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翼編

~あらすじ~

無事世界を救ったアリサ

しかし戦いはこれで終わりではなかった

異世界へ移動が出来るようになった彼女は

アマリアに別れを告げ

今度は異世界を救うために戦う

舞台はアリサの世界から少し退化している文明

しかしその世界には電子空間というものがあった

アリサはこの世界を救い

ラタルタの望む世界に近づかなければならない

~ミディレア~


 ザワザワザワザワ


 わたくしの名前はミディレア・ホワイトニング

 電子特殊警備隊所属、18歳ピチピチの乙女ですわ

 今日はある目的のため転校生としてこの学校に潜入しているんですの

 周りの視線が痛い

 ほんと、わたくしって罪な女ですわ

 わたくしってあまりにも美しすぎるせいか

 こういう人を虜にするような任務を良く任されますの

 正直、困りますわ


「彼がターゲットね」


 彼は窓際でのんびり景色を眺めてますのね

 そんな彼に早速に接触♪


「あのー」

「ん?何だ?」

「あなたが天峰翼君ね、わたくし、今日からこの学校に転入してきたミディレア・ホワイトニングと申しますの、愛称はミディでいいわ、宜しくね翼君」

「俺に関わらないでくれないかな、うっとおしい」


 あら、予想外の返事が来ましたわ


「そうですか?それは失礼しましたわ」


 う~む、普通なら私の美貌で大抵の男は落ちるのに

 彼は意外と手強いですわね


 まあゆっくりと彼と親密になって落とすとしましょうか


~翼~


「翼、初対面の相手に対してあれは良くないわ」

「うっ!分かったよ」


 俺は天峰翼、16歳の普通の高校生

 のはずだったんだが

 ある日、彼女が突然目の前に現れた

 しかも俺が部屋で着替え中の時だった


「あなたが天峰翼ね」


 彼女の容姿は美しかった

 年齢は20代前半といったところだろう

 髪の色は透き通った茶髪で背中まで伸びている

 髪には細かいウェーブがかかっている

 首には花のペンダントをかけていた


 俺は彼女に一目惚れした


「あなたにやって欲しいことがあるの」


 え?部屋で二人きりで!?

 やるといったらアレしか……


「この世界には電子空間というものがあるらしいわね」


 ごめん、変な勘違いをしてた


「電子空間?何だそりゃ?」

「あら、あなたは知らないの?」

「普通の高校生がそんなもの知るわけないだろ!それより後ろを向け!恥ずかしい!!」

「ああ、ごめん、着替え中だったわね」


 俺は学生服に着替え終わり彼女と電子空間について話した


「あなたには電子空間の”核となるウイルス”を退治してもらうわ」

「はあ!?」


 いきなりそんなこと言われても

 それに


「その前に、お前、名前なんて言うんだよ?」

「アリサ・レイニードよ、異世界からこちらの世界に移動してきたの」

「異世界……」


 まさか異世界から人が来るなんて

 アニメや漫画の中の話だけかと思った


「私の手をとってちょうだい」

「え?」

「いいから」


 俺は緊張しながら彼女の手をとった

 すると突然周りの風景ががらりと変わった


「こ、ここは……」


~電子空間~


 なんて表現したらいいんだろう

 簡単に言うなら周りがバーチャルに囲まれていると言ったところか


「ここは電子空間よ」

「電子空間?」

「やはり知らないのね、この世界にとって電子空間はよっぽど機密なことなのかしら?」

「それよりウイルスを退治しろってどうやるんだよ?」

「まず武器が必要ね」

「その武器をどうやって手に入れろって言うんだ?」

「ここはAの101地区ね武器はAの105地区にあるわ」

「そんなこと言われても」

「Aの105はここからずっと東にあるわ、行きましょう」


 俺たちはそのまま東に進んで武器を手に入れた

 話を飛ばすがそのままA地区の”核となるウイルス”を倒すことができた


「はぁ……はぁ……はぁ……疲れた」

「やはりあなたは選ばれただけのことはあるわね」

「どういうことだ?」

「いいえ、何でもないわ」

「それより気になるんだが?」

「何かしら?」

「これってお前一人でもできるんじゃないか?」

「そうもいかないのよ」

「なぜ?」

「私がやるといろいろ不具合が出るの」

「どんな不具合が出るんだ?」

「これ以上話す必要はないわ」

「はあ……もういいや、それよりここに連れてこれたってことはちゃんと家にも帰れるんだろうな?」

「ええ、大丈夫よ、私の手をとって」


 俺は再びアリサの手をとった


~手強いターゲット~


「つばさく~~ん、きゃっ!」


 私は彼に向かって倒れかかってみた

 美人が急に倒れかかる

 これを抱きかかえない男はいないわ


 ドスッ


「ゲホッ」


 私は押し返された

 机の角に頭をぶつける


「てめえ!ミディレアさんになんてことしやがる!」


 周りの男子が翼君を責める


「こいつから俺に倒れかかったんだ、こいつが悪い」

「おい!てめえ表へでろや」


 これはまずいですわ


「い、いいんですのよ、わたくしから倒れかかったのは事実ですし」

「嫌だね、めんどくさい」

「なんだとお」


 先ほどの男子生徒が彼の胸倉を掴む


 ゴンッ


「ウグッ!」


 男子生徒が翼君の頭突きをくらってよろめいた


「はあ気分悪い、外にでも行ってくるわ」


 翼君は教室を出て行った


 今まで私が集めた情報によると

 ”彼は私に興味を示さない”

 ”彼は喧嘩が強い”

 ”彼は授業中は窓の外ばかり見ている”

 ”彼は休み時間は頻繁に外に出る”


 今のところこれだけかしら


 彼の身体能力を見るに警察官になれるレベルでもおかしくないですわ

 ダンコンさんの情報通り彼があのA地区の”核となるウイルス”を倒したのは

 事実かもしれませんわね

 しかしこれだけじゃ証拠不十分ですわね

 いっそ脅してしまおうかしら

 いや、まだ耐えるのよ!


