アマリア編
~あらすじ~
バルサ国、リヴァート国
二つの国は今もなお戦火を繰り広げていた
そんな中チージャ国で父殺しの革命が起きる
主犯はこの国の王ウイリアム・スタットフェルトの1人娘アマリアである
そしてチージャ国はそのまま両国を圧倒的な力で制圧する
彼女の目的は一体なんなのか?
”ラタルタの予言”が開いた
「”少女は英雄の傷を癒す”」
~アマリア~
「皆のもの!余はアマリア・スタットフェルトである!余の父ウイリアム・スタットフェルトは何者かに暗殺された!これからは余が父に変わり王となろう!これは革命だ!!!異論はあるまいな!」
私の名はアマリア・スタットフェルト、15歳
チージャ国の王である父ウイリアムと
母アマリカの一人娘だ
私は父を殺した
父は本当は母に男の子を産んで欲しかったそうだ
この国の王は代々男が継ぐと決まっているから
それで最初に産まれたのが女の子だった
父は大層がっかりしていた
その後も父は母とお盛んにやっていたが
一向に子供が出来る様子はなかった
次第に父は私と母に当たるようになった
「おやめください!!父上!」
「お父様と呼べ!!この馬鹿娘が!!!」
「げほっ!!」
「あなた!!!娘には手を出さないで!!!!」
「うるさい!!!!!」
母は私を良く庇ってくれた
そのせいか母は私の何十倍の暴力を
父から受けていた
そんなある日
・
・
・
・
・
・
・
母が死んだ
理由は明らかだった
父の過剰な暴力のせいだ
父はこれを隠蔽した
その時私は決心した
・
・
・
・
・
父を殺そうと
私は夜中こっそりと父の部屋に入り
机の引き出しから銃を取り出した
そして寝込みの父を銃で撃って殺した
銃声を聞いてすぐに家来たちが駆けつけてきた
一番早く来たのはタイラという
まだ家来なりたての少年だった
「アマリア様!これは一体どういう!?」
「皆まで言うな!この責任は私が負う」
私は銃口を自分のこめかみに向けた
「おやめください!アマリア様!!」
タイラはすぐさま私を止めた
「あなたまで死なれたらこの国は大変なことになってしまいます!」
確かにそうだ
この国には私たちスタットフェルト家以外に王族がいない
となれば私がいなくなれば
この国に王族がいなくなることになる
「しかし、私は女だ!王になぞ」
「なれます!アマリア様ならきっとなれます!!」
タイラは強く主張した
私たちは父の死を隠蔽した
家来たちも皆納得した
私の父は独裁者だったのだ
民をゴミのように扱い
己は強欲のままに生きる
そして家来にもまともな扱いをしてこなかった
それで家来たちも私の父に対して
憎しみを抱いていたのだろう
しかしその父の娘の私はどうなるのだろう?
当然父に憎しみを抱いていたなら
その娘にも向くものである
しかし私に対しては父とは真逆だった
私は事あるごとに家来達に労いの言葉をかけていた
また積極的に民たちとコミュニケーションをとっていた
そのおかげだろう
「余は父のように独裁的な振る舞いはしない!民に平等に恵を与え、国に平和をもたらし、未来には栄光をもたらすであろう」
こうして私の演説は終わった
緊張したが思った通りにできてよかった
「アマリア様!素晴らしい演説でございました」
タイラが言う
「タイラ、あまり私を褒め称えるな、私は父殺しという大罪を負っている」
「しかし、父は独裁者でした」
「独裁者でも私の父だ、あまり悪く言わないで欲しい」
「はっ!
申し訳ありませんでした!」
私はタイラと共に王宮に戻った
~タイラ~
僕は幼い頃
アマリア様に救われた
僕はスラム街育ちだった
日頃から危ない目に合わないよう注意を
払っていたのだが
ある日、運悪く悪い輩に目をつけられてしまった
「ああ、つまんねえなあ暇だしこいつでドッヂボールでもしようぜえ!」
僕はされるがままだった
ああ、神はどこにもいない
そう思っていた
その矢先
「あなたたち!!やめなさい!!!」
二人の兵士を連れた女の子がやってきた
「な!?」
「何で王族がこんなところに!?」
「やばい!逃げるぞ!!」
輩たちは逃げていった
「大丈夫ですか?」
「あ、は、はい!」
ああ、神はいたんだ
今!目の前に!!
「そうですか、それはよかった、それでは私はこれにて失礼します、行きますよ、リュウ、リーシャ」
「はっ!」
「お待ちください」
「なんでしょうか?」
「あなた様の名をぜひ教えて頂きたいです」
「私の名はアマリア、アマリア・スタットフェルトです」
「アマリア様!僕はタイラと言います」
「タイラ……ですか、いい名前ですね」
「いつか、いつか必ずやあなた様の家来になってみせます!!」
「あら、そのときを楽しみにしていますよタイラ」
これが幼い頃の僕の体験になる
そして僕は今!アマリア様の家来だ!!
これ以上の幸せはない
僕は意気揚々しながら今日も
アマリア様に仕えるのだった
~善意なる侵略~
「タイラ、少しばかり話がある」
「はい、なんでしょう?アマリア様?」
私はついに王になれた
賛否両論はあったが
やっと王になれたのだ!
そして私にはある野望がある
全世界を征服して
私だけの楽園を作る野望が!
私は欲している
皆が平等に平和に暮らし
幸福でいられる世界が!!
「私は全世界の侵略を考えている」
「!?」
タイラは唖然としている様子だ
まあ無理もない
「それはなりません、アマリア様!民の支持率が下がってしまいます!!」
「それは承知の上での判断だ!お前にも話そう、私の野望を」
私はタイラに自分の野望の全てを打ち明けた
「しかし、外交という手もあるのではないですか?」
「いいや、それでは遅いかつ独裁者がいる国には無意味だろう」
「それは、そうですが……」
「タイラ、協力してくれるか?」
「……分かりました、アマリア様がそこまで言うのなら私は命に変えてもアマリア様の野望を叶える所存であります!!!」
「そう固くなるな私とお前の仲だろう」
「え、あ、はい」
こうして私の善意なる侵略が始まる
~突然の核爆発!?~
「隊長!あなたのおかげで俺たちエリート部隊になりましたよ!」
「ああ、これも俺の指示に従ってくれた部下のおかげだ」
「そんな、ご謙遜を!すべて隊長の作戦のおかげです」
「そこまで言われると照れくさいな」
シュゲルツはまた俺を隊長と呼んでくれた
前に”追悼式などどうでもいい”という失言をしたせいで
一時は見損なわれたものの
俺たち部隊は次々とリヴァート国の属国を制圧
あの”白い機体”を仕留めたことも相まって
シュゲルツを含む第15部隊の俺の信頼もすっかり回復していた
そうだ
今、生き残ってる部隊のメンバーのランク付けをしておこう
これも隊長の義務なんでな
面倒なら飛ばして欲しい
アルテミス・リジャナ
体力D→C→B
近接攻撃C→B
素早さD→C
射撃精度D→C
回避・防御率E→C
シュゲルツ・クリッダ
体力E→C
近接攻撃F→B
素早さE→C→B
射撃制度A→B
回避・防御率E→C→B
ハルト・ミーシェル
体力D→C→B
近接攻撃D→C
素早さC→B
射撃制度D→C
回避・防御率E→D
ホルスン・エレクト
体力D→C
近接攻撃D→B
素早さC→B→C
射撃制度D→C
回避・防御率D→C→B
リクトン・アンチェルト
体力C→B→A
近接攻撃C→B
素早さD→C→B
射撃制度C→B
回避・防御率D→C→B
うむ、下がっている能力もあるが
全体的に上がっているのでこれでよしとしよう
皆能力が平均的になっているため
分隊制度は無しにした
臨機応変に動けるようにするためだ
この作戦の終了後俺たちの部隊には
新たにメンバーが追加される予定になっている
楽しみだ!
