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ヘブンズワールド  作者: ライプにっつ2
アリサの世界
2/78

クリス編

~あらすじ~

ラタルタの死後650年

文明はロボットで戦えるほどに進化していた


クリスはバルサ国の軍人として職務を全うしていた

ある日リヴァート国から宣戦布告される


この戦争が後に大きな傷跡を残すこととなる


”ラタルタの予言”が開いた

「”二人の男が戦う片方が生き残る、生き残る方の名は○○、死ぬ方の名は○○”」



~クリス~


 コンコン


 ドアのノック音がした


「どちら様で?」

「俺だクリス、食堂で昼食一緒に食うぞ」

「分かった、準備して行くから先に行っといてくれ」

「皆で酒でも交わそうぜ」

「おいおい昼食のあとは軍事演習だろ、大丈夫か?」

「お前は真面目すぎるんだよ、気にしすぎるのは体に毒だぜ」

「はあ……」

「じゃあ先行ってるぜ!」


 俺の名はクリス

 クリス・テイラー

 バルサ国の軍人をしている

 幼い頃から両親が軍で働いていて

 よく軍施設内を連れ回されたもんだ

 俺はその影響を受けて軍に志願した

 軍施設での生活は思っていた以上に楽しい

 軍事訓練、軍事演習で修練を重ねて己を磨き

 軍施設の見回り警備をし

 それが終わると仲間と酒を交わしながら

 わいわいがやがやと騒ぐ

 毎日そんな生活だ

 平和すぎて退屈だと思うときもあったが

 俺にはこれが丁度良かった

 俺はこの国は軍事力が高く外交も得意としていたため

 戦争になるとは思わなかった

 思わなかったんだ……


 食堂は俺の部屋から出て右手側を歩く

 しばらく歩くと右手側に扉がある

 俺が住む軍施設の扉は扉の取っ手の位置にある青いボタンを押すと

 横にスライドして開く仕組みだ

 個人の部屋の場合はドアの内側にその青いボタンがあって

 それを押すと開く

 俺は青いボタンを押し食堂の扉を開ける


「おーい、クリス!こっちだこっち!」


 中にはいつもどおりの人たちがいる


「おせえぞてめえ」

「悪い、待たせちゃって」

「全く、お前は何をするにも慎重すぎだ、少しは時間ってものを考えろよ」


 こいつはガイア

 さっき俺の部屋に来た仲間だ

 性格は俺と正反対

 つまり不真面目ってところだ

 なんで俺がこいつと仲良く出来てるのか

 未だに不思議でならない

 いいライバルでもある


「まあいいじゃないの

 戦いで慎重なのは大事なことよ」


 こいつはリアッジ

 皆のまとめ役っといったところかな

 彼は統率力があって分隊長にまでなっている

 仲間からも信頼されているし妥当かな


「でもさすがに遅すぎだよ~もう僕たち飯食い終わったしさ」


 こいつはミゲルス

 口調はのんびりしてるが

 処理能力が早く優秀で

 この間なんか

 軍施設をウロウロしている怪しい人物

 を取り押さえたりした

 ただの酔っぱらいだったけど


 俺を含めこの4人がよくつるむ仲間だ


「だから悪いって……それよりガイア、昼食後はお前とロボットで軍事演習だったよな、よろしく頼むぜ」

「おうよ! 今度はお前を負かして吠え面かかせてやる!」

「望むところだ!」


 こうして俺たちは腕相撲とかをして競い合う

 まあこいつとの腕相撲ではいつも俺が負けるんだが

 リアッジとミゲルスがまたかと言わんばかりの眼差しで

 俺たちを見つめる

 俺たちは相変わらずわいわいがやがやと騒いでいた



















「また戦争が始まるというの……」



 少女は一人嘆いていた











~宣戦布告~



「大変だ!リヴァート国から宣戦布告が来た」


 突然扉を開けて兵士が隊長とともに入ってきた

 何?戦争!?

 俺は唖然とした

 確かにリヴァート国は好戦的でたくさんの植民地をもっている

 しかしここはリヴァート国から遥か遠くに位置するバルサ国だ

 普通は攻めようだなんて考えない

 何が目的だ?軍事力か??


「我が国のお偉いさんが交渉を試みたがダメだったらしい」


 隊長が話す

 さすがは戦争好きのリヴァート国

 問答無用ってことか


「ふんっ!チビリートだかクソリートだか知らねえが俺たちの軍事力と技術を甘く見るなってんだ!!」


 ガイアが強気な発言をする


「ガイア!相手はたくさんの国を制圧したリヴァート国だぞ!油断するな!!」


 隊長がガイアに言う


「へいへい、分かりやしたよ」


 ガイアが不貞腐れて言う


「各自戦闘に備えよ!敵がいつ攻撃を仕掛けてくるかわからないからな!!」

「はい!!!」


 兵士たちが隊長に向かって敬礼する

 その後、隊長と一緒にやってきた兵士が

 俺たちに敵国であるリヴァート国の情報が載っている資料を

 配布してきた


 さて、どうしたものか


「となると午後の軍事演習は中止か、残念だな、せっかくてめえに吠え面かかせてやろうと思ったのに!」

「まあ勝負はお預けってところだな、さあてと、俺は部屋に戻って資料を眺めるかな」


 俺は食堂を出て一目散に部屋に戻った







~ガイアとの決闘~


 部屋に戻ると俺は早速資料を眺めた


 リヴァート国はたくさんの植民地を持っている

 その中で特筆すべき国は

 リアリス国、ヘンフーン国、ジュハーン国だ

 リアリス国はたくさんの資源をもっている国(まあ元々それはマルタ国から奪ったものだが)

 ヘンフーン国はたくさんの軍事力を持っている国

 ジュハーン国は兵器の研究が盛んな国だ


 つまりリヴァート国はたくさんの資源や軍事力、そして新兵器まで持っているという事になる

 どうやら俺たちは恐ろしい国を敵に回してしまったようだ

 しかし俺は曲がりなりにもこの国を守る軍人

 ここで怯むわけにはいかない!


