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第十一話「微笑み」

※九月十六日。改善終わりました。前よりはマシ? になったと思います。たぶん……。


ここまで投稿して、色々な感想、指摘等を頂きました。

これからの展開に、少しでも取り入れていこうと思っています。未熟な自分にとっては、感謝の極みです。自分……結構馬鹿なので。感想や指摘でよく気づかされることが多いんです……。


あ、これと同時に短編をひとつ投稿しました。

よろしければそちらもどうぞ! えっと、ロボットものです。

「ほう。あれが、貴様の妹か。……似ていないな」

「うるさい。俺が父親似で、有奈が母親似なんだよ。つーか、お前の役目は終わった。さっさと帰れ」

「冷たいではないか。我は、貴様からなんでも好きな食べ物を奢って貰おうと待っているだけだぞ?」


 この食いしん坊魔帝が。

 まあ、こいつがいたほうが帰りとかも楽だからよしするか。


「こいつは、お前の仲間だろ?」


 そう言って、俺は気絶したおっさんを指差す。


「な、なんだよ!? まさか彼がやられるなんて!?」


 どうやら、自分達は特別な力を持っているからやられないと思っていたようだ。生憎と、こっちも普通じゃないんでな。

 驚くスーツ姿の男に、俺は一歩また一歩と近づいていく。


「さあ! 俺の妹を返して貰おうか!!」


 体から膨大な魔力を放出させ、相手を威圧する。よくも、有奈を縄で縛りやがったな……肌に痕がついたらどうするつもりなんだ。

 しかも、有奈の他にも捕まっている人達がいるな。いったい何が目的でこんなことを。


「は、ははは……」


 恐怖でおかしくなったか? 