「それでは皆!出撃するぞ!!」
「おおおお!!!!」
俺たちが出撃しようとした時
ドがガガガガガガガガがああああああああああああああんんん
という爆発音がした
空中に赤くて大きな丸い円が現れた
それが消えたあと後ろから何やら船が現れた!
宙に浮いている
しかもこれが馬鹿でかい
横幅500m、縦幅200mはありそうな船だ
俺の国バルサ国にも船というものはあるが
宙に浮いている上にこんな馬鹿でかい船など見たこともない
なんだ?ありゃ!?
~翼をもがれたキリア~
「キリア、はい口開けて」
「……」
私は今、自分の家でキリアの看病をしている
私はキリアの看病をするために
軍を抜け近くの町の商店で働いている
戦時中に軍を抜けるのは大変だった
まあその話は置いといて
キリアはあの戦いで敗れ
植物状態になってしまった
幸い言葉だけは話せた
「イリア、もういい!もういいんだ!」
「何がよ!?」
「もう俺に構わなくていい!」
「何言ってるの!?」
「俺はもう戦えないただのゴミクズだ!!」
「……」
そういってキリアはいつも泣いていた
私も悲しい
「なあ、イリア、どうして俺なんか助けるんだ?」
「それは……」
「俺を助けたところで何も得をしないのに!!」
「!!!」
パアン
私はキリアの頬を叩いた
「馬鹿!!!私があなたを助けたのは……私があなたを助けたのは……」
「イリア……?」
「いや、なんでもないわごめんなさい、取り乱してしまったわね、私、そろそろ仕事があるから出かけるわね」
「ああ、行ってらっしゃい」
私は家を出た
「???」
妙だ
やけに外が騒がしい
~アマリアの宣戦布告~
「バルサ国、リヴァート国両軍につぐ
余はチージャ国の王
アマリア・スタットフェルトである
本日から両国は我が国の支配化にある
抵抗するならば先ほど放った”核”の餌食となるであろう」
突然の宣戦布告だった
ただでさえリヴァート国との戦争で忙しいというのに
他の国まで乱入してくるとは……
それに先ほどみたあの大きな赤くて丸い円
どうやらあれは”核”というらしい
あんなものを地上に落とされたらひとたまりもないだろう
「皆、ここで待機しててくれ」
「た、隊長!?」
「俺はあの船に突っ込む」
「そんな無茶ですぜ隊長!あんな大きな船に一人で突っ込もうなんて!それに下手な抵抗をしたらあの”核”いうものを地上に落とされるかもしれないんですよ!!」
「大丈夫、俺1人で突っ込んだところで敵は”核”というものを使ってきはしないだろう」
「ではなぜ!?」
「俺はこの国の”核”心を守りたいだけだ!」
皆、俺の今の言葉に涙していた
「隊長……逝ってらっしゃい……」
ってあれ?
何か皆静まり返っている
普通なら”たいちょおおおおおお!!!!”
って言ってくるはずなのに
「あ、ああ、行ってくる……」
俺はあの巨大な船に突っ込んだ
~マルス、捕虜になる~
私はタイラとテーブルを囲んでチェスをしていた
そういえば言い忘れていたな
私はタイラを偉く気に入っていた
彼は私とのあの時の約束を守ってくれていたのだ
最初は周りの反対があったが
私がそれを押し切った
彼は知能、身体能力も私の家来の中でずば抜けていたため
渋々家来として受け入れてもらえた
それで今では私の側近の家来である
リュウやリーシャよりも仲が深い
「チェックメイト」
「うう……また負けた!」
私はタイラとのチェスで一回も勝ったことがない
悔しい!!!
「アマリア様!!」
「どうした?リュウ」
「我が船に1人特攻してくる機体があります!!」
「そうか……」
「どうします?アマリア様?まさか”核”を本当に使いになるおつもりですか!?」
「いいや、リュウ、リーシャ、出撃せよ!あの機体のパイロットを捕虜として捕らえてまいれ!!捕虜の1人くらいは必要だろう」
「はっ!では出撃してまいります」
私はタイラの方に向き直る
「アマリア様、私も出撃しましょうか?」
「いや、お前は私とチェスの相手をしてくれ」
「はあ、アマリア様がそういうのでしたら」
こうして私はタイラとチェスを続けるのであった
「くっ!近づけない!!」
俺は苦戦していた
あの船武装が多すぎる
下手に接近するとやられてしまう
どうしたものかとしばらく考えていた
するとあの船から2機ほど機体が出てきた
俺のほうへ接近してくる
「くっ!来たか!!」
俺は一旦引こうとした
しかし、あの2機の機体異様に速い!
俺はあっという間に追いつかれてしまった
必死に応戦もしたが
簡単に回避されてしまった
機体の性能が関係しているのだろう
うん、機体の性能だ
そうだろう
な!諸君!!
そうこうしている内に俺の機体の両腕を
あの2機に掴まれてしまった
俺の機体はあの2機によって船の中に連れ込まれた
~キリアの苦悩、再び~
俺は全てに絶望していた
手も使えない足も使えない
おまけに目も見えない
あの隊長機の一撃が今でも脳裏に焼きついている
やられた
俺は油断していのだ
俺はあの”白い機体”でたくさんの敵を倒してきた
集団を相手に一機でやってのけたこともあった
あの隊長機にだって勝てそうだった
だがやつは俺の動きを読んでいた
一旦引いて俺の動きを誘った
フェイントだったのだ
俺はそれにまんまとかかった
やつは俺の一撃を回避し
俺の機体のコックピットに一刺し入れた
「俺は……負けた……負け犬だ……」
畜生!あいつともう一度戦いたい!!
あいつと!!!
俺の悔しさは次第に憎しみに変わった
あいつのせいで俺はこんなざまになった!
あいつのせいでイリアが俺の看病をしないといけなくなった!!
