ミハエル編
初投稿です
何回も見直しはしてますが
誤字、脱字などいろいろミスるかもしれません
あればご指摘願います
~ミハエルの家族~
「お兄様、見てみて! 綺麗なお花見つけた!」
「おおっ!本当にきれいだな」
僕の名前はミハエル
ミハエル・レイニード15歳
友達からはよく「ミハちゃん」って呼ばれる
正直このあだ名はあまり好きじゃない
「あの木のしたで見つけたの♪」
そしてこの綺麗な花を見つけてきた少女が妹のアリサ
12歳
可愛くて、しっかりもの、頭もいい
僕のことを「お兄様」と読んでくる
僕はその呼び方はやめろというけど
アリサはどうしてもって聞いてくれない
あと僕にべったりくっつくのはやめてほしい
まあ僕が言うなって話なんだろうけど
「アリサは花摘みの名人だなあ」
「えへへ//」
僕たちは比較的裕福な家に生まれ育った
家が古本屋をしており、売上も上々で
何一つ不自由がない
ごく平凡で幸せな家庭だった
「アリサは将来花屋さんが向いてると思う」
「それもいいかも♪」
僕はあまり争いごとを好まず
人の喧嘩をよく止めたりしていた
そのおかげか僕の周りは友達が多い
「さっ、アリサ、もう暗くなったしそろそろ帰るか」
「うん!」
僕の日常はざっくり言うと朝7時に起きて
学校に行く準備などをし
8時には家を出て学校に行く
16時には家に帰り
残りの時間は友達と遊びにいくか
こうしてアリサと花畑に花摘みにいったりしている
「ただいまあ」
「あら、お帰りなさい」
この人が僕のママ
34歳
古本屋を経営している
友達からはよく美人なママだねと褒められる
「ねえママ聞いてよ、今日アリサが綺麗な花を見つけてきたんだ!」
「あらほんと、綺麗ねえ」
「ねえママ、私すごいでしょ!」
アリサが自慢げにママに話す
「ええ、ほんと、すごいわあ」
「いつかお花を集めて花飾りを作ってお兄様にプレゼントしようと思うんだあ♪そしてお兄様と結婚するぅ」
「あら、まあ」
「はははっ、花飾り楽しみにしているよ、あと僕は君とは結婚しない」
「むう~お兄様の意地悪」
「はあ……」
「うふふふふ」
僕は習い事とかはしていない
正直興味がないからだ
勉強も家ではほとんどせず
授業だけ聞くか
分からなかったら妹のアリサに教えてもらう
そのおかげか成績はトップクラスだ
我ながらこんな妹をもったことを誇りに思うよ
「ごちそうさまでした」
「ミハエル、食べるの早いな」
この人が僕のパパ
35歳
ばりばりのエリートサラリーマンだ
年収は1000万を超える
え?どこでそれを知ったかって?
それは秘密♪
「腹減ってたからね」
「そうかまあこの時期は食べ盛りだからな、もっと食うか?」
「いいよ、もうママ、暇だから店の本漁っていいかな?」
「ええ、いいわよ」
僕が興味あるのは
非現実的なものばかりだ
心霊は怖くてスリルを感じるし
超能力は使ってみたいと思うし
占いは当たればラッキーだなと思う
ただその中でもっとも興味があるのは
「予言だ」
未来のことは知りたいし
当たればすごいと思う
ただ僕はまともな預言者を見たことがない
確かに当てる人もいたけど
それは一時的なことが多い
ましてや予言を抽象的にして
どうとでもとれるような書き方をしてる人もいる
そういう人を見ると僕はイラッとくる
真面目にやれよと
今日も同じように店の本を漁っていると
ある本が目に入った
「ラタルタの……予言……?」
表紙は飾り気がなく真っ黒で
タイトルだけしか記述されていなかった
一見変哲もないタイトルだが
僕はなぜかこの本に惹かれた
上にも書いたとおり
大体の預言者はインチキだと思う
だけどこの本には妙なオーラを感じた
早速僕はこの本のページをめくってみた
その中には
「”少年は旅に出る”」
とだけ書いてあった
「なんじゃそりゃ!?」
あとのページは空白
そのページが何百ページと続いていた
僕は幻滅した
これもインチキなのか?
しかしこの空白が妙に気になる
「変な本だなあ、気になるからママに聞いてみよう」
僕はその場をあとにした
~予言~
リビングに戻るとちょうどママがいた
「ママ、変な本を見つけたんだ」
「何かしら?」
「”ラタルタの予言”っていう本」
「ああ、その本ね」
「どんな本なの?」
「エドワード・ラタルタという預言者が書いた本よ、でも何も文字が書かれてないのよ」
「え、文字は書いてあるよ」
「何言ってるのミハエル!」
「ほら、見てよ!」
僕はその本をママに見せた
その本を見てママは
「何も書かれていないじゃないの!ふざげるのもいいかげんにしなさい!」
「本当だよ! 本当に書かれてるんだってば!」
「もう寝なさい」
「本当に書かれてるんだよ!」
「いいからもう寝なさい!」
僕は自分の部屋に戻った
何なんだろう一体……?
ママは疲れてるんだろうか?
