アリサの日常編4
「あなたはこれから生まれ変わらなければいけない」
私は魂救済活動として霊界の低い場所に降りていた
「お前は俺みたいに悲しい思いをしてきたのか?」
「悲しい思い?」
「ああ、俺はな」
その男は語りだした
今の今まで奥さんも子供もいて順風満帆にいっていたこと
儲けて豪華な豪邸を買うために会社を立ち上げて稼ごうとしたこと
しかし、その会社は上手くいかず破綻したこと
それで奥さんと子供さんに見放されて自殺したことなど
「お前に俺の苦しみが分かるか?」
「分からないわ……でも」
「でも……?」
「苦しんでいるのはあなただけじゃないわ」
「ふん、綺麗事はいい」
「私だってあなたに負けないくらい苦しい思いをしてきた」
私も語った
お兄様と冒険したこと
お兄様との冒険は楽しかったこと
ある日、お兄様があの木の前で亡くなったこと
そして、ラタルタの予言のせいで見たくもない映像を見せ続けられたこと
長い間お兄様と離れ離れで悲しかったことなど
「……」
「私も苦しい思いをしてきた」
「……」
「でも今は幸せよ」
そう幸せなのだ
お兄様と共にこういった仕事が出来たのだから
「あなたも頑張ればいづれ幸せになれる」
「……本当か?」
「ええ、私は嘘はつかないわ」
「お前高級霊の癖に口調が全然それっぽくないな」
「別に私は好きでこんなことしてるわけじゃないからね」
「てっきり慰めるだけかと思っていたが」
「……」
「分かった、生まれ変わってやろう」
「ホント!? 良かった」
こうして私は一つの魂を救済した
私はラタルタの教会に戻る
「お帰り、アリサ君」
「お帰り、アリサ」
教会の中にはお兄様とラタルタがいた
「ただいま、また一つの魂が生まれ変わる決意をしてくれたわ」
「本当か!?」
お兄様はその言葉を聞いた瞬間飛び上がるほど喜んだ
「君の実績は素晴らしいな、神々も褒めてくれてるよ」
「当たり前よ、私は苦しんだ分、今苦しんている魂たちの気持ちも分かるもの」
「僕の負けだなこりゃ」
お兄様がガッカリした様子で答えた
「いえ、お兄様も充分頑張ってくれてると思うわよ」
すかさず私がフォローを入れる
「別に慰めてくれなくていいよ 僕も頑張らないとな」
「いや、ミハエルも頑張ってくれてると私は思うよ」
ラタルタもお兄様をフォローしてくれてる
その通りだ
「ラタルタ様、アリサ、慰めてくれてありがとう」
「いえいえ」
「それじゃあ気を取り直して僕も魂救済に行ってきます」
「行ってらっしゃい、お兄様」
そう言ってお兄様は教会を出ていった