「あいつが……あいつが……あいつが憎い!!」
「どうして人を憎むの?」
少女の声がした
~チージャ国の兵士マルス~
「くっ!負けた!負け続きだ!!」
私は相変わらずタイラとのチェスで負け続けた
「アマリア様、捕虜を連れてまいりました」
リュウの声がした
向き直るとそこには薄い茶髪の恐らく隊長服を着た男性
がリュウとリーシャの手によって連れてこられた
「ふむ、お前が私の船に特攻してきた愚か者か」
「お前らの脅しには屈しない!!」
男性は不屈の態度で私に接してきた
「ほう、お前は自分の国に”核”が落とされてもいいと!!?」
「うっ!!!」
おやおやさっき”脅しには屈しない”と宣って置きながら
もう挫けるとは
「たとえ、俺の国が滅んだとしても俺はバルサ国の第15部隊隊長マルス・クレーだ!!!!!」
「ほうほうほうほう、気に入った!こやつを我が軍の兵士とする」
「あ、アマリア様!?な、なぜに捕虜を我が軍の兵士に!?」
私はリュウの言葉を無視して言った
「マルス・クレーとやら取引だ、お前は我が国の兵士となる、その代わり私はお前の国を助けよう」
「お前が俺の国を助ける!?どういうことだ!?」
「”核”を落とさないという意味だそれだけじゃない、お前の国の民に平等に恵を与えてやろう」
マルス・クレーとやらは悩んでるようだが
しばらくすると口を開いた
「分かった!俺はお前の兵士になろう」
~リュウの憂鬱~
アマリア様は優しいお方だ
アマリア様の父ウイリアム・スタットフェルトは
私が言うのもなんだが憎たらしいお方だった
私たち家来をただの駒、いや、駒どころか
ゴミとしてしか扱わなかった
何かあれば私たち家来に八つ当たりをし
少しでも抵抗すれば即処刑
そういうお方だった
それに対してアマリア様は
私たち家来に労いの言葉をかけてくださったり
民の身を良く案じておられた
私は王族の家来の身の上
その下の位の民のものを見下してはいたが
アマリア様のそういう行動を大変尊敬している
しかし、アマリア様は不思議な人でもある
民の身を案じるのは分かるが
自分から下の民、それもスラム街などの貧相民などに
よく関わろうとしていた
私にはその行動が理解出来ない
上には上の生活、下には下の生活というものがあるのだ
私はアマリア様に”なるべく民と関わるのはやめて頂きたい
王族の位が下がってしまいます”と言うと
アマリア様は”分かった、ならば私は王族という地位を捨てよう”
とまで言うのだ
その発言には私を含め周りの家来が大変驚いていた
とにかくアマリア様は不思議な人なのである
タイラの件もそうだ
彼はアマリア様が昔助けた少年だ
彼は約束通りアマリア様の家来になりに来た
もちろん家来たちは彼を追い返すが
彼はしつこかった
とにかくしつこかった
家来たちが脅しても屈しなかったらしい
そこにアマリア様が通りかかった
そしてアマリア様は貧相民である彼を
昔助けただの、約束しただのと言って
簡単に受け入れたのだ
もちろん条件付きだった
王族の家来になる試験をクリアした上で
アマリア様の家来の一番の実力者である
私リュウ・ヤマザキに決闘で勝てという
無茶な条件だった
しかしこのタイラという少年
ただものでは無かった
なるにはとても難しい王族の家来の試験を
軽々とこなし
私と対等に渡り合ったのだ!!
一手遅れで私は負けた
大変悔しかった
もう一回勝負を申込みたいところであるが
一番の実力者である私が貧相民に願いを請うことは
恥だと自覚し諦めた
こうしてタイラという少年は晴れてアマリア様の家来となる
最近では側近である私とリーシャよりもアマリア様にとって
重要な存在になりつつある、というかもうなっているだろう!
そこを含めてたいへん悔しい!!
それはそうとアマリア様
今度は世界征服をするらしい
捕虜を自国の兵士にするし
本当に何がしたいか分からないお方だ……
~イレイス国~
「さて、バルサ国、リヴァート国を含めここらの国は全て征服した、我が父ウイリアム・スタットフェルトは戦略に長けていたため私が王になる前から我が国は世界最大の国だったそしてここいらを手中に収めた我が国は恐らく世界一の国となっているであろう、タイラ、お前はどう思う?」
私はチェスをしながらタイラに問う
「アマリア様、僕が知っている驚異的な国はイレイス国です、あの国はウハルト・ゴングという人物が王座についたことで急激に勢力を広げています、早めに手中に収めるべきかと」
「ふむ、そうだな!タイラ、お前頭がいいな!」
「チェックメイト」
「またか……またか……」
私は相変わらずタイラとのチェスで負け続けた
~降伏~
どうやら俺たちの国はチージャ国に降伏したらしい
いや俺たちの国だけじゃないリヴァート国や
その周辺の国々も皆降伏したという話だ
そしてどうやらチージャ国はイレイス国と戦争を始めるらしい
俺たちはその駒として使われるわけだ
「くっ!俺たちは一体どうなっちまうんだ!!あんな国にいきなり攻め込まれてさ!!!!」
アルテミスが悔やんでいる
「ああ、俺たち今まで順調に事を進めてきたのにな……エリート部隊にまでなったのに……」
俺がそれに答える
本当に俺たちはどうなっちまうんだろうか?
あっ!隊長無事かなあ~
~マルスの心変わり~
「おい!どういうことだ!アマリア!?話が違うじゃないか!?」
「おい!貴様失礼だぞ!!!」
リュウという家来が俺を叱責する
「リュウ、お前は下がっておれ!」
「しかし!!」
「あやつは私と話しておる」
「……分かりました」
「それで?」
アマリアが問い返す
「だからなぜ俺の国の兵士までお前の戦争に巻き込まれなくちゃいけな」
「”核”」
「うっ!!!!」
俺は言葉が出てこなかった
卑怯だぞ!!!その手は!!!!