 あっ!説明が遅れましたわね

 電子空間とはこの世界のもう一つの世界といっても過言ではないですわ

 電子空間には”ウイルス”というのがいて

 これが増えすぎると電子空間だけじゃなく、現実世界にも悪影響が出ますの

 それでそのウイルスを私たち”電子特殊警備隊”が退治しているんですのよ

 しかし、ウイルスは”核となるウイルス”を倒さない限り永遠に増え続ますのよ

 その上”核となるウイルス”はなかなか姿を現さないので簡単に倒す事ができませんの

 本当に厄介ですわ

 電子空間は区分けされていて地区はAからH地区まであって

 今のところ”核となるウイルス”が倒せているのはA、D、F地区ですわ

 そしてA地区のウイルスを倒したとされるのが

 あの天峰翼君という少年

 まあまだ確証は持ててないので今彼の素性を探っているのですけど


~注意される翼~


「翼!!」

「何だよ」


 アリサが俺の頭の中に語りかける


「あの様な行動をとってはいけないわ」

「でもあれは」

「彼女はただ倒れかかってきただけじゃない」

「いいや、見る限りあれはわざとらしかった」

「それでもあれは行けないわ、彼女に謝りなさい」

「……分かったよ」


 俺はアリサの言うことに従うことにした

 俺がアリサに惚れているということもあるかもしれないが

 彼女の言葉には威厳というものを感じたからだ


~ミディレアと翼~


 俺は昼食の時間ミディレアに謝ることにした


「ミディレア、あの時はすまなかったよ」

「ミディでいいわ、別に気にしてなんかないわ、それより一緒に昼食でもどう?翼君」

「別にいいけど、俺屋上でしか食べないよ」

「ええ、全然構いませんわ」


 本当は断りたかったけど、後でアリサにうるさく言われるのも嫌だしな


「はい、翼君あ~ん」

「やめろよ、気持ち悪い」

「それはごめんなさい、でも少し残念ですわね」


 この女はよく俺に構ってくる

 正直しつこい!!

 ミディレアは美人だ

 彼女に”あ~ん”なんて言われたら

 大抵の男は皆、落とされるだろう

 しかし、俺はアリサのほうが好みだ

 だから彼女の誘惑には乗らない


「つばさく~ん」


 毎日、登校するたびに


「つばさく~ん」


 休み時間のたびに


「つばさく~ん」


 下校するたびに


「つばさく~ん」


 とうとう俺はぶちきれて言った


「お前、そんなに俺と○○したいのかよ!!」

「あらわたくし、運命の人にしか貞操を捧げるつもりはありませんの」

「俺がその運命の人だとでも」

「いいえ、違うわ」

「じゃあなんでこんなに俺にしつこく構ってくるんだ!」

「……ちょっと屋上へいいかしら」


 彼女の顔色が変わった

 殺気を感じる


「い、いや、遠慮しとくよ」

「断ると大変なことになりますわよ」


 彼女は俺の耳元でそうささやいた

 これは言うことを聞かないとマズイな


 俺とミディレアは屋上へと向かった


~ミディレアの脅し~


「翼君、私の質問に正直に答えてちょうだい」


 わたくしは彼を脅した

 本当なら彼の好感度を上げてからこのことを聞こうと思ったわけだけど

 でも彼に私の色気が全然通用しなかった

 仕方がないわ


「な、何だよ」

「電子空間って知ってるかしら」

「……そ、それは……」


 彼は戸惑いながら言った


「し、しらねえよ」

「わたくし、正直に答えてって言いましたわよね」


 そういって私は銃を取り出す


「わ、分かった、言うよ」


 彼は渋々口を開いた


「電子空間について俺は知っている」

「なぜそれを知っているのかしら?」

「行ったことがあるから」

「どうやって?」

「その件に関しては私が話すわ」

「な!?」


 私は驚いた

 突然少女が彼の横に現れたからだ


「あれ、アリサはそんな幼い姿だっけ?」

「私は今のところ、30歳のときと12歳のときの自分に姿を変えることが出来るの」


 二人の会話はちんぷんかんぷんだった


「それよりもあなた電子特殊警備隊所属のミディレア・ホワイトニングと言ったわね」

「な、なぜ私のことを知っているの」

「これ以上言う必要はないわ」

「言いなさい、さもないと撃つわよ」


 私は彼女に銃を向けた

 私たち電子特殊警備隊は秘密裏に作られてた部署

 部外者がそれを知っているというのはおかしい


「こんな場所で撃ってもいいのかしら?大変な騒ぎになると思うけど」


 確かに彼女の言う通りですわ

 私は銃をポケットにおさめた


「はあ……分かったわ」

「話を元に戻しましょう、なぜあなたは翼君が電子空間に行けたのかを知りたいのよね」

「ええ」

「私が彼を電子空間に転移させたの」

「!?」


 にわかには信じられない話だった


「それで彼にA地区の”核となるウイルス”を倒させたと?」

「ええ」


 これは重大なことになりましたわね


「翼君、それにそこの少女、今すぐ私と一緒に来てもらえないかしら」

「でもまだ学校が」

「それどころじゃありませんのよ!あなたがたは国家機密を知っている、それが何を意味するかお分かり?」

「そ、それは……」


 翼君が焦ったように言う


「とにかく、いいですわね」

「ええ、分かったわ」


 少女が素直に言う

 この子、一体何者なの?