 そして次に攻めてくるタイミングだ

 バルサ国とリヴァート国は距離が長い

 そのため、本拠地から攻めて来るとして最低でも半日はかかる

 これは制圧下にある国を経由した時間を無視してだ

 それを加えると2日はかかるだろう

 あっちょっとまてよ、ここで疑問に思う人もいるかもしれない

 リヴァート国からバルサ国まで2日かかる

 でも制圧下の国からだったら??

 そう、半日以内で済むかもしれない

 しかしリヴァート国は他の制圧下の国に軍事力を持たせていない

 寝返る危険性を考えてのことだろう

 それとプライドが許さないのだろう

 予め自国の兵を待機させるという手もあるだろうが

 そうやって戦力を分散させると自国の守りが手薄になる

 そういう理由でやっていないのだろう


 これで一通り資料を眺め終えた

 俺たちは2日以内に迎え撃つ準備をしないといけない

 まあこれだけあれば十分だ


「ふう、疲れた」


 2時間ぐらいぶっ続けで読み続けていたため目に疲労が溜まっている


「すこし昼寝するか」


 俺はベッドに横たわり眠りについた
















 コンコン


 ノックがした


「ん?」


 俺は目を覚ました


「クリス、いるか?」


 ガイアの声がした


「いるよ」


 俺は返事をしてドアを開けた


「よっ!」

「どうしたんだ?」

「いやあ、資料を読み終えたかと思ってな」

「ああ、読み終えたよ、それで?」

「それでどんなんだったか教えてくれねえか?」

「はあ!?」


 俺は呆れて言葉も出なかった

 忘れてたがこいつは馬鹿だった

 ってか頑張って読めば意味くらい分かるものだろうに

 あっ不真面目でもあったんだった……

 そんなんで良く軍の第一試験を通ったものだ


「なあ、いいだろ?」

「はあ……分かったよ」


 俺はガイアに敵国であるリヴァートの情報を

 分かりやすく教えた


「つまりリヴァートが攻めて来るまであと2日ってことか、余裕だな」

「お前なあ隊長から油断するなって言われたばかりだろう!お前の脳みそは筋肉でしか出来てないのか?」

「おっ!言ってくれるねえ~まあいいや、それだけ時間があるなら軍事演習くらいしてもいいんじゃねえか?」

「ダメだろう!、出撃やその他の準備をしないといけないんだ!俺たちだけが特別ってわけにはいかない」

「なあにちゃんと隊長には許可を取ってあるから安心してくれ」

「な!?本当か?」

「ああ、本当だ、許可書もとってある」


 ガイアはクリスに刑事が警察手帳を見せるかの如く

 胸ポケットから許可書を取り出す


「ほんとだ、しかし良く許可なんて貰えたな」

「隊長に聞いたんだよ、敵国が攻めて来るまであとどれくらい時間があるかって、隊長が言うには3日だってさ、それで俺はだったら軍事演習する時間はあるよな?

って聞いたんだ、隊長は呆れながら了承してくれたよ」

「お前ってやつは……」

「ってかお前、リヴァート国がバルサ国に攻めてくる期間は2日って言ってたよな」

「ああ、それがどうした?」

「隊長は3日って言った、どっちが正しいんだろうな?」


 ガイアは不適な笑みを浮かべる


「別にどっちでもいいだろう、誤差の範囲だ」

「どっちでも良かないだろ!それともなんだ?自分が馬鹿なのを隠そうとして、言い逃れでも考えてるのか?」


 ガイアは相変わらず不適な笑みを浮かべる


「少なくともお前よりはバカじゃない、お前みたいな脳みそ筋肉馬鹿ムキンと一緒にしないでくれ」

「てめえ!マジで吠え面かかせてやる!もちろん俺との軍事演習、受けてくれるんだろうな?まさかもう吠え面かいちゃうのか?」


 ガイアの不敵な笑みは続く


「受けて立つよ!まあまたお前が吠え面かくことになるんだろうけどな」


 俺は余裕を見せる


「ふんっ!せいぜい威張ってろや、それじゃ夕方の5時に総合軍事演習場の演習用兵器倉庫で待ってるからな、必ず来いよ!」

「ああ、わかってるさ!」


 ガイアは部屋から出て行った


 俺はあいつとの腕相撲は全敗だが

 あいつとの軍事演習では全勝だった


 時計は3時半を回っていた


「まだ時間があるな、寝るか」


 俺は再びベッドに横になり

 眠りについた









 時計は5時5分を回った

 俺は総合軍事演習場の演習用兵器倉庫についた


「おいおい5分の遅刻だぞ!尻尾を巻いて逃げたのかと思ったぜ」

「すまん、少し寝坊しちゃって」

「お前なあ、余計なところは真面目なくせに大事な時には不真面目なんだな」


 そんなことはない

 俺だって重要なことに関しては

 きっちり時間を守る

 どうでもいいことに関しては別だが

 あれ?てことはガイアとの軍事演習もそれに含まれるってことか

 口には出さないようにしよう


「まあ次からは気をつけるようにするよ、そろそろ始めようぜ」

「ああ、今度こそぜってえ負けねえからな!」


 俺たちはそれぞれロボットに乗る

 ロボットは全長15メートルほどで

 左手には盾が装備されていて

 左腰には剣、右腰には銃が収まっている

 まあこのロボットは演習用なので

 剣は模擬剣で装甲に傷をつけれないし

 銃にはペイント弾しか仕込まれていない

 勝敗はコックピットにペイント弾を当てるか

 模擬剣を当てることで決まる

 始まりの合図は俺が出すことにした


 夕暮れの空に信号弾が上がる

 戦いの幕開けだ!


 ガイアは早速盾を捨て剣を抜いて突進してきた

 あいつらしい戦法だ

 対する俺は引きつつ銃で応戦

 ガイアはそれを上手く回避する

 1、2発ほどペイント弾を当てたが

 コックピットに当たってないので特に意味はない

 せめて、損傷箇所が使えない設定にして欲しいものだ

 そうこうしているうちにガイアが迫ってきた

 俺は銃を捨て急いで剣に持ち変える

 ガイアが数メートルまで近づいてくる

 そして剣を思いっきり振り上げてきた


「隙有り!!」


 俺はガイアの攻撃を交わしその隙を付く

 ガイアの機体のコックピットに模擬剣が当たる


 勝負あった

 その後も何回か手合わせしたが全て俺が勝ち取ってやった

 ふふん、どうだい!