「まあ待つが良い、いつもどおりあのイレイス国も”核”で脅すその話はそれが終わってからでもよかろう」
「ううむ」
「だがイレイス国が屈しなかった場合お前の国の力も必要となる、猫の手も借りたい状況になるということだ」
「だがお前の国はこの世界で最も軍事力があると聞いた!俺の国の力は必要ないだろ!?」
「他の国の力は必要だと?」
「ああ」
「お前は分かっていないようだな、他の国の力が必要だと言うことはその国の兵士の命が必要だということだ」
「そ、それがどうした!?」
「それを自分の国に置き換えてみるがいい」
確かに彼女の言う通り
戦うということはたくさんの命を犠牲にするということだ
しかし……
「た、頼む俺の国だけは勘弁してくれ!!」
俺は土下座した
「ほう」
「俺の国には仲間がいるんだ!シュゲルツ、アルテミス、ハルト、ホルスン、リクトン、どれも大切な仲間だ!」
「残念だがそれは無理だ」
「ならばイレイス国を”核”で!!」
「それも無理だ」
「なぜ!?」
「お前にも私の目的を話したほうが良さそうだな」
俺はアマリアからなぜチージャ国が
他の国を征服するか理由を聞いた
俺はそれを聞いて感嘆としていた
「まさか……あなた様に……そんな考えがあるとは……」
「納得してもらえたか?」
俺はアマリア様に敬服していた
彼女にこんな目的があるだなんて
「アマリア様、ぜひとも我が軍の兵士たちをあなたの手先としてお役立てください!!」
俺はすっかり心変わりしていた
俺は自分の国を守れればそれでいいのだと思っていた
だけどアマリア様は違った
彼女は自分の国だけじゃなく他の国
いや、国どころの話じゃない
民一人一人のことまで考えていた
俺が浅はかだった
「よかろうお前の国の力を我が国の力としよう、だが安心しろ、私には知将タイラがいる、彼の戦略があれば犠牲は最小限で済むだろう」
「そんな!!大げさですよ!!アマリア様!!」
タイラという少年が困惑して言う
「今回の征服もお前の提案のおかげで出来たのだ!もっと自信を持ってもいいぞ」
「お言葉ですが、僕はそんなに頭がよくありません」
「それならばお前とのチェスに負ける私は何か?猿か!?」
「い、いえ!滅相もありません!!」
この二人のやりとりは見ていて面白い
「ということだマルス、だから安心して欲しい、いや、安心してくれ!」
「はっ!分かりました!!有難うございます!!!」
俺はアマリアに礼を言って
部屋を出た
俺たちの船はイレイス国に向かっていた
~ウハルト・ゴング~
俺様はウハルト・ゴング
イレイス国の王だ
いや、イレイス大大大大大大大国の
王だ!!
今日もたくさんの国を征服している
あああああ、勝利の杯は旨いわい
「う、ウハルト様!!」
「なんだ!!貴様!!!俺様の気分を害する気か!!死刑に値するぞ!!」
「す、すいません!!大変緊急な報告がありまして!!!」
「ん?何だ??」
「チージャ国という国が我が国に宣戦布告してきました!」
「ほう?それがどうした?打ち負かして征服してやればいいではないか?」
「しかし”核”というものを使ってきまして」
「何!?」
「ただ空中に放たれただけで我が軍には被害がありません、恐らく脅しかと……」
「ふうむ、なかなかムカつく国だな」
「それで如何しようかと」
「なぜそれを俺様に問う」
「え!?」
「”核”には”核”で対抗すればよかろう」
「しかし、”核”を簡単に使うのは……」
「ええい!うるさい!!!俺様がやれと言えばやるんだ!!!!分かったか!!!!!!」
「……は、はい、分かりました……」
ったくこんなことで俺様の機嫌を害しおって
まあいいチージャ国を打ち負かす様を想像するだけで
酒が旨いわい
ウハルトは今日も王宮でガビガビ酒を飲むのであった
~アマリアの日常~
私は暇があるときは
タイラとチェスをするか
パソコンでネットサーフィンをする
「”アマリア様ハアハア”というコメントは無視してっと」
ネットサーフィンでは主に私のことについて
調べている
王たるもの民の要望を聞き入れる必要があるのだ
”俺はアマリア様が王になるのには賛成だ民のことをよく考えてくれるしな”
”女性が王になるのはダメだろ”
ううむ賛否両論だ
私が王になるのに反対のものがいるのも仕方ないだろう
”他の国と戦争するなど俺は納得出来ん!!”
確かに私も他の国と戦争をするのはあまり好きではない
チェスなどの勝負事は好きだが
私には前も言った通り野望がある
今更引き返すわけにはいかないのだ
「それにしても最近天候が悪いな」
空が黒い雲に覆われていた
雷が落ちている
「アマリア様、イレイス国について少し話がありまして」
タイラ私に話しかける
イレイス国についてか……
どんな話なんだろうか?
~知将タイラ~
「ウ、ウハルト様!!」
「何だ!また貴様か!!」
「お忙しいところ大変申し訳ありません!今日は残念な知らせが……」
「んむ?なんだ?」
「チージャ国に”核”攻撃を仕掛けたのですが
失敗しました!!!」
「なななななな、何!?」
「ど、どういたしましょうか?」
「なぜ失敗した」
「それがチージャ国は我々の動きを察知していたようで自国に大量の兵士を待機させて待ち伏せさせてたようです」
「ふうむ、まあいい、で戦況は?」
「こちらが少し不利です!敵の兵器のほうが我が国の兵器より少し上かと」
「全く情けない話だ、仕方ねえ、俺様が指揮をとってやろう」
「お、お願いします」
全く俺の国の軍人は馬鹿しかいねえのか
あのチージャ国とやらに俺様の力を思いしらせてやる!!
「タイラ、お前の予想通り我が国に”核”武装した兵器が来た!お前の知略のおかげで何とか我が国を守ることができた!感謝するぞ」
「いえいえ、アマリア様に褒めていただいて光栄です」
「しかし、やはりイレイス国は降伏してこなかったか、兵士たちの命を犠牲にするしかないのが残念だ」
「そうですね」
「だが戦況は我々の有利だ、このまま行けばイレイス国も手中に収めることができよう」
「はい!アマリア様の野望が実現することを私は強く願っています」
「ありがとう、タイラ」
そうだ
私の野望……
必ず成し遂げてみせる!!
~アリサ・レイニード~
「誰だ!?」
少女の声がした
扉が開いた様子もない
一体どうやって入ってきたんだ?
「私の名はアリサ、アリサ・レイニード、あなたを導きに来た」
「俺を??」
「ええ」
俺を導きに来た?
何のために?
それにこいつと俺は初対面だ
いきなり”導く”だの言ってくるのはおかしい
「それよりどうやって入ってきた?」
「私は幽霊、とでも言えば
分かりやすいかしら?」
「幽霊か……それで幽霊が俺に何かようか?」
「さっきも言ったよとおりあなたを導きに来た」
「俺を何に導くと言うんだ」
「あなたには戦ってもらう必要がある」
「はん!無理を言うな俺はこんな体なんだぞ!!」
すると少女は俺の額に手を当てた
体が暖かい
「これであなたの傷は治ったわ」
あれ?目が見える!!
手も足も動く!!!
目の前には少女がいた
少女は白いワンピースを着ていて
肩まで伸びた透き通った茶髪をしていた
髪には細かいウェーブがかかっている
首に花の形をしたペンダントをかけていて
片手には何か本を持っている
それにしてもこの少女
一体何者だろう?
「俺の傷を治してくれたことに感謝する、しかしお前は一体何者だ?俺にどうして欲しいと言うんだ?」
戦えというだけじゃ曖昧すぎる
具体的にどうしてほしいか聞きだなさなければ
「私の手をとって」
「あ、ああ」
俺はアリサという少女の手をとった
「!?」
いきなり景色が変わった
辺り一面が花畑になった
「ここは、どこだ?」
「ここはかつて私の兄が命を落とした場所、そして私が生まれ変わった場所」
少女が俺に話始める
~アリサの忠告~
話は私がイレイス国に宣戦布告する前に戻る
私はいつもどおりタイラとチェスをしていた
「あなたがチージャ国の王アマリア・スタットフェルトね」
突然少女の声がした
周りの視線が彼女に集まる
「誰だお前は!?どこから入ってきた!?」
見たことない顔である
兵士の誰かが連れてきたのか?
