閑話「ヘルフェスとエルリーナ」
「おい!人が倒れてるぞおおおおおお!!!」
男の一人が叫び声を上げた
俺たちのパーティ”クリスタルソード”は名を轟かせることになった
というのも一人の若造が加わったおかげだ
名はヘルフェス
この若造は剣の腕が達者で
どんなに強い魔物でも大体一撃で倒してしまう
凄腕の戦士だった
そのおかげで俺たちは有名になったのだが
金魚の糞みたいなもんだ
俺たちパーティは近々王宮に呼ばれるということで
浮き足立っていた
「ヘルフェス、やっぱりあなたって素敵!!」
エルリーナが言う
彼女はヘルフェスの後に入ってきた新人だが
腕は確かだった
「エルリーナあまり俺に近寄るな」
ヘルフェスはエルリーナを邪魔者扱いする
エルリーナは結構美人だ
そいつの誘いを断るやつはいねえ
だがヘルフェスは違った
”俺はアリサ様の下僕”だと良く言い張る
「そんなにあたしのこと嫌いかい?」
「ああ、嫌いだ」
「ガクーン」
エルリーナもなかなか諦めない
嫌われているというのに熱心なものだ
俺はパーティ”クリスタルソード”に入ることになった
理由は”ラタルタの予言”だ
今度の場所は雪国だった
街中は辺り一面雪だらけだった
今日も雪が降っている
「ちっめんどくせえなあ」
俺はそう思いつつパーティのメンバーとして戦うことになった
「おい!ヘルフェス!!前へ出すぎだ」
そんなことは関係なかった
俺は一人でも充分戦えたからだ
「なっ!あのリザードの群れを一人で……」
皆驚いた様子だった
それからというもの指図はされなかった
そんなある日
俺たちのパーティにもう一人加わった
エルリーナという女性だ
彼女は周りの評判から見るに美人だそうだ
まあ俺は興味ないが
しかし、彼女、良く俺に付きまとうようになる
理由は俺が強いからだろう
俺は”アリサ様以外のものには興味がない”と言っても
彼女はしつこかった
斬り捨てようかとも思った
「ヘルフェス、一緒にご飯食べようよ!!」
毎朝彼女は俺の部屋の前に来てそういう言葉を発する
本当にしつこい
まあその話はどうでもいいとして
近々国同士で戦争が始まるらしい
それで俺たち”クリスタルソード”が王宮に呼ばれることになった
皆王宮に呼ばれるということで楽しみにしていた
最も俺にとってはどうでもいい話だ
そんなある日
”ラタルタの予言”開いた
内容を見て俺は驚いた
エルリーナを始末しろといったところだ
別に実践することは構わないが
俺は少し気になっていた
どうしてエルリーナを殺す必要があるのだろうかと
それで俺は彼女のあとを付けることにした
昼間は彼女は良く俺に付きまとうので
夜中に決行することにした
予想通り彼女は宿の外へ出ていった
俺はそのあと追う
しばらく付いていくと
彼女は路地裏に入っていった
俺もその後に付いていく
そこには黒いローブを着た男がいた
彼女は男と何か話していた
俺は聞き耳を立てる
「近々”クリスタルソード”は王宮に呼ばれることになったわ」
「そうか、ならば王様から出来る限りの情報を入手して我々に伝えて欲しい」
「ええ、分かったわ」
なるほど
そういうことか
彼女はこの国の情報を入手してどこか分からない組織に与えてるスパイだったのだ
恐らく彼女を野放しにしたら大変なことが起こるのだろう
だから”ラタルタの予言”が開いたと
俺は翌朝
彼女を建物の裏に連れ出した
「何?ヘルフェスもしかしてここであたしを襲うってか?」
「お前なんのつもりだ?」
「何?あたしがヘルフェスの後をつけ回すこと?」
「昨日の夜、お前の後を付けさせてもらった」
「!!!!」
エルリーナはその言葉を聞いた瞬間銃を取り出し俺に向けた
「悪いがお前を始末しろと命令が出てるんでな」
「くっ!」
俺はエルリーナの銃を弾き飛ばし
エルリーナの胸に剣を突き立てた
「ヘルフェス、やっぱりあんたは強いねえ、毎度ながら惚れるよ」
「何か言い残すことはあるか?」
「あたしはあんたが好きだってことぐらいかねえ」
「それも嘘なんだろ?」
「さあどうなんだろうね」
しばらく間が経ったあとエルリーナはこう言い放った
「ヘルフェス、今だけでいい、剣を下ろしてくれないかい?」
「命乞いか?」
「命乞いかどうかは下ろせば分かるさ」
「ほう、面白い」
俺は剣を下ろした
本当なら彼女がナイフを隠し持っていて襲ってくる可能性も考えるべきだが
彼女から殺気を感じなかった
しばらくするとエルリーナは俺に近づいてきた
「!!」
エルリーナが俺の唇に唇を当てた
「どうだいこれで私の気持ちが本物だと分かっただろう?」
「いいや、キス程度で人の気持ちが分かるはずがない」
「強情だねえ、もういいよ、あたしを殺しな」
エルリーナは両手を広げた
エルリーナの顔に何か清々しいものを感じた
これから殺されるっていうのにどうしてそういう顔が出来るのだろう
俺はエルリーナの胸に
「うっ!!」
剣を突き刺した
エルリーナが倒れこむ
雪が赤く染まる
エルリーナの顔はまるで笑ってるかのようだった
なぜこんな死に方でそんな顔が出来るのか俺には分からない
ピカーン
俺が右腕にしている花の腕輪が光った
「次の世界か」
さて、次はどんな仕事が待っているのやら
俺はこの世界を後にした
閑話「ヘルフェスとエルリーナ」
完
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