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第十三話「神の戯れ」

「お待たせしました、チーズカレー牛丼とカルビ定食になります」


 オージオから異世界交流バトルの試練内容や日時などがニィに届いたようだ。あの時、俺は全員を呼び出して教えるように言ったんだが。

 いったいなにがあったんだろうか。

 そんなこんなで、丁度昼飯を食べるために牛丼屋に来ていた俺は、ニィが来るまで待ち一緒に昼食を食べながら教えてもらうことにした。

 ちなみに、俺がチーズカレー牛丼で、ニィがカルビ定食だ。


「んで? どうして、おっさんはお前に? なにか諸事情でもあったのか?」


 スプーンで掬いつつ、俺は問いかけた。

 ニィは、カルビで野菜を包みながらこう答える。


「別にそういうことではないようなのです。ただ、こう言っていたのです。試練は、当日のお楽しみ、と」


 あのおっさん、そうきたか。

 なにかしらあると思ったが、試練内容は当日まで内緒とは。おそらく、そのほうがより楽しめて、スリルがあるだろ? みたいなことを言い出すんだろうな。


「なるほど。まあその辺は、なんとなくわかった。じゃあ、試練開始の日時とか場所とかを聞いておこうか。それとメンバーも」

「はいなのです。えっと」


 箸を一度置いて、一枚の紙を取り出す。

 ちなみに、現在は俺達が座っている場所は店の端っこにある席。ほとんどの客がカウンター席で食べており、俺達の会話はそう簡単には聞こえないだろう。

 まったく、どうして牛丼屋で異世界同士のバトル内容を聞かなくちゃならないのか。


「開始日時は、地球の時間帯で、三日後の朝九時から。場所は、オージオ様が用意した特別空間で行われるそうなのです。移動は、私の次元ホールで移動するのです」


 三日後か。準備期間は二日あるけど、試練内容がわからないんじゃ、準備にしようがない。こうなったら、覚悟というものを全力で準備するしかないな。

 水をくいっと飲み、ニィの説明を聞き続ける。


「そして、気になるメンバーは……まずヴィスターラチーム。ナナミ、アデルト、リリアの三人に加え」

「加え?」

「私は、まずカルビを咥えるのです」


 まあ冷めちゃうからな。

 一旦、冷める前にある程度ニィにカルビ定食を食べさせてから、再び説明を聞きなおす。


「では、四人目なのですが。なんと!」

「なんと?」

「バルトロッサなのです」

「まあ……妥当っていうか。なんとなく予想はしていた」


 あいつもヴィスターラ出身てことになるからな。予想はしていたけど、本当にメンバーに加えてくるとはな。本人が聞いたらなんていうか。


「次に地球メンバーなのです。刃太郎率いる、有奈、華燐、リリーの四人チーム、と書かれている」

「……え? なんか、バランスがおかしくないか?」

「確かに。でも、そう書いてあるのです」


 ちょっと見せてくれと、チームのメンバーに耳を疑った俺はニィから紙を受け取る。ざっと確認したが、うん。間違いではないみたいだ。

 俺は、紙をテーブルに置き頭を抱える。


「あのおやじ……何を考えてるんだ」


 どう考えてもチームのバランスがおかしいだろ。こっちには一般人が二人もいるのに対し、あっちはオールファンタジーチームって。

 いつものメンバーだから、安心はできるけど。

 ここは、コトミちゃんとかコヨミとか御夜さんとか能力のある人間を選ぶだろう普通。

 でもこれは俺のミスでもある。ちゃんと、メンバーに関して言っておけばよかった。


「もしかすると、試練内容がそこまで危険なものではない、からという可能性もあるのです。そうでなければ、能力のない二人をメンバーに入れるわけがないのです」

「確かにそうだな。そうだといいなぁ」


 と、内容が書いている紙に目を落とすとまだ続きがあった。


「お手伝いメンバー。ニィーテスタ、リフィル、コトミ、コヨミ、サシャーナ、御夜、響。このお手伝いってのは?」

「おそらく、試練の時に必要なものを準備したり、片付けたりするメンバーのことだと思うのです。オージオ様から当日はお前にも色々と頑張って貰うと言われたのです」


 まさか、こっちに必要なメンバーを入れられているとは。

 まあでも、サシャーナさんはヴィスターラでも地球でもないし。コトミちゃんはまあ地球人の血が混ざっているけど、コヨミも似たようなものか?

