プロローグ
「よっ!!」
「よっ。夏祭り以来だな。お二人さん」
それは、十月下旬頃。そろそろ目に付く木々は緑がなくなっていき、紅葉へと変化している。異世界交流バトルが終わり、俺はゆっくりとしていた。
相変わらず、周りの人達とは違った日常を過ごしているがな。ヴィスターラとの時間の流れが一緒になったことから、ナナミなどは夜のお泊り会などをリリーや華燐の家で何度かやっている。
アデルとは、この間山奥に行って久々に特訓をやったなぁ。リリアも、ニィに連れられて色々と見て周っていたようだし。
ちなみに出入り口は、俺達が住んでいるマンションにある。それと、行き来できるのは今のところ、ナナミ、アデル、リリアの三人だけ。
有奈達も、ヴィスターラに行きたいっていたけど、まだその辺は話し合い中。行くにしても、こっちとは違って危険が伴うから、俺がついて行く事が条件になりそうだとニィが言っていた。
(ヴィスターラか……まさか、こうやって簡単に行けるようになるなんてな。召喚された当時が懐かしいぜ)
「おい、聞いてるのか? 色男」
「聞いてるって。てか、なんだよ色男って」
とりあえず、今日は久しぶりに元クラスメイトの二人。
夏祭りの時に再会した二人と待ち合わせをして街に繰り出している。筋肉が目立つ芳崎と、めがねの藤原だ。
有奈と一緒に焼き芋を買って食べていたところに、久しぶりに会わないか? と連絡が来たのだ。その日は、有奈とデートを楽しみたく断ったが、日を改めてこうして出会った。
「色男は色男だろ。お前さ、この前のうさぎ耳の奥さんめっちゃ可愛かったじゃねぇか! しかもよぉ、お前が働いている山下書店! そこで働いているって!! しかもしかも!! 他のにも獣耳っ娘が複数!! 俺は見た……見たんだ!! お前にまるで主かのように獣耳っ娘達が頭を下げるのを!!」
「お、おい。落ち着けって藤原。人が見てるだろ?」
突然、大声で叫びだすから、周りの人達はどうしたんだとこっちを見ている。芳崎は、慌てて藤原を落ち着かせようとする。
あの時の視線って、藤原だったのか。どこから視線を感じるなぁって思っていたけど。
とりあえず、このままじゃ周りの人に迷惑だから落ち着かせよう。
「お、落ち着けよ藤原。そんなに興奮したら、周りに迷惑だし。お前には、可愛い彼女がいるんだろ?」
「ハッ!? し、しまった。つい昔の癖が……そうだ。今の俺には可愛い彼女がいるんだ。それなのに、また美少女に囲まれる色男なんかに嫉妬するなんて……!!」
よかった。彼女がいなければめんどくさくなっていた。
それにしても、この藤原を鎮めることができる彼女ってどんな子なんだろう。俺が、ただただ純粋に気になったので落ち着いた藤原に彼女のことを聞いてみた。
「なあ、藤原。お前が付き合っている彼女ってさ」
「知りたいか!!」
「お、おう」
「ふっ。仕方ない奴だな。お前にも、俺の彼女の可愛さを思い知らせてやるよ」
また始まったよ、と芳崎は苦笑い。あぁ……なんだか想像できる。芳崎も、俺と同じように彼女のことを聞いてこんな風に対応されたんだろうな。
かなり嬉しそうに、興奮した様子で藤原はスマホのトップ画面を見せ付ける。
そこには、これまた満面な笑顔をした藤原と噂の彼女のツーショット写真が。
「へぇ。この子が」
「どうだ? めっちゃ可愛いだろ? 見ろ、写真を撮られるってだけで頬を染めてしまい真っ直ぐカメラを見れず、ついつい俺のことを見てしまう姿を!!」
自慢するだけあって、かなり可愛い。
藤原と同い年ってことは、二十歳。栗色のセミロングヘアーで、前髪がちょっと長く目が隠れているように見える。
「名前はなんていうんだ?」
「巽咲子ちゃんだ!!」
「俺も会ったことあるけど、すげぇいい子だったぜ」
「そうか。よかったな、藤原。こんな可愛い彼女が出来て。大事にしろよ」
「言われなくても!!」
その後、俺達はゲームセンターで何度か格ゲーで対戦をし、クレーンゲームでどちらが先に賞品を取れるかの対決もした。
昼時になり、ファミレスへと赴き、空いている席に座って何を頼もうかなぁっとメニューを見ていたんだが……こちらを見る視線に気づいた。
ちなみに、俺達が座っているのは窓側の席だ。で、視線は外から感じる。藤原の知り合い? 違う。それじゃ芳崎? いや違う。
視線は、俺に向けられている。
(うわぁ……めっちゃこっちを見てる)
壁からひょっこりと顔を覗かせているうさぎ耳の女性。そして、黒髪と白髪の少女達。明らかに、サシャーナさんにコトミちゃん、コヨミの三人である。
まさか、天宮家の三人がファミレスで昼食を食べているとは誰が思おうか。
俺は、テーブルの下でスマホを高速で操作しサシャーナさんにメッセージを送る。今は、友達と楽しんでいるから介入しないように、と。
すると、返事がこれまた高速で返ってきた。
(わかりました。では、こっそり観察させていただきますね! か)
「ん? どうしたんだ、刃太郎。まだ決まらないのか?」
「あ、いや。もう決まった! 俺は、ビーフハンバーグセットにするわ」
「お前もか。んじゃ、俺は」
芳崎が何を食べるのかを決めている最中に俺は、返事を返す。
盗聴とかは止めてくださいよ、と。
そうしたら、ええ!? と驚いたスタンプで返ってくる。いや、当たり前ですよ。盗聴は犯罪です。……そういえば、俺も帰ってきたばかりの時、有奈達の会話を盗聴していたっけ。
ち、違うんだ。俺は、ただ聞き耳を立てただけなんだ。
「あ、そうだ! なあ、二人とも。今度の土日空いてるか?」
「土曜日はバイトだけど。日曜日は空いてるぞ」
「俺は両方空いてるな。なんでだ?」
問いかけると、藤原は怪しくくっくっくっとめがねを光らせながら笑う。
なんだか嫌な予感がする。
「UMAを探しに行かないか?」
なんじゃ、そりゃ。
六章は、ギャグよりの物語にしようと思っています。それでいて、ちょっと真面目。ファンタジーも忘れずに! 秋関係のイベントもあるかも!?
こんな感じです。