僕はもう一度本を開いてみた
「やっぱり書かれてる……」
ママは何も文字が書かれていない
と言っていた
そんなはずは
・
・
・
・
・
・
・
もういいや
僕は本を放り出した
「さあて、明日の準備をするかな」
僕は明日の準備をすますと
眠りについた
~召集令状~
あれから1ヶ月後
僕はいつもどおり学校に行きいつもどおりアリサと遊び
いつもどおり家族と食卓を並べてわいわいする
そんなありふれた日常を過ごす
はずだった……
朝、郵便受けを見に行くと
その中に赤い紙が入っていた
「なんだろう?」
”ミハエル・レイニード様へ”
表には僕の名前が書かれていた
そのまま赤い紙を裏に返す
「召集……令状……」
そんな……
「パパ、ママ、大変だよ!!」
「どうした? ミハエル」
「郵便受けにこんな紙が!」
「そんな……」
「あら? どうしたの二人とも暗い顔をして」
ママが僕たちの顔色を伺うかのように話しかけた
「召集令状が来たんだ……」
「え……」
召集令状とは簡単に言うと軍隊が軍人を強制的に
集めるために出した令状である
ここリヴァート国では15歳から軍人になれる制度がある
また15歳から30歳までの体力のあるものは徴兵の対象になる
男は戦、女は武器工場とかで働く
僕はちょうど15歳なのだ
正直信じられなかった
確かにリヴァート国は戦争好きだ
でも僕たちが住む田舎にまで令状を出してくるなんて……
僕は争いなんて嫌いだ
戦争なんてもってのほかである
「ミハエル、今日は部屋に戻りなさい」
「分かった……」
僕は部屋に戻った
このまま死ぬのだろうか……?
そんなの嫌だ!
まだやりたい事だってたくさんある
学校の行事
友達との遊び
アリサとの花摘み……
一番の心残りはアリサから花飾りをもらうことだった
まだもらってないのに
こんなところで死にたくない!
死ぬのは嫌だ!
嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!
嫌だ
嫌だ
嫌だ
嫌だ
嫌だ
嫌だ
・
・
・
・
・
・
コンコン
ノックがした
「お兄様」
アリサの声だった
僕はドアを開けた
「どうしたんだ?アリサ」
「お兄様! 行っちゃ嫌だああああああああ!!」
アリサが俺に抱きついてきた
目には涙が溢れている
「聞いて……いたのか……」
「お兄様! 死なないで!!」
「……大丈夫さ、僕は死なない」
「本当?」
「ああ、だからアリサ、安心して」
「約束だよ」
「ああ約束だ、さあ、部屋に戻って」
僕はアリサを慰めて部屋に送り
自分の部屋に戻った
僕は死なない!死んでなるものか!!
”死なない!”僕は呪いのように
頭の中でそんな言葉を繰り返した
”少年は旅に出る”
ふとあの”ラタルタの予言”の言葉が脳裏に浮かんできた
なんであの言葉が突然でてくるんだろう……
ペラ
「ん?」
ふと辺りを見渡すと
”ラタルタの予言”のページが開いていた
「なんだ?風もないのに勝手に開くなんて……」
僕は”ラタルタの予言”に目を通す
「!?」
驚愕した
”ラタルタの予言”の文字が増えているのである
「嘘だろ……」
僕は”ラタルタの予言”を読んでみた
「少年は”妹を連れて”旅に出る
”ある出来事をきっかけに”」
”ラタルタの予言”の文字には
”妹を連れて”と”ある出来事をきっかけに”
という文字が追加されていた
まるで僕のことを指すようだった
僕は少年だ
僕には妹もいる
おそらくある出来事とは召集令状のことを指すのだろう
「なんなんだこの本は!?」
僕はいろんな本を読んできたが
こんな本は初めてだった
「どうしよう……」
僕は悩んだ
冒険なんてしたことなかった
遠出なんて隣町にに家族で買い物に行った程度だ
いくあてがあるわけもないし
僕は生きる知恵なんてもってないから
僕が冒険にでたところで良くて飢え死にだろう
だけどこのまま戦場で死ぬよりはマシかもしれない
僕は旅に出ようかとも思った
しかし
”妹を連れて”
この一文が僕をさらに悩ませた
僕はアリサを危険に晒す真似などしたくなかった
僕は一日中悩んだ
悩みに悩みまくった
戦場で名誉の死を迎えるか
旅に出て餓死するか
悩んだ、ひたすら悩んだ
悩んだ、ひたすら悩んだ
悩んだ
悩んだ
悩んだ
悩んだ
・
・
・
・
・
・
・
・
やっと答えがでた
僕はこれが一番最適な選択だと思った
「旅に……出よう」
僕は旅に出て餓死するつもりだった
もちろんその旅にアリサを連れて行くのはもってのほかだった
戦って名誉な戦死をしようかとも思った
でも嫌いな戦争なんかのために命を落としたくはない
だから僕はこの選択をした
とはいえすぐに死ぬつもりはない
どうせならある程度旅を満喫して死にたいものだ
なので僕は早速食料と飲み物を探すべく
キッチンに行き冷蔵庫を開けた
「食料と飲み物」
「どうしたの?ミハエル」
後ろからママの声がした
「いや、ちょっとね」
「ご飯ならもう食べたでしょう?」
「まだ腹が減ってるんだ」
「まあ食いしん坊ね、食べたらさっさと寝るのよ」
「わかってるよ」
ふう……危ない危ない
僕はある程度食料と飲み物を持ち出すと
部屋に戻った
「あとは財布と方角が分かるようにコンパスだな」
僕は明日旅に出る準備をしてそのまま眠りについた
