プロローグ
最近新作を出したのに、また新作……エタラない程度にゆらりと頑張りたいと思います。
今回のは、異世界召喚で役目を終えた最強主人公が現実世界で色々とやる、という作品です。
異世界召喚。
ファンタジー小説にはよくある設定だが。実を言うと、俺、威田刃太郎はそんな異世界召喚を実際に体験した男。学校の帰りに突然魔方陣が展開し、俺は魔帝なる者を倒す勇者として召喚された。
俺は、なんかよくある展開というかあれな感じですげぇ剣を手に数々の強敵達と戦い、最終的には魔帝を倒すことに成功した。
そして……使命を真っ当した俺は、こうして一年ぶりに地球へと帰還。
年齢的に、俺は高校二年生。
しかしながら、一年も行方不明になっていては絶対何かしらの変化があるだろう。例えば、家族が悲しみ絶望に……そんなことをいつも考えていた。
だって、俺は実の親を失っている。今は、生き残った最愛の妹の威田有奈と共に母親の妹である瀬川舞香さんと一緒に暮らしていたんだ。
小学生低学年頃から育てて貰ったお礼として、俺は高校生になり、バイトを始めた。
俺の通っている高校はバイトオッケーなところだったのが幸い。
更に、バイト先の本屋は、どうやら舞香さんの友達が経営しているところだったらしく、よくしてもらっていたんだが……一年も経っているからなぁ、クビとかになってそう……。
「……ふう」
俺達が住んでいるのはマンションだ。
そこまで大きくはないので、部屋はふたつ。ひとつは、舞香さん。もうひとつは俺と有奈の相部屋となっている。有奈は、別に拒否することなく着替える時でさせ普通に下着姿を見せるほど。
妹は、俺と三つ違い。
俺が高校生の時は、妹は中学一年。
はっきり言って、可愛い妹だ。中学生になっても純粋無垢なままで、大和撫子を思わせる長い黒髪を靡かせ、真珠のような肌はとてもぷにぷにしている。
いつもいつも、俺の後ろからお兄ちゃんっと甘えた声でついてきていた。
「大丈夫だ。笑顔で……笑顔でただいまと言うんだ。俺は帰ってきた。家族に会うために……!!」
ドアノブを捻る。
どうやら鍵は閉まっているようだ。だが、抜かりはない。ちゃんと合鍵は持ってある。それを使い俺は中へと入っていく。
鍵がかかっているということは、二人とも出かけているということだ。
「懐かしいな……全然変わってない」
中にはいるとまず見えるのは扉四つ。
一番近くにあるのはトイレ。その正面が風呂場。更に隣が俺と有奈の部屋でその正面が舞香さんの部屋となっている。
リビングに行き、俺はソファーにどかっと腰を下ろす。
正面には薄型のテレビ。
見渡せば、キッチンやテーブルに椅子。よくあるマンションの風景だ。
「昼か……じゃあ、しばらくは二人とも帰ってこないな」
舞香さんは、早くても十八時過ぎに帰ってくる。有奈は、いい子だからな。寄り道せずに真っ直ぐ帰ってくるので十七時前に絶対帰ってくる。
部活にも入っていなかったので、尚更早い。それから、俺と共にゲームをしたり、楽しい話をしたり……。
「さて。久しぶりに、街に繰り出してみるか」
帰還した時は、マンション近くだった。
戻る時は、魔帝を倒したことで得た送還魔法で場所を指定して帰還。さすがに、戻ってきた瞬間を見られるわけにはいかないからな。
服装も、大事に保管されていた通っている高校のブレザー。
この格好じゃ、絶対目立つだろうし私服に着替えてからいくとしよう。そう思い、部屋へと入る。
……ここも変わってないな。
「あれ? 木刀? なんでこんなものが」
変わっていないと思いきや、なぜか木刀が立てかけられていた。買った覚えがないので、おそらく有奈のもの? だが、あの有奈が木刀を買うなんてありえない。
まあ……こんな小さいことは気にしないでおこう。
タンスには……おお! まだ入ってるじゃないか。とりあえず、簡単なジーンズとTシャツでいいか。どうやら、今は夏近いようだし、暑かったからなぁ。
・・・・・
「やっぱり一年も経てば変わってるもんだな。お? あんなところにコンビニなんてなかったのに……おお! あそこにあった小物屋が消えてる!? あそこ、有奈のお気に入りだったのに……」
街に繰り出した俺は、一年で大分変わった街をまるでタイムトラベルした感覚で探索をしている。なかったところには新しくでき。
あったものは、なくなっている。
まあ、一年経てば変わるよな。
あれ? 総理大臣が変わってる。俺が高校生の時は就任したばかりだったのに。
はて? 俺が買っていたライトノベルがもう十三巻まで!? まだ二巻ほどしか発売していなかったはずでは……。
建物類ならば、一年もあれば変わるだろうけど。ライトノベルなどは、大体五ヶ月ぐらいのペースで一巻出るはずだから。
一年だと、二巻から三巻ぐらいのはず。
……嫌な予感が頭を過ぎる。
そういえば、こっちと異世界では時間経過に差があるとかなんとか……。まさか、まさか! まさかの……!
「あー、今日も運がなかったね」
「まったくだよ。この鬱憤を晴らすためにカラオケにいかない?」
不良か?
嫌な予感がしていた俺の視線に、不良であろう女子達が。ゲームセンターで負けに負けたのだろうか。結構苛立っていた。
そして、最後に出てきた女子。
俺は、その子を見た瞬間なぜかはわからなかったが……いや、これは当然だったのか。見た目的に随分と変わってしまっていたが……わかったんだ。
「有奈……?」
我が最愛の妹である有奈。
いつの間にか立派に胸が大きくなっており、背は……低いほうかな。だが、問題はそこじゃない。
「そうだね。今日は、夜まで騒ごうか!!」
「いえーい!!」
「あ、こういうのどう? 一番高得点を取ったら一本ジュースを奢る」
「あ、それいいね! 一本勝負だからね! あたしの美声を聴けぇ!!」
茶髪。
あの大和撫子のような漆黒の髪の毛が……ふ、不良になってるぅ!? 俺の妹がぁ!?