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第十六話「記憶力の試練」

 とりあえず、特徴的な絵を重点的に覚えておこう。

 大体は、その特徴から名前が来ているものが多い。その特徴を頭の中にいれ、その特徴と合わせて名前を覚えるんだ。

 おそらく、簡単なものではないだろう。

 こういう記憶力で勝負をするものは、簡単なものに混ぜていきなり難しいものを投入してくることがある。逆にいきなり難しい問題を出してくる可能性もある。

 

 残り時間は二分を切った。

 今のところ、十枚ぐらいは覚えているはずだ。幸い、ヴィスターラにあるものは俺が見てきたものばかり。この辺りは、間違えることはないはず。

 しかし、この空間にはまだまだ絵がある。

 再度数えたが、おそらく五十は越えているだろう。しかも、明らかに俺達の身長よりも高い場所にも絵が飾られている。

 絶対あの辺りからも出るはずだ。そのためなのだろう。望遠鏡とかはしごがあるのは。


「ゴリゴリス? うわぁ、なんだか凄く筋肉モリモリなリスさんだね。だからゴリゴリスなのかな?」

「ヴィスターラにはあんな生物がいるんだね」


 と、リリー、有奈がヴィスターラに生息している特長的なリスを望遠鏡で見ているが。違うんだ二人とも。俺も最初はゴリラみたいな腕をしたリスだからそういう名前なんだと思っていたが。

 実際は、ゴリゴリと骨ごと生き物を磨り潰し餌として食べてしまうリスだからゴリゴリスなんだ。

 このことは、二人には内緒にしておこう。

 幸い、絵のほうも腕があれなだけで可愛らしいリスが描かれている。知らないほうが良い事もあるってことだ。


「あ、あの刃太郎さん。ちょっといいですか?」

「どうした?」


 残り時間もそれほどないという時に、華燐がなにやらどう反応していいかわからないような表情で俺に声をかけてきた。

 有奈とリリーも連れて、とある絵の前に辿り着く。

 そこには……。


「こ、この絵って」

「もしかして、ヴィスターラの?」

「どうすれば、いいでしょうか?」


 とてもすごいキメ顔で玉座にどっかりと座っているオージオの絵があった。そして、その下の名札には神級イケメン創造神オージオと書かれている。

 俺は、無視しようと最初思ったがこれはオージオを開催したもの。絶対、これは出てくるに違いない。じゃなきゃ、こんなものを用意するはずがない。

 ただ自分を見て欲しかった、知って欲しかったというのもあるだろうが。


「よし、皆。これは確実に覚えておくんだ。名前はここに書かれている通りにな」

「は、はい!」

「わかったけど……この絵、あっちにもあるのかな?」

「たぶん、あると思う」


 この絵のせいで緊張感が崩されそうになったが、制限時間が迫る中俺達はできる限り絵とその名前を覚え、そして。

 ビー!! というアラーム音が鳴り響き、俺達の体は光の粒子に包まれる。


『お帰りなさいませ!! 皆さん、どうでしたか? より多くの絵を覚えることはできたでしょうか?』


 あの会場へと戻ってきた。

 ちらっとオージオのほうを見るとどこか満足げなそれでいて期待に満ちた表情をしていた。確信犯だなこれは。再度視線を向きなおし、ヴィスターラチームのことを見る。

 ロッサ以外苦笑いをしている。

 ロッサは、ジト目で若干イライラしていた。おそらくあの絵を見たせいだろう。そして誰かに絶対あの絵は間違わないようにと言われ、魔帝としては嫌なんだろうな。


『それでは、さっそくですが忘れないうちにフリップを各チームに配布致します! 問題は全部で五問! 一人正解する毎に十ポイント加算されます! では、お手伝いさんたちー! お願いしまーす!!』


 サシャーナさんの声に、お手伝いさん達がフリップを抱え現れる。

 とても見覚えのある人達だった。

 

「……えっと」

「あうぅ……あ、あまり見ないで」

「あ、すみません」

「刃太郎さん。最近、御夜様はコスプレに興味をしめ」

「い、言っちゃだめ!」


 俺のところに来たのは、御夜さんだった。しかも、なぜかバニーガールの格好をした。豊満なバストがそれはもう見事に谷間を作って俺にこんにちはをしている。

 見ないでと言われても自然と見てしまう。

 これが男の性ってやつさ……。

 さくらもバニーガールになっているが、まあ恥ずかしがることなく御夜さんがコスプレに興味を示していることを暴露してしまう。


「ほい。これが一問目の絵ね」

「た、大変ですねリフィル様」

「まったくよ。でも、逆らったら地球に滞在するのを禁止するって言ってきたからね。やるしかないでしょう」

 