~少年は旅に出る~
翌朝
僕はリュックを背負い”ラタルタの予言”を片手にリビングに降りた
「ママ、パパ、話があるんだ」
「どうしたの?大きな荷物なんて持って急に」
「僕、旅に出ようと思うんだ」
その時のママの驚きようといったら
まるで僕が10歳の時にお漏らししたのと同じようだった
「何言ってるの!?」
「決めた……ことだから」
「そんなことダメよ! ママは認めません!」
「どうしたんだママ? 声を荒げて」
パパが心配そうにママに話しかける
「あなた、聞いてよ!この子旅に出るとか言うのよ」
「なんだと! ダメだ! ミハエル!」
「もう決めたんだ!」
「ミハエル! いい加減にしなさい!」
「どうせ僕は徴兵されるんだろ!戦って無様に死ぬんだ!それならまだ冒険して飢え死にしたほうがましだよ!!」
「……」
「……ミハエル、パパはお前がこのまま戦って名誉の戦死を遂げたほうが幸せだと思う」
「なんだよ!! その言い方!!!」
「どうしたの?」
僕たちの会話を聞いてアリサが起き上がってくる
「アリサ、僕旅に出ようと思うんだ」
「え……」
「ごめんな」
「だからミハエル、旅に出るのはやめなさい!」
「僕は行くよ! いいね」
「ミハエル! ふんっ勝手にしろ!!」
「お兄様! まって!」
アリサの呼び声に僕は思わず足を止める
「旅に出るなんてやめてよ!!」
「アリサ……」
僕はアリサを必死に説得したが
アリサはいうことを聞かなかった
しまいには泣き出してしまった
僕はそのまま家の戸を開けた
背後からママとアリサの泣き声が聞こえた
パパが困惑してるのは見なくても分かった
僕は最低な兄で親不孝者だ……
ごめんよ……パパ……ママ……アリサ……
さよなら……
さてどこに行こうか
僕がどこにいくか悩んでいると
「おにいさまあああ!!」
アリサが家から飛び出して来た
いきなりだった
「アリサ、僕は旅に出る!この気持ちを曲げるつもりはない」
「お兄様は死ぬつもりなんでしょう!?」
僕は意表をつかれた思いだった
まさか心の中まで見透かされてるなんて
「見抜かれてしまったな……さすが僕の妹だ」
「何年一緒にいると思ってるのよ!」
「ははは……そうだったな」
「それにお兄様! ”僕は死なない”って言ったじゃない! 約束もした! もう忘れたの?」
「……」
「今すぐ家に戻って!!」
「すまない」
「どうしてお兄様は旅に出たがるの?召集されるのが怖いなら大丈夫、私が匿ってあげる」
「ありがとう、アリサでも理由はそれだけじゃないんだ」
「他にもあるっていうの?」
僕はアリサに”ラタルタの預言”という本
を差し出した
「何? その本」
「ああ、これね”ラタルタの予言”っていう本なんだ」
「ふうん」
「この本に書かれてる文字は誰にも読めないでも僕には読めるんだ」
「私にも見せて!」
「分かったよ」
僕はアリサに”ラタルタの予言”を見せた
「どう?読める?」
「何も書かれてない」
「やっぱりか……」
「この本には何が書かれてるの?」
「それは……」
「答えられないの?」
僕はアリサを危険な旅に付き合わせるわけにはいかなかった
そう思っていた
黙って走り去ってしまおうか?
ダメだ! 荷物が多すぎて速く走れない
アリサが言った
「お兄様がどうしても行くって言うなら私も行く!!」
「アリサ……」
アリサは強引にでも僕と旅に出ようとしていた
僕にはもう止める術はない
「分かったよ、アリサ」
「本当!? やったあ!」
「ただし! 命の保証はできないぞ!!それでもいいな!」
「大丈夫、お兄様が守ってくれるもの♪」
「お前なあ」
アリサはいつもこんな感じだ
真剣なのはいいのだが
大事なところでいつもおどけてみせる
まあそこも含めて僕の妹なんだが
「もういいや、行くぞ!」
「うん!あっお兄様!死ぬのだけはやめてね、約束!」
「はいはい約束するよ」
「はいは一回」
「はい……」
細かいところを気にするのもアリサの癖だ
個人的に直して欲しいところである
こうして僕とアリサは旅に出ることになった
ん?まてよ
「お前パパとママはどうしたんだよ!」
「お兄様を連れ戻すって言って出ちゃった♪」
「ちょっ! お前までいなくなったらパパとママが寂しがるじゃないか!」
「もういいじゃない、過ぎたことは」
そうそう、こいつは大事なところでいい加減でもあった
もういいや
また生きて家に帰ってこればいいし
さて、仕切り直すか
冒険に行くっていっても行くあてがないんじゃなあ……
僕がどこにいこうか悩んだその時
~アリサ~
”ラタルタの予言”が突然開いたのである
これで2回目だ
「わっ!」
「本が開いた!」
「またか……」
「この本勝手に開くの!?」
「ああ、そうだよ、僕は今回で2回目だ」
「わあ、すごぉい」
どれどれ……
僕は”ラタルタの予言”に目を通した
また文字が追加されている
「少年は妹を連れて旅に出る、ある出来事をきっかけに”少年は次の街に向かう
方角は東”」
方角は東かあ
僕はコンパスを取り出した
東は……あっちだな
僕たちはそのまま東に向かって歩いた
「ねえ、お兄様、友達に別れを告げに行かないの」
「そういうアリサはどうなんだ?」
「私はいいの心配かけちゃうし」
「僕もだ」
友人は今頃どうしているのだろうか?