 だけど、御夜さんと響は違うだろ……せめて控えに入れてくれるとかさ。


「ともかくだ。何かあった場合は、おっさんをぶっ飛ばせば良いだけの話だ。さっそく、有奈達に知らせないとな」


 異世界交流バトルなるものがあることは知らせてある。だが、自分達がメンバーに選ばれるなんて思ってもいないだろうな。

 残りのチーズカレー牛丼を平らげ、ニィが食べ終えたのを確認し帰ろうと思った刹那。

 電話を受信。


「もしもし」

『お腹空いたー!! 早くなにか買って来てー!! 飢え死にしちゃうー!!』

「……」


 無言で電話を切り、俺はそのままレジへと向かった。


「すみません。持ち帰りお願いできますか?」






・・・☆・・・






「くっくっく。いやぁ、楽しみだなグリッド! 当日は酒とつまみを持っていくぞ!」

「ほどほどにしてくださいね。それにしても、試練内容を教えなくて本当によかったんですか?」


 青空が広がる花畑にて、平らな岩にどっかりと腰を下ろし、創造の神オージオは楽しそうに笑っていた。

 先ほど、ニィーテスタに異世界交流バトルの内容が書かれた紙を渡したところだった。


「いいんだよ。そのほうはスリルがあるし、当日の楽しみが増えるだろ?」

「試練は、楽しむものではないのですが……今回に限っては、内容が内容ですしそういうのもありなのかもしれませんね」

「だろ?」


 当然、グリッドも試練の内容を把握している。

 だからこそ、言えることだ。

 しかし、もうひとつ気になる事がある。メガネの位置を直し内容が書かれた紙をじっと確認する。


「ですが、地球側のメンバーはこれでいいのですか? バランスを考えると、手伝いのほうにいるメンバーから二人を選んだほうが僕としては良いと思うのですが」


 地球チームのメンバー。

 リーダーの刃太郎、そして地球人にしては能力が高い華燐まではわかる。だが、ヴィスターラチームを考えると、後の二人。

 刃太郎の妹である有奈。そしてその友達のリリー。この二人は、明らかに一般人だ。事前集めたデータからは、一般人にしては能力は高いようだが。

 他のメンバーと比べると、普通の人間より高い程度なのだ。対し、ヴィスターラチームには勇者と一緒に世界を救った三人に加え、このヴィスターラを支配しようとしていた魔帝。


「俺は言ったはずだよな? 異世界交流だって。純粋にその世界の出身の人間を選んだ結果だ。それに、刃太郎も妹とその友達がチームだったら気楽で良いだろってな」

(本人からしたら、迷惑極まりないと思いますが。今頃、オージオ様へ怒りなどの感情を抱いているでしょうね)


 可哀想に、と刃太郎と有奈達のことを考えため息を漏らすグリッド。


「ん? どうした、ため息なんて漏らして」

「いえ。なんでもありませんよ。では、休憩はこれで終わりです。さっそくですが、会場の製作に取り掛かりますよ」


 試練内容や、チーム分けなどは決めたが。まだ肝心の会場ができていない。神々の聖域は、ヴィスターラとも地球とも時間の流れが違う。

 むしろ、時間の流れを自分達で決められるまである。

 とはいえ、今は地球と同じ時間の流れにしている。いずれは、ヴィスターラも地球と同じ時間の流れにしようとは考えているそうだが、さすがの神でも世界が違うとそう簡単にはやれないようだ。


「おいおい。まだ時間はたっぷりあるんだぜ? もう少し、ゆっくりしていてもだな」


 だからこそ、オージオはゆっくりしようと言うが。


「だめです」

「せめて、一杯やってから」

「だめです」

「たく、お前は真面目だなぁ相変わらず」


 真面目な補佐役のグリッドに、仕事をしてくださいと急かされオージオは眉を顰めながらも次元ホールを出現させる。


「んじゃま、ちゃっちゃと会場を作ってゆっくりするかな。一日半もあれば余裕だろ」

「本気を出せば半日できますよね?」

「馬鹿野郎! ひとつの試練につきひとつ会場を作るんだ。それにやるからには丁寧且つ本格的に作らないとな」


 この日のために、ニィーテスタに地球の文化を知るための情報源を色々と持ってこさせていたオージオ。二つの世界のバトルだ。

 会場も二つの世界の特徴をしっかり入れておく必要がある。そのほうが、両チームとも落ち着くうえにやる気も出るだろうという考えなのだ。


「それと、作った後にちゃんと動作するかひとつずつ確かめる必要がありますね」

「それはお前がやってくれ」

「だめです。オージオ様も参加してください」


 了解了解、と軽く返事をしオージオは会場製作へと取り掛かった。

さあ、いよいよ始まる異世界交流バトル! 果たして、試練の内容とは! そして、地球チームは勝てるのだろうか!?


というわけで、次回お楽しみに。

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