 アデルが心配そうに声をかけるも、表情ひとつ変えずフリップを配っていくリフィル。ちなみに、彼女もバニーガールの格好である。

 ナナミ、アデルの二人は苦笑いをしているがリリアはとても興味津々に観察していた。最後に、ロッサだがまあ、鼻で笑っているな。

 

『絵がいき渡りましたね? では、さっそくですがお答えください!』


 サシャーナさんの合図に俺達はフリップを表に返す。そこに描かれていたのは……さっそくあのオージオの絵だった。

 俺は、思わずヴィスターラチームのほうへと視線を向けてしまう。

 ものの見事に視線が合ってしまった。

 だが、俺はすぐに視線を絵に落としすらすらと名前を描き、横にあるボタンを押す。これが出来上がったという意思表明になるらしい。


『おっと、両チーム早い! 一分も経たないうちに全員が名前を書き終えたようです!! これは、どう見ますかニィーテスタさん』

『おそらく、最初はサービス問題が出てしまったのだと思うのです。両チームの表情を見れば一目瞭然なのですよ』

『ちなみに、私達は両チームが出来上がってからどんな絵なのかを知らされます。なので、どんな絵なのかはまだわかっていません!!』


 だから、司会としてそれで良いんですか? 本当の番組だったら問題ですよ。だが、これは別に番組ではないので問題は無いのだろう。 

 毎度の如く、黒子さんが答えが書いてある紙をサシャーナさんとニィに手渡した。

 それを確認した二人は……あーっと察したように声を漏らす。


『では、両チーム答えを声に出して宣言しフリップを提示してください!! まずは一番目の方々から!!』

「神級イケメン創造神オージオ」

「お、同じく神級イケメン創造神オージオです」


 わかっていたことだが、両チーム同じ答えだったのでもう三人目からは右に同じくとか地球チームと同じですなどを言っていく。


『両チーム答えがでましたね。というわけで、正解を発表致します! 第一問目の答えは……』


 軽快な音楽が流れ緊張感が会場を包み込む。

 別に緊張はしていないんだけどな。


『神級イケメン創造神オージオです!! 全員正解!! なんと! 最初から両チーム全員が正解です!!』

『素晴らしいのですー』


 当然の結果である。

 というか、全員同じ問題ならわざわざフリップを渡す必要はないんじゃないかと。そんなことを思っているとサシャーナさんがこんなことを説明する。


『えー、ちなみに二問目からは両チーム違う絵となります』

「おい!! だったら、最初の問題はなんだったのだ?!」


 バン! とテーブルを強く叩き講義の声を上げるロッサ。うんうん、わかる。その気持ちはわかるぞ。だが、誰もがわかっているだろうそんなこと。

 

『ただ言って欲しかっただけだ!!』

「き、貴様……!」


 ですよねー。会場中に響き渡るオージオの声に、ロッサは怒り心頭し、他の皆は知ってたという表情をしていた。


『そ、それでは第二問目に行きます! ロッサ様。どうか落ち着いてください。どうどう!』


 ロッサはまだ言いたい事がありそうだが、大人しく座ってくれた。

 そこへ、またもやバニーガールズが現れ最初のフリップを片付けながら二問目のフリップを配布していく。


『ちなみに、その絵は響様とコトミ様、コヨミ様の三人で描いて頂きました! とても素晴らしい絵ですよね』

『はいなのです。しかも、ワープ先の絵も三人で描いたようなのです。特に、響くん画力には惚れ惚れしちゃったのですよ』


 へぇ、コトミちゃんとコヨミはなんとなくわかるけど。まさか、響がな。ちゃんとお手伝いとして、頑張っているみたいだな。


「響くんってこんなに絵がうまかったの?」

「わ、私も知らなかった。響は、あんまり自分のことを話さないから」


 どうやら、姉である華燐も響はここまで絵がうまいことを知らなかった様子。さて、そのうまい絵だが……ん? 魚か。

 髭が長い、ナマズではなさそうだな。結構ヒレに特徴があるような気がするが。


『さあさあ、一問目から一変。悩んでいる人達がちらほらと見受けられますね』

『やはり、一問目はサービス問題。ここから本番ということなのです』


 そうここからが本番だ。

 最初のように簡単なものではなくなる。自分の頭の中を全力で探り、正確な名前を書いていかなくては。

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