~マックス・コールドウェイ~


「さてと、任務完了」


 俺の名はマックス・コールドウェイ

 電子特殊警備隊所属、21歳だ

 俺は今日はH地区のウイルスを駆除していた


「相変わらずやつは出てこないか」


 俺は”核となるウイルス”を探していた


「まあいい、あらかた片付いたし、今日のところは戻るか」


 俺は電子特殊警備隊本部へと足を向かわせていた


~ダンコン・キジャ~


「ダンコンさん例の人物を連れてきました」

「おお、ミディ帰ってたのか」


 俺はミディレアに電子特殊警備隊本部に連れられてきた


「君が天峰翼君だね」

「あ、はい、そうです」


 ダンコンと呼ばれる男はスキンヘッドで

 サングラスをしていた

 まるでヤクザみたいだった


「ん?もう一人いるようだが」

「はい、彼女も関係しているようです」


 ミディレアはダンコンという男に事の経緯を話した


「ふうむ」


 彼は立ち上がると俺たちに対して

 威圧的に聞いてきた


「君たちは何をやらかしたか分かるかね?」

「例のウイルスを倒したことでしょうか?」


 俺は聞き返す


「ああ、そうだとも勝手に電子空間に入った挙句、勝手に”核となるウイルス”を倒したのだからね」

「彼は関係ないわ、全て私がやらせたことなの」


 アリサが俺を庇う


「ふうむ」


 ダンコンがしばらく考え込む

 そして口を開いた


「君たちは国家機密について知ってしまった、それが何を意味するか分かるかい?」


 まさかと思うが……まさかな


「本当なら君たちは処罰に値するところだろう」


 マジかよ!勘弁してくれよお!!


「ただ電子空間の”核となるウイルス”を倒したってこともある」

「それで?何が言いたいのかしら」


 アリサが口を開く


「君たちが我々の元で働くというのならこの罪を帳消しにしてやろうということだよ」

「なるほど、私は構わないわ」

「翼君はどうだね?」


 俺は正直こんな国家機密に値する仕事なんてしたくない

 しかし、断ると余計厄介なことになる


「アリサがいいというなら俺もそれで構いません」

「そうか、物分りがいい子たちで助かるよ」

「ダンコンさん、彼らはまだ子供ですのよ、こんな危険な仕事をさせるべきではないわ」


 ミディレアが反論する


「お前だって二十歳になってない子供だろうが」

「それは……そうですけど」


 ガチャ


 ダンコンさんがそう言った途端扉が開いた


「おおっ、マックス、今日は随分と早いな」

「ああ、思ったよりウイルスの数が少なかったんでな」

「それで例のウイルスは?」

「相変わらず見つからねえ、それより」


 そう言ってマックスという男は俺たちを見る

 彼は黒いジャケットを着ていて

 額にXマークの傷が入っていた


「ああ、彼らはA地区の”核となるウイルス”を退治した、翼君とアリサ君」

「ほう、お前らがか」


 マックスという男が不思議そうな目で俺たちを見る


「彼らは今日からここで働くことになった」

「そうか、俺はマックス・コールドウェイ、よろしく頼むよ、翼とアリサ」

「ええ、こちらこそよろしく頼むわ」

「よ、よろしく、その、マックスさん」


 俺はマックスに疑問をぶつけた


「何だ?」

「その額の傷、どうしたんですか?」

「すまん、この傷のことに関してはあまり触れないで欲しい」


 マックスの表情が暗くなった


「す、すいませんでした」

「いや、いいんだ、目立つしな」


 こうして俺たちはここ電子特殊警備隊で働くことになった


~アリサの能力~


「予想はしてたけど、面倒なことになっちゃったわね」

「ああ、厄介なことになったな」


 俺たちは家に帰りながら話していた


「それよりもアリサ」

「何?」

「大人になった頃の姿に戻ってくれねえか」

「どうして?」

「いやあ」


 大人になったアリサの方が好みだとは口が裂けても言えねえ


「いいや、なんでもない」

「そう」

「しかし、アリサ」

「何?」

「お前ってすごいよな、俺を転移させたり姿を変えたり」

「別に私はこんな力なんて欲しくなかったけどね」

「なら俺にその力をくれよ」

「そうしたいのは山々だけど今のところは出来ないわ」

「ってことはいつかは出来るんだな?」

「そうね、私の魂がそこまで進化すれば出来るかもしれないわ」

「その時を楽しみにしてるよ」

「その時が来るかどうかわからないけどね」


 こうして俺たちは帰路についた



 翌日

 俺が学校に行こうとして家の扉を開けた途端


「う、うわっ!」


 目の前にミディレアがいた

 こいつ俺をストーキングしてたのかよ!


