ヘルフェス編
ーヘルフェス編ー
~あらすじ~
撃ち抜きリーヤに憧れて殺傷行為を行うヘルフェス
彼は死後もその行動を続けてついには
上級悪魔の中で最も高い実力を持つに至った
そんな彼の前にアリサが現れる
アリサの演説に感激を受け
彼はアリサの仲間に加わるのだった
俺は生前、殺傷行為を行っていた
きっかけは
”撃ち抜きリーヤ”という映画を見たのが始まりだった
俺はビデオをデッキに入れ
その映像を見る
俺は感激した
主人公のリーヤが次々と人を撃ち抜くのだ
警察が来ようが関係なし
リーヤはいるもの来るもの全てを撃ち殺し
「俺に勝てる奴などいない」
と最後に名言を吐いた
「俺も彼のようになりたい」
そう思うようになった
まだ子供だった俺は店で銃を買うことなど出来ない
それで俺は親父の部屋からショットガンを持ち込み
外に出た
そして道行く人々を撃ち抜いていった
最高だった
響く断末魔
聞こえる悲鳴
逃げ惑う人々
俺はまるで撃ち抜きリーヤになった気分だった
そしてついには警察官まで来た
「俺もなってやる、撃ち抜きリーヤのように」
俺は警察官にも容赦なく発砲した
警察官は狂気に満ちている俺をどうすることも出来なかったのか
銃で俺を撃ち殺した
俺はリーヤのようにはなれなかった
死後俺は、地獄の修羅界にいた
ここは地獄、しかし、俺にとっては楽園だった
周りには人がいる
俺はそいつらに銃を発泡し殺していった
面白いことにそいつらは殺しても何度でも蘇るのだ
ここは地獄だから魂しか残ってないのだろう
魂が消えることは無いのだ
やつらも修羅界の人間、俺に反抗してきたが
俺に勝てる奴はいなかった
「も、もうやめてくれ」
そんな言葉も聞こえてきた
しかし、俺は容赦しなかった
ある日、俺はいつもどおり人を撃ち殺していくと
俺のもとに上級悪魔がやってきた
”君には悪魔の才能がある、うちに来てほしい”
そう言った内容だった
ちなみに悪魔は低級霊よりも位は低い
しかし、下層の世界では悪魔のほうが影響力を持つようだ
俺は下層にいる人々をたぶらかしていった
善人を大量殺人鬼に仕立て上げたこともある
それがこうを成していたのか俺は順調に昇格していった
上級悪魔になったのだ
しかも俺は上級悪魔の中でもトップになるほどの実力を持っていた
そんなある日、悪魔たちが嘆いていた
どうやらアリサ・レイニードとエドワード・ラタルタらの行動のせいで
悪魔たちは思ったように動けなくなってしまったようだ
実際俺も困っていた
自分の影響下にある世界が減っていったのだ
それはつまり俺の楽しみが減るようなものだ
次第に俺はやつらに恨みを持つようになった
エドワード・ラタルタは高級霊で遥か高い位置にいるため手を下すことは出来ない
しかし、アリサ・レイニードは生きている人物だ
彼女なら始末出来る
俺は上級悪魔たちの会合に参加した
どうやら結束して一つの世界を襲おうというのだ
そしたらアリサ・レイニードは現れるだろうという魂胆だった
俺はその案に賛成した
「アリサ・レイニード、おまえを必ず始末してやる!!」
俺は復讐心に燃えていた
それで俺たちはとある下層世界の街を襲撃していた
相変わらず断末魔は聞いてて心地いい
そんな中彼女はノコノコと現れた
俺が城で少しくつろいでいる間に
手下共が彼女を連れてきたのだ
「ぐへへ、ヘルフェス様、こいつどうしやしょう、このまま殺すのもいいっすが、インキュバスに売り飛ばすのも悪くないと思いやすが」
手下どもがそう言う
彼女は女のようだ
「アリサ・レイニードどんなやつなのか、冥土の土産にそいつの顔を拝んでやろう」
俺はそう思っていた
しかし、彼女の顔を見たとたん俺のそんな思考は吹っ飛んだ
俺は思わず見とれてしまった
