第3話 壊れた街
子供部屋の窓から脱出したレジナ達は急いで車に乗り込む。ハンドルを手にしたレックスは未だに状況が理解出来ていない。
「レジナ、一体これは何なんだ?!…街が大変なことになっているぞ…」
窓から見える光景は実に凄まじかった。止まっているとあるキャンピングカーの窓は赤く染まり、白い家の扉には赤い手形がついていたり、火災が発生したりなど人の気配も感じない。
「どうなっているんだ、レジナ…」
困惑を隠せないレックスはレジナに問う。
「私もわからないわ…、ただニュースを聞いたのよ。『死人が歩き回っている』って報道されていたわ…。」
「死人が?…もしかしてあの時子供部屋のドアを叩いていたのは…。」
レジナはゆっくり頷き
「そう、きっと死んだメイソンさんよ。あの時私がニュースを聞いていなかったらきっと襲われていたわ。」
しばらくすると2、3人の人影が見えてきた。するとそのうちの1人が気づいたのかこちらへ向かってくる。
「…!レックス!そのままスピードを上げて!」
明らかに人では無かった。先程の血を流して死んだ隣人よりも重症を負っていて、普通の人間では死んでいる程の傷だ。ブォンという車の音に他の2人もこちらに気付き向かってくる。
「きゃあっ!!」
ドンッとそのうちの1人が車に覆いかぶさってきたのだ。その顔は皮膚がめくれて歯茎等が露出していた。目を見ると充血していて血走った動きをしている。フロントガラスに歯をガシガシと当て、中にいる人間に噛み付こうとしている動きだ。
「レックス!ハンドルをきって!」
レックスはレジナの声に反応し無理矢理ハンドルをきった。すると、覆いかぶさっていた人ではないものは振り下ろされる。すると、レジナ達が乗っている車はもう2人の方へ向かっていってしまう。
「レジナ!子供達!捕まってろッ!」
レックスは思い切りアクセルを踏みそのまま目の前にいたものを跳ね轢く。タイヤから伝わる乗り上げた時の柔らかさと、明らかに何かを"砕いた"感覚がレジナやレックス達に伝わる。
「大丈夫だったか?!」
レックスが子供達の様子を見るために振り返る
「うん…、!パパ!!前みて!!!」
レックスが前を向いた時にはもう遅く、そのまま止まっていた車に突っ込んでしまう。─