「おはよう、翼くん♪」

「ミディレア!何で俺の家が」

「細かいことはいいじゃありませんの!それに”ミディ”でいいですわ、それよりアリサちゃんは?」

「あいつは別に学校に行く必要がないからな、それに幽霊みたいにどこにでも現れるし」

「あの子、本当なら人間国宝になれますのにね」

「あいつはそういうのには興味なさそうだしな」


 俺はミディレアの目つきを見て悟った

 これは監視している目だ

 俺たちは喋りながら学校に向かった



~電子特殊警備隊の仕事~


 私たちは学校が終わるとすぐ電子特殊警備隊本部に向かった


「ダンコンさん、こんにちは」

「おおっ、ミディお帰り、ちょうどお前に仕事があるんだ」

「何かしら?」

「ああ、この町の近辺で強盗があってな、それを追跡して欲しい」

「分かりました、では行って来ます」

「ああ、あと」

「はい?」

「翼やアリサを監視する必要はもう無い」

「……分かりました」


 そう言うとミディレアは部屋を出て行った


「ダンコンさん」

「何だ?」


 翼がダンコンに話しかける


「ここって電子空間のことだけが仕事じゃないんですか?」

「ああ、ここは主に電子空間の事が仕事だ、ただ、補助的に警察の仕事を任されることもある、なんたってここには優秀な人材が配属されているからな」

「なるほど」

「お前たちはここら近辺の掃除でもしててくれ、電子空間はマックスが処理してるし、お前たちはまだここに来たばかりだからな」


 私は納得したが

 翼はどうも不満なようだ


~マックスの失態~


 俺たちが渋々掃除をしているとミディレアが元気よく帰ってきた


「ミディレア!只今戻りました!!」

「お帰りミディレア、例の件は」

「はい、無事解決しました!」


 例の件とは強盗のことだろう

 ミディレアはああ見えて優秀なんだな

 俺も何か大事件を任されるようになりたいものだ


「ただいま……」


 しばらくしてマックスが帰ってきた

 足取りが重い


「お帰り、マックス、どうした?元気がないな」

「G地区で”核となるウイルス”を発見したのですが……」

「ほう、それで?」

「取り逃がしてしまいました……」

「ふうむ、それは大きな失態だな、マックス、この責任をどうとってくれるのかね?」

「待ってくださいダンコンさん!!」

「何だ?ミディレア」

「彼は確かに失態を犯しましたが一生懸命頑張っています」

「それがどうした?」

「彼を責めるべきではないとわたくしは思います!」

「しかし、失態は失態なのだよミディレア君」

「なら彼の失態を私が埋めます」

「ミディレア!?」


 マックスが驚いた顔で彼女を見る


「ミディレア、これは俺が犯した失態だ、お前が請け負う必要など」

「いいのよマックス、困ったときはお互い様でしょ」

「それでも」

「わたくしが困ったときはあなたが助けてちょうだい、それでよろしいですわ」

「分かった、そうしよう」

「そうか、まあいい、君にちょうどいい任務があったところだ」


 ダンコンが話を切り出した


「どんな任務でしょうか?」

「暴力団”黒龍”のボス、ミ・フェンセンを捕らえて欲しい、それが困難なら殺してしまって構わん」

「分かりました、その”黒龍”のボスはどこに?」

「それがわからんのだ」

「そんな……ではどうやって?」

「”黒龍”の幹部にリ・レイジャという人物がいる」

「はい」

「そいつは風俗店”黒龍王”のオーナーをしている」

「それで?」

「そいつがとてつもなく絶倫でな、股を開けばどんな情報でも教えてくれるらしい」

「その任務を私に?」

「ああ、お前なら適任だろうな」

「分かりました」

「まさかとは思うが脅そうとなんて考えてないよな?」

「さあ、どうでしょう」


 ミディレアが話を濁す


「そいつは脅しには乗らないだろう、それにたくさんの護衛もいる」

「安心してくださいダンコンさん、必ずや任務を達成してまいります」

「そうか、では行ってこい、ミディレア」

「了解しました!では行ってまいります」


 そう言ってミディレアは部屋を出て行った


「すまんなミディ……俺のせいで」


 マックスが相変わらず落ち込んでいる





~リ・レイジャ~


 わたくしはリ・レイジャという人物からミ・フェンセンの居場所を突き止めるために

 風俗店”黒龍王”という店を訪れた


「あっ、見つけた!」


 リ・レイジャは店に入るとわたくしの目の先にいた

 彼の周りを女性が囲んでいる

 護衛らしい護衛は見当たらない


「あなたがリ・レイジャさんね」

「おおっ!こりゃべっぴんさんがおりゃあに何の用じゃけん?」

「わたくし、あなたのことを愛していますのよ」

「おお、そうかそうか、嬢ちゃんちょっとこっちきいや」


 わたくしはリ・レイジャに連れられて個室に入った

 といっても結構広い


