第十五話「異世界交流バトル開始」
「お待たせしました!」
「おはようございます。もしかして、私達が最後ですか?」
「そうだけど、大丈夫だぞ。まだ九時まで十分近くあるからな」
異世界交流バトル当日。
参加するチーム全員時間に遅れることなく集合することができた。集合場所は、俺が住んでいるマンションの中。
すでに、次元ホールは開いており、後は入るだけになる。
「それにしても、異世界同士のバトルなのになんだか衣装地味じゃない?」
「でも、動きやすい格好のほうがいいって言っていたから」
「自然とこうなっちゃう、のかな?」
「俺は、一年ぶりの体操服だな。まあ、こっちでは四年ぶりになるんだけど」
動きやすい服装ということで、俺達は全員一致で体操服となった。俺達地球チームは赤色で、胸の辺りに地球という文字が書かれている。
そして、ヴィスターラチームも同様に胸の辺りにヴィスターラと書かれており、体操服の色は青だ。
「天宮家が即座に作った品です。ちゃんと、動きやすく尚且つ体に違和感を与えないように作っておりますので」
そう、これは天宮家が作ってくれた体操服。
前日に駿さんとサシャーナさんが届けてくれたもので、とても着心地がよく体にかなりフィットしている。
「そういえば、お姉ちゃん達はもう中に?」
今いるのは地球チームとヴィスターラチーム。そして、ニィと舞香さん、駿さん。その他のサポート役はすでに中に入っている。
「はいなのです。すでに中に入って準備万端とのことなのです。全員、準備はオッケー?」
次元ホールの前に立ち、ニィは俺達に問いかける。
俺達は、顔を見合わせ一斉に頷く。
「もちろんだよ。いくら相手が刃太郎くん達でも負けてあげないから」
「刃太郎先輩。今日は、勝たせてもらいますよ」
「全てはニィーテスタ様のため! ヴィスターラのために! 勝負です、地球チームの皆さん!!」
「まったく。我が勇者一行と組むことになるとは……だが、こうなってしまったのなら我は全力を尽くすまでよ!」
やる気満々のヴィスターラチームのオーラがひしひしと伝わってくる。
「当然だ。手加減なんてしたら、俺達はあっという間に勝利を掴み取るからな! 勇者の力、見せてやる!!」
「負けないよ、ナナミちゃん! 代表に選ばれたからには全力だよ!!」
「こういう展開結構いいよね! 燃えてきたー!!」
「でも油断だけはしないようにね。世界を救った人達と世界を支配しようとしていた魔族が相手なんだから」
俺達も負けてはいない。
これが命をかける戦いではないことから、三人もやる気に満ちている。まあ、もしそういうものだった場合は俺が全力で阻止しに行くけどな。
今日は、純粋に競技をする感覚で戦う。
「お互い気合い十分みたいですね。では、いざ出陣! なのです!!」
「いってらっしゃいませ、皆さん。良き戦いを」
「戻ってきたら、パー! とパーティーをやるそうよ。頑張ってね! 皆!!」
大人二人に見送られ俺達は異世界交流バトルの会場へと足を踏み入れた。
・・・★・・・
『さあ! いよいよ始まりました、異世界交流バトル!! 次元を飛び越え! 文化が交わる!! しかし、我々は同じ人! 皆さん? 今日は命の奪い合いではありません! 楽しく! 熱く! そして、力を合わせてレッツバトル!! 今回、司会、実況を務めますは私、サシャーナ! そして、解説は』
『ニィーテスタなのですよ~。よろしくなのです~』
『はい! よろしくお願いします!! さて、さっそくですが解説のニィーテスタさん。今回の異世界交流バトル。どんな展開になると思いますか?』
始まって早々、サシャーナさんの暑き実況が響き渡る。
サシャーナさんが、お手伝いという時点でなんとなく察していた。そして、会場に入った瞬間それっぽいものがあったので、あっこれは確実にそうだなと。
俺達は、今まるでクイズ番組でよく見るセットに座っている。ちゃんと地球チームとヴィスターラチームに分かれており、お互いに向かい合っている。
順番は、俺、有奈、華燐、リリー。ナナミ、アデル、リリア、ロッサだ。
会場も、なんだかクイズ番組のセットのような感じで、なぜかカメラまで回っている。なんだあのディレクターは。
真っ黒じゃないか。いったいどこに流すっていうんだこれを。
