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亮太編後編

~あらすじ~

仲間の死を初めて目にする亮太

彼は今まで身近な死を経験してこなかった

仲間が彼を慰めようとするが彼は塞ぎごんでしまう


「これは試練よ」


アリサの言葉に亮太は立ち直り強くなる決意をする


~リシッドの死~


 冒険者ギルドのテーブルの席に

 クリート、ミルディ、ミレイユ、アダムス、トレイン

 の5人が座る

 空気が重い


「リシッドがやられましたね」

「すまん、あの時、俺が素直に撤退しとけば」

「あなたのせいじゃありません、運が悪かっただけです」

「むしろ、あの2体相手に1人の犠牲で済んだだけでも不幸中の幸いだよ」

「アルフレッドのやつ、こんなときに宿に戻るだなんて呑気だよな」


 皆が口々に言う


「クリート、彼は一番落ち込んでいるんですよ、だから真っ先に宿に戻ったんです」


 ミルディがクリートを叱責する


「それにしたってパーティの話し合いに参加しないのはどうかしてるぜ」

「クリート!!」

「ごめん、言いすぎた」


 クリートがショボンとする


「とりあえず今やるべきことはあいつを慰めることぐらいだな」

「すぐに立ち直るなんて無理だと思うけどな」

「そうだねえ」

「しばらくはこのメンバーで依頼を受けて稼ぐしかないな」


 こうしてパーティの意向が決まった


~初めての経験~


 俺は宿に戻っていた

 いや、閉じこもった

 パーティの話し合いに参加しないだなんて

 薄情者だと思われたかもしれない

 でもそんな気分じゃなかった


 りシッドが死んだ

 俺は今でもその事実を受け入れることができない


「アリサ、いるんだろ、アリサ!」

「何?」


 俺の頭の中に声がする


「お前、未来が予知できるんだよな」

「ええ」

「じゃあ、リシッドの死も分かってたんだよな!?」

「いいえ」

「嘘をつくな!!お前には分かってたはずだ!!!」

「前も言ったけど私は完璧じゃないのよ」


 俺は半ばアリサに八つ当たりするようなかたちで言い放った


「リシッド……リシッド……」


 今でも彼の死が目に焼きついている

 上半身が無い

 あまりにも酷い死だった


「アリサ」

「何かしら?」

「元の世界に戻りたい」

「残念ながら出来ないわ」

「どうして?」

「何度も言うけど私は完璧じゃないのよ」


 俺は戦うのが怖くなっていた

 俺も一歩間違えばリシッドのようになっていたかもしれない


「おえええええええ!!!」


 吐き気が俺を襲った

 俺は洗面所に向かって吐き出した

 その後再びベッドに戻る


 コンコン


「入るぞ」


 ドアが開いた

 中にはクリートが入ってきた


「今度はクリートか、何のようだ?」

「お前、いつまでそのつもりでいる気だ」

「さあな」

「悪いがお前を養う余裕はない」

「どういうことだ?」

「あと3日だけ待ってやろう、それでもこの部屋から出ないようだったらお前にはこのパーティから抜けてもらう」


 デジャヴを感じた


「いい加減にしないとお前を家から叩きだすぞ」


 父さんの言葉を思い出した

 それと似たようなことをクリートも言っているのだ


「これはパーティ皆の決定だ、悪く思うな」

「別にいいよ、俺なんて」

「……」


 クリートは無言のまま部屋を出て行った




 俺は2日間寝て起きての繰り返しだった

 食事はミルディが持ってきてくれた

 まるで前の世界の俺みたいだった


「安心して、クリートはあんなこと言ってるけど、私はあなたの味方よ」

「……ありがとうございます……」


 弱々しい声で俺が答える


「それじゃあ、私は行くね」


 ミレイユが部屋から出て行った


~決意~


 3日目、次第に俺は自分の気持ちに整理が付き始めていた


「このままだといけない!!」


 そう思うようになった


「アリサ、俺は勇者になる男なんだよな?」

「ええ、そうよ」


 アリサの声は聞いていて心地よかった


「俺、また戦うよ」


 俺は強くなろうと決意した


「その言葉を待っていたわ」

「それじゃあ早速冒険者ギルドに行ってパーティと」

「ちょっと待ってちょうだい」

「どうした?」

「パーティからは抜けてちょうだい」

「な!?」


 アリサがいきなりとてつもないことを言い放った

 この子一体何がしたいんだろう


「新しくパーティを作れってか?」

「いいえ」

「それじゃあ1人で頑張れっていうのか」

「そのとおりよ」


 これは驚いた

 俺みたいな冒険者が1人で何が出来るというのだろう


「勇者は1人で充分よ」

「しかし、1人でやっていくなんて大丈夫なのか?」

「大丈夫、私があなたを精一杯サポートするわ」

「分かった、お前が言うことだしな」


 俺は冒険者ギルドに赴いた

 中にはちょうど俺のパーティメンバーがいて

 依頼を決めてるところだった

 トレインが俺に気づいた


「おお!アルフレッド、調子が戻ったのか」

「はい!」

「それは良かった」

「それでその、話があるんですけど」

「何だ?」

「俺、パーティから抜けようと思うんです」


 皆が俺の方を向いて鳩が豆鉄砲をくらった顔をした


「どうしたんだ?急に」

「俺、あれから考えたんです」