 いや、違う。

 男は、引き笑いをしながらも俺から距離を取り、有奈を抱き起こす。


「う、動くな!! もし、それ以上近づくんだったら……あなたの可愛い妹ちゃんに、風穴が空くことになりますよ!!」


 力を使うかと思いきや、現代兵器だった。

 拳銃を気を失った有奈のこめかみに突きつけ、警告している。


「……」

「そうだ。動かないでくださいね。……くくっ! 皆さん!! 出番ですよ!! やってしまってください!!!」


 男が叫ぶと、背後にあった大量のドラム缶の影から、十人相当のヤクザっぽい男達が現れた。

 どうやら、全員があの力を持っているようだな。

 予想はしていたが、こんなにもあのザインとかっていう中二病の誘いを受けた奴らがいたとは。

 こういう大人にはなりたくないな。


「おいおい。ただのガキじゃねぇか」

「こんな奴にびびってんのか?」

「見た目だけで判断しているようじゃ。あんた達の器が知れるってものだ」

「んだと、ガキッ!!」

「いい挑発じゃねぇか。たっぷり甚振ってやるぜ!!」


 俺の軽い挑発にのってきた男達。

 それぞれ、黒いオーラで、鉄パイプで、中には刀とかで俺に攻撃を仕掛けてきた。あのスーツの男は、俺を動かさないようににやにやしたまま有奈に拳銃を突きつけたままだ。


「我がやってやろうか?」


 と、後ろでのん気に最後のたこ焼きを頬張っているバルトロッサが言う。


「いらねぇよ。こんな奴ら、動かなくても……倒せる」


 俺は、こういうことがあるだろうと予想をしていた。

 そのために、魔法を予め詠唱していた。

 予め、唱え封じ込める。

 それをある言葉を発することで……解き放つことが出来るんだ。


「風よ」

「うおおおっ!?」

「な、なんだぁ!?」


 暴風が巻き起こり、男達を軽く吹き飛ばす。その瞬間、金髪の男も風の勢いに押され、バランスを崩した。


「ハッ!!」

「げはっ!?」


 それを見逃さない俺。一気に、男との距離を詰めて有奈を救出。こんな騒ぎだっていうのに、有奈は起きる気配がない。

 やっぱり、有奈もあの力によって眠らされているってことか。

 だが、これはこれで好都合だ。


「めんどくさいことをするではないか、刃太郎よ。あのスーツの男が、動く前に救出すればよかったではないか」

「もしも、有奈に何か罠が仕掛けられていて、俺があのスーツの男を吹き飛ばした瞬間、他の仲間が発動させるかもって考えたんだよ」


 その結果。何もなかった。

 だから、こうして有奈を救出したんだ。


「な、なんだったんださっきの暴風は……」

「台風でもやってきたのか?」

「んなことよりも、女を奪取されたぞ!」


 俺は、有奈をバルトロッサの近くに寝かせ、再び男達と対峙する。もう、有奈はこっちのもの。後は、あいつらをぶっ飛ばすだけだ。


「くっそぉ!! もう許しませんよ……く、くたばれぇ!!」


 まず動いたのは、あのスーツの男だった。

 起き上がってすぐに、俺へと銃口を向ける。そして、怒りの叫びと共に容赦なく銃弾をぶっ放す。あっちの世界では、拳銃なんてなかったからな。

 へぇ……銃弾ってこんな風に飛んでくるのか。


「よっと」

「なっ!?」

「つ、掴んだだと?」


 念のため、魔力で防御はしていた。いくら、常人離れをしていようとも、銃弾を素手で掴むのは絶対痛いだろうからな。

 掴んだ銃弾を俺は、そのまま床に落とす。


「もう終わりか?」

「う」


 ガタガタと体を震わせ青ざめている。

 明らかに俺に対しての恐怖心が芽生えている。そりゃそうだ。鋼鉄の扉を吹き飛ばし、数で圧倒しているのに余裕で人質を救出。

 極めつけには、銃弾を素手で掴んで見せた。

 常人ならば、恐怖しないほうがおかしい体験をしているのだ。周りにいる男達も、スーツの男ほどではないが最初の威勢がなくなってきている。


「うわああああああ!?」


 乱射。

 恐怖心が、爆発し、あるだけの銃弾を俺へとぶっ放してくる。だが、俺はそれを一歩も動かず全て片手で掴んで見せた。


「……」


 そして、無言の行進。


「だ、大丈夫だ! てめぇら! ここはなんとか持ち堪えろ! そうすればザイン様がきっと来てくれるはずだ!!」

「そ、そうだな! ザイン様が来てくれればあんなガキなんて!!」


 ザイン? 震える男達はザインがこの場にやってきて自分達を救ってくれると思っているらしい。

 