肩まで伸びた透き通った茶髪に
全てを見据えたかのような青い瞳
そしてなんといっても美人な上に幼さが残る顔
俺のこの気持ちをなんと表現したらいいのだろう
とにかく俺は彼女に見とれていた
「おい、彼女から手を離さんか」
俺は手下どもを一喝して
彼女の前に片膝を立てた
「私の部下が申し訳ないことをした」
「え?」
「私は宣言しよう命に変えてでもあなた様を守ると」
「ヘルフェス様、どういうつもりすか?」
手下どもが俺を非難する
「こんないたいけな少女をインキュバスに売ろうなどとお前たちは何を考えている!!」
「いや、それが普通」
「お前らそれでも悪魔か?」
「いや、悪魔だからこそ」
「お前らは悪魔の風上にもおけねえ」
俺は部下たちを叱り続けた
そこからだ俺と彼女の冒険が始まったのは
「アリサ様、ここが安全地帯です」
俺はアリサ様をとある場所に連れて行った
悪魔たちが攻め込んだあとで何も残ってない街だ
「あの建物の中に隠れれば安全でしょう」
私はアリサ様を建物の中に誘導した
「ありがとう、助かるわ」
彼女はそう言って建物の中に入っていった
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「なぜ、私を助けるの?私は悪魔にとって敵なのよね?」
「それはわたくしめにも分かりません」
「はあ!?」
彼女は驚いている様子だった
無理もない俺も自分の行動に驚いている
「それではわたくしめはこれで失礼します」
「ちょっと待って」
アリサ様が俺を引き止める
「はい、なんでございましょう?」
「あなた、人を襲ったことがある?」
「ええ、もちろん」
「それなら次からは人を襲わないって約束できるかしら」
「アリサ様が言うのでしたら分かりました」
「それと、同時に人を守ってもらえないかしら」
「ええ、それも承知しました」
「そう、なら行っていいわよ」
「では」
「どういうつもりだ!!ヘルフェス」
「アリサ様の命令だ、人を守れとな」
「アリサ・レイニードは俺たちの敵だろ!!何考えているんだ!?」
「考えが変わったのさ」
「くっ一時撤退!!!残念だよ、お前が敵になるなんて」
俺はアリサ様の言う通り人を守ることに徹していた
悪魔が人を守る行為は普通に考えたらおかしい
だけどそんな常識どうでもいい
俺はアリサ様の命令を重視する誇り高き悪魔だ
「次、向かうぞ」
「分かりやした」
俺は彼女をほかの悪魔から全力で守っていた
彼女の指示通りにも動いていた
そんな中
「ヘルフェス!おとなしくしろ、さもないとアリサ・レイニードの命は無いぞ!!」
俺が悪魔から人を守ってる最中に上級悪魔がやってきた
「どういうことだ?私はアリサ様を安全な場所へお連れしたはずだが」
「あいつは馬鹿だ、自分から我々の元に赴いた」
「何!?」
「大人しく我々に付いてきてもらおう」
ただの脅しかもしれない
だがアリサ様が危険かもしれないとなると
暴れることは出来なかった
俺は拘束されながら地獄界最高の大きさを誇るヘルコレオス城に連れて行かれた
そこにはアリサ様が十字架に貼り付けられていた
「アリサ様、どうして・・・・」
「ヘルフェス・・・・」
彼女がどうしてこんな目に会っているのか俺には分からなかった
俺は確かに彼女を安全地帯に誘導していたのだ
「それでは我々の邪魔をしたこの二方に鉄槌を下す、異論はないな」
「おおおおお!!!!」
周りの悪魔どもが歓声をあげる
そんな中あろうことか彼女はとんでもない事を言い出した
「皆、聞いてちょうだい!!!!!」
そのアリサ様の言葉と同時に悪魔たちが静まり返り
しばらくするとざわついた
「私はアリサ・レイニード、あなたたちの敵よ」
すると、悪魔たちはアリサ様に罵声を浴びせてきた