「それじゃ早速、ぐへへへへ」

「その前に」

「何だ?」

「ミ・フェンセンの居場所を教えてくれないかしら」

「おうおう、教えたる教えたる、その前にスケベしようや」

「情報が先よ」

「おりゃあ前払いじゃないと情報を教えることはできんなや」

「そう」


 わたくしは銃を取り出す

 それと同時にリ・レイジャは右ポケットに手を突っ込んだ


 警報が鳴る

 私とリ・レイジャの部屋に銃を持ったたくさんの人たちが押し寄せてきた

 風俗店”黒龍王”の従業員やさっき彼を囲んでいた女性たちの姿があった

 銃の矛先はわたくしに向いている


「なるほど、護衛ってそういうことね」

「嬢ちゃん、自分の命と貞操どっちが大事や」

「貞操ね、わたくし運命の人にしか貞操を捧げるつもりはありませんの」

「そうか、ならおりゃあがその運命の人になってもいいんやで」

「残念、あなたじゃ不釣り合いだわ、それよりもあなたも自分の命が大事じゃなくって?」


 わたくしは銃口をリ・レイジャに向けながら言う


「おりゃあ自分の命よりあんさんみたいなべっぴんさんとやるほうが大事やのう」

「そう」

「どうしまっか?嬢ちゃん」


 わたくしはこの仕事に誇りを持っている

 今まで失態を犯したことはなかった

 この任務も無事に成し遂げたいと思っている

 しかし


「わたくし、あんたとやるくらいなら死んだほうがましですわ」

「そうかい、そうかい、じゃあ仕方ないのう」


 リ・レイジャが手を挙げようとする

 恐らく私を撃てと合図を出そうとしているのだろう

 その前に私がこいつを仕留めてやる

 そう思った瞬間


 ダダダダダダダダダダ


 銃声が鳴り響いた


「ぎゃああああああああ!!!!」


 わたくしを取り囲む護衛たちが次々と倒れていく


「翼、お前にまでこんなことをさせてすまねえな」

「いいんですよ、俺、こんなことしてみたかったんです!」


 マックスと翼君が駆けつけてきた

 その後ろにはアリサがいる


「なんじゃあ、なんじゃああああああああ」


 リ・レイジャが驚いた様子で叫び声を上げた


「さて、これで全員かな?ミディ、遅れてすまねえ、これで借りは返したぜ!!」

「マックス!助かりましたわ!」


 わたくしは感嘆の声をあげた


「さあて、リ・レイジャ、ミ・フェンセンの居場所を吐いてもらいましょうか?」


 わたくしが不適の笑みで話しかける


「お、おりゃあ、お前さんとやるまでぜ、絶対に吐かねえ」

「ここを撃ってもいいかしら?」


 わたくしは銃口をリ・レイジャの右足に向けた


「ちょっとまって」


 アリサが止めに入る


「アリサちゃん!?」


 アリサちゃんがリ・レイジャの頭の上に手を当てる


「おりゃあ、嬢ちゃんみたいな子にゃあ興味がねえなあ、あと数年、おろ?」


 リ・レイジャの顔色が変わる

 彼の顔はみるみるうちに快楽に溺れたような顔になった


「ぐへへへへへへ」

「き、気持ち悪いわね」

「ああ、そうだな」

「アリサ、お前何したんだ?」


 翼くんがアリサちゃんに問いかける


「彼に幻想を見せただけよ」

「げ、幻想って」


 マックスが驚いた様子で声をあげる


「あっ、マックスは知らなかったんですわね、彼女、超能力者ですのよ」

「そ、そうなのか」

「この前なんていきなりわたくしの前に現れてびっくりしましたわ」


 わたくしがマックスにアリサちゃんの凄さを一生懸命説明する

 マックスは驚いた様子でそれを聞いていた


「な、何かイカ臭くね?」


 翼くんが鼻を押さえて話す


「た、確かに」

「おい、リ・レイジャの股間を見ろ!」


 マックスがまた驚いた様子で声をあげる

 わたくしたちは彼の股間に視線を移す


「う、うわあ」


 彼の股間には大きなシミが出来ていた


「ああ、気持ちよか、気持ちよかあ」


 幻想が解けたのかしばらくすると彼は

 正気に戻った


「そこの嬢ちゃんありがとうな、おりゃあにこんなべっぴんさんを紹介してくれて」


 そういって彼は見えないだれかに肩を回していた


「べっぴんさんて誰も」

「どういたしまして、それよりミ・フェンセンの場所を教えてもらえないかしら?」


 アリサが話を切り出す


「ああ、構わんとも」


 こうしてわたくしたちはリ・レイジャという男からミ・フェンセンの居場所を聞き出した


~アリサとミディレアの恋バナ~


 今日はダンコンさんがたまたま用事があって出かけている

 彼が出かけるのは珍しいそうだ

 マックスと翼も任務のため外に出ている

 部屋の中は私とミディレアだけになった


「アリサちゃん、アリサちゃん」


 ミディレアが私に話しかける


「アリサちゃんは好きな人とかいる?」

「何よ!?突然」


 私の頭の中にはアマリアの姿があった

 なんでお兄様じゃなくてアマリアなの??


