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アリサの日常編3

「改めてよく見ると天国って素敵な場所ね」

「そうだろう、この世界に悪人はいないよ」


 私はお兄様と天国を見て回っていた

 小鳥たちが地上世界とは比べ物にならないくらい美しい音楽を奏で

 美しい動物たちが私たちを取り囲む

 幸せとしか言い様がない


「そう言えば、アリサは昔、僕のお嫁さんになりたいって言ってたね」

「それは昔の話よ、今は」

「今は……?」

「私はお兄様の妹よ、それだけだわ」

「アリサも大人になったね」

「そりゃあれだけ生きてればそうなるわね」

「……」


 お兄様はしばらく悩んだ様子で


「君には辛い思いをさせてしまったね」

「……」

「ごめんね」


 と謝ってきた


「もういいわよ、過ぎたことだし」

「だけど君は」

「その話は無しにしましょう、折角天国を見て回っているのに」

「それもそうだね」


 私たちは再び天国の中を歩く


「あれ? ここは……」


 そこには”何でも屋エト”という看板が立っている店があった


「ちょっとここに寄っていいかしら?」

「別に構わないよ」


 私は何でも屋エトの扉を開けた


「いらっしゃいってアリサじゃないか久方ぶりだねえ」

「まあそんなに日が経っているわけじゃないけどね」

「そちらの方は?」

「ああ、私の兄のミハエル」

「アリサの兄のミハエル・レイニードです、よろしくお願いします」


 お兄様がエトにお辞儀をする


「僕はエト・ミへイム、何でも屋だ」


 自己紹介が済んだ


「君たちは僕に何か用でもあるのかな?」

「いや、ただ立ち寄っただけよ」

「そうかい」

「それよりまた何か薬を研究しているの?」

「まあ、それもそうだけど、僕の研究はそれだけじゃないよ」

「他には何を研究しているの?」

「スピリチュアルヒーリングって知ってるかい?」


 スピリチュアルヒーリング? 初めて聞いた名前だ


「霊的な力で人々の病気を治す方法だよ」

「へえ」


 エトは語りだした


「地上世界の上層世界では直接ヒーリングすることが出来るんだけど」

「……」

「下層世界ではなかなか上手くいかなくってね」

「……」

「それで下層世界では霊的な力が高い人を媒体としてヒーリングを行っているんだ」

「何だかよく分からないけどすごいわね」

「それよりアリサ、これ飲んでみる?」


 エトが何か奇妙な飲み物が入っているフラスコを取り出してきた


「いえ、遠慮しとくわ……」

「まあ霊体には効果がないかもね」


 しばらくするとガチャと何でも屋の扉が開いた

 そこには予想外の人物がいた

 

「キュ……キュアリス?」

「あら? アリサさんもいらしていたんですか?」


 彼女も驚いている様子だった


「それより何しにここへ?」

「エトさんに用事があってきました」

「神が僕に用事かあ、何だろうね」


 エトが興味深そうに顎に手を当てる


「私を神と呼ばないでください不服です」

「でも実際君は神なわけで」

「……」


 キュアリスはしばらく黙り込んでいた


「アリサ、そろそろ行こう邪魔になるし」


 お兄様が促す


「ええ、分かったわ」


 エトとキュアリスの会話を背に私たちは何でも屋エトを出ていった


「そろそろ戻らなきゃ、活動があるからね」

「それもそうね」


 私にはヘルフェスの守護霊の役目と

 魂救済活動がある

 あまりノンビリ天国を旅している暇はないのだ


 しかし、こうして毎日お兄様に会えるのは幸せだ

 地上世界では長いあいだお兄様と離れ離れになってしまったのだから


 私たちはラタルタの教会に戻ることにした

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