考えたくはなかった
だって……
そうこうしているうちに夜になった
「もう夜だなそろそろ寝るか」
「お兄様」
「アリサ……やっぱりお前だけでも家に」
アリサが僕の言葉を遮った
「私、お兄様と冒険できてすごく楽しいの!」
この一言が僕の胸を強く突き刺した
「最初は冒険することは嫌いだった、危険だと分かってたし、めんどくさいし
でもお兄様と一緒だからかな?とても楽しいの!」
「そうか……」
「お兄様は私と冒険できて楽しい?」
「そりゃ、もちろん楽しいさ!これ以上の楽しみはないと行っても過言ではないね」
「まあ、うれしい!」
「さっ、もうお眠りアリサ」
「お休み、アリサ」
この子はなんて純粋健気なんだろう
昔からそうだった、僕を慕ってくれる
何かと僕のあとを付いてきたり
僕が熱を出した時はママに
「私がやる!」
といって看病までしてくれた
今もそれは変わらない
僕と一緒に冒険ができて楽しいだなんて
僕は危険な旅に君を巻き込んでしまったのに……
「私、お兄様と冒険できてすごく楽しいの!」
この言葉が頭の中を反響する
アリサは本当なら家にいるべきだった
死ぬのは僕だけでよかったのに……
悩んでいても仕方がなかった
「アリサ」
もう眠ってしまったか
彼女の寝顔は可愛かった
この寝顔を絶対に守らねば
ここまで来たからにはもう後戻りはできない!
僕は覚悟を決め
そのまま眠りについた
「お兄様」
と思ったらアリサが起きてきた
「どうした?アリサ」
「眠れないの、お兄様が眠りのキッスをしてくれたら寝むれるかも」
「はあ!? 何馬鹿なことを言ってるんだ!早く寝ろよ!」
「むぅ~もういいもん!」
アリサは頬を膨らませた
なんなんだこの妹は
人がせっかく感傷に浸っていたのに
前言撤回!ぜんぜん可愛げがない!
もう寝るか
~少年は行き倒れている人を助ける~
1日ほどかかっただろうか
僕たちは”ラタルタの予言”のいうとおり街についた
荷物を背負っているせいで体中が重くて痛い
すると”ラタルタの予言”が開いた
これで3回目
今度は”少年は行き倒れている人を助ける”
と書いてあった
「つまり食料を提供しろと……」
ただでさえ少ない食料と飲み物を提供することには抵抗があった
それはできれば避けたい
しかしこのまま何もしないでいると進まない気がした
僕たちは行き倒れてそうな人がいる路地裏を探してみた
僕たちが路地裏を探して一時間経過したところだっただろうか
「た、助けて……くれ……」
今にも消えかかりそうな男性の声がした
彼の服はボロボロで痩せこけていた
いかにも死にそうな顔をしている
思ったより早く見つかった
「た、食べ物を……」
僕は行き倒れている男性に食料と飲み物を提供した
少年が手渡した食料を男性は美味しそうに頬張る
「あ、ありがとうございます!なんてお礼を行ったらいいか」
「いえ、いいんですよ」
「あなたがたは見たところによると旅をしているようですね」
「はい」
「どこに向かっているんで?」
「行くあてはありません」
「ほお、大変ですな」
「では僕たちはそろそろ行きます」
「ちょっとお待ちなさい」
「はい?」
「これをどうかもらってください!母の形見です」
「大事な母の形見なんでしょう?いいんですか?」
男性が渡してきたものは
綺麗な花のペンダントだった
「アリサに頂戴」
「わかったよ、アリサ」
僕はアリサの首にペンダントをかけた
「ありがとう♪」
「ありがとうございます、お礼以上のものをもらってしまいました」
「いえいえ、喜んでもらってなによりです」
「さて、そろそろいくか」
「どうかお気を付けて」
こうして僕たちは男性と別れを告げた
「ふふふん、ふふふん♪」
アリサが鼻歌を歌っている
よっぽど嬉しいのだろう
僕たちは路地裏を出ようとしていた
これで”ラタルタの予言”の内容はクリアした
ってかこの”ラタルタの予言”はいつ開くんだろう
何かパターンでもあるのか
と僕が考え込んでいる
その矢先
「へいへい、兄貴には頭が上がりやせんぜ」
目の前を二人の男性が歩いていた
怖い見た目だった
どうか無事通り過ぎますように
どうか無事通り過ぎますように
「おいこんなところに人がいるぞ」
「おい!そこのガキ!」
僕の願いは虚しく
僕たちは呼び止められた
「はい?なんでしょう」
「その荷物を置いていきな!命が惜しくなかったらな」
「ひゃっ」
男たちはナイフを突き出してきた
アリサが怯えている
「……分かりました」
僕は抵抗しなかった
当然のことだが僕は体は強くない
下手したらアリサまで殺されてしまう
「へへっ、物分りのいいガキじゃねえか」
「もう行っていいぞ」
はあ、良かった
僕たちはそのまま進もうとした
すると
「おいちょっと待て何だその本は?」
また呼び止められた
「こ、これは……」
「その本も置いていきな! 高くうれそうだ」
「これだけはダメです!!」
僕は咄嗟に声が出た
何言ってるんだろう僕は
下手したらアリサまで殺されるというのに
「ちっ分かったよ、財布には結構な金が入ってるしな」
僕たちは何とか見逃してもらった
それにしても災難だ
これからさきどうしたらいいんだろう?
金も食料もない
まあないものはどうしようもない
そうこうしているうちに路地裏を出た
すると”ラタルタの予言”が開いた
”次の町は北”
この文字だけが追加されている
「北はえっと……」
やべっ!荷物は取られたんだったよな
コンパスがない!どうしよう!
