはもうすでに家族。
結婚するまでもない。
「ふふ。まあ、実際君はまだ青春真っ盛りな年頃なんだから。色々と頑張りなさい!!」
「いや、ですから!」
世間では、俺は二十歳で通っている。
だが、実際は十七歳。
年齢詐称しているようで、良い気分ではないが……仕方ない。それにしても……青春、か。
もし通うとしたら……うーん。
実際、神隠しにあって帰還したなんてあったら、どうすればいいのでしょうかね?