「だが私はあなたたちの敵になった覚えはない」
悪魔たちの罵声が止む
「私はこの世界を平和にするためにやってきた」
「・・・・・・・」
「だが今の私はあまりにも無力よ」
「・・・・・・・」
「しかし、それでも私は諦めるつもりはないわ」
「・・・・・・・」
「私はあなたたちたちの欲求を抑える気はない」
「・・・・・・・」
「あなたたちの欲求は全て私が受け入れる」
「・・・・・・・」
「でも、約束して」
「・・・・・・・」
「人には手を出さないと!!」
俺はアリサ様の言葉を聞いて感激した
撃ち抜きリーヤ以上かもしれない
自分の命を犠牲にしてでも世界の平和を望む
その熱意に感激したのだ
俺は心に誓った
この人に付き従おうと
「ええい!!このものを処刑せよ!!」
という声が響いた
しかし
「アリサ様を守れええええええ!!!」
という叫び声が聞こえた
次の瞬間
悪魔たちが互いに戦い始めた
上級悪魔に抵抗するものたちもいる
「私は戦えとは言ってないのに・・・」
アリサ様は悲しげにそう発言した
俺とアリサ様は手下どもから十字架から開放された
「アリサ様、良かった!!」
俺は彼女を抱きかかえた
「ささっ、安全な場所に移動しましょう」
「ヘルフェス、お願いがある」
「なんでしょう?」
「悪魔たちを一喝してやってほしい、私は戦いを望んでいない」
「アリサ様の言うことならなんなりと」
俺は一息溜めると
「しずまれいいいいいいいいい!!!!!!!!」
と咆哮のような叫び声を上げた
悪魔たちが耳を塞ぐ
「アリサ様は戦いを望んではおられない、お前たちにはそれが分からぬか!!」
悪魔たちが静まり返る
「ヘルフェス、降ろして」
「アリサ様?」
「おねがい」
俺は抱きかかえているアリサ様を下ろした
そしてなんとアリサ様は悪魔たちの真っ只中へ歩いたのだ!
「アリサ様!!!」
俺がアリサを心配して言う
「ヘルフェス、静かにしなさい!」
「・・・・分かりました」
そしてアリサ様は悪魔たちの真っ只中で話し始める
「もう一度言う、私を好きにして構わないと」
「・・・・・・・」
「私を八つ裂きにしたければすればいい」
「・・・・・・・」
「私を犯したければ、犯せばいい」
「・・・・・・・」
「その代わり」
「・・・・・・・」
「殺し合いはやめなさい!!!」
悪魔たちは困惑した眼差しで私を見つめた
「ぐへへへへ、てめえにならなんでもしていいんだよな」
一人の悪魔がアリサ様に近づいてくる
インキュバスだ
「アリサ様!!」
俺を含む悪魔たちがそれを止めにかかろうとする
だが
「先ほど言った私の言葉が聞こえなかったの!!!?」
アリサ様は俺たちを一喝する
そして彼女は自分に近づいてくるインキュバスの元へと近づいた
「さあ来なさい」
アリサ様はインキュバスの前で両手を広げた
インキュバスはアリサ様を押し倒した
俺は見たくなかった
アリサ様が汚されるのを
その瞬間
ピカーン
アリサ様のしている花のペンダントが光った
「眩しいいいい!!!」
そのペンダントはとても強烈な光を放っていた
「もうこの世界は救い終えたのかしら?」
アリサ様の声がする
しばらくすると私の意識が遠のいた
「ヘルフェス、君は彼女と共にこの世界を救うたびに出るといい」
声がする
渋く重みのある声だ
しばらくすると私の意識が戻った
しかし風景が違う
目の前には見知らぬ人物がいて
となりにはアリサ様がいた
「今日から君のお供になるヘルフェスだ」
どうやら俺はアリサ様と一緒にいられるらしい
とても嬉しかった
「アリサ様、よろしくおねがいします!」
「ラタルタ、どういうつもり?」
アリサ様がラタルタと呼ばれる人物に詰め寄る
「恐らく彼は君といたほうが良いという神の判断だろう」