「あぁ、それは無理だと思うぞ」

「な、なんだと? なんで、そんなことてめぇなんかにわかるんだよ!!」

「いやだって。ここに来る前に裏路地でそのザインを倒してきたから」

「なん……だと?」


 だが、ザインの力は消えていない。まさか、まだ生きているのか? それとも、本体が消えても力そのものは残り続けるのか。


「ば、馬鹿な。そ、そんなこと信じないですよ!!」

「いやだって、本当のことだし」


 嘘偽りのないように俺は真顔で答えた。すると、スーツの男は仲間達を一度見渡し俺へと視線を向けなおす。

 そして、まるでバイブ機能でも備わっているのか? というぐらい激しく震えだした。


「う、うわああ!? ば、化け物だぁあああっ!?」


 化け物ねぇ……まあ、あっちの世界でもそんなことを敵側から言われたようななかったような、そんな記憶があるが。


「あぁ。化け物だ。今の俺は化け物だ」


 化け物でもいい。

 なにせ、俺の怒りは本物だ。もう、誰も俺を止めることは出来ない。目の前の、悪を倒すまでは、止まってやるものか。


「いいか!! 可愛い妹をこんな目に遭わせたお前達を絶対ゆるさない。だが、殺しはしない。ただ……二度と表舞台を歩けると思うなよ!!」


 爆発する魔力。

 それは、俺の怒りを形にしたかのように不気味な獣と化す。こうすることで、戦わずして相手を制する事ができる。


「ひ、ひいいっ!?」

「こ、こんな奴に勝てるわけねぇよ!」

「に、逃げるんだぁ……!」


 もはや、男達の威勢は消えた。

 ただ、強者に怯える腰抜けへと成り下がっている。腰が抜け、ただただ震えている。


「逃がさねぇよ? 逃がすわけないだろうが!!」

「う、うわああああああああッ!?」






・・・★・・・






「相変わらず、生ぬるい奴だな今の貴様は。生前の我をあれだけバッサリと切り裂いた容赦のなさはどこへいったのだ?」

「お前こそ、魔帝としての威厳はどこへいった? おい、口のクリームついてるぞ」

「なに!? どっちだ!」

「右だ。右」


 有奈を攫った男達には制裁をした。

 後に、調べると有奈を誘拐した連中は、色々と問題を起していた奴ららしくよく警察のお世話になっていたとのこと。

 そして、ここ最近は行動が派手になり、銀行強盗から人殺しまでなんでもやるようになっていたとか。

 なので、まとめて気絶させてから男達を全裸に引ん剥いて、バルトロッサの次元ホールで裏路地に放り投げておいた。

 周りに人がいないことは確認済みのうえでだ。

 現状、ボコボコにされた全裸の男達が裏路地辺りに倒れている状態である。

 想像しただけで、見た人は悲鳴を上げるだろう。特に女性の人達が。


 ちなみに、あのリーゼントだが。

 警察に捕まった後、まったく記憶がないと証言していたらしい。テレビでもニュースになっていた。当然、次元ホールのこともな。

 謎の黒い渦が男を連れ去った!? とか。

 おそらく、あの男達も記憶がなくなっているだろう。

 でも、もし記憶が残っていて俺のことを言ったらどうしよう……適当に誤魔化すか。どうせ、信じてはくれないだろうし。


 それと有奈と一緒に捕まっていた人達は、更に追加でバルトロッサに食べ物を奢ることで記憶操作をしてもらった。

 全員が、仕事の疲れや昼を食べた後で、眠くなりみたいな。幸い、三人だけだったからよかったものの。これが十人とか二十人とかだったら処理も大変だったな。

さて、有奈にもと思った時だった。


「ん……」

「お、目を覚ましたようだな」

「お前は、隠れろ」

「なぜだ? 我のことを紹介してくれてもよかろう」


 しょうがねぇな。適当に紹介しておくか。

 こいつが、俺が召喚される理由となったラスボスだってことは隠してな。まあ、本当のこと言っても信じてくれるかどうか。


「よっ。目が覚めたか? 有奈」

「おにい……ちゃん……?」


 おお! 一年ぶりのお兄ちゃん頂きました! と感動するのもつかの間、有奈はハッと目を見開き俺から逃げるように離れていく。

 ……そんなにお兄ちゃんが嫌いか。


「な、なにしてるの? 兄貴」


 あぁ、兄貴に戻っちゃった。

 残念がりながらも、俺は演技を続ける有奈に小さく笑う。


「お前を助けにきたんだよ」

「そう……えっと、私を誘拐した男達は?」

「俺が倒しておいた。今は、裏路地辺りで気絶しているだろうさ」


 ちなみに、俺達は公園にいる。

 今では、他の人達がいるのであまり大きな声は出せない。有奈が慌てて、俺から離れたので周りにいた人達は、どうしたんだ? と一瞬だけこっちを見ていた。

 有奈も、周りに人がいたので冷静になり、俺の隣に座っている。


「ふーん……じゃあそこの子は?」


 おっと、ついにバルトロッサに。

 俺が奢ってやったフルーツたっぷりのクレープを食べている少女にしか見えないだろうが……有奈は、俺が異世界に行っているって知っているからな。


「うむ! 初めましてだな! 妹よ! 我は、バルトロッサ! 刃太郎とは、命をかけた戦をした仲だ!! まあ、今ではこいつの言い成りとなってしまっているがな」

「お前ー! なに余計なこと言ってんだ!! 勘違いされるだろ!?」


 悩んでいたら、先手を打たれた。

 間違ってはいない。間違ってはいないんだが……! 違うんだ。どう考えても、最初の部分は妄想だと思われるだろうが。最後がいかん!

 しかも、今のこいつは、見た目だけは美少女。

 銀髪ツインテールの美少女。クレープおいしそうに食べているような。いかんいかん……絶対勘違いされている。

 偶然、通りかかった女性の人達も勘違いしているような目で俺を見ている。

 これはいかん!


「ち、違うんだ有奈! こいつは、ただの馬鹿でな? 最後のやつは違うんだ! こいつがな? しつこく俺に付き纏ってくるんだよ! こ、今回は、俺が勝ったらってひとつ言うことを聞いてもらおうって条件をつけてだな」


 と、言ったところで。あれ? これもなんか考えようによってはやばいんじゃね? と思ったが、もう遅かった。

 通りかかった女子高生達が、俺を汚いものを見るような目で見ていた。


「あ、これも違う! 違うんだ!? そこの女子高生さん達! 違うからね!!」

「なにが違うのだ? 現に、我は貴様に負け、更にクレープとやらを供物に言うことを聞いてやっているではないか」


 お前は黙っていてくれー! やっぱり、こいつは帰らせるべきだったか……。


「ぷふっ」

「え?」


 どうしようかと脳内でフル思考していた俺だったが、いきなり吹き出した有奈に、思考が止まる。


「お兄ちゃん」

「な、なんだ?」

「……ありがとう。ちょっとだけ。うん、ちょっとだけ素直に、なってみるよ」


 ベンチから立ち上がり、微笑みかけてくれた有奈。

 そして、不意打ちのようにお兄ちゃんと言われて俺は顔だけがにやついていた。


「お、おう?」

「なーんて。じゃ、私は学校に戻るから」

「お、おい! 有奈!?」


 素直に? ということは俺、有奈を少しは更生することができたのか? なんだか、実感がない。いやだが、これで有奈との関係も少しは戻ってきたってことでよしとしよう! このまま、あの時みたいに仲のいい兄妹になれるように頑張ろう。

 さて……有奈が去ったところで。

 ちゃんと、周りに人がいないことを確認して。


「ロッサちゃーん。ちょっとこっちでお話しようか?」

「我はバルトロッサだ」

「いいから。ここにいる間は、お前はロッサと名乗れ。そして、空気を読むことを覚えてくれ」


 額に俺は人差し指でぐりぐりと擦りつけながら言う。


「空気を読む? どういうことだ。我は、何か間違ったことを言ったか?」


 しかし、この魔帝。まったくわかっていないようで。可愛らしく首を傾げる。


「お前のさっきの言動が、勘違いに繋がったんだ! 俺も釣られてやべぇこと言っちまったじゃねぇか!!」

「やばいことだと? 何もやばいことなど言ってはおらんだろう? 貴様は、何を言っているのだ。わからん奴だ」


 マジでこいつと関わる時は、周りに気をつけなければ……。

一章的なものが終わりました。

次回より、新章的なものが始まります! ラブコメ要素を増やそう、とは思っています。

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