当然実況席には、サシャーナさんとニィが座っている。その後ろには、VIPルーム的なものがありそこにオージオとグリッドがいた。
『バランスを考えると、ヴィスターラチームが優先に見えますが。それは試練内容によって変わる可能性があるのです。やはりここは、始まってみないことにはなんとも言えないのですね。あ、でも刃くんには頑張って欲しいのです。刃くーん! ファイトなのですー!!』
と、俺に手を振ってくるニィ。それを羨ましそうにして、俺のことを睨むリリアとまあまあと止めてくれているアデル。
『個人的な応援ありがとうございます! ですが、私は今回中立な立場として公平に実況していこうと思います! さて、解説のニィーテスタさんの言葉も貰いましたので。そろそろ試練を……はい、はい。わかりました』
黒子のような者から何か紙を渡されるサシャーナさん。
マジで、その人達なんなんだ。
『今、第一試練の内容が書かれた紙が私の手に渡りました!!』
「今まで知らなかったんですか!?」
『はい! 申し訳ありません! 始まる直前まで内緒になっていたんです!!』
それはそれで大丈夫なのか? 司会と実況を務めるんですよね? これには参加チーム一同苦笑い。
『こほん。では、改めまして。第一の試練の内容をご説明いたします!! まずは、ワープ!!』
「え?」
刹那。
俺達は、たくさんの絵が飾られている場所にワープした。どうやら、ヴィスターラチームは俺達とは別のところにワープしたようだな。
「な、なんだろうここ。美術館?」
「それにしては、なんだかシンプルっていうか」
突然のワープに若干困惑している有奈とリリー。そんな中、華燐は近くにある名札がある絵を見詰めていた。
『あー、あー。皆さん! 聞こえていますか? 突然のワープに驚いていると思われますが。これは第一の試練をやるためにとても大事なことなんです!』
しばらくすると、サシャーナさんの声が広い空間に響き渡る。
『第一の試練は記憶力対決!! 今から、両チームにはその空間にある名札がある絵を記憶してもらいます。制限時間は五分!! その間にたくさん記憶してもらい再び会場へ戻って貰います! そして、こちらから絵が描かれたフリップをお渡しします。その絵の名前を書いてもらい、より多く正解したチームの勝ちとなります!!』
なるほど、だからこの空間には絵がたくさんあるのか。
ん? だが待て。
「サシャーナさん! 見たところ、地球とヴィスターラのものが混ざっているみたいなんですけど!!」
おそらくこっちからの声は聞こえているはずだ。
よく見たら、地球だけにしかないものと、ヴィスターラにしかないものが混ざっている。おそらく、あっちも同じようなものだろう。
『その通りです! 今回は、両方の文化を取り入れています。ですがご安心ください、そこまで難しいものは入っていませんので。……入っていませんよね?』
『入っていないと思うのです、たぶん』
大丈夫なのか、この司会と解説。
まあ確かに、見た感じ特徴的なものしかないような気がするけど……。もしこれが、名前にあった絵を描いてくださいなんて言われたら大変だったな。
いや、どちらにしろ名前を答えるのも難しいか。ざっと確認したが、ここにある絵は全部で三十枚近く。それを五分で覚えるってことか。
出題されるものもランダムだと思うし、これは全部を覚えるよりは、絞って覚えたほうが正解率が上がるかもしれない。
『他にご質問はありませんか? ……はい、ないようなので。さっそく記憶ターイム!! 先ほども言いましたが制限時間は五分です!! 制限時間が来ましたら自動的にワープすることになっていますのでご安心ください! ではでは、ストップウォッチ……ぽちっとな!!』
ついに始まった第一の試練。俺達がいる空間の中心に現れた数字。それはゆっくりと時間を刻んでいた。
記憶力勝負か。
いきなり、頭を使う試練とはな。だが、やるしかない。まだこれはジャブ程度のはずだ。ここで、躓いていたらこの後に控える試練には打ち勝てない。
記憶力がなんだ。
覚えてやるさ……これぐらいの数なんて、どうってことはない!
第一の試練は記憶力!
記憶力かぁ……正直、自分は自信がありません。好きなものに対しては多少良いほうなんですがねぇ。