 俺は話し始めた


「リシッドが死んで、パーティのメンバーにも迷惑をかけて」

「……」

「このままだと俺、強くなれない気がするんです」

「……」

「だから強くなるため、俺は1人で頑張っていこうと思っています」


 我ながらいい演説だと思う


「そうか」

「何かあったらいつでも戻ってきて、あなたは私たちの仲間なんだから」

「はい、その時はよろしく頼みます」


 こうして俺はパーティから抜けた


「さて、アリサ、俺はこれからどうすればいい?」

「とりあえずこの依頼を受けてちょうだい」


 俺は難易度2の依頼を受けた


 アリサは俺を力強くサポートした

 魔法を使いながら戦えって言ったり

 この装備を買えって促したり

 また敵の攻撃を予知して俺に注意を促してくれたりもした


 俺は5年ほどこういう生活を続けていた

 俺は「孤高のアルフレッド」という二つ名までついた


~魔物の襲撃~


「アリサ、ここまで来れたのもお前のおかげだよ」

「いいえ、あなたが頑張ったからよ」

「でも、お前の助言が無ければ俺はここまで来れなかった」

「そう」


 さて、冒険者ギルドに赴こうと足を向けたその時


「アルフレッド、アインテールに向かいなさい、そこを魔物が襲撃するわ」

「何!?」


 アインテールはこの街から結構かかる

 早くて10日だろう


「間に合うだろうか?」

「ええ、間に合うわ」


 俺たちはアインテールに向かった

 その間俺は船の中で素振りをしたり

 集中力を上げて魔術を上手く使えるよう瞑想をしていた


 アインテールについた

 街中を歩いていると


「魔物が責めてきたぞおおおおお!!!」


 という叫び声が聞こえた

 ちょうどいいタイミングだった


 俺は急いで走り去る人たちとは反対の方向へ向かった


「いた、って!?」


 たくさんの魔物を引き連れて巨大な魔物が現れた

 俺が今まで見た魔物の中でも一番でかいやつだった


 辺りを見渡すとたくさんの死体があった

 一般市民以外にも冒険者の死体もあった


 冒険者たちはこの街を守ろうとして戦ったみたいだが全滅したようだ


「アルフレッド、後ろ」


 俺は咄嗟に後ろに振り返り俺に向かって攻撃してくるガーゴイルの爪を避け

 ガーゴイルを切り裂いた


「あれを倒せば魔物の襲撃は治まるわ」

「分かった」


 俺は魔力で身体強化をしつつ

 あの巨大な魔物目掛けて突進した


 魔物は大きな腕を俺に向かって振り上げる

 俺はそれを回避したり剣で防御したりした


「あの魔物の弱点は火よ」


 アリサが叫ぶ

 俺は剣に火を込めてあの魔物に一撃を加えた


「小僧やるな!」


 魔物がしゃべった!?

 たくさんの種類の魔物の群れを引きつけてくるぐらいだ

 それぐらい知能があってもおかしくはない


「どうだ?取引をしないか?」

「取引?」


 あれか俺の仲間になれば世界の半分はやろうってやつか


「俺の仲間になれば世界の半分はやろう」


 うん、予想通りでしたー


「残念だけどそんなのに興味はないね!!」

「そうか、ならばここで死ぬがいい!!」

「アルフレッド!耳を塞いで!!」


 俺は咄嗟に耳を塞いだ

 あの魔物の咆哮が聞こえる

 耳を塞いでもうるさいくらいだ

 直で聞いたら鼓膜が破れただろう

 他の魔物はあの魔物の咆哮を聞いたせいか動きが止まった


 俺は再びやつに接近する

 やつの動きが速くなっていた


「アルフレッド一旦ひきなさい」


 アリサの声がした


「分かった」


 俺はあの魔物から逃げるようにして離れた


「あの建物の裏に隠れて!!」


 俺はアリサの言うとおりにした


「あの紙は持ってるわよね」

「ああ」


 あの紙とは魔術を使うための紙だ

 筆記魔術は紙が無くても使えるが

 それ専用の紙があれば威力が増す


「これに詠唱しながら火の紋章を書いて剣に貼り付けて!!」


 俺は言われた通りにした


「火の神よ!汝の燃え盛る火の力を我に!!」


 俺はそう詠唱しながら紙に火の紋章を書いた

 そして剣に貼り付けた


 ドスッドスッ


 足音が聞こえてくる

 恐らくあの魔物だろう


「ここにあの魔物が来るわ!ここを通りかかったら斬りかかって、いい?」

「ああ、わかってるよ」


 俺は唾を飲み込んだ

 緊張の瞬間

 あの魔物の足音が近づいてくる


「今だ!!!!」


 俺は通りかかったあの魔物目掛けて斬りかかった

 あの魔物は俺に振り向いた

 そのおかげか心臓に剣を命中させることが出来た


 ぐぎゃああああああああああああああああ


 悲鳴が聞こえると同時にあの魔物は倒れた


「ふう」


 魔物たちはあの魔物がやられたことを察したのか撤退していった


「アルフレッド様、ありがとうございます」


 街のみんなが俺に礼を言ってくる

 とても気分が良かった


「アルフレッド、次はカーラ神殿に向かいなさい」

「でもあそこは結界が貼られていて」

「今のあなたなら行けるわ」

「分かった、行くよ、でも今日は遅いし明日な」

「ええ」


 俺は宿をとった

 魔物の襲撃を抑えたおかげか

 無料で留めてもらえた

 別にお金には困ってないが

 ありがたく甘えさせてもらうことにした


~試練~


「ここがカーラ神殿……」


 俺はカーラの神殿に入ろうとした

 