「畜生!また負けたああああああ!!」

「ガイア、お前は隙が多すぎる、もう少し振りを少なくするべきだ」

「これでも十分やってるよ!!」


 癖なのだろうか?

 直そうとしないだけなんじゃないだろうか?

 まあこいつは馬鹿だしな


「お前、今内心俺のことを馬鹿にしただろ!」


 ギクッ


「い、いや、そんなことはないよ、スピードを使う戦法はなかなかだしお前に合っている」

「ふん、もういいや、今回は勝ちを譲ってやる」


 いや、毎回俺が勝ってるんですけど……

 これで俺とガイアとの勝負は終わった






~ミゲルスの夢~


「さてと、もう夜だが寝るまで少しあるし屋上でたそがれようかな」


 俺は夕食を済ませたあと

 屋上へ出た


「おっ!ミゲルス」

「やあ」


 ミゲルスがいた


「お前もたそがれてるんだな」

「まあ、ちょっとね」


 ミゲルスはよくこうやってたそがれている

 考えごとが多いんだろうな


「今日もガイアと軍事演習しててさ」

「ああ、やってたね、大丈夫かい?あれだけ大規模にやられてるから隊長にバレてると思うけど」

「許可は取ってあるから大丈夫さ」

「ふうん」


 俺たちは他愛もない話をしていた

 しばらく話し込んでいると

 話題は戦争にシフトした


「戦争が始まるんだね……」

「ああ……」

「正直僕、実感が湧かないよ」

「俺もだ」


 そりゃあ当然だ

 俺たちが軍人をしているあいだ

 今までこの国が戦争に巻き込まれることなんてなかったんだから


「クリスは戦争が終わったらどうする?今までどおり軍人を続ける?」

「いきなりなんだ?」

「いいから僕の質問に答えてよ」

「当たり前だ!俺はこの国を守るために軍人になったんだからな」

「そっかあ」

「そういうミゲルスはどうなんだい?」

「僕は軍をやめて政治家になろうと思ってる、出来れば総理大臣に」


 そりゃまた随分と大きな夢だこった


「なんでまた政治家に?」

「僕はこの国を豊かで平和な国にしたい!そう思ってるだけだよ」

「なるほど」


 ミゲルスは俺と同様に愛国心が強いし

 正義感もあるから

 政治家向きだと思った


「ミゲルスだったらなれるんじゃないかな?優秀だし」

「だといいけどね」

「もっと自信もてよ」


 俺はミゲルスを勇気づけた


「政治家になってこの国を導くんだったら必ず生き残らないとな」

「正直、自信がないよ」

「大丈夫!いざとなったら俺が守ってやる」

「愛の告白?」

「はあ!?ちげーよ!」

「わかってるよ、クリスはそういう人だよね”何かあったら俺が守る”って良く僕たちに言ってくれる」

「そんなに言ってたっけ?」

「皆からは鼻で笑われてたけどね」

「はあ……」


 いやあ俺も良く臭いセリフが出てくるんもんだ

 こういうセリフは女にでも言うほうがよかったか?


「でも僕はクリスのそういう言葉が嬉しいな」

「いや、俺、男はちょっと」

「もう!人が真剣な話してるんだから聞いてよ!」


 ちょっと悪ふざけしたつもりだった、すまん


「必ず生きて帰ろうね!僕もクリスもそして皆も!」

「ああ」


 そう、生きて帰ってみせる

 皆あれだけの修練をしてきたんだ

 必ず生きて帰れるさ!

 俺もリアッジもガイアもミゲルスも……


「そろそろ寝る時間だ、俺はもう戻るな」

「うん」

「ミゲルスは戻らないのか?」

「僕はもう少したそがれとくよ」

「早めに寝たほうがいいぞ、敵がいつ攻めてくるかわからんからな」

「わかってるよ」


 こうして俺は部屋に戻り

 眠りについた







~新機体~


 夜、俺が寝静まっていると


 コンコン


 ノックがした


「クリス、俺だ、リアッジだ」


 リアッジの声がした

 俺はドアを開けた


「どうした?リアッジ?」

「明日の作戦会議をしようと思ってな」


 リアッジは作戦会議を切り出した

 しかしどうして夜に、しかも二人でなんだろう?


「皆でやるのが作戦会議なんじゃないのか?」

「皆にはもう話した、あとはお前だけだ」


 なんだよ!俺だけ除け者かよ!


「まあそんな怒った顔すんなって、お前にしか話せないこともあるんだからよ」

「ほう」


 リアッジは俺に作戦について語ってくれた

 どうやら明後日には敵部隊が攻めてくるらしい

 それで俺たち第3分隊は敵部隊の戦力を削るべく

 奇襲を仕掛けるそうだ


「それで明日の午後4時半から、出撃することになっている」

「ふうん、大まかなことは分かった、要は奇襲して敵の襲撃をやわらげればいいんだな」

「まあそういうことになるな」

「それで?」

「ん?」

「俺にしかない話があるんじゃなかったか?」


 あっそうそうと言わんばかりにリアッジが口を開いた


「お前には新しい機体に乗ってもらう」

「え?どうしてまた??」

「お前の軍での成績は優秀だ!軍事演習での評価も高い、それに一番軍事訓練を真面目に取り組んでいるからな、それを見越した隊長の判断だろう」


 驚いた

 まさか俺が新機体に乗ることになるなんて


「俺より優秀な人はたくさんいるんじゃないか?」

「そうでもないんだよ、お前は命令もよく聞くし、いざという時の判断能力もある

その上操縦技術もすごいと来た!お前ほどの人材はそうはいない」

「なんか照れくさいな」


 ここまで言われたからには断るわけにはいかない

 新機体を預かるからには

 俺ももっと修練を積まないとな


「それじゃ明日はよろしく頼む」

「おうよ!」


 リアッジが出て行った


「明日かあ楽しみだな」


 新”機体”に”期待”