「どうしたの?お兄様?焦っているみたいだけど」
「いやあ、荷物と一緒にコンパスも置いてきたみたいでさ」
「方角は?」
「ん? 北だけど」
「北はあっち」
アリサは北の方角を指差した
「どうして分かるんだ?」
「私、風の動きでどこにどの方角があるか分かるの♪」
驚いた、僕の妹は頭は良かったが
まさかこんなことまで出来るとは……
ハイスペックすぎにも程がある
「とりあえずあっちが北なんだな、教えてくれてありがとうそれじゃあ行くか」
「その前に」
「ん?」
「頭なでなでして///」
何を言い出すかと思えば……
そういやこいつはちょっとでも
いいことをすると
すぐ褒美を欲しがるんだよな
これはまだマシなほうだ
この前なんて一緒に花畑に花摘みに行ったとき
「お兄様、この花あげる♪」
「おおっ! 珍しい花だな! いいのか?」
「うん!」
「ありがとうな、アリサ」
「その前に」
「その前に?」
「キスして///」
「はあ!?」
ってなことがあったっけな
額にキスをしてやった
なぜか大ブーイングだったが
「はいはい、分かったよ」
「はいはいっかーい!」
「そんなこと言うと頭なでなでしてやらないぞ」
「お兄様の意地悪」
「冗談だよ」
僕はアリサの頭を撫でなでしてやった
どうやら満足してくれたみたいだ
ほんと、めんどくさい妹だなあ
「それじゃあ行くか」
「うん!」
僕たちは北へと向かった
~アリサ2~
どれだけ歩いたことだろう
「お腹減った」
「アリサ、もう少しの辛抱だ」
僕たちはまたしばらく歩いた
しかし
「お腹減ったあああああああ」
僕もそろそろ限界だった
「ねえ、あの花食べれるかな?」
道端には花が咲いていた
地面にあるものを食べたいとは誰も思わないだろう
「食べてみようか」
僕たちは食べた
「うわっ! この草まずっ!」
「お兄様、この花美味しい!」
「本当か!?」
「はい、お兄様、あ~ん♪」
「自分で食べるからいいよ」
「もう! お兄様はアリサが嫌いなの?」
「そうじゃないけどさ……さすがにやりすぎだ」
「ふんっ! もう知らないんだから!」
何なんだこの女は!
・
・
・
・
・
・
僕の妹だった
花は中に蜜が入っていて以外と美味しかった
草はまずかったが
僕たちは草花を貪って腹を満たした
いや、満たしてはいなかったのだが
食べないよりはましだった
もう辺りはすっかり夜だった
僕たちは野宿をした
~少年は男を助ける~
「やっとたどり着いたか」
次の街に到着した
荷物を背負っていなかったおかげか
思ったより体は軽かった
”ラタルタの予言”が開いた
これで4回目だ
”少年はこの街である男を助ける”
「またか……」
でも仕方がなかった
何もあてがない僕たちが唯一頼れるのは
この”ラタルタの予言”だけだったから……
僕たちは町を進んでいった
しばらく進むと
目の前の景色を見て戦慄が走った
「何なんだこれは……!!」
目の前には
骸骨やまだ死後時間があまり経ってない死体
脳が飛び出た死体
原型が無い死体
腕や足だけがちぎれて落ちていたり
死にかけの人までいた
建物は荒廃している
「ここ、怖いよう」
「ああ、早く行こう」
アリサに毒を見せてしまった
これだから冒険に連れて行きたくなかったのだ
しばらく進んでいった
すると
「オラっ!!!」
バキィ
「ガハっ」
数人の男が一人の男性をリンチしていた
リンチされてる男の体はボロボロだった
しかし男たちはそれでも容赦なく殴る蹴るをしていた
「やめろ!」
僕は助けるか思考する前に言葉を発していた
「何だ、テメエ」
「一人を皆で虐めるのは良くない! ちゃんと話し合えば分かり合えるはずだ!」
「調子こいたこと言ってんじゃねえぞ!!」
僕は男たちにリンチされた
顔、胸、足
いろんなところを殴られたり蹴られたりした
とても痛い
「やめてえええええ!! お兄様に乱暴しないでえええええええ!!!」
「何だあ?」
アリサの声がした
僕をリンチしていた男の一人がアリサのほうに振り返る
その目つきはいかにも雄が雌を狙っているような目つきだった
まずい!!アリサが危ない!!!
「ぐへへ、嬢ちゃん可愛い顔してるなあ」
「ヒィ!」
「大人の階段登らせてやるよ」
「嫌!!やめてえええええええ!!!」
男の一人がアリサの手を強引に掴む
「や、や、やめろおおおおおおおお!!!!!!!」
僕は数人の男たちを振り払い
アリサの手を掴んだ男に思いっきり殴りかかった
バッキィイイイイイイイイ
「いてええええ!!!」
男は思いっきり後ろに吹っ飛ばされた
僕にこんなに力なんてあっただろうか?
火事場の馬鹿力ってやつなのか?