 バチ


 体に電流が走ると共に弾き飛ばされた


「入れないじゃないか!!」

「剣に黒魔術を込めて思いっきり結界に切りかかりなさい」


 俺は言われた通りにした


 パリン


 ガラスが割れるような音がした

 カーラ神殿の中に入ろうとする


 入れた

 俺はそのまま神殿の奥へと進む


 俺とアリサは頭の中で他愛もない会話をしていた


 神殿の一番奥へとついた

 目の前には十字架が建っていて

 その真ん中に丸い穴が空いていた


「汝、何を欲するか?」


 声が響いてきた


「この質問に答えなさい」

「何を答えればいいんだ?」

「それはあなた次第よ」

「あなた次第って」


 俺は何て答えようか迷っていた

 すると頭の中に走馬灯のように映像が流れてきた

 仲間の死

 魔物に襲われた街の惨状

 強くなろうとした決意

 俺の答えは決まった


「汝、何を欲するか」

「俺が欲するのは”幸福で満たされた平和な世界”だ!!!!」

「そうか、ならばこの試練を乗り越えよ」


 そう聞こえたとたん目の前に黒い影が出現した


 影は俺に突進してくる


「アルフレッド、防御に徹して」


 やつは黒い剣を俺に向かって振り下ろしてきた


「速い!!!」


 これは少しでも隙を見せたらやられる

 アリサの助言は適切だった


 どれだけ経ったころだろう

 やつは相変わらず攻撃を続け

 俺は相変わらずやつの攻撃を防御し続けた


「10秒後に隙が出来るわ!それを狙って!!」


 アリサが俺に助言をする

 俺はカウントした

 10

 9

 8

 7

 6

 5

 4

 3

 2

 1


「今だ!!」


 やつは大きく剣を振り上げてきた

 俺はその隙を見逃すこと無く

 やつの心臓を剣で突き刺した

 もし、やつのあの攻撃を受けてたら

 防御しても大きなダメージを被っていただろう


 俺は戦いに勝利した


 ピカーン


 俺の右手に白く輝く玉が湧いてきた


「汝、光水晶を十字架にはめよ」


 あの声が響く


「光水晶ってこれのことだよな?アリサ」

「ええ」


 俺は十字架に近づき

 丸い穴の中に光水晶をはめた

 その瞬間


 神殿が輝きを放った


「綺麗だ」

「そうね」


 俺はしばらくこの景色に見とれる


「アルフレッド・ブラックナイト、いいえ、南亮太、ここまでよく頑張ったわね」


 俺の目の前に少女が現れる

 アリサだ


「この世界はあなたの望み通り平和になるわ」

「そうか」

「私の手をとってちょうだい、元の世界にあなたを返すわ」

「……」

「どうしたの?」


 俺は躊躇した

 元の世界に帰る

 それはあのような惨めな生活を送るということだった


「嫌だ!!」

「大丈夫よ、今のあなたなら元の世界でもやっていけるわ」

「……」


 沈黙が続いた


「!?」


 アリサが俺を抱きしめた

 いい匂いがする


「あなたは勇者よ、元の世界でもそれは変わらないわ」

「……」

「私の言うことに嘘偽りはないわ」

「本当に俺は元の世界でもやっていけるんだな」

「ええ、本当よ」


 アリサは俺から離れた

 そして手を差し伸べる


「さあ、私の手をとってちょうだい」


~元の世界~


 俺は目を開ける


「あ、あなた!!亮太が目を開けましたよ!!」

「本当か!?」


 どうやら俺は病院の中にいるらしい


「アリサ」


 俺は心の中で彼女に呼びかける

 しかし、返事がしない


「良かった……本当に良かった……」


 両親が俺を抱きしめる


 アリサ俺、強く生きるよ

 あの世界で決意したように

 お前の助言がないのが少し残念だが

 もし俺がこう言うならお前は俺に対してこう言うだろうな


「あなた次第よ」


 って


ー亮太編後編ー

   完

アリサとアマリアのパラレルワールドォ!

第10話


「ラタルタの予言って本当に便利になったわよね」

「そうか」

「ええ、私が知りたいこと何でも書かれてあるの」

「ほう、それは面白いな、グギャっ」


 アリサが後ろから抱きつくアマリアに肘打ちをする


「あなたが後ろから抱きつくことも書かれてたわよ」

「うぅ……」


 今日も一日平和だった

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