しかし足音などしてないし
突然現れたような感じだった
「私の名はアリサ・レイニード、アマリア、あなたはイレイス国と戦争をするのを
やめなさい」
まだ私はイレイス国と戦争をしていない
それよりも……
「どこから入ってきた??兵士の誰かが連れてきたのか?」
「いいえ、ここに転移してきたの」
転移だと??
そんな技術を持っている国があるというのか……
「転移かまあその話は置いといて、私はイレイス国との戦争をやめるつもりはない」
「チージャ国とイレイス国が戦争すればたくさんの犠牲者がでる」
「犠牲は最小限に抑えるつもりだ」
「いいえ、たくさんでるわ」
「根拠はあるのか?」
「私には未来が見えるの」
またまた信じられない話だ
未来が見える?
「お前の国の技術はすごいみたいだな」
「いいえ、私が特別なだけよ」
この子が特別だと……?
まあいい
「とにかく私は戦争、いや世界征服をやめるつもりはない、用はそれだけか?なら下がっていろ」
「タイラ、このまま行けばあなたはいづれ死ぬわ」
「な!?」
少女は唐突にそんなことを言い出した
私の心の奥底から怒りが湧き上がってきた
「ええい、リュウ!リーシャ!彼女を引っ捕えよ」
「はっ!」
「やはり”ラタルタの予言”には逆らえないのね」
リュウとリーシャが彼女を引っ捕えようとした瞬間
彼女は突然消えた
「!?」
私を含め皆がとても驚いた
「なんだったんだ一体……?」
彼女は何者なのだろうか?
それと”ラタルタの予言”という言葉が引っかかっていた
ラタルタが誰か知らないが
予言には逆らえない??
私たちが戦争をすることも予言されていたということだろうか?
それを聞きたかったが彼女はもういなかった
私たちはしばらく唖然としていた
~イレイス国とチージャ国の全面戦争~
戦況は最初は私たちチージャ国の有利に進んだ
しかし、イレイス国は必死に応戦
戦況はほぼ互角となった
「くっ!思ったよりイレイス国は手ごわい」
「アマリア様、”核”を使ったほうがよろしいのではないでしょうか?」
リュウが私に提案してきた
「いや、あれはあくまで脅しだ、そう簡単に使うわけにはいかない!」
「アマリア様、私が出撃しましょうか?こう見えて私は操縦技術があります!」
タイラが提案してきた
「ダメだ!タイラ!私にとってお前は重要な存在だ!失いたくはない!」
「アマリア様、私はあなたの役に立つために生まれてきました、それにあの女の言ったことはでまかせです、気にする必用はありません、どうか出撃命令を!!」
ううむ
「分かった、ただ約束してくれ!絶対生きて帰ると!!
「はっ!!約束いたします!!」
タイラが私に敬礼し部屋を出て行った
~イレイス国の隠し兵器~
俺様は軍の指揮についた
「ウハルト様、我が国の制圧下にあるケリック国が落とされました、いかがいたしましょう?」
「ええい、あれを使え!」
「しかし、あれを使えば
味方にも甚大な被害が出ます」
「うるさい!俺様が使えと言えば使うんだ
あれで敵を沈めることが出来れば
多少の犠牲は痛くないだろう」
「……分かりました」
ふはははははは
これでチージャ国も我が国の力に平伏すだろう
あの隠し兵器を使えば……
僕が出撃したおかげか戦況は有利に傾いた
「さすがタイラさん!すごいですね!!」
仲間の兵士が僕に話しかける
「いえいえ、それより戦いに集中してください」
「はっ!」
僕たちはケリック国に続き
チジャナ国に攻め込んでいた
僕はこの戦いが終わったら
アマリア様からお褒めの言葉を頂くだろう
とても楽しみだ
~ヘブンズワールド~
「それで君がこんなふうになったと」
「ええ」
アリサは自分のことについて話してくれた
彼女は655年前に生きていたこと
彼女の家に彼女の兄宛に召集令状が届いたこと
兄はそれを嫌がり彼女と彼女の兄は一緒に旅に出たこと
旅の途中いろんな人を助けたこと
そして最後に兄はこの花畑のこの木の前で亡くなったこと
そして彼女は苦しい思いをさせられたことなど
「ちょっといいか、アリサ」
「何?」
「君の頭の中にはたくさんの映像が見えるんだよな?」
「ええ」
「俺にもそれを見せることができるか?」
「できるけど……」
「出来れば俺にそれを見せてくれないか?」
「これは普通の人が見るべきものじゃないわ」
「そこを何とか頼む」
俺はアリサに強く願い出た
「……分かったわ」
アリサが俺の頭の上に手を置く
「!!!??」
俺の頭の中に映像が流れた
「あ……あ……あ……」
殺戮で殺される人々
飢餓で苦しむ人々
それを嘲笑するかのように振舞う人たち
「や、やめ……もうやめてくれえええええええええええ!!!!」
アリサが俺の頭の上から手を離した
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「やはり見せない方が良かったのかもしれないわね」
「アリサ、お前は何百年もの間あんな映像を見せ続けられていたのか?」
「ええ」
俺はとても驚いた
こんな幼い(といっても実質何百年も生きてるが)少女が
あんな酷い映像を見せ続けられて普通でいられるなんて……
普通の人間なら発狂してしまうところだろう
「アリサ、お前すごいな」
「別にすごくないわよ」
「ところでアリサ」
「何かしら?」
「何でお前の兄はこの木の前で亡くなったんだ?」
俺は疑問をアリサにぶつけてみた
「分からないわ、兄がこの木の前で祈った瞬間、私の頭の中にあの映像が流れてきた、そしてしばらくすると兄が私の前に倒れていた、それだけよ」
「ふうむ」
「恐らく兄の魂を犠牲にして私を覚醒させるという”ラタルタ”の思惑だったんでしょうね」
ラタルタ?