「大丈夫か! アリサ!!」
「おにいさまああああ」
「よしよし、もう大丈夫だ」
僕はアリサの頭を撫でた
男が立ち上がる
「なんなんだ!! てめえええええ!!!」
「妹に手を出すな! それだけは絶対に許さない!!」
「ちっ! づらかるぞ!!」
「てめえも覚えとけよ!」
男たちは去っていった
「お兄様、かっこよかった♡」
「はははっ、自分でもびっくりだよ」
「あのー」
男性が話しかけてきた
ひどい怪我だ
「助けていただいてありがとうございます」
「いえ」
「この辺りでは見ない顔ですね」
「旅に出ているんです」
「なんと! 冒険者さんでしたか! ですが何も荷物を持っていないようですが……」
「途中で盗賊に脅されて置いてきちゃったんですよ、ははははは」
「そうだったんですか……災難でしたね」
「ええ」
「もしよろしければ私の家に来ませんか?お礼がしたい」
「そんな、悪いですよ」
「いいえ、来てください!私は恩は返さないと気がすまない性格ですから」
「では、お言葉に甘えて」
~クレメンス~
僕たちは男性の家に招いてもらった
「わあ! すてきなおうち!」
男性の家は僕たちの家ほど大きくはなかったが
綺麗に掃除されていて見栄えが良かった
「今、お茶を入れますね、アイタタタ」
「大丈夫ですか?」
「ええ、気にしないでください、ほんのかすり傷ですあっ!名乗るのを忘れてました、私の名前はクレメンスです、クレメンス・ヂアーズ」
「僕はミハエル、ミハエル・レイニード、こっちは妹のアリサ」
「アリサです、よろしくおねがいします」
「こちらこそ宜しく頼むよ」
僕たちがしばらく待っていると
クレメンスさんがお茶を持ってきた
「はい、ミハエルさん、アリサちゃん」
「ありがとうございます」
「しかし、あなたたちのような裕福そうな方がなぜ旅を?」
「それは……」
「お兄様は文字が見えない本を持っていて、その文字が見えます確か”ラタルタの予言”だったかしら?、ねえお兄様」
「あ、ああ」
「なんと!この本の文字が見えるのですか!?確かこの本は選ばれし者にしか文字が見えない本でしたよね」
選ばれし者……?
僕がそれだというのだろうか……?
「この本のことを知っているんですか!?」
「ええ、僕はこの本を記したラタルタ様の大ファンなんです、彼は世界の平和や幸福のために生涯を捧げた人なんですよ」
「へえ、すごい人ですね!興味深いです」
「よければこれ読んでみます?」
クレメンスは本棚から一冊の本を取り出した
その本は”ラタルタの一生”というタイトルだった
「”ラタルタの一生”……」
「ええ! これを読めばラタルタ様の全てがわかります! 著者はリチャード・リナージャ、生前はラタルタ様のボディーガードだったらしいですよ!」
「なるほど、他にもラタルタに関しての書物はありますか?」
「あるにはあるのですが、どれも証拠が不十分だったり、デタラメが書いてあったりします」
「そうなんですか」
「リチャードさんの書はラタルタ様に関してよく詳しく記述されていて、ラタルタ様のそばに仕えているということが見て取れます、証拠も十分ですし」
「証拠とは?」
「あなたが持っているその本ですよ」
クレメンスは僕が持っている本を指差した
「それは世界に一冊しかない本です」
「これが?」
「はい、なぜかというと、誰もその本に興味を示さなかったからでそりゃ普通の人からみたらどこにも文字が書かれていない本ですからね。コピーしようにも文字が書かれてないんじゃ意味がない。人々はこんなのラタルタ様が書いた本じゃないと
信じなかったそうです。信じていたのはボディガードのリチャードさんだけだったみたいです」
「それでこの本は世界で一冊しかないと?」
「はい、ですが驚きました! あなたがこの本を持っているとは」
「家が古本屋をしていて、たまたまこの本が置いてあったんですよ」
「なるほど! しかしなぜこの本を持ち歩いているのです?」
「さっき妹が言っていましたが僕この本の文字が見えるんです、信じてもらえないかもしれないけど」
「私は信じますよ! あなたが嘘をつくような人間には見えない」
「本当ですか!?」
「それで、この本には何が書かれているんですか?」
「この本には僕がこれからするべきことが書かれているんです、それと勝手にページが開くんです」
「へえ、それは面白い!!」
「それに何かこの本の予言通りに自分が動いてるような気がするんですよね」
「ラタルタ様のお導きなのかもしれませんね」
確かにクレメンスさんの言う通りだった
「少年は”妹を連れて”旅に出る」
僕は最初は”妹を連れて”という予言を無視して一人で
旅に出ようとした
でも結局は妹と一緒に行く羽目になった
それだけじゃない
本当なら無視するような人を助けたり
数人の男からクレメンスさんを助けることもできたのだ
これも全てラタルタの予言通りだった
僕が選ばれしものでラタルタに導かれている
なんだか僕はそれにロマンを感じた
「そうなのかもしれません」
「ラタルタ様はターデ教の司祭であり、大予言者です、きっと彼はあなたのことのまで予知していたのでしょう、いやあ、ラタルタ様のお導きを受けるそんなあなたが私は羨ましいです」
「そんな、照れるな」
「これからの旅も大変でしょうが頑張ってください」
「はい! それはそうと、あの男たちは一体誰なんですか?」
「なぜあんな場所を通ったんですか?」
「私の家の周りには市場がないのでそれがある街に買い出しに向かってたところだったんですよ、そのためにはあそこを通らなくちゃいけなくって……普段からああいう輩には気をつけていたんですが、今回は運が悪かったですね、私もあなたみたいに強くなりたいですよ」
「なるほど災難でしたね……あと僕はそんなに強くありません、ただ、妹だけは絶対に守らなくちゃと思ったんです」
「妹さんを愛していらっしゃるんですね」
「そう言われると照れてしまいますね、妹は僕の命よりも大切なものです」
「妹さんもあなたのような兄をもって幸せなんでしょうね」
「えへへ//」
「僕は一人っ子なのであなたたちのような兄妹が羨ましいです」
僕は気になることを彼に聞いた
「クレメンスさん、僕たちはこの街を歩いていたんですが、酷い光景でした、あれは一体なんですか?」
クレメンスは一つため息をついて僕の質問に回答した
「ここはかつて戦争があった場所です、私は戦争で両親を亡くしました、私たちは必死で逃げ回っていました、血を血で洗う醜い戦争でした、私だけがなんとか生き残りましたが、この街に帰ってみると悲惨でした、辺りは死体ばかり……」