「そんなこと言われても」
「何か困ることがあるのかい?」
アリサ様はこの言葉に沈黙する
「彼は君といたほうが罪を滅せることが出来るのだろう」
「それじゃあ彼は例外と考えていいの?」
「そう考えても結構だ」
「分かったわ」
「ラタルタ様、私は命を変えてでもアリサ様をお守りしてみせます!!」
「ああ、宜しく頼むよヘルフェス」
こうして俺はアリサ様の仲間に加わった
ピカーン
アリサ様の花のペンダントが光った
「さあ次の世界へ行きなさいアリサ君」
俺とアリサ様は共に様々な世界を巡った
いろんなことがあった
暴走したクローンを止めてまともな生活をさせてあげたり
ヘルコレオスにアリサ様が殺されかけたり
アリアとアリサ様の真剣な会話に耳を傾けたり
スレイダというもういない姫を守り続ける騎士と戦ったり
街中で殺戮を行う狂気な二人を止めたり
あと無性に人を殺したくなってアリサ様から離れたこともあった
これらは大きな仕事だったが
ボランティアという地味なこともやった
とにかくいろんなことがあった
アリサ様との旅は楽しかった
そんなある日
彼女と花畑に行ったときだ
彼女が俺に花の腕輪をプレゼントしてくれたあとだ
ふと彼女は木の前で
祈るようなポーズをとった
俺はそれを見て何をしてるんだろうかと思った
しばらくすると
アリサ様が倒れた
「アリサ様!?」
俺は咄嗟にアリサ様を抱きかかえる
まさか・・まさかな・・・
アリサ様の胸に耳を当てた
「死んでる・・・・」
俺は絶句した
アリサ様の下僕として一生を歩む決意をしてた俺にとって
こんな現状は受け入れられなかった
「アリサ様あああああああああ!!!」
俺は泣き叫んだ
「ん?」
しばらくするとアリサ様の右手から本が出現した
「何だ?この本は??」
俺はその本を手に取る
その本を手にした瞬間
急にページが開いたのだ
俺はびっくりした
とりあえず本の内容を確認する
「”君にはいづれヘルコレオスを倒してもらう”」
ヘルコレオス
唯一アリサ様を殺しかけた
俺と同等もしくはそれ以上の実力をもつ上級悪魔だ
しかし、今の俺にはそんなことどうでも良かった
俺は本を閉じタイトルを確認した
それを見て分かった
やつが・・・・
やつが俺からアリサ様を奪ったんだと
「ラタルタあああああああああああああああああ!!!」
俺の憎しみと怒りが混じった叫び声が花畑に轟く
やつを殺してやりたい
しかしどうしようもなかった
やつはいま天国にいるのだ
そこで俺は悪魔になって街中で暴れようと思った
八つ当たりと憂さ晴らしだ
しかし
「あれ?」
悪魔の姿になることが出来なかった
「どういうことだ?」
ペラッ
また本が開く
その内容を確認する
「”君には人間となって生きてもらう”」
俺は怒りを覚えた
でもこの姿のままでもいい
俺は早速人が多い街中に移動した
そこで剣を抜いて人に斬りかかる
そうしようとした
しかし
「あれ?」
剣を抜くことが出来なかった
抜けないわけではない
抜こうとしなかったのだ
正直俺にも理解できていない
ペラ
また本が開く
内容を確認する
「”罪がない人に斬りかかるのはやめなさい”」
俺は呆然と立ち尽くした
八つ当たりさえ出来ない
叫ぼうにも叫べなかった
そう
薄々勘づいたが
抑止力がかかっているのだ
「あああああああああああああああああああああ!!!!!!」
心の中でひたすら叫んだ
俺のラタルタへの憎しみがどんどん高まっていく
俺からアリサ様を奪い
俺の邪魔をするラタルタ
許せるわけがない
いつか天国に行ってあいつを殺す
俺はそう心に誓うのだった
ーヘルフェス編ー
完
ここまで読んで下さり有難うございます
何かご指摘があれば遠慮せずお願いします