彼女の話からちょくちょく”ラタルタ”という言葉が出てくる
ラタルタについては俺も学校で習ったので
ある程度知っている
有名な預言者といったところだ
俺は気になったので聞いてみた
「君は”ラタルタ”とどう関係しているんだ?」
「恐らく私が”ラタルタ”にとって重要な役割を担ってるんだと思う、私があなたをここに連れてきたのも ”ラタルタの予言”にそう書いてあったからよ、あなたも”ラタルタ”と関係があるわ」
「俺が?」
「ええ、予言の内容にあなたのことが書いてあるんですもの」
「ほう、その”ラタルタの予言”っていう本を俺に見せてくれないか?」
「いいわ、あなたには文字が見えるかしら」
そう言って彼女は俺に本を見せてくれた
「何も書かれてないな」
「ふうん、あなたはこの”ラタルタの予言”に関係しているのにこの本の文字が見えないのね」
「俺について何か書いてあるか教えてくれないか?」
俺は気になっていた
俺について予言か書かれているのだ
そりゃ気になるだろう
「”一人の英雄が誕生するその名は、キリア・レルト、少女は英雄の傷を癒す、キリアはこの木の前で祈る”」
ここまで言ってアリサは口を閉める
「続きは?」
「ここまでしか書いてないわ、キリア、この木の前で祈って」
アリサが俺に祈りを促す
「祈るったってどう祈ればいいんだ」
「それはあなた次第よ、あなたの心の奥底にある祈りを言えばいいわ」
俺はこの大きな木の前で考え込んだ
しばらくすると
ある思いが心の奥底から湧き上がってきた
「祈りの内容、決まったよ」
「そう、じゃあそれを祈って」
俺は心の奥底にある願いをこの木の前で祈った
それは
・
・
・
・
・
・
・
・
「神よ、どうかこの世界が幸福で満たされた平和な世界になりますように」
地響きがした
あの大きな木が後ろに倒れる
地面から何かが湧き出てきた
「こ、これは……!!」
黄金に輝く機体だった
全長20mはあるだろう
背中に天使のような白い翼が現れた
「まさかこんなものがこの木のしたに埋まっていたなんて」
アリサも驚いた様子だった
「あっ本が開いた」
「ん?どうした?」
「何か新しく予言があるときこの本が開くの」
「へえ、それで新しい予言には何と書いてあるんだ?」
「”英雄はこの機体に乗って大きな戦争を止める”」
「大きな戦争?」
「今チージャ国とイレイス国が
戦争をしているわ」
「ふむ」
「それを止めろとこの予言は告げているのでしょうね」
「俺が止めるのか?」
「ええ」
「俺に戦争を止めることなんてできるだろうか?」
「やるしかないわ」
「分かった!俺は戦争が嫌いだ!できる限り頑張ってみよう」
俺たちは機体に乗った
「この機体に名前はあるか?」
「ん?無いと思うけど」
「俺が名前を付けていいか?」
「ええ、いいわよ」
「この機体の名は”ヘブンズワールド”」
「”ヘブンズワールド”……いい名前ね」
「昔の童話にそういうタイトルの物語があったんだ」
「へえ、その物語の話を聞いていい?」
「ああ、ある預言者がいて皆がその預言者の言うことに従うんだ、そしたら世界が平和になるっていう話だ」
「まるで”ラタルタ”みたいね」
「ははは、確かにそうだね」
「さあ、早く戦争を止めに行きましょう」
「ああ、キリア・レルト”ヘブンズワールド”、行きます!」
こうして俺たちは出撃した
~タイラの死~
「なんだと!?」
兵士の報告にリュウが驚いていた
「アマリア様!!大変です!!!!」
リュウは鳩が豆鉄砲を食らったような面持ちで
私に話しかけてきた
「どうした?リュウよ??」
「それがチジャナ国に攻め込んだ我が軍の兵士の大半が消滅しました」
「な、なんだと!?」
「謎の白い光が出て一瞬でチジャナ国を飲み込んだそうです」
「タイラは……タイラは無事か!?」
「それが……タイラに通信を送っているのですが反応がありません!恐らくあの光に巻き込まれたものかと」
そんな……
「う、うそだ……タイラが……あのタイラが死ぬはずなど……死ぬはずなどない……」
「アマリア様?」
「うそだあああああああああああああああああああ!!!!!!」
私は泣き叫んだ
タイラは私にとって大事な存在だった
一緒にチェスをし
一緒に雑談をし
一緒に作戦を練り
私の相談にものってくれた
タイラは大切な存在だったのだ
「お、お、おのれえええええええ!!!!」
「あ、アマリア様!?」
「”核”を使え」
「何をおっしゃるんですかアマリア様 ”核”は」
「いいから”核”を使わんか!!!!!」
私からタイラを奪った
イレイス国は絶対許さん!!
滅ぼしてやる!!!
私の怒りは頂点に達していた
~アマリアの憎しみ~
私は艦内の中央室に来ていた
「あ、アマリア様?どうされました??」
「ああ、あの国が滅ぶ様を見たくてな」
「……」
「戦況は?」
どうやらあの光は我が国だけじゃなく
イレイス国の兵士も犠牲にしているらしい
まあそんなことはどうでもよい
「”核”のほうは順調か?」
「あ、はい今核武装した兵器をイレイス国に向かわせているところです」
イレイス国め!思い知るがいいは!!
~黄金に輝く機体~
俺はチジャナ国で戦っていた
あの光のせいでチジャナ国は跡形も無くなっていた
俺は運良くあの光の範囲外だったが
傷跡は大きく残った
「イレイス国!!絶対に許さん!!!」
俺は憤っていた
イレイス国のとの戦争には
俺の仲間も駆り出されてるかもしれないからだ
俺は着々と敵を倒していた
「なんだ?あれは??」
仲間の1人が呟いていた
俺は仲間が向いている方向を見る
そこには
・
・
・
・
・
・
黄金に輝く機体があった
背中には天使のような羽が生えている
「!?」
突然眩しい光が辺りを包み込んだ
またあの光か?
と思ったが
しばらくすると光は引いた
特に誰かが犠牲になった様子はない
「チージャ国!イレイス国!両軍に告ぐ!!」
あの黄金の機体から声がした
~戦争阻止~
「館長!大変です!!」
核武装している機体から通信が入った
「どうした?」
「チージャ国に核を放ったのですが阻止されました」
「な」
「なんだと!?」
私は驚いた
「あ、アマリア様、いらしたのですか?」
「そんなことよりどういうことだ!?」
「そ、それがあの黄金に輝く機体に阻止されまして」
「その機体は」
と言おうとしようとして
突然他の通信が入ってきた
「アマリア様、通信が入りました恐らくあの黄金の機体からです、どうしましょう?」
艦長が聞いてきた
「構わん、開け」
私は艦長に通信を開くように言った
「チージャ国!イレイス国!両軍に告ぐ!!即刻戦闘を中止せよ!繰り返す、即刻戦闘を中止せよ!!」
「どうしましょう?アマリア様」
再び艦長が私に聞いてきた
「あの機体が”核”を阻止したというのか」
私はさらに怒っていた
「全軍に告げよ!あの機体を撃ち落とせとな」
「はっ!分かりました」
おのれええ!!私の邪魔をしおって!!!
あの機体といいイレイス国といい
許せん!!!