 我ながら洒落てんなあと思いつつ

 俺は眠りについた





~一人小隊~


 昼食の時間

 俺はいつもどおり皆と食堂で

 わいわいがやがやと騒いでいた


「はっはっはっはっ!作戦前だと言うのに緊張感の欠片もないやつらだ!本当に軍人か?」



 笑い声がした

 振り返るとそこには見知らぬ人物が立っていた


「なんだとお!」


 兵士の一人が叫ぶ


「見る限りどいつもこいつも貧弱じゃねえか、女みてえな体つきしてやがるし」


 さすがにその言葉に切れたのだろう

 さっきの兵士が彼に殴りかかってきた

 それを彼は華麗に避け

 兵士の腕を掴んで捻った


「いてええええ!!」

「なんだ!貴様は!」


 ほかの兵士が言う


「今日からこの部隊に傭兵として雇われたニコラス・マリンだ、よろしく頼むぜ子猫ちゃんたち」


 とても嫌味なやつだ

 なぜこんなやつが俺たちの部隊に入ってきたのだろう


「ニコラス……マリン!!」


 リアッジが驚いたように言った

 周りもざわついている


「知っているのか?」

「ああ、傭兵として有名だよ、彼はその実力から”一人小隊”とも呼ばれている」

「なんと!すごい人間を雇ったんだな俺の部隊は」

「しかしあいつには国という概念がない、雇われればなんでもするし、手段も選ばない男だ、俺は信用できん」


 なるほどなと思った

 確かにあいつは信用できない

 仲間を挑発するぐらいだからな


「おうおう、皆怖い目つきするなよお~よろしく頼むよお~」


 なんだこいつは!

 ふざけすぎだ


「それがお前の挨拶か!」

「はあん?」


 俺は思わず席を立つ


「おい!クリス!やつに喧嘩を売るな」

「そうですよ!クリスさんここは穏便に!」

「俺はあいつが気に食わねえやっちまえ!クリス!」


 周囲が再びざわつき始めた


「やっちまいな!クリス!」


 周りから歓声が湧き起る


「ぴーぴーぴーぴーうるせえな!小鳥ちゃんかよ!」


 ニコラスがまた挑発する


「仲間を挑発するのがお前の挨拶かって聞いてるんだ!」

「てめえ……俺に喧嘩売ってんのか?」

「喧嘩を売ってるのはどっちだ?」

「一回懲らしめねえと分からねえよおだな!」


 ニコラスが指をぽきぽきと鳴らす

 俺とニコラスは睨み合う

 間に電流が走っているのが見えた

 俺は体術には自信がないが

 意地でもこいつに一泡吹かせてやろうと思った

 とその時


「おいお前らやめろ!」


 隊長が割って入ってきた


「遅いですよ隊長さあん、こいつらの躾どうしたんですかあ?」

「なんだとお!」


 本当に嫌味なやつだ


「ああ、すまないちゃんと言って聞かせておく」

「そんな……たいちょおおお!」



 周りの非難が隊長に集まる


「皆、彼は今日から傭兵として雇われたニコラス・マリンだ、仲良くしてやってくれ」


 周りから罵声が飛んできた

 纏めると”こんなやつと仲良くなんてできるか!”

 ってな感じだ

 俺もそう思う


「文句があるなら皆、彼より実力が上なんだろうな」


 周りが静まりかえった

 そりゃ彼は”一人小隊”とまで呼ばれる男だ

 誰も返す言葉が無いのだろう

 しかし


「俺ならこいつに勝てます!」



 俺の発言を聞いて周りがざわつく

 当然だ

 ”一人小隊”と呼ばれる男に勝負を挑むのだから


「いいぞ!クリス!お前の実力を見せてやれ!!」


 ガイアが雄叫びを上げる

 周りがそれに合わせる


「ほう」


 ”一人小隊”と呼ばれるニコラスが

 興味深そうに俺を見る


「分かった、では皆1時間後に総合軍事演習場に集合だ」


 隊長が切り出す


「ほうほう、いいねいいね、てめえ、名は?」

「俺はクリス、クリス・テイラーだ!」

「楽しみにしてるぞ、クリス」

「お前には絶対に負けない!」


 俺はニコラスの言葉に返事をする




 隊長とニコラスが食堂から出て行った


「おいおい、大丈夫かよクリス、相手はあの”一人小隊”だぞ!?」


 リアッジが心配したように言う


「へっクリスのことだ、あんなやつに負けはしねえな!クリス!」


 ガイアが俺を鼓舞する


「ああ当然だ!これ以上あいつを調子に乗せてたまるか!一泡吹かせてやるよ!」


 俺がそれに答える


「クリス……頑張ってくださいね」


 ミゲルスが不安そうに言う

 ああ、もちろんさ!






 1時間後

 ニコラスを含む全ての部隊が

 総合軍事演習場に集まった


「それでは早速演習を始める!クリス!ニコラス!機体に乗り指定の位置に付け」


 隊長の指示通り、俺とニコラスは演習用のロボットに乗り

 指定の位置につく


「それでは始める!よーい!」


 俺たちの戦いを観戦する兵士たちが叫ぶ


「頑張れえええ!クリすぅううう!!」


 みんなに応援されて俺は優越感に浸った

 きっと誰ひとりにも応援されていないあいつは今頃不機嫌だろう


 信号弾が上がる

 戦いの幕開けだ!!








「!!!」


 一瞬だった

 やつは早撃ちガンマンの如く機体の右腰から銃を取り出し

 俺の機体のコックピットに

 ペイント弾を当てた


「そんな……馬鹿な……」


 俺は唖然とした

 いくら相手が”一人小隊”といってもあの早撃ちは異常だ

 チートでも使ってるんじゃないだろうなあ?