「すいません……いけないことを聞いて……」
「いいんです、これは後の世に伝えていかないと行けないことですから」
辺りを重たい空気が流れた
僕はそれを遮るように口を開いた
「僕が旅をしているのはもう一つ理由があるんです」
「ぜひ聞きたいです」
クレメンスさんが興味深そうに聞く
「戦争から逃れるためです、少し前に僕の家の郵便受けに召集令状が
入っていました」
「また戦争が始まるんですか……しかもあなたのような少年まで召集されるなんて……」
「リヴァート国では15歳から軍人になれる制度があるんです」
「リヴァート国! 私の国の近くじゃないですか!!」
クレメンスさんは動揺していた
「こっちにまで飛び火しないといいけど」
「ここはなんて名前の国なんですか?」
「マルタ国です、豊かな国でしたが戦争のせいで資源の大半を失ってしまいました、他の街は復興しているみたいだけど、なぜかこの街は復興してないんですよね」
「この街も復興するといいですね」
「ええ、そう願います、それであなたは戦争を逃れるため、また”ラタルタの予言”を実行するために旅をしていると?」
「ええ、本当は嫌だったんです、僕は冒険なんてしたことないし、危険だと分かってもいたから行きたくはなかった、しかし戦争からも逃れたかった、それで僕はママやパパに反対されてまでこの道を選びました」
ここまで話した瞬間、僕は急に泣き出してしまった
「死ぬのは僕ひとりだけで良かった……だけど妹のアリサまで巻き込んでしまった……本当はこんなはずじゃなかったんです……僕は自分勝手な都合でアリサを危険な目にまで合わせてしまいました……僕はレイニード家の恥です、僕は……兄失格です」
「お兄様……」
アリサが心配そうに僕の顔を覗き込む
「すいません……取り乱ししまって……」
「私お兄様と冒険できてとても楽しいよ♪それにお兄様は私を守ってくれたじゃない、あの時のお兄様、とてもかっこよかった!」
「アリサ……」
「あとお兄様!死なないって2回も約束したじゃない!? 死ぬなんて許さないんだから!お兄様は私と結ばれて永遠に幸せに生きることが決まってるの!」
「なんだそりゃ」
「とにかくいい? 死ぬなんて絶対ダメよ!約束だからね!」
「分かった、約束する」
「指切りして!」
「え?」
「ゆ・び・き・り!!!」
「何でまた……」
「だって2回も約束守らなかったじゃない!」
「それはそうだけど」
「だから今度はちゃんと契約を交わすの」
「分かったよ」
「指切りげんまん嘘付い」
「た」
「てもお兄様は私と結ばれる♪」
「なんじゃそりゃ」
「いいからやって」
「はあ、分かったよ」
こうして僕たちは正式に契約した
もう僕は死ぬことすら許されない
それにしてもなんだよ
「嘘ついてもお兄様は私と結ばれる♪」
って、馬鹿か?
全くこの妹は何がしたいんだか……
「お兄様、何にやけてるの?」
「べ、べつににやけてなんかないよ」
「いや、にやけてたでしょ」
「にやけてないよ」
「にやけてた」
「にやけてない」
「にやけてた!」
「にやけてない!」
僕たちが言い合いをしているとクレメンスさんが割って入ってきた
「あなたたち仲がいいですね! 僕にもこんな妹と兄がいたらなあ」
「でしょ♪」
「はあ」
「ミハエルさんあなたは自分のことを兄失格だと言っていました」
「はい」
「ですがあなたは兄失格どころかむしろアリサちゃんにとっては兄以上だと私は思います」
「うん、私将来はお兄様のお嫁さんになるって決めてるの!」
「ははははっ、全くアリサは」
「ミハエルさん! もっと自分に自信をもってください!あなたならラタルタ様の夢を実現できるかもしれません、私はあなたを応援します!!」
「ラタルタの夢……」
「はい、彼は誰よりもこの世界の平和と幸福を望んでいます!あなたがたならそのラタルタ様の夢を叶えることが出来ると思います」
「そうですか……」
「そろそろご飯にしましょうか!」
「何かすいません」
「いえ、僕は君たちにご馳走したい!助けてもらったお礼もしたいし
君たちを見てるととこっちまで和んでくる、君たちともっと楽しく話し合いたいと思ってね。いいかな?」
「はい! 僕もクレメンスさんともっと話したいです」
「私も混ぜて~」
こうして僕たちは夜まで話し合った
僕の家族や友達のこと
クレメンスさんの家族や友達のこと
戦争のこと
あと余計だがアリサのことも
クレメンスさんは僕たちに寝床まで提供してくれた
何から何まで親切な人だ
僕とアリサは同じ部屋だった
僕は夜
クレメンスさんが渡してくれた本を読んでいた
”ラタルタの一生”
彼は世界でもっとも有名な預言者で
数多くの予言を当ててきたらしい
彼は予言以外に
教会に訪れる信者を慰めたり
また貧しい人たちに寝床や食料を分け与えていたみたいだ
ただ彼は禁欲的で少し頑固な性格をしていて
世間の娯楽、情勢などを執拗に批判したり
食料や寝床を与えた人々に神への感謝や禁欲を強く勧めていたらしい
著者リチャード・リナージャ(ラタルタのボディーガード)は”彼は頑固じゃなければ完璧でした”
と巻末に書いている
ラタルタはすごい人なんだなあと思った
でも僕は彼についていくのは厳しいかな
”肉を食べるな”なんて無理だもの
”ラタルタの一生”を読み終えると
僕はすぐ睡眠に入ろうと思った
アリサに話しかけられた
「何読んでるの?」
「ああ、クレメンスさんが渡してくれた本」
「確かラタルタの一生が書かれてる本だったっけ?」
「ああ」
「ラタルタってどんな人なの?」
僕はアリサにラタルタについて話した
「う~ん、性格40点、行動80点、足して2で割って、彼の総合点は60点ってところかな」
「点数つけっちゃってるし……それに低すぎやしないか?」
「え?100点万点中60点なんだから高いほうだと思うけど」
「はあ」
「だって肉食べれないの嫌だもん!」
「はははっ、僕もそう思う」
僕たちは肉の話で意気投合した
「アリサ、必ず生きて帰ろうな」
「もう死のうとなんて思わない?」
「ああっ、お前のおかげだよ」
「嬉しい、約束よ!」
「約束だ!」
「指切り」
「それはもうしただろう」
「はいはい、分かりましたよーだ」
「はいは一回じゃなかったっけ?」
「もう! お兄様の意地悪!」
僕たちは一晩中笑いあった
真夜中
僕は目が覚める
ん?体が重い
何かが乗っかってるような感覚
幽霊にでもとり憑かれたか?
