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第二話「UMA発見?」

 早朝。

 本当に太陽が昇っている途中の時間帯に俺達は新種のUMAがいると言われている山。通称亀山に訪れていた。

 なんで亀山と言われているのか。それは遠目で見ると山の形が亀のように見えるからだそうだ。


「よっしゃ!! 俺達が最初に新種のUMAを見つけ出すぞ!!」

「なあ、今更なんだけどさ。マジで、UMAが出てきたらどうする? もし、凶暴な狼だったらさ。俺達、食い殺されてしまうんじゃないか?」


 この亀山には、特に人を襲うような動物は生息していないとのこと。

 とはいえ、もしそのUMAが芳崎の言う通り人を襲うような凶暴な奴だった場合は、俺達のように無謀にも山に入ってきた者達は簡単に食い殺されてしまうか、爪でざっくりされるだろう。


 今のところは、山に生息しているうさぎや鹿などが襲われたとの情報はないし、血痕なども見つかっていない。だから、凶暴ではない……という確証はない。

 ただ単純に、同じ動物を襲わないだけで。

 俺達のような人間は襲うかもしれない。藤原は、カメラを構えてただただ写真を撮ることにしか集中していないから、俺は警戒を怠らないようにしておくか。


「そういう時は……これを使う!!」


 取り出したのはスプレーだった。

 しかし、そこに書かれていたのは。


「いや、それ熊撃退スプレーだろ」

「く、熊も狼も変わらない! このスプレーめっちゃすごいんだぜ! なにせ成分は唐辛子!! 狼だろうとUMAだろうと目や鼻に当たったら一撃だ! ……たぶん」


 確かに、唐辛子はかなり効くだろうけど。

 どうなんだろうな。

 素早い奴だったら、めっちゃうジグザグに動いて避けながら襲ってくるんじゃないか。


「つーわけで、芳崎。お前にもこれを持たせておく!」

「お、おう」

「刃太郎にもな!!」

「……」


 正直、スプレーがなくてもどうにかできるんだけど。二人の前だからな。極力力は使わないように心がけないと。

 先頭に、スプレーを持った芳崎。真ん中にカメラを構えた藤原。後ろには俺の陣形で、亀山を進んでいく。朝食であるカロリーメイトを齧りながら左へ右へ。

 ちゃんと木なども調べている。

 もしかしたら、熊のように爪痕などを残しているかもしれないとかで。


「そろそろ山に入って一時間だけど。やっぱりそう簡単には見つからないな。UMA」

「そりゃあな。簡単に見つかるようじゃUMAじゃないって」


 発見したと言えば、よくいる小鳥とかキノコとか。

 鹿やうさぎなどはまだ見ていないが、こちらの様子を窺っている気配を感じる。新種のUMAとやらではないだろう。


「そもそも、UMA。未確認生物ってちゃんと捕まって調べられて、その生態系がわかったらどうなるんだろうな?」


 と、藤原が軽快にカメラをあっちこっちに向けながら呟く。

 どうなるって……うーん、どうなるんだろうな。

 ヴィスターラの場合は、繁殖させようとしたり、その個体によっては兵器として利用しようと研究をしていたところもあったけど。


「普通に図鑑とかに詳しく載るんじゃないか? それか、動物園とかで飼育されるとか」

「いや、さすがに動物園はないと思うぞ」


 それもそうか。

 さて、こうしてただ固まって探すのにも限界を感じてきた。よく、同じ場所で根気よく待っていたらいい写真が撮れた、みたいなのは、俺達には無理だろう。

 時間がないからな。

 俺も、察知能力をもうちょっと磨いていればかなりの範囲を探す事ができたのになぁ……。


「ふう。ちょっと休憩しよう。二時間半もずっと山を歩き回っていたからな」

「だな。しっかりと水分補給をして、足を休めながら行こうぜ」


 今はもう太陽が空に上がっている。

 山に住んでいる動物達も活発化しているだろう。二人は、見ての通り疲れ気味。ちょっとだけ、俺一人で二人に出来ないような探し方をしてみるか。


「どこに行くんだ? 刃太郎」

「ちょっとその辺を一人で探してくる」

「一人じゃ危ないぞ。それに、お前だってちょっとは休憩したほうがいい」


 正直、全然疲れていないんだけど。二人にとって俺は、普通の人だからな。


「わかってるよ。ほんのちょっとそこら辺を探したらすぐ戻ってくるから」

「マジで気をつけろよ。あ! もしUMAらしき生物を見つけたらすぐ連絡してくれよ!」

「了解。それじゃ、行って来る」

「気をつけろよー!」


 二人から距離を取って、俺は周りを見渡す。

 そして。


「コトミちゃん、コヨミ。いるんだろ」

「やっぱり気づいてたんだね!」

「いつから気づいてた?」


 がさがさっと音を鳴らし、木の上から降りてくる二人の少女。獣耳と尻尾を隠さず自然体のままだ。誰かに見られたら、この子達がUMAって思われるだろうな。


「山に入ってからだ。サシャーナさんと駿さんは別行動か?」

「そうだよー。どっちのチームが先にUMAを捕まえれるか! って」


 と、俺の背中にしがみ付き頬をすり寄せてくるコトミちゃん。


「こういう広大な山の中だからね。自由気ままに探してるんだ僕達。あ、でも心配しなくていいよ。一般の人達にはちゃんと見つからないようにしてるから」


 それはよかった。それだけが心配だったからな。