「勝負あ」

「もう1回、もう1回だけやらせてくれ!!」


 俺は隊長に懇願した


 その後の勝負もてっきりダメだった

 必ずペイント弾一発で沈められてしまう

 一度避けることも出来たがそれだけだった


「なんだってんだよ……」


 俺はやるせない気持ちになった



 俺たちは機体のコックピットから降り

 元の場所に集合した


「なんだ!なんだ!なんだ!!えええ!!!!」


 そういうとニコラスは俺の胸倉を掴んできた


「俺を散々期待させといてあの様はなんだ!!!」

「くっ!」

 

 返す言葉も無かった

 俺の完敗だ


「なんとか言えや!雑魚が!!」

「まあいいじゃないかニコラス、君の圧勝なんだし」


 隊長がニコラスを鎮める


「はん!今度俺に突っかかってきたらただじゃおかねえ」


 俺は終始無言だった


「二度と俺に関わるなよ!じゃあな、O・ZA・KO・SA・MA!!」


 なんだそのネーミングセンス

 と思う余裕も無かった

 ニコラスがその場から立ち去る


「まあ、クリス……どんまい」


 周りの兵士たちが俺を慰める


「おい!どこ行くんだクリス!!」


 俺は走った

 自分の部屋までひたすら走った

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・








「畜生!!クソ!!!ちくしょおおおお!!!!」


 俺は枕を涙で濡らした

 勝てるはずだった

 いや勝てたとまでは言わなくても

 いい勝負が出来たはずだった

 なのになんだあの様は!

 自分が情けなくなった

 相手は”一人小隊”

 だけどこっちは軍事演習で優秀な軍人だったんだぞ!

 新機体を任されるほどにな

 なのに……なのに……


 俺はそのまま眠りについた










「クリス!起きてるか!クリス!」

「おい!クリス!」

「クリスさん!寝てるんですか?」


 いつもつるんでる仲間達の声がした

 時計は午後の4時を回っている


「すまん、今は一人にしてくれ」

「そうはいかない!出撃準備だ!まさか任務のことまで忘れるとはな」


 リアッジが俺に部屋から出るように促す

 俺はあいつとの勝負のことで苦悩しつづけていた

 演習でボッコボッコにやられて俺のハートはフルボッコ

 おっと、そんな冗談を言っている場合じゃないな

 とにかく俺は落ち込んでいた

 何か悪いことがあるとずっと悩み続けるのは俺の悪い癖だ


「そうだったな、すまん、忘れてた」

「落ち込むのは結構だが今は任務に集中してくれ」


 ガイアが俺に説教をする

 確かにそうだ

 こんなことで落ち込んでいる暇はない

 悩むなら任務のあとからだってできる


「分かった、今行く」

「クリス、あなたなら修練を積めばきっと”一人小隊”に勝つことが出来ますよだから落ち込まないでください」


 ミゲルスが俺を励ます


「そうだな、すまん、余計な心配をかけた」


 俺は部屋を出た

 出撃の前に作戦の最終確認があるとのことなので

 俺は3人とともに作戦会議室に向かった







~奇襲~


 作戦会議室に皆が集まる


「これで皆揃ったな、それでは作戦の最終確認を始める」

 

 隊長の一声を聞いて

 皆が静まり返る


「第3分隊は4時半にここを出発!敵の一部隊が滞在しているであろうエル・ミへンレム国の軍施設を叩く!ミへンレム国はこの国にもっとも近い」


 兵士の一人が挙手する


「そこに敵部隊がいなかった場合はどうするんですか隊長?」


 隊長が質問に答える


「敵部隊がいない場合でも軍施設の補給所を叩けば敵部隊を足止めすることは出来るだろう」


 他に質問はないかと隊長が挙手を促す


「質問がなければ最終確認は以上だ!残りの部隊は敵の襲撃に備えて待機しろ」


 隊長がニコラスを見る


「お前は待機するんだったよなニコラス」

「ああ、俺は奇襲が嫌いなんでな、その上民間人を巻き込むのは俺の信念に反する」


 今……なんて言った……?


「おい、ニコラス!どういうことだ!!」

「おい!てめえ!俺に二度と話しかけるなって言ったよな!?」


 ニコラスの鋭い視線が俺に向かう


「今はそれどころじゃないだろ!隊長!これは一体どういうことなんですか!?」


 隊長の顔に曇が見える


「本当は君には知らせないようにしようと思ったんだがな」

「隊長!!」


 無抵抗な民間人を巻き込む!?

 そんな馬鹿な話があっていいわけがない


「彼の言った通り民間人を巻き込むのは事実だ」

「なぜそんなことを!?」

「ミへンレム国の軍施設周辺には民家が多い、軍施設の中にまで建っている、軍施設をすべて潰すために巻き込むのは仕方ないと言える、民間人が徴兵されて軍人になる可能性もあるしな」

「そんな!?」

「それにお偉いさんがたの判断でもある、俺たちが口出ししていいことじゃない」


 隊長は俺を責めるなと言わんばかりの態度だった


「僕も反対です!そんなこと認めるわけにはいきません」


 ミゲルスが口を開く


「これは軍上層部の命令だ!口出しすることは許されない!」

「しかし!」

「命令は命令だ!それに背くことは処罰に値する!」


 ミゲルスは口を閉じた

 表情が暗い


「ということだ、クリス、嫌なら待機でもいいんだぞ」

「俺は……行きます……行かせてください!」

「クリス!?」


 周りが驚いたような反応を示した

 特にミゲルスの反応は顕著なものだった


「そうか、ならば出撃するがいい!途中から引き返すのはなしだぞ」

「はい」

「他に意見があるやつは?」


 誰も意見を出すものはいなかった


「ニコラス、待機する以上貴様の報酬は減るがそれでもいいか?」

「ああ、構わねえ」

  

 こうして俺が所属する第3分隊は出撃することになった











「なんだ?あの機体は??」


 俺たちが出撃するために軍兵器倉庫に向かってる途中

 ある機体を発見した

 赤い塗装が施されている

 俺がその機体に興味を示していると


「ああ、あれか?あれはニコラスの機体だ、なんでも普通の機体の3倍の出力が出せるそうだ、恐ろしいぜえ、なぜあんな派手な色を好むのか分からんが”一人小隊”の余裕が現れているんだろう」


