世界の破滅編11
「ねえ、ラタルタ質問いい?」
私はいつものようにラタルタに話しかける
「人間には試練があるのよね?」
「ああ」
「でもそれとは無縁に生きている人間を見かけるけどあれは何なの?」
ラタルタはしばらく考えたあとこう言い放った
「まだ産まれたばかりの魂だからだろう」
「ふうん」
「だがその魂にもいづれ試練が訪れる」
「例えばどんな感じに?」
ラタルタはまた考える素振りをした
「例えば、産まれたばかりの魂で好き勝手に生きて悪行ばかりを積む魂があるとしよう」
「ええ」
「その魂はのちのち苦しむ必要になる」
「最後まで好き勝手に生きている魂も見かけるけど」
「その時はその苦しみは来世に持ち越されるだろう」
「ふうん、もういいわ、ありがとう」
私は少し納得がいかなかった
現世で悪行を積む人は現世で反省するべきだと思う
でもこれ以上聞いてもただの水掛け論にしかならない
「あっ渦が見えてきた」
信彦がまるで珍しいものを見た子供のような口調で言う
「そうね、入りましょう」
私たちは渦の中に入った
「……ここもやられてるのね」
次の街についたが
ここも辺りは死体だらけだった
悪魔たちの進撃はどこまで続いてるのやら
「!!あれを見ろ!!」
拳が上を指差す
私はその方向を見上げる
そこにはバサバサと天使の羽を羽ばたかせた黄金の機体がいた
「あれは……もしかして……」
「君はアリサじゃないか!」
黄金の機体から声がした
キリアの声だ
その機体は私たちのところに降り
コックピットを開けた
中からキリアが姿を現す
「久しぶりだな、アリサ」
「ええ、久しぶりね、キリア」
私たちは握手を交わす
彼は私の世界を救ってくれた英雄だ
しかし、彼の霊界での地位は私より下だ
高級霊ですらないと言う
正直私はこの仕組みに今いち納得できない
「紹介するわね、彼はエドワード・ラタルタ」
「あなた様がラタルタですか?すごい!あの有名な預言者さんと会えるなんて……」
キリアは驚いた様子だった
「あら、あなたは英雄よ、別にラタルタと対等に話しても」
「いやいや、歴史上のすごい人物と出会えると自然と敬語になるって」
キリアはウキウキした様子だった
普段のキリッとした彼の雰囲気が感じられない
「キリア君、君は偉業を成し遂げてくれた、よくやってくれたと思うよ」
「お褒めに預かり光栄です」
そう言いながらキリアはラタルタの前で片膝を立てる
「いや、そうかしこまらなくていいよ」
「いいえ、俺がこうしたいんです」
「それなら構わんが……」
ラタルタは困惑した様子だった
私はそれを見てヘルフェスが私の前に片膝を立てる光景を思い出していた
どうしよう私まで困惑しちゃった
「キリア、他にも紹介する人物がいるからいいかしら」
「え?あ、ああ」
「まずは」
「わたくしめはアリサ様の下僕ヘルフェスと申します」
「は、はあ」
私が言う前にヘルフェスが名乗り出た
本当に困ったやつだ
こいつは
「まあそういう設定にしてやって次は」
「俺は剛楽拳」
私が言う前に拳が名乗り出た
「お前、なかなかかっこいい面してるが俺にはかなわねえな」
「は、はあ」
キリアは困った様子で返事を返した
「さ、さて次行きましょう次は」
「俺っちは霧蔭信彦、神に選ばれた勇者だよん♪」
もう!どうして私が紹介しようとしてるのに皆自分から名乗り出るの!
皆自己顕示欲高すぎ!
「ま、まあこれで全員かしらね」
「皆個性があるな」
キリアは相変わらず困った様子で話す
「そうね、さて皆、彼はキリア、私の世界を救ってくれた英雄よ」
私がそう言うと皆納得した様子でキリアを見つめた
「よしてくれ、俺はそう大層なことはしていない」
「謙遜はやめて、事実なんだから」
キリアはあくまで謙虚な姿勢を貫く
あの三人にも見習って欲しいわ
私たちは他愛もない話をしていた
キリアは自分が天国で冒険して面白かったことを語り
私は自分が育成してきた勇者について語った
話題は悪魔の襲撃に移った
「キリア、どうあなたから見た様子だと?」
「ダメだ、どこの街も悪魔だらけだ」
「やはり、そうなのね」
「お前が世界の秩序を戻す”鍵”なんだよな」
「ええ」
「なら俺もお前の護衛についていいか?」
「ダメよ」
「な!?どうしてだ?」
「あなたが護衛ってことはこの機体も一緒なのよね」
「ああ」
「下手に目立つと困るわ」
「確かに悪魔たちにバレやすいかもしれない」
「それと」
「それと……?」
「あなたは私の護衛をするより少しでも悪魔を殲滅して世界の秩序を保つ必要があるわ」
「それもそうだな」
「さて、私たちは目的地へと急がないといけないからそろそろ行くわね」
「ああ、お互い頑張ろうな」
「ええ」
キリアは再び黄金の機体に乗り旅立った
私たちはそれを見守ったあと足を進めた
しばらく歩くとまた渦が見えた
「今日はよく渦を見かけるわね」
「ああ、そうだな」
「ラタルタ、ほんとにあなた、目的地がどこにあるのか分かるの?」
「キュアリスが言ってるのだ、間違いないだろう」
「この世界の秩序が何年と持つのか心配だわ」
「君とキュアリスが育成してくれた勇者たちが何とか塞き止めてくれてるようだ、心配はいらんだろう」
「そう」
「でも急ぐに越したことはない、行こう」
「ええ」
私たちは渦の中に入った
「!!」
風景ががらりと代わり次の街へ着いたことが分かる
辺りには逃げ惑う人々がいた
「これは悪魔の仕業じゃないかあ?」
「とにかく急いでこの襲撃を止めに行かないと」
私たちは逃げ惑う人々とは反対の方向へ進む
「え……?」
そこには血まみれの少年と一人の少女がいた
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