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第二十七話「ぬるぬるを突破せよ」

活動報告には書きましたが、今日か明日にはこの作品のタイトルが変わります。

 ぬるぬるだ。

 かなりぬるぬるだ。そのぬるぬるさは、中々進めないほどのぬるぬるさ。そのぬるぬるとした液体が、道中に広がっている。

 第三コースは、そのぬるぬるな液体が広がる道を進みながらボタンを押していく。

 そんなコースを今、有奈とリリアの二人が必死に進もうとしている。

 コース全てにぬるぬるした液体が広がっているわけではない。

 ちゃんと、液体がない場所もあるのだ。あるのだが……やはりそれでも簡単には進めない。


「す、すっごいぬるぬる……! ボタンは、ここから見えるけどこうもぬるぬるしてちゃ……!」

「ふ、ふふふ。甘いですね有奈さん。こんなぬるぬるの道など、私にかかれば! はぶっ!?」


 苦戦している。

 すでに開始から、一分半が経とうとしているが未だにボタンをひとつも押せていない状態にある。それを第二走者の華燐とアデルトは心配そうに見守っていた。


「まさか、ここまでやるなんて」

「しかも、あの液体……ただぬるぬるしているだけじゃなさそうですね」


 それは、華燐もなんとなくだが感じてはいた。

 リリアは、ぬるぬるの液体を魔力で吹き飛ばそうと何度も心見ていたが、まるで液体に吸収されるかのように魔力が消えていくのだ。


「おそらく、あの液体は私の霊力でも吸収しちゃうかもしれない」


 だがしかし、これはこれでよかったと思っている。

 もし魔力が使えたのなら、そのままリリアが余裕でこのコースを突破してしまう。コースによっては、それぞれ違ったギミックが施されている。

 ここは、霊力や魔力などのエネルギーを吸収してしまうぬるぬるした液体が広がるコース。

 転ぼうとも、体中がぬるぬるしようとも、それでも立ち上がりボタンを押し突き進む。ただ、あまり派手に転びすぎると体にダメージが蓄積されて動けなくなってしまうのでは? 

 そんな心配をしていると、小型飛行艇が頭上に現れた。


『ども! レースもすでに第三コースに差し掛かっていますが。この第三コースは、ぬるぬるです! かなりのぬるぬるです!! しかも、魔力なども吸収してしまい増殖します!!』

『あ、でもご安心してほしいのです。第三のコースは、超衝撃吸収性なので怪我をすることはないのです』

「よ、よかった……」


 とはいえ、あのぬるぬるはかなり厄介だ。

 まだ有奈がリードしているが、リリアは派手に転んでいるせいかそれで前に前に進んでいるように見える。


「ふ、ふふふ。別に魔力が使えなくとも、やってやります。これは試練。神々が与えし試練なんです。これは、己の身ひとつで成し遂げなければならないんです!! 見ていてください、ニィーテスタ様!!」


 リリアが立った。

 今まで、ぬるぬるした液体で転んでいたリリアが気合と共に立ち上がり上空にいるニィーテスタを見上げる。


「私は、一番でゴールしてみせます!!」

『はいなのです。ファイトなのですよ、リリア』

「あぁ……なんて神々しい笑顔なんでしょう……」


 その笑顔に、リリアは涙を流した。

 しかし、そんなことをやっている暇などなかった。


「り、リリアさん! すでに有奈さんが一つ目のボタンを押そうとしていますよ!!」

「なんですって!?」


 アデルトの叫びに、リリアは驚愕する。視線を向けると、有奈は少しずつではあるが前に進んでいた。先ほどまで、それほど距離が離れてはいなかったはずなのに。


「よ、よし。これでひとつ……め!」


 ぬるぬるになりながらも、液体の中にあるボタンを押した。


『おぉっと!! 先にボタンを押したのは有奈選手です!』

「あわわわ!? このままでは、ニィーテスタ様にも。チームの皆さんにも……!」


 慌てるリリアだが、すぐに冷静さを取り戻す。焦ることはないと深呼吸をした後、リリアは……滑った。ただ、今までのとは違いまるでスケートのように滑っている。


「そ、そんな!」


 一つ目のボタンを押し、前に前にと進んでいた有奈は。その勢いに体が一瞬止まってしまう。


「甘いですね、有奈さん。私が今までずっとただ転んでいたわけではないのです! この方法を完璧にするための練習!! さあ、一つ目のボタンを押し、そのまま追い抜いてみせます!!」

「くっ!」


 このままでは、本当に追い抜かれてしまう。有奈も、必死にぬるぬるの液体を利用して滑りながらの移動を試みるがうまくいかない。

 そうしている間にも、リリアは一つ目のボタンへと向かっていく。

 そして。


「押しました!!」


 滑りながらも、右足で一つ目のボタンを押した。

 ……押したのだが、思っていたよりもボタンは大きな山のようになっており。


「いたっ!?」


 そのまま躓き、顔面から派手に転んでしまう。ずるずると自動的に進んでいるが、超衝撃吸収性の道だとしても、傍から見たらとても痛そうだ。


『これは痛い! とても痛そうだ!』

『でも、超衝撃吸収性なので蚊に刺された程度の痛みだと思うのです』

『なるほど。ですが、リリア選手。移動方法まではよかったものの、ボタンを押した後のことを考えていなかったようです!!』

「り、リリアさん……」


 危うく追い越されそうになった有奈だったが、より一層熱い闘志に満ちた瞳に変化する。前を、真っ直ぐ見詰め液体がないところに両手を置き少しずつではある進んでいく。


(私には、お兄ちゃんや華燐ちゃんのような力はない。だけど、それでも諦めない!)


 二つ目のボタンまではまだ距離がある。派手に倒れたリリアも体勢を立て直し、追い越そうと進んできている。

 そこで、有奈が取った行動は。


「それ!!」


 リリアのように滑り出した。真っ直ぐ、真っ直ぐ進み勢いよく右足がボタンに触れる。


「はぶっ!?」


 触れるも、派手に転んでしまった。けど、これも想定内。このコースが超衝撃吸収性で、ぬるぬるした液体があるからこそできる芸当。


「痛くない!!」


 ちょっと鼻が赤くなっているが、本当に蚊に刺されたぐらいの痛みだった。リリアも、どんどん近づいて来ている。

 負けられない。

 自分達が、最後の走者にバトンを渡すんだ。その必死な気持ちが伝わってくるほど、二人の表情は真剣なものだった。


「待っていてくださいよ! ナナミさん!!」

「今行くからね! リリーちゃん!!」


 激しい意地の張り合いは、いよいよ決着の時を迎えようとしていた。転びながらも、ぬるぬるした液体が体操服の中に入ろうとも、二人は戦った。


『四つ目!!』


 それぞれ違う最後のボタンを押す。若干、リリアのほうが早かったが。今の二人はそんなことを気にしてはいない。

 後はこの道を抜け、最終走者のところまで駆け抜けるだけ。

 お互いに一気に滑り、苦戦したぬるぬるコースを抜けた。


「あっ。液体が……」

「コースを抜けた瞬間、消えるように」


 文字通り、体に纏わりついていた忌々しい液体は消え去った。これで、踏ん張れる。まともに走れる。

 同時に、睨み合い。

 同時に、足を踏み出す。


『さあ、第三コースを抜け。いよいよ最終コースへ!! 果たして、この試練に勝利するチームはどっちなのでしょうかー!!!』

『チャンネルはそのまま! なのです』

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