 とリアッジが説明してくれた








 俺たちは軍兵器倉庫に辿りついた


「これが……俺の乗る機体……!」


 見た目は普通の機体と同じだったが

 盾が外されていて

 両腰に銃と剣が装備されていた

 おそらく近・中距離戦特化型だろう

 それとこの機体の魅力と言えば

 出力が通常の機体より2倍近く出せることだ

 ニコラスのあの機体よりは劣るが

 十分な性能だと思う

 ってかほんとに3倍の出力を出せるのか?あの機体





~ニコラスの意外な一面~


「ニコラス、僕はあなたを見直しました」

「何だ?いきなり、坊ちゃんが俺に何か用か?」

「用というほどではないんですけど」

「だったら俺に話しかけてくるんじゃねえ」


 周りが僕たちに奇異な視線を向ける

 まあ無理もない

 仲間を挑発するような相手に僕は話しかけてるんだから


「あなたは金のためなら手段を選ばない男だと思っていました、ですが民間人には手を出さない、そういう信念があったんですね」

「言いたいことはそれだけか?用がないならとっとと失せろ」

「あなたが何で傭兵をしてるかは分かりません、でも」

「坊主、俺の話聞いて」

「あなたが悪い人ではないということはわかります」

「……」

「それと僕は坊主ではありません!ミゲルスです!ミゲルス・インスリータ」

「俺は名乗れとは言ってないんだがな」

「それでは失礼します」


 そう言うと僕は作戦会議室を出た





~裏切り~


「ぎゃあああああああああ!!!!!」


 悲鳴が聞こえてくる

 聞くに耐えない

 でもこれは任務だ、仕方がない

 どうか恨まないで欲しい


「奇襲だ!総員戦闘配備に付け!!」


 俺たち第3分隊は奇襲のおかげか

 ほとんど犠牲を出さずにすんだ


「ふう、任務達成だな!しかし、クリスはすごいなあ、今回の任務で一番活躍したのはお前だよ」


 リアッジが嬉しそうに呟く


「お前は何とも思わないのか?」

「何をだ?」

「この惨状を!」

「なんだ、まだ作戦前のあれが抜けてないのか」

「そりゃそうだ!民間人を巻き込むなんてありえない!」

「あのなクリス俺たちは軍人だ、上の判断には従わないといけない、条約を結んでるわけじゃないんだぜ?」

「それでも!!!」

「それに民間人だろうと敵国にいる以上相手は敵だ」

「そんな……」

「俺たちは自分の国を守れればそれでいいだろう、いちいち敵のことまで考えてちゃ戦いなんて出来はしないぜ」

「……」


 俺は何も言えなかった

 確かにリアッジの言う通りだ

 俺たちは自分の国を守るために戦っている

 俺は割り切るべきなんだろうな


「そうだよな、すまなかった、今のは聞き流してくれ」

「やっと分かってくれたか!帰ったら勝利の杯を交わそうぜ!」


 任務を達成した俺たちは

 帰国した









 食堂に皆が集まる

 どうやらこの国にも予定より

 早く敵の強襲が来ていたらしい


「奇襲は無事成功した!それに敵の強襲にも応戦できた!これもお前たちのおかげだ!俺は優秀な部下を持てて誇りに思うよ」


 隊長が杯の音頭を取る


「今日は祝いだぜ!!ひゃっほおおおおおおお!!」


 兵士たちがわいわいがやがやと騒ぎ始める


「どうしたミゲルス?てめえも飲めよ!」

「僕は遠慮しとくよ部屋に戻るね……」


 ガイアの促しをミゲルスは断り

 部屋に戻っていった


「なんだよお!つれねえなあ」

「あいつもまだ分かっていないんだ、昔の俺みたいにな」

「言うねえクリス!というか昔ってつい先日のことじゃねえか」

「いいんだよこまけえことは!さあ飯でも食おうぜ!冷めちまう」


 こうして俺たちはわいわいがやがやと騒ぎ続ける


「ニコラス今回の襲撃の大半はお前のおかげでおさまった、感謝する」

「礼には及ばねえよ」

「これは報酬だ、今回の活躍の分も上乗せしてある、受け取ってくれ」

「ああ、ありがとさんよお!!!」


 突然大きな音が鳴り響いた

 周りの活気が静まり返る

 なんだ……銃声……?

 俺はゆっくり音がした方向を振り返る

 振り返った方向にいたのは銃を持ったニコラスだった

 その前に転がっているのは

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・






 頭を撃ち抜かれた隊長だった




「た、た、たいちょおおおおおおお!!!!」


 兵士たちが叫ぶ


「わりい、これも任務だ、あっちの御国さんのほうが報酬は上なんでな」

「きいいいさまああああああああ!!!!」


 兵士たちが銃を向ける

 ニコラスは素晴く走り去っていった

 そのあとを兵士達が追う


「いくぞ!ガイア!おい!クリス!!」

「……」

「返事なしかもういい、ほっとけ!!」


 俺は呆気に取られていた












「待て!この裏切り者おおおおお!!!!!」

「ちっ!しつけえな」











 しばらくすると警報を聴きつけたミゲルスがやってきた


「た、隊長!?クリス、どうしたんですか?皆は??」

「あ、ああ」


 俺は正気を取り戻した


「ニコラスが俺たちを裏切った」

「そんな!!!」

「とにかく俺たちも急いで皆の援護に向かおう!」

「うん!」


俺たちは食堂をあとにした







「なんなんだ……これは……」

「ひどい……ですね……」


 俺たちが駆けつけた時には

 辺りは焼け野原だった

 たくさんの機体の残骸が落ちている


「生き残っているのは1、2、3、4、5機か……」


 俺たちは生き残ってる兵士に話しかける


「おい!ほかの仲間はどうした!?」

「あ、あ、あ、あいつは化けもんだ!!」

「何!?」

「あいつに皆やられた」


 確かに相手は”一人小隊”と呼ばれた男

 しかしここまでとは……


「おい!リアッジとガイアはどこにいる!無事なのか!?」

「あいつらは俺たちより先に突っ込んであの野郎の餌食になっちまったよ!!」

「!!!」


 嘘だろ……

 あいつらが簡単に死ぬはずがない!

 死んでいいはずがない!!