「ところで、その格好は?」


 今、コトミちゃん達はまるで探検家のような服に身を包んでいた。短パンとニーソにより絶対領域は健在。それでいて、冒険心を燻るデザイン。

 二人は、俺の目の前に立ちどうだ! と胸を張る。


「いい服でしょ?」

「サシャーナと駿が作ってくれたんだよ! これで、雰囲気もばっちり!!」


 確かに、雰囲気は大事だよな。藤原の奴も、それっぽい服を持ってきていたし。それに比べて、俺や芳崎は普通に私服だからな。

 ピクニック気分か!? とか藤原は叫んでいたっけ。


「ばっちり似合ってるぞ、二人とも。本物の冒険家みたいだ」

「ふふん! では、コヨミ隊員!! 新種のUMA探しを再開するよ! 刃太郎お兄ちゃんに先を越されないように!!」

「了解であります、コトミ隊長。それじゃあね、刃太郎。僕達はもう行くよ」

「ばいばーい!!」


 元気のいい子達だ、本当に。

 さて……俺は俺で、UMAとやらを探すとするか。目を瞑り、体に巡る魔力を解放する。そこに、ニィから貰ったこの道具で。

 取り出したのは探知用の道具。見た目はコンパスのような形をしているが、これは魔力を込めないと効果を発揮しない魔道具なんだ。

 更に言えば、こいつは探し物が使用者の記憶内にないとだめ。曖昧でも大丈夫だというところがすごいが、曖昧だとそれっぽいもののところへ示すことが多い。


「今回は、でかい狼。この山にいるのがうさぎや鹿がほとんどだったら。そいつのところへ示す確率が高いはず……!」


 さあ、示してくれ。探しているのは、でかい狼。もしくは普通サイズの狼だ。魔道具に魔力が集束していき、赤い矢印が動き出す。

 いいぞ、そのままそのまま。


「……あっちか」


 指し示した方向はコトミちゃん達が走り去った方向とまったく間逆。俺達が進んでいた方向だった。てことは、俺達は目的のUMAのところに近づいていたってことだったのか。

 俺は、魔道具をポケットに仕舞い二人の下へと戻っていく。


「おっす。どうだった? なんか見つけたか?」

「いいや。何にも」


 獣耳っ娘達は見つけたけどな。

 スポーツ飲料で喉を潤し、俺達は再びUMA目指し進んでいく。さてはて、新種のUMAとやらはどんな奴なのか。

 二人に見つからないように、コンパスを確認。

 さっきまで矢印が指し示していただけったのが、今ではくるくると回転している。


(つまり、この辺りにいるってことか)


 山に入って三時間ぐらい。思っていたより早めに見つかりそうだな。でも、もし凶暴な奴だった場合は二人を近づけさせるわけにはいかない。

 だから。


「なんだかこの辺り、変な気配しないか?」

「そうか? まあ確かに、この辺りだけ拓けた空間になってるけどさ」


 気配は……西のほうか。


「ちょっとこの辺りで、手分けして探してみないか?」

「うーむ……そうだな。ここはちょっと積極的に攻めてみるか」

「でも、誰がどこを探す?」

「藤原は東。芳崎は北で、俺は西方向を探すってこといいんじゃないか? 捜索時間は、五分ぐらい。時間になったら一旦ここに集合ってことで」


 明らかに、こっちを見ている。

 威嚇している感じはしない。

 それに邪悪さがない。むしろなんていうか……聖なる力を感じる。念のために、二人の周りにも警戒をしておかないとな。

 そこまで離れていなければ、すぐに感知できるように俺の魔力を二人の体につけた。


「いくか」


 邪悪さはないが、すぐ戦えるように準備は怠らない。

 それにしても、進めば進むほど強い力を感じる。まさか、意図的に力を俺に向けているのか? てことは、俺のことを知っている。

 俺も、この聖なる波動に覚えがあるが、そんなことがあり……えるかもな。聖なる力を持った連中は俺の近くに二人、いや二柱ほどいるわけだし。


「……見えた」


 道なき道を進んでいくと、開けた場所に到着した。そこには、小さな池があり巨大な影が見える。真っ白な毛並みに、四足歩行、尻尾が二本。

 俺のほうに背中を向けており、じっと池を見詰めていた。

 ……やっぱり、見覚えがある。

 あの毛並みに、二本の尻尾。そして、聖なる力。


「やあ。久しぶりだね」

「まさか、お前までこっちに来ているとはな。どういうことだ?」

「どうもこうもないよ。僕だって、自分からこっちに来たわけじゃないんだ。次元の穴に吸い込まれたんだよ」


 そいつは、くるっと振り返りその正体を晒す。

 一見すれば、大きな狼。いや犬か。額には、青い宝石をつけており、とても優しい目をしている。

 察しの通り、こいつは異世界の。ヴィスターラに存在する生物。


「いや、お前だったら吸い込まれずに済んだだろ。どうせ、面白そうだったからとか。そんな理由で入り込んだんだろ。神獣フェリル」

「いやぁ、ばれちゃった? さすがは、神獣たる僕を手懐けた人間だね」


 神々が、生み出した最初の生物と呼ばれている存在。

 それが、神獣。

 他にも存在するが、どいつもこいつも神獣というかただの図体のでかい動物ってイメージだ。その神獣の一匹であり、俺が異世界交流バトルでも大活躍だった神聖具。

 それを作る手伝いをしてくれたのが、目の前にいるフェリル。

 人懐っこいお犬様だ。

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