「もしかして翼君?」

「残念ながら違うわ」

「じゃあ誰?」

「少なくともこの世界にはいないわ」

「そう」


 ミディレアが残念そうな顔をする


「そういうミディレアはどうなの?」

「ミディでいいわ、そうねえ、わたくしはマックスが好みかしら」

「へえ」

「あのクールな感じがいいのよね、壁の隅にもたれかかって腕を組む姿にはくるものがあるわ!!」


 私は小一時間マックスについて延々と話された

 正直うんざりした


~マックスの傷~


「何もついてこなさらなくても良かったのに」

「ダンコンさんに頼まれたんだよ、お前の援護を」

「それならいいですけど」

「さて、敵の本拠地だ用意はいいか?」

「ああ」


 俺たちはミ・フェンセンの本拠地を攻めた


「ぎゃあああああああ!!!!」

「敵襲だ!!敵襲!!!」


 俺とミディレアは電子特殊警備隊に抜擢されるほど優秀な警察官だ

 こんなやつらは相手じゃない

 翼も身体能力が高いしな


「とうとう、ボスの部屋の前だな、油断するなよ!!」

「ええ、分かってるわ」


 俺たちはミ・フェンセンがいるであろう部屋の扉を勢いよく蹴破った

 あれ?予想と違った

 護衛がたくさんいると思ったんだが……


「これはこれは、よくここまでこれましたねえ」


 ミ・フェンセンは余裕の笑みを見せる


「ミ・フェンセン、お前には多くの罪がある!大人しくするというのなら命までは奪わん!」

「おや、君は”ヘブンズワールド”のマックス・コールドウェイじゃないか、久しぶりだなあ、今は警官なんてやってるのか?」

「マックス!どういうこと!?」


 ミディレアが驚いた様子で俺に聞いてくる


「おや君たちは知らないのかい?彼は元ヤ・ク・ザなんだよお」

「そんな……初耳ですわ……」


 ミディレアは唖然としていた


「今はそんなことどうだっていいだろ!」

「しかし”ヘブンズワールド”とはこれまたおかしな名前だ!はははははは!!」

「俺の……俺の姉御の組を馬鹿にするんじゃねえ!!!!!!」


 俺は銃口をミ・フェンセンに向ける


「やめなさい、マックス私たちの目的は彼の捕獲よ」

「くっ!」

「ミ・フェンセン、大人しくしてくれますわね」

「ああ、構わんよ、正直この世界には飽き飽きしていたところだ、余生は刑務所ででも暮らすとするかね」


 こうしてミ・フェンセンは大人しく捕まった

 しかし


「マックス、どういうこと?あなたがヤクザだったなんて」

「それは昔の話だ!!今は違う!!!」

「それでもよ!!!ちゃんと説明してちょうだい!!!」

「わ、分かったよ、この話は墓場まで持ってこいこうと思ったんだがな」


 俺はミディと翼とアリサに昔の自分の話を始めた


「俺さ幼い頃虐められてたんだ、上履きには押しピンを大量にいれられ、帰り道を待ち伏せされてはリンチされ、そんな苦しい毎日を送っていた」

「そんな……酷い……」


 ミディが哀れむような目で俺を見る


「そんなある日、俺はいつものように帰り道でリンチされていた、そこを偶然姉御が通りかかった」


 俺は一息おき話し続ける


「姉御は虐められてる俺を見るやいなや”おいてめえら!やめんか!!”といじめっ子どもを一喝してくれた、それが俺と姉御の出会い、俺がヤクザになるきっかけだったんだ」

「そう」


 アリサが悲しそうな表情で言う


「俺は強くなりたかった!姉御のように!それで俺は毎日姉御と武術の稽古をしていた、姉御は強かった、そんな姉御に追いつこうと毎日必死だったなあ」

「うんうん」


 翼が興味深そうに頷く


「それ以降、俺が虐められることは無かった、突っかかってくるやつは何名かいたが返り討ちにしてやった、ただ……」

「ただ……?」


 ミディレアが不穏な表情で聞く


「俺は組の争いに巻き込まれることになった、もっとも俺から志願したんだが、あと勘違いしないで欲しい、俺たちの組は正義感が強かった!いわゆる勧善懲悪ってやつかな」


 俺はそのまま話しを続ける


「俺はいつの間にか組でトップの実力を持つにいたった、姉御との武術の稽古のおかげかな、そんなある日、大事件が起きた」

「大……事件……?」

「ああ、俺たちの組の本部を複数の組が襲撃してきた、俺はそのとき用事があって外を出歩いてた」

「……」

「仲間から電話がかかってきた”早く助けに来てくれ!ボスが危ない!!”ってな」

「……」

「ボスとは姉御のことだ、俺はバイクに跨り、急いで姉御の元に向かった」

「……」

「まあ結果はわかるよな、間に合わなかったんだ」

「……」

「辺り一面死体だらけだった」


 そう言った途端俺は泣き出してしまった


「俺は……守りきれなかったんだ!姉御を!姉御をおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「マックス……」