 リアッジは面倒見がよく

 いつも皆を気にかけてくれた

 いい分隊長だった

 ガイアはいいライバルだった

 あいつとの鍛錬の日々は楽しかった

 あいつらが死んでいい道理はない


「俺が仇をとってやる!!」

「クリス……?」

「俺が……絶対にお前たちの仇を取ってやる!!!」


 ミゲルスが険しい表情をしているのが見て取れた

 ミゲルスには俺が鬼のように写ってるのかもしれない

 そう俺は鬼と化したんだ

 復讐の鬼に……






~憎しみの連鎖~


 俺たちはほかの部隊に編入することになった

 仕方がない、あれだけの損失を被ったのだ



「クリス……あのね?」

「ミゲルス、何の用だ?」

「用というほどのものじゃないんだけど」

「用がないなら話しかけないでくれ!」


 ミゲルスは俺を慰めようとしてくれていたのだろう

 しかし俺はそれを遮った







「ほう!お前やるなあ」



 俺はすっかり部隊のエースになっていた

 本当なら喜ぶところだが

 それどころじゃなかった


「あいつは……あいつは……あいつはどこだ!!」


 あいつは言っていた

 ”あっちの御国さんのほうが報酬は上なんでな”と

 おそらくやつはリヴァート国に雇われているはずだ

 りヴァート国の報酬の美味さから寝返ったんだろう

 なんて卑怯な奴なんだ!

 リヴァート国に雇われてる以上

 あいつはまた俺たちの前に現れるはずだ

 俺は浸すらやつを探し続けた

 あの”一人小隊”を!!

 他の仲間からは俺は頭でも狂ってると思われてるんだろうな





 俺たちはエル・ミへンレム国に続き

 リアリス国、ヘンフーン国を制圧下においた

 戦争は俺たちの国の有利に進んだ

 しかし俺の心は満たされない

 俺たちは今度はジュハーン国に攻め込んでいた

 俺は相変わらずやつを探していた



「あの赤い機体……!見つけたぞ!!”一人小隊”!!!!」

「ああん?」


 やっと見つけた

 この時を……この時を待っていたぞ!!


「ちぃ!」


 俺はやつがいるところに突っ込む

 やつの周りには仲間がいない

 やつの性格のことだ

 集団行動はしないのだろう

 だがそれがあだになったな!


「リアッジとガイアの仇だああああ!!」

「誰だそいつら?」


 俺とニコラスは剣を交える

 状況はニコラスの有利に傾いていた


「お前は仲間を殺して何とも思わないのか!?」

「なかまあ?俺にとって仲間は金だけだ!!」


 下劣な野郎だ!!

 こいつを生かしておくわけには行かない!


「金なんかのために人を殺して……それがお前の戦いか!!」

「金は生きていくために必要だろうが!生きるために戦って何が悪い!!」

「リアッジとガイアはそんなことのために殺されたのか?お前だけは絶対に許さない!!!」

「てめえだって、罪のない民間人を殺してるだろうが!」

「あれは任務だ!仕方がなかったんだ!」

「ふん、まあいい、てめえもあの世に送ってやんよ!!仲間と天国で杯でも交わすんだな!!!」


 くっ!どんどん押されていく

 俺はここまでなのか?

 リアッジとガイアの仇も取れずに

 ここで終わるのか……?


「クリス!!」

「な!?」


 後ろから銃声とミゲルスの声が聞こえる


「援護しに来ました!」

「ミゲルス、お前まで来る必要はない!危険だ!戻れ!」

「僕も軍人です!援護くらい出来ます”それに、仲間を見殺しにはできません!」

「そうか……分かった!援護を頼む!!」


 俺とミゲルスは二人同時にニコラスへ攻め込む

 俺たちの見事な連携でニコラスは追い込まれていった


「ちぃ!ここは一旦引くか」

「逃がすかあああああ!!!」


 さすがに”一人小隊”と言えど多勢に無勢か



 俺たちはニコラスを追いかけたが

 入り組んだ地形が邪魔で見失ってしまった

 やつの機体の機動力も関係しているのだろう

 逃げられたか?


「ちっ逃げ」

「なーんてな!後ろががら空きなんだよおおおおおおおお!!!!!」

「クリス!危ない!!!!」


 俺は急いで後ろを振り返った

 そこにいたのは

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・








「ミゲ……ルス……?」


 コックピットを串刺しにされたミゲルスの機体だった


「ミゲルスウウウウウウウううううううううう!!!!!」


 ニコラスはミゲルスの機体のコックピットから剣を抜いた


「ちっ!邪魔が入ったか」

「そんな……ミゲルス……」

「もう次はねえな!てめえもさっさとあの世に行っちまいな!!!」

「お前はあああああああああ!!!!お前だけはああああああああああ!!!!!」

「何!?」


 俺はニコラスが振り下ろした剣を片手で受け止めた


「ミゲルスはなあああああ!!!ミゲルスはなああああああああ!!!!!」

「クソッ!こいつの装甲はどうなってやがる!これはマジに引かねえとやばいな」


 ニコラスが再び逃げようとする


「誰よりも国の幸福と平和を考えた立派な軍人だったんだよおおおおおおおおおお!!!!」

「知るか!んなもん!!」


 なぜミゲルスが死ななければならない

 あいつは誰よりも国のことを考えていた人だった

 あいつは政治家になってこの国を豊かで平和にすると言っていた

 あいつは一番死んではいけない存在だったんだ

 それを……それを……


「お前はああああああああ!!!!!!!」

「ちっ!うるせーなあああああ!!!!!!」


 俺は両腰にある剣を抜く

 そしてニコラスの元に突進した

 ニコラスは逃げながらも銃で必死に応戦する


「なんでだ?なんでだ??なんで俺の弾があたんねえんだよおおおおお!!!!」


 俺はニコラスの撃つ弾を回避しつつ

 ニコラスとの間合いを一気に詰めた


「これはリアッジの分!!!」


 俺は右手の剣でニコラスの銃を持つ方の腕を切り落とす


「これはガイアの分!!!!」


 俺は左手の剣でニコラスの左足を切り落とす

 ニコラスの機体は体制を崩して倒れる

 

「そしてこれは……」


 俺はニコラスのコックピットに


「ミゲルスの分だああああああああ!!!!!」


 剣を突き刺した


「○○……幸せに……な」


 俺は浸すら剣を突き刺す


「あああああああああ!!!!!!」


 突き刺す


「あああああああああ!!!!!!」


 突き刺す


「あああああああああ!!!!!!」


 突き刺す


「あああああああああ!!!!!!」


 突き刺す


「あああああああああ!!!!!!」


 突き刺す

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・











「はぁ……はぁ……はぁ……」


 ふと我に返る


「……やった……やった……やったぞ!!!」


 俺は歓喜の声を上げる


「リアッジ……ガイア……そしてミゲルス!!!!」


 俺は彼らの無念を晴らしたんだ

 仲間の無念を

 そして俺はあの”一人小隊”に勝ったんだ!!!!