~英雄の戦い~
チージャ国、イレイス国
両軍の機体が俺の機体目掛けて攻撃を仕掛けていた
「こちらに攻撃の意思はない!全軍直ちに戦闘を中止し撤退せよ!」
「そんな言い分が通るか!!」
俺は敵の攻撃を避けつつ
戦闘中止を訴え続けた
「くっ! 戦うしかないのか!!」
「ダメよ、キリア、私たちはあくまで戦争を止めに来たんだから」
「しかし、どうすればいいのだろうか?」
「もう少し、粘ってちょうだい
きっと次の予言が来ると思うわ」
「分かった、耐えてみようと思う」
俺は浸すら敵の攻撃を回避し続けた
~マルスの説得~
「あの機体
本気で戦争を止めに来たのか?」
俺はあの黄金の機体を見上げる
あの機体はチージャ国、イレイス国
両軍の攻撃を受けていながら
それを回避するだけで
一切攻撃してこなかった
確かに両軍ともたくさんの犠牲を出している
これ以上戦う必要はない
俺はアマリア様のいる船に通信を送った
「艦長、そろそろ戦闘をやめるべきでは」
「そうはいかない」
アマリア様の声がした
「アマリア様、いらっしゃたのですか?」
「それより戦闘をやめろとは
どういうことだ?」
「我が軍は甚大な被害が出ています
これ以上戦うべきだとは思いません」
「貴様もあの機体の味方をするというのか」
「そうではありません!ですがもう戦うべきではないと思うのです」
「そうはいかぬ!私はイレイス国を滅ぼさねばならぬ!!」
俺はとても驚いた
あのアマリア様から”滅ぼす”という言葉を
初めて聞いた
「どういうことですか?アマリア様、あなたは全ての国の民を幸福にすると言ったではありませんか?」
「あの国は私の大切な仲間を奪っていった」
「……」
俺もアマリア様の気持ちは分かる
俺も大切な仲間を失ってきた
でも……
「憎しみは新たなる憎しみを呼ぶだけです!それは愚かなことではないですか?」
「お前に私の何が分かる!!」
「わかりますよ!俺だって大切な仲間を失ったのですから……」
「……」
アマリア様は無言になった
「もうこれ以上犠牲を出す必要はないでしょう」
「イレイス国についてはあの黄金の機体が何とかするはずです」
「……分かった……そうしよう」
アマリア様はどうやら納得してくれたそうだ
~光水晶~
「ちっ!これだけ言ってるのに何で誰も俺の話を聞かないんだよ!!」
「でもチージャ国の兵士は撤退しているみたいよ」
確かにそうだ
チージャ国の兵士が見当たらない
どうやらチージャ国の兵士は撤退したらしい
「ん!?」
突然俺の手の中に真っ白い水晶のようなものが現れた
「何だこれ!?」
「”ラタルタの予言”が開いたわ」
「何て書いてある?」
「”英雄は光水晶をもってある洞窟に向かう”」
光水晶というものは恐らく今俺の手にあるものだろう
「洞窟どこの洞窟に向かえばいいんだ?」
「レーダーを見て頂戴」
俺はレーダーを見る
レーダーの左端に赤い点マークが付いていた
「おそらくここがその洞窟の場所を」
「分かったそこに向かおう」
俺はイレイス国の敵を避け
颯爽とその場を去った
そしてあの洞窟に向かった
~呑気なウハルト~
「う、ウハルト様!例の黄金の機体を見逃してしまいました」
「何!?」
「我が軍の兵士が追いかけましたがあの機体の速さが異常で見失ってしまいました」
「糞が!!」
「それとどうやらチージャ国も撤退しているようです」
チージャ国が撤退したか
まあいい
これでようやく俺様ものんびり酒が飲めるというものだ
「引き続き制圧を続けよ!チージャ国は後から攻めればいい、俺様は王宮に戻って酒でも楽しむわい」
「はっ!分かりました」
しかし、戦争を止めるためとは
あの機体のパイロットはとことん間抜けだな
こうしてウハルトは王宮に戻った
~英雄の試練~
「ここがその洞窟か」
「そうみたいね」
俺たちは”ラタルタの予言”に書かれている
洞窟についた
「そういや最近ずっと天候が悪いな」
「そうね、何かの予兆かしら?」
俺が外にでたときからそうだった
頻繁に稲光もしている
「洞窟の中に入るか」
「ええ」
俺たちは洞窟の中をしばらく歩いていた
「うっ!」
俺の頭の中に映像が流れていた
幼い頃いじめられた記憶
あの機体にやられた記憶
どれも嫌な映像ばかりだった
「キリア!大丈夫?」
アリサが俺を心配して声をかける
「くっ!苦しいがここで引き返すわけにはいかない!」
「そうね、でも無理をする必要はないわ」
「いや、このまま進もう」
「……ええ」
この先に一体何があるのだろう?
俺たちは洞窟の奥へと進んでいった
~平和の代償~
「はぁああああああ……はぁああああああ……」
「キリア、本当に大丈夫?」
ずっと嫌な映像を見せ続けられて
俺の精神は限界に達しようとしていた
「あっ」
アリサが声を上げた
目の前には石版があった
「”ラタルタの予言”が開いたわ」
「何て書いてあるんだ?」
「”英雄はこの石版に光水晶をはめ込むそして英雄は……」
続きを言おうとしてアリサが口を口を紡んだ
「そして英雄は何だ?」
「……」
アリサは無言になった
「どうしようもないというの?」
「どうしたんだ?アリサ?」
「あなたにとってこれは辛いことよ」
「……大丈夫、ここまで来た以上覚悟は出来ている!続けてくれ」
「わかったわ」
アリサが”ラタルタの予言”続きを言う
「”英雄は命を捧げるさすればこの世界に平和が訪れるだろう”」
「……そうか」
なんとなく予想は出来ていた
別に平和のために命を落とすのは構わない
しかし……
「イリアに対して何もできずに命を絶つのは心残りだな」
「引き返してもいいのよ」
アリサが言う
「いや、もういいんだ!俺は少しでも早くこの世界を平和にしたい!そのほうがイリアにとっても幸せだ」
「そう」
俺は石版の前にたつ
石版にはちょうど俺が持っている光水晶と
同じ穴があった
ここに光水晶をはめ込むのだろう
「アリサ、ありがとうな俺をここまで導いてくれて」
「いいえ、あなたはとても偉大な英雄だったわ」
「俺が英雄だなんて……実感がわかないな……アリサ」
俺はしばらく溜めていった
「さようなら天国でまた会おう」
「ええ、また会える日を楽しみにしているわ、英雄キリア・レルト」
俺は石版の丸い穴に石をはめ込んだ
~虹色に輝く空~
「う、ウハルト様!!」
「ええい!!またか貴様は!!!」
「外に出てください!すごいことになっています!!」
「くだらないことだったら処刑だからな」
俺様は家来に連れられて
渋々王宮の外にでた
「こ、これは……」
空一面が七色に輝いていた
心が洗われるようだ
「まさかこんな空を見ることができるとはな」
俺様、いや俺は今までトップになることしか
考えていなかった
自分さえよければそれでいいと思った
だがこの景色を見たとたん
そんなことはどうでも良くなっていた
「おい」
「はっ!なんでしょう?」
「イレイス国の植民地を解放してやれ」
「いいのですか?」
「ああ、構わん」
俺は長い間この空に見とれていた
「なんだ?あの空は??」
私はとても驚いていた
あれだけどす黒い空が
いきなり虹色に輝きだしたのだ
「綺麗だ」
「心が洗われる」
周りのものが口々に言う
私はタイラを失って以来
憎しみでしか動いていなかった
だがこの空を見たとたん
憎しみが吹き飛んだ
タイラにこの空を見せられなかったことが
少し心残りだ
「皆に告ぐ我が国の制圧下にある国を全て解放せよ」
自然と私の口からこの言葉が出た
この空を見ていると
戦うのが馬鹿らしくなる
「いいのですか?アマリア様には野望が……」
リュウが言う
「もう良い私はこの空を見て幸せな気分だ、皆もそうだろう、もう争いが生まれるとは思わん」
「はっ!分かりました」
私は長い間この空に見とれていた
~アリサのその後~
「ここは……?」
私は目を覚ました
いつの間にか気絶していたようだ
どこかの屋敷の庭だろうか?
