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薬学生①

どこから話せがいいからわからないが、とりあえず順を追って説明していけるように努力しようと思うのでお付き合い願いたい。

私が語りたいのは、普通のようで普通でない私の学生生活だ。学生というのは小学校から大学まであるので、どこら辺かというと特に今話したいのは大学生でのことだ。

私は医療系のみが集まる大学に通っていた。残念ながら6年制だったため、非常に長く変わった日々だった。大学生というのは基本楽しく面白おかしく、勉学にも励むというのが想像しやすいように思えるが、そんなのは全く持っての幻想である。


「朝8時半の平日には、大学に毎日いるのは私たちだけだと思わないかい?」

朝、階段教室という名の、傾斜がほとんど無く、ほぼただの大部屋になっている部屋の一角で私はパンをかじりながらその言葉を聞いた。

「午後は実験があるから、自分の実力次第で毎日何時に終わるかわからない。というのも私たちだけだと思うよ。」

医療系のこの大学のなかではね。

と付け足しながら、右手でポッケから携帯を出しながら、左手にあったパンを食べきった。

今日はカレーパンだから、明日はアンパンにしよう。甘いものと交互でたべるカレーパンほど美味しいものはない。そう考えながら携帯をチェックする。特に連絡なし。

後ろから急に声をかけてきた、朝日さがるは、

「それなーほんとな~」

と言いながら隣の席にいつものようについた。薬学部は200名いるため、自分が一度決めた席から動くことは一年間難しいのだ。

「さて、今日も決められた生活を送りますかね。あと少なくとも、4年間は同じ生活があるけどね。」

先生が来たら起こして。

そういって、朝日さがるは机に突っ伏した。

朝っぱらから既に憂鬱になりそうなセリフを吐いているさがるは、どうやら昨日も家から出ずに本を読み続けていたらしい。口調がその時々に好きになった本の登場人物に寄るので、コイツのしゃべり方はいつも印象が変わる。


医療系の大学生というのは、高校生の延長なのだ。決まったコマを全てこなす。空きコマなどいうものは当たり前のように存在しない。(これはちょっと、盛りすぎた。医学部とかはスカスカだ。)更に、学部によってやはり性格というか、特色が出る。人というものは、似たもの同志が集まるのか、集まった後に似るのか判断しづらいことではあるが、私は前者だと思う。

薬学部の多くの学生に共通しているのは・・・おそらくやる気がないのに、無駄に細かく心配性の集まりだと言うことだろう。別にどうーしても薬剤師になりたくてきたわけではなく、薬剤師という仕事がある程度どんなことをするかを知ってるぐらいで、後は安定性を求めてきた人が多い。薬剤師という仕事を正確に、昔の自分に教えることができたなら辞めろと進める!という人が割合いるだろう。薬剤師という仕事は裏方仕事なため、薬を出す人としか認識されておらず、ちゃんとした仕事内容を知られてはいないのだ。普通の人は、薬剤師の仕事に対する責任の重さを知ったならば、一生どんなことがあっても勉強し続ければならないということに気がつくだろう。実はちゃんと、人の生き死に、生活に関わっているのだ。


「はあ」

朝からさがるの言ったことを元手に色々なことを考えてしまった。自分がこんなに懸命になって勉強していることを知られないと思うとイライラとした。大体、何をどれだけ学んでいるかすら知られてないのだ。興味がないことに人は無関心であるが、それなりに六年も勉強した末に何を学んだの?と聞かれた瞬間私は爆発するに違いない。


「はーい。前から“脳疾患”のコマのプリントを配っています。足りない列は後ろで調整してー」

気がつくと教壇の上でマイクを持ちながら、スクリーンの準備をする教授の姿がいた。いつの間に入ってきたのか気がつかないくらいボーッとイライラすることを考えていたらしい。

「さがる、先生きたぞ。“腎疾患”の1コマ目のときみたいに最初聞き逃すとつらいぞ。」

前回起こしたにもかかわらず、1コマ目の授業を聞き逃したさがるは、さっぱりとその科目を捨てにかかっていた。疾患を学んでこそ薬が何処に効くのかがわかるため、そこがわからないとわけが分からなくなるのだ。

「あーわかってる。次の“患者心理”のコマで寝るから今はちゃんと起きる。」

さがるはのろのろと机から顔を上げて、前から流れてきたプリントを受け取ると五枚数えて引き抜き、残りを後ろに送った。五枚を横に座っている人に流し、バックから筆箱を出した。これでもう大丈夫だろう。

「さぁ、今日もお勉強しますか。」

さがるの独り言に適当にうなずきながら、私も筆箱を出し、教壇に顔を向けた。




特にとりとめのない、この長い毎日を一年に八ヶ月は繰り返す。一年次の大学全寮生活のときに比べて、残りは随分と楽しくない毎日だと私は勝手に決め付けていた。さがるからの誘いに乗るまでは。


「集まり?何の?」

「なんだろう。特に名前はないな。他学部の人と同じ空間でだらける・・・?会か。強いていうなら」

昼休み、教室でサンドウィッチを食べながら午後の実習の話をしていると、集まりに行こうと。とさがるがとりとめもなく話を持ち出してきたのだ。

「それは、メンバーはどういった?」

「いや、なんだ、一年のときに知り合ったやつらって感じかな。特にくくりはない。男が多いけど、一応女の子もいる。大学近くに住んでるやつの家に溜まって、なんて事のない話をしたりして時間を潰してる。時々、知らないメンバーを連れてきたりして、真剣な話をしたりもするけど。」

それは、本当に何の会なんだ。さがるが頑張って集まりの説明をしてくれてはいるが、結局それは集まりと呼ぶのか不明だし、私を連れていきたい理由もわからない。

「それって、何時から何時まで?」

だらけるのに決まった時間があるかわからないが、遅くまでかかるのは避けたい。予習復習をしないと、前期10科目12コマと2週間後とにかわる実習という膨大な量の情報を入れられない頭なのだ。

「たぶん、何時に来て何時に帰ってもいいと思う。夕飯を食べたり、食べなかったりその時々だから。」

やっぱり、何の集まりかよくわからないが特に断る理由も無いのでいくことにした。不定期部活と週2バイトの一人暮らしはまぁ、暇ではないけど暇な時間があるのだ。


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