「やったああああああああああ!!!!!!」


 俺は仲間達の無念を晴らし

 ”一人小隊”という強敵を倒した

 まさに”敵将!討ち取ったり!!”だ

 俺はしばらく歓喜に浸っていた


「ん?」


 頭の上に何か感触がある

 何か手のようなものに触られてる感触が……

 大きさを考えるに少女の手だろうか?


「なんだ!?」


 急に頭の中に映像が流れ込んできた

 森の中に小屋がある

 しばらくすると映像が切り替わった


 見る限りあの小屋の中だろうか?

 女性が料理を作っていた

 女性は緑髪で長い髪型をしていた


 ドアが開く

 中に入ってきたのは





「ニコラス……」



 ニコラスだった

 ニコラスは何か買い物袋みたいなものを腕に下げている

 たぶん中には食材かなにかが入っているのだろう

 女性はニコラスから嬉しそうに買い物袋を受け取る

 その光景はまるで夫婦みたいだった


「またか……」


 また映像が変わった

 ニコラスが誰かと話をしている

 相手は恐らくニコラスの友人かなにかだろう

 友人はニコラスの話を聞いて泣いていた


 また映像が変わる

 さっきと同じ小屋の中だ

 女性はまた同じように料理を作っている

 ドアが開いた

 男性が中に入ってきた

 今度はニコラスの友人だった

 ニコラスの友人は女性に何か話しかけている

 女性はそれを聞いている

 しばらくすると女性は泣き出し走りながら小屋を出て行った

 ニコラスの友人はそれを引き止めようとするが追いかけなかった


 また映像が変わる

 女性は森の中を走っていた

 しばらくするとその場に座り込んでしまう

 女性はうつむいていた

 何かぶつぶつ言っているような気がするが

 声は聞こえてこなかった

 しばらくすると女性は顔を上げた


「!!!??」


 いきなり女性の顔がドアップになった

 口を開いて何かしゃべっている

 何を言っているか聞こえなかったが

 俺にはそれが分かった

 あれは

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・










 復讐を決意した顔だ


「やめろ……そんな目で……そんな目で……そんな目で俺を見るなあああああああ!!!!!!」


 女性の顔がだんだん近づいてくる


「あいつは俺たちを裏切ったんだ!」


 女性の顔が近づいてくる


「あいつはリアッジを殺した!」


 女性の顔が近づいてくる


「あいつはガイアを殺した!!」


 女性の顔が近づいてくる


「あいつはミゲルスを殺した!!!」


 女性の顔が近づいてくる


「あいつを殺して何が悪い!」


 女性の顔が近づいてくる


「俺は悪くない!」


 女性の顔が近づいてくる


「俺は仲間のかたきをとっただけだ!」


 女性の顔が近づいてくる


「俺は……」


 女性の顔が近づいてくる


「俺は……」


 女性の顔が近づいてくる


「俺は……」


 女性の顔が近づいてくる


「俺は悪くねええええええええ!!!!!!」



 映像がぷつんと途切れる

 俺の頭の上にあったあの手の感触もなくなっていた


「はあ……はあ……はあ……なんだったんだ?今のは!?」


 俺はしばらくその場に立ち尽くした







 俺は着々と戦果を上げていった

 仲間からも尊敬の眼差しを受ける

 でも俺は心のどこかで戦うのが嫌になっていた

 あの女性の顔が今でも目に焼きついている

 


「どうした?クリス?最近元気がねえじゃねえか??」

「ああ、ちょっと疲れてるみたいだ」

「休んだほうがいいんじゃないか?」

「分かった、そうする」


 俺は談話室を出ると

 一直線にあるところに向かった

 そこは……



 コンコン


「ん?誰だ?」

「隊長、俺です、クリスです」

「おう!最近活躍しているクリスか!入れ」


 俺は隊長の部屋の中に入った


「お前の活躍は聞いているそうそう、ちょうどお前に褒美があったところだ」

「褒美?」

「そうだ!今日からお前の昇進が確定した!喜んでいいぞ!それと分隊長に任命することになった」

「隊長」

「なんだ?あまり嬉しそうじゃないな」

「俺は軍をやめます」


 隊長は机をバンと叩いた


「そんなことが許されると思っているのか!?」

「俺はもう戦うことが嫌になりました」

「そうか……」


 隊長は銃を俺に向けてきた

 今は戦時中だ

 勝手に軍を抜けることは許されないだろう


「撃ちたきゃ撃ってください」


 しかし俺は戦うのが嫌だった

 俺は隊長の部屋を出て行った

 撃たれるかと思ったがそうでもなかったな









 こうして俺は軍をやめた


「ただいま」

「どうしたクリス?今は戦争中で軍人は忙しいんじゃないのか?」

「父さん、俺、軍人を辞めたんだ」

「そ、そうか、まあお前が決めたことだ好きにするといい」

「ごめん、そうさせてもらう」


 俺は引きこもるようにして自分の部屋の中に入った

 あの顔……あの女性の顔をどうしても忘れることはできなかった












 人は守るために戦う

 だけど守るものを失ったものはどうか?

 大切なものを失ったものはどうか?

 そうなったとき人はどうするのだろうか?

 仕方がないと諦めるのだろうか

 それとも……













「また人は……争うというの……己の憎しみのために」



 少女は一人嘆いていた


ークリス編ー

  完

ここまで読んで下さり有難うございます

できたてほやほやなのでいろいろミスがあるかもしれません

物語の設定に疑問、突込みなどがあれば

遠慮せずにご指摘をお願いしますm( __ __ )m

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― 新着の感想 ―
[良い点]  冒険もののファンタジーかと思いきや機械を使った近未来的な戦闘も加わって。物語の壮大さが更に増した感じとか、これを後々、どおやってまとめていくんだろう!という楽しみがあります。(既に完結し…
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