そこに私がいる
空が虹色に輝いている
映像が頭の中に流れ込んでくることも無くなった
それと今まで腹など空いてなかったのに
腹が減っている
「もう、私の役目は終わったのね」
私は庭の木の下に倒れ込んだ
私の役目は終わったのだ
もう私が生きる意味はない
このまま餓死しようと思った
私は眠りについた
「おい!」
声がする
「おい!!」
「おい!!!」
私は目を覚ました
目の前には長い黒髪の女性がいる
顔はまだ幼いが美人だ
「アマリア……スタットフェルト……」
「こんなところで何をしている」
そこにはアマリアがいた
「いつの間にかここにいたの」
「そうか」
ぐうううううう
お腹が鳴る音がした
「腹が減っているのか?」
「そうみたい」
「私の屋敷に来るといい、ご馳走しよう」
「でも私はもう生きようだなんて」
「お前には聞きたいことがたくさんある、ここで死んでもらっては困る」
「そう」
私はアマリアの屋敷に案内してもらった
~リュウのその後~
俺は今王宮の王座を警備している
といっても肝心の王が居ないのだが
アマリア様はしばらく屋敷で隠居したいらしい
あとは俺たちに任せると言って……
あのお方は本当によくわからない
王としての自覚を持たねばなるまいと思う
俺は出回りの用事を済ませ
王座に戻ろうとしていた
「ふふふん、ふふふん♪」
リーシャと鉢合わせした
「リーシャ、何か嬉しそうだな」
「あ!!」
リーシャが何かを後ろに隠している
「何を隠しているんだ?」
「それは……えっと……」
リーシャの顔が赤くなる
「見せろ!!」
「あ!!!」
俺は強引にリーシャの隠し持っているものを奪い取る
「お、お前……」
写真だった
「これは重罪だぞ!!」
「どうかお許し下さい」
その写真に写っているのは
アマリア様が王座でうたた寝している姿だった
「まあいい、アマリア様には言わないでおいてやろう」
「あ、ありがとうございます!!」
まさかリーシャにそんな趣味があったとはな
俺はそのまま王座の警備に戻った
~マルスのその後~
「たいちょおおおおお!!無事でしたか!!」
俺はシュゲルツを含む
第15部隊の仲間に再び巡り合っていた
「シュゲルツ!よく無事だったな!!」
「隊長のほうこそよくご無事で!!」
俺たちは仲間の無事を喜んで
抱きしめ合った
「今日は第15部隊の皆でお祝いでもするか!!」
「隊長、それいいですね!!!」
エリック、ミレイナ、マーク、マリク
やっとこの世界は幸福に満たされた平和な世界になったぞ
お前たちとこのことを一緒に祝えないのが残念でならない
お前たちは天国にいるのだろうか?
ならお前たちも天国でこの世界の幸福を祝ってやってくれ
こうして俺たちはこの世界の平和と幸福を祝福すべく
パーティーを開いた
~アマリアとアリサ~
「私がお前の言う通りにしていればタイラは死なずに済んだのか?」
私たちは食卓を囲みながら会話をしていた
「分からないわ、ただ私は”ラタルタの予言”に抗おうと思っただけよ」
「そういえばあの時も言っていたな、”ラタルタ”とは一体どういう人物なんだ?」
私はアリサからいろんなことを聞かされた
彼女は655年前に生きていたこと
彼女の家に彼女の兄宛に召集令状が届いたこと
兄はそれを嫌がり彼女と彼女の兄は一緒に旅に出たこと
旅の途中いろんな人を助けたこと
そして最後に兄はこの花畑のこの木の前で亡くなったこと
そして彼女は苦しい思いをさせられたことなど
「なるほど、それは辛かったな」
「ええ、とても辛かったわ、お兄様と離された上にあの映像を見せ続けられて!!!」
アリサの目から涙がこぼれていた
「!」
私はアリサを抱きしめていた
「辛かったな、悲しかったな」
「う、う、うえええええええええええええん!!!!」
アリサが泣き出した
私の胸に顔を押し付けている
そうだろう
大切なものを失った上に
何百年も苦しい思いをさせられてきたのだ
しばらくするとアリサは泣き止んだ
「ごめんなさい、取り乱してしまったわ」
「いや、別に構わないあれだけ苦しんだんだ、泣きたくもなるだろう」
その後は私たちは他愛ない話をしていた
「そういや、お前は良く見たら可愛い顔をしているなあ、私が今までみた女性でお前ほど可愛い顔をした者を見たことがない」
「!!」
アリサはビクついていた
「どうした?固まってるようだが?」
「い、いえ、ちょっとトラウマがあって……」
そうか
そりゃそうだろう
こんな可愛い顔をした女の子を
襲うロリコン野郎は1人か2人くらいいるもんだ
「そ、その、あなたのほうこそ綺麗で素敵だわ」
「お前に褒めてもらえるとは光栄だな」
~幸福で満たされた平和な世界~
私はアマリアの屋敷に住まわせられることになった
私はべつにいいと断ったのだが
彼女が”話相手がいないとつまらん”と言って
私を引き止めた
私はアマリアと一緒に食卓を囲んで会話をしたり
一緒に買い物に行ったりなど
日常を満喫している
この世界から戦争が消えた
あの虹色に輝く空を見て以来
皆がお互いを助け合って生きている
これが”ラタルタ”が目指した
幸福で満たされた平和な世界……か
私は”ラタルタ”に対して正直まだ
もやもやとした感情を抱いている
だが彼は誰よりもこの世界を平和にしたい
という思いを持っていることは知っている
お兄様
私はこの世界で幸せに暮らしています
お兄様は天国でいかがおすごしでしょうか?
ーアマリア編ー
完
アマリアが登場したため
新企画が開放されました
今回はあらすじだけです
ーアリサとアマリアのパラレルワールドォ!ー
~あらすじ~
アリサに恋心を抱くアマリア
そんなアマリアがアリサにあんなことや
こんなことをするドタバタコメディー
果たしてアマリアはアリサのハートを
射抜くことが出来るのか?
*パラレルワールドなのでヘブンズワールド本編とは一切関係ありません