「俺があのとき姉御の元にいれば!!俺があのとき呑気に外に出歩かなければ!!!!」

「マックス、酷いことを言うようだけど」


 ミディレアが話しかけてきた


「なんだよ!?」

「あなたがいてもその姉御さんは助からなかったと思うわ」

「なんだと!!!」

「だって複数の組が襲撃してたんでしょ、いくらあなたでも」

「せめて姉御を守ることが出来たはずだ!!!!」

「それは……」

「すまん……取り乱してしまったな」

「話しを続けて」


 アリサが促す


「分かった、この襲撃で俺の組は壊滅状態になった、姉御がいなくなった俺の組は……解散した」

「……」

「それで俺は決意したんだ!今度は守れるようになろうと!!」

「それで警察官に?」

「ああ」

「ちなみにその傷はそれと関係があるの?」


 アリサが突っ込んで聞く


「ああ、俺は姉御の死を一生忘れないために額に十字架の傷を掘った」

「じゅうじかああ??」


 翼がふざけたような口調で聞く


「どう見てもXじゃん」

「違うこれは十字架だ、斜めに書いたほうがかっこいいと思ってな」

「正直に言う、ダサい」

「な!?なんだとおおお!!!!」

「二人ともやめなさい!!!!」


 ミディレアが俺たちを止める


「とりあえず、そういう理由で警察官になったのねマックス」

「ああ」

「話してくれてありがとう、これでようやくすっきりしたわ」

「何がだ?」

「その傷の理由」

「そんなにこの傷が気になるか」

「うん、目立つもの」

「そうか、すぅー」


 俺は一息溜めたあとこう言い放った


「俺は姉御、いやこの傷に誓って宣言しよう!今度こそ大切な仲間を守ってみせると!!ミディ、アリサ、翼」

「あら嬉しいこと言ってくれるじゃない」

「俺は別に守ってもらわなくても構わないけどね」

「……」


 こうして俺の昔話は終わった

 しかしこの傷がダサいと言われるのはショックだなあ



~電子特殊警備隊の休日~


 俺たちは休日をもらった

 といっても電子空間での仕事が休みなだけで

 パトロールみたいなものを任されたが


「ああ、つまんねえなあ」


 俺は呟く


「翼、緊張感が足りんぞ、優秀な警察たるもの、いつ何が起きるか想定して周りに注意を配るものだ」

「へいへい、分かりましたよ」


 俺はマックスの説教を上の空で聞いていた


「あ、あぶない!!!」


 突然ミディレアが声をあげる


 道路に落ちているボールを拾おうとする子供に車が通りかかろうとしていた

 その瞬間マックスが動いた

 マックスは一瞬で子供を拾い上げ歩道に戻った


「ふう、危なかったなあ、次からは気をつけるんだぞ」

「ありがとう、エックスさん!!」

「えっくす……さん……??」

「うん、おでこにXって文字が書かれてるからエックスさん」

「いや、これは十字架でな」

「あらいい名前をもらえて良かったじゃないエ・ッ・ク・スさん♪」

「ミディ……お前まで……」


 マックスはミディレアにおちょくられてた

 俺もおちょくってやった

 今日は楽しい休日だった


~ウイルスの急増殖~


 私と翼とミディレアは電子特殊警備隊本部で待機していた


「え、ええ、そんな……ええ、ええ、分かりました」


 ダンコンが焦った表情で電話を切る


「た、大変だ!!電子空間のウイルスが急増殖しているらしい」

「なんですって!?」

「なんでも電子門からウイルスが出てきたらしい」


 あっ説明するわね

 電子門とは電子空間に繋がる門のことよ

 電子門は電子特殊警備隊本部より歩いて5分ほどかかる位置にあって

 警察官が見張りをしているわ

 電子空間に入れるのは基本的に私たち電子特殊警備隊の人たちだけだわ

 電子空間のウイルスは毒ガスを吐いているので

 現実世界に充満したら大変なことになるわ


「こうしてはおれませんわね、直ちに電子空間に向かって”核となるウイルス”を破壊しないと」

「ミディレア、その前に」

「なんですの?」

「お前にこれを渡しておこう」


 ダンコンは棚から何かスーツらしきものを取り出してきた


「これは?」

「ああ、パワードスーツと呼ばれる代物だ、装着すると装着者の身体能力が大幅に上がるらしい」

「あら、ありがとう、ダンコンさん」


 そういってミディレアはダンコンからパワードスーツを受け取った


「ただいま」


 ちょうどマックスが帰ってきた


「マックス見て!わたくし、ダンコンさんからすごいものを貰ったわ」

「……」

「パワードスーツって呼ばれていて付けると身体能力が大幅に上がるらしいわよ」

「ダメだ!ミディ!!それを付けるな!!!」

「え?」


 マックスがミディからパワードスーツを取り上げた


「ちょっと!何するの?マックス!?」

「ダンコンさん!!あんたミディに何てものを渡すんだ!?」


 マックスがダンコンを怒鳴りつける


「お前!?知ってるのか!?このスーツのことを」

「ああ」

「まあいい、仕方がないだろう、今は緊急自体だ」

「でも、こんなやり方を認めるわけには行かない!」

「上の判断だ!素直に従え!!」

「悪いが俺はこれには納得出来ない」

「え?……ええ??」


 ミディレアが困惑している


「マックス、残念だよ、君は優秀な部下だった」


 ダンコンがポケットから銃を取り出しマックスに銃口を向ける


「くっ!」


 マックスは走り去っていった


「ミディレア、今すぐやつを追って始末しろ!!そしてやつからパワードスーツを取り戻せ!!!」

「そんな……しかし!!」

「もしやお前も俺に逆らうのか」

「わ、分かりました」


 ミディレアも急いで部屋から出た


「ダンコンさん、話しがあるんですけど」

「何だ?」


 私はダンコンに話を切り出した


~ミディレアとマックス~


 俺はバイクで走って逃げていた

 そのあとをミディが追う


「マックス!待ちなさい!!」


 俺たちはしばらくレースをしていた


 ばあん


 後ろから銃声が聞こえた

 バイクの後輪に穴が空く


「くっ!」


 俺は咄嗟にバイクを飛び降り受身をとった

 俺のバイクが思いっきり壁にぶつかる

 ミディがバイクから降りる


「やるなミディ、俺のバイクの後輪に弾を命中させるとは、さすがだ」

「あなたのほうこそ咄嗟にバイクから降りて受身をとるなんてすごいと思うわ」


 ミディが俺に銃口を向ける


「悪いけど、あなたを始末してって命令が出てるわ」

「そうか、お前に殺されるのも悪くはないな」


 沈黙が続く


「どうした?ミディ?手が震えてるぞ!!」


 俺は両手を広げてミディに近づく


「こ、来ないで!」


 俺はミディに近づく


「来ないで、う、撃つわよ!」

「撃てばいいだろう」


 俺はミディに近づく


「どうした?撃たないのか?」

「来ないでってば!!」


 俺はミディに近づく


「おい!ミディ!!」

「なによ!」

「お前の覚悟はそんな程度か?」

「……」

「お前が本当にこの仕事に誇りを持っているなら裏切り者の俺を撃つことぐらいできるはずだ」

「分かってる!分かってるけど!!」

「なら俺を撃てばいい」

「う、う、う、う!!!!」


 ミディが泣き出した

 俺はミディを抱きしめる


「わたくし、どうしていいか分からないわ、仲間を撃ちたくない!でもダンコンさんたちを裏切ることも出来ない!」

「安心しろミディ、俺はお前たちを裏切ったつもりはない」

「え?」

「ダンコンさんのやり方についていけないだけだ」

「そういえばあなたはパワードスーツを付けるなって言ってたわね」

「ああ、これは付けてはいけない」


 俺はミディにパワードスーツを見せながら言う


「どうして?」

「確かにこれを着ればに身体能力が上がる」

「ええ」

「だがこのスーツを着たものは最後には発狂して死ぬ」

「え?どういうこと??」

「前に俺の組に他の組が襲撃したことを話したよな?」

「ええ」

「死体の中には俺の仲間以外にこのスーツを着たやつがいたんだ」

「……」

「その死体には傷も何一つ付いていなかった、ただ顔が発狂した後のような顔だった」

「それって……」

「ああ、恐らくパワードスーツを着たことが原因で死んだんだと思う」

「それじゃあ……ダンコンさんは……わたくしに……」

「……」


 俺とミディレアはしばらく沈黙していた

 すると


「あっ!!マックス!!!あれを見て!!!!」

「な!?」


 俺たちは周りの景色を見渡した

 あちらこちらに電子空間のウイルスが浮いている


「ミディレア戻るぞ!!」

「でもダンコンさんに」

「今はそれどころじゃない!!」

「分かったわ!!」


 俺たちは急いで電子特殊警備隊本部に戻った


~大きな核のウイルス~


「アリサ!俺はBの203に行けばいいんだよな?」

「ええ」


 俺たちは無線でやりとりしていた


「アリサ、それと翼、いるか?」


 無線からマックスの声がした


「マックスさん?どうして?」

「今はそんなことはどうでもいい!それより電子空間内はどうなっている」

「たくさんのウイルスがいます!今それを退治しているところです」

「分かった!俺たちも行く」

「マックスあなたはCの101に行ってちょうだい、ミディレアにはHの201に行くように伝えて、あとダンコンさんから強力なレーザー銃をもらってきてちょうだい」


 アリサが口を挟む


「どうしてだ?それにレーザー銃なんて」

「理由を話してる暇はないわ」

「分かった、そうする」


 俺たちはアリサの言う通りに動いた


「見つけた!」


 俺はB地区の”核となるウイルス”を見つけた


「アリサ、B地区の”核となるウイルス”を倒したぞ!」


 ウイルスが減ったがまだ多い


「そう、ならCの205に移動してちょうだい」

「分かった」


 俺は次にCの205に移動した











 俺たちはアリサの指示通りに動いた

 まさかダンコンさんがレーザー銃を隠し持っているなんて思ってもみなかった

 アリサという少女、一体何者なんだろうか?


「あれか!!」


 俺はC地区の”核となるウイルス”を発見した


「アリサ、C地区の”核となるウイルス”を破壊した」

「アリサちゃん、H地区の”核となるウイルス”を駆逐しましたわ」


 俺の言葉を遮るかのようにミディレアが声を発する


「そう私もちょうどG地区の”核となるウイルス”を破壊しておいたわ、皆Cの205に移動してちょうだい」

「分かった」


 俺たちはアリサに言われるがままにC地区の205に向かった

















「皆揃ったわね」

「ああ、それでどうするんだ?」

「ここでしばらく待機してちょうだい」

「しかし、まだウイルスはうじゃうじゃいるんだぞ、ここでのんびり待機なんて」

「いいから、私の言うとおりにして、それとレーザー銃を私に貸してちょうだい」

「わ、分かった」


 それにしても”ラタルタの予言”も随分と便利になったものね

 わざわざ持つ必要もないし

 私の都合の良いように予言の内容が追加されていく

 私があんな指示を出せたのもこの本のおかげよ


 私たちはしばらく待つことにした

 すると


「あ、あれは!?」


 私たちの目の前に巨大なウイルスが現れた

 あれが本命ね


「皆、あのウイルスに攻撃してちょうだい」

「分かった」


 皆があのウイルスに銃で攻撃を始めた


「アリサ、あのウイルスいくら攻撃しても多少皮が向けるだけですぐ修復するぞ」

「いいからそのまま攻撃を続けて」

「わ、分かった」


 私はレーザー銃であのウイルスを狙う

 おそらくあのウイルスには弱点となる部分があるはずよ

 レーザー銃は一発しか使えないわ

 よく狙わないと


「……今よ!!!」


 あのウイルスの中に赤い点みたいなものが見え隠れしていた

 私はあのウイルスの弱点目掛けてレーザー銃を放った


「当たった!!」


 あのウイルスが消えていくと同時に周りのウイルスも消えていく


「ふう、これでおわりね」


 私の体から力が抜ける


「アリサ、お前のおかげで助かったよ」


 マックスが私を褒め称える


「しかし、なんであのウイルスがここに現れることが分かったんだ?」

「別にそのことは話さなくてもいいでしょ?」

「それは……そうだが」

「これでもう安心よ、恐らく現実世界に蔓延しているウイルスも消えていると思うわ」

「そうだな、アリサ、お前にはとても感謝している」


~次の世界への旅立ち~


 数ヶ月間

 電子空間にウイルスが現れることはなかった

 俺たちは掃除をしたり

 警察の仕事の補助に回ったりしていた


「ふう、今日も一日平和だったな」

「ええ、そうね」


 俺たちは今日の仕事を終えて家に帰っていた

 俺たちは他愛もない話をしていた

 しばらくすると


 ピカーン


 アリサの首にかかっている花のペンダントが光った


「な、なんだ!?」

「ごめん、翼、私そろそろ行かないといけないみたい」

「行かないとって、どこに?」

「次の世界に」


 アリサの体が薄くなっていった


「そんな……アリサ……待ってくれ!!」

「大丈夫!いづれまた会えるわ!皆によろしく伝えておいてね」


 そう言った瞬間、アリサの体が消えた

 アリサとの思い出はたくさんある

 叱られたり

 雑談したり

 一緒に仕事したりと

 俺にとってアリサは大事な存在だった


「アリサ……アリサああああああ!!!」


 俺はしばらく泣き続けた




 あれからというもの

 俺はいつも通りの毎日を過ごしていた

 学校が終われば電子特殊警備隊の仕事をしていた

 と言っても今のところウイルスは発生していないので

 主に掃除と警察の仕事の補助くらいだが


「翼、任務が入った、行くぞ!!」


 マックスが俺に声をかける

 俺たちは任務をこなすためにマックスと共に目的地へと向かう

 アリサ、またいつか会えるよな、またいつか……


ー翼編ー

 完

アリサとアマリアのパラレルワールドォ!

第3話


「アマリア、お客さんが来てるわよ」


アリサがアマリアの部屋に入る


「ちょっ、あわわわわわわわわ!!!」

「何よ……これ……」


 アマリアの部屋には写真が貼られていた

 その写真にはアリサの寝顔が写っていた


「アリサ、これは……だな……朝起きたらいきなり貼られてだな」

「そんな言い訳が通るわけないじゃない!!」


 バシン


 アマリアはビンタされた


「私、出て行くから」

「アリサ!それだけはやめてくれ!何でも言うこと聞くから!!」

「とりあえずその壁一面に貼られている写真を処分してちょうだい!!」


 バタン


 アリサが部屋から出て行った


「はあ……仕方ないか」


 壁一面の写真を渋々剥がし箱の中に大切に保管するアマリアだった

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