恐る恐る僕は目を開けた
「!?」
「スー……スー……スー……」
そこにいたのはアリサだった
熟睡している
って
「うわっ!?」
思わず俺はアリサを突き飛ばしてしまった
アリサはベッドの外に弾き出される
「いったああああああ!!!」
アリサは目を覚ました
「もう! 何するのよ! お兄様の意地悪!!」
「意地悪だなんてレベルの話じゃねーだろ!!」
「お兄様が突き飛ばすから目が覚めちゃったじゃない!!」
「それはこっちのセリフだ!!!」
僕たちが口喧嘩をしていると
「どうしたんだ!?」
とクレメンスさんがドアを開けてきた
「聞いてくださいよ! クレメンスさん!お兄様が私を突き飛ばしたんですよ!!」
「それはお前が僕の上に乗っかっていたからだろ!!」
また口喧嘩を始める
クレメンスさんは困った様子だったが
しばらくすると口を開いた
「二人とも静かにしてください!!」
僕たちの口喧嘩が止まる
「今何時だと思ってるんですか? 夜中ですよ! 近所の人たちに迷惑です!!」
と僕たちを諌めてきた
「仲がいいのは結構ですが時と場所を弁えてください!」
「でも」
すかさず僕が口を開く
しかしそれを遮られる
「とにかく! アリサちゃんはお兄さんの上に乗らないこと! ミハエルさんはアリサちゃんを突き飛ばさないこと!いいね?」
「はい……分かりました……」
クレメンスさん温厚そうな人だったけど怒ると意外に怖かった
僕たちは思わず縮こまってしまった
「もう寝てください!」
クレメンスさんは出て行ってしまった
「お兄様……ごめんなさい……」
「いいよ、もう、僕も突き飛ばしたりして悪かったよ」
僕たちは仲直りをした
もっと長引くかとも思ったが
意外とあっさりだった
そして僕たちは再び眠りについた
翌朝
「クレメンスさんお世話になりました!」
「もう行っちゃうのかい? 寂しいなあ」
「僕ももっとここにいたい、いや住みたいとまで思ってますけど、すいません」
「冒険を続けるんだね?」
「はい、僕にはラタルタの予言を実行するという使命があります!!」
「そうだね」
「クレメンスさん! 本当にお世話になりました!!」
「こちらこそ、会話が弾んで楽しかったよ」
「それでは行ってきます!」
「ちょっと待って」
「はい?」
クレメンスさんは僕に大きなリュックを渡してきた
「この中には食料と飲み物が入っているよ、こんなものしか渡せないけど」
「そんな! 悪いですよ」
「受け取ってくれ! 君たちにはぜひ生き延びてもらいたい」
僕はクレメンスさんから大きなリュックを受け取った
「何かあったらまたおいで、いつでも歓迎するよ!ここは君たちの第二の家だからね」
「はい!今度は家族も連れてきます!またいつか!」
「クレメンスさん、じゃあねえ」
アリサがクレメンスに手を振る
クレメンスも手を振り返す
”行ってらっしゃい”
クレメンスさんの言葉を背に僕たちはまた旅を続けた
~戦争~
クレメンスさんの家を出てしばらく経つと
”ラタルタの予言”が開いた
これで5回目
”少年は東に進む”
また東か
しかしいつまでこの”ラタルタの予言”に従わなければならないのだろう
そのことが僕の脳裏によぎったが、今はこの”ラタルタの予言”の通りに進むしかないと
自分に言い聞かし、僕たちは東へ進んだ
2つほど街を通過したが”ラタルタの予言”は開かなかった
そしてようやく3つめの街にたどり着いた
この街につくのに3日はかかったことだろう
「うーん……まだ”ラタルタの予言”は開かないな」
仕方なく僕たちは進むことにした
やけに人の数が少ない
すると目の前に軍服姿の兵士が立っていた
「おい!そこの二人!なにをやっている!!」
兵士は僕たちに話しかけてきた
「僕たちは旅をしているんですが」
「旅だとぉ! ふんっ! このご時勢、よく旅なんてできるな」
「はあ」
「今がどういう状況かわかっているのか!」
「何かあったんですか?」
兵士は声を荒げていった
「見れば分かるだろう! これから戦争をするんだよ! まあいいお前も強制的に軍人になってもらう」
「!!」
僕は慌ててリュックを放り出した
「アリサ! 走るぞ!!」
「お、お兄様、ちょっと!」
「こら! 待て!!」
僕はアリサの手をとり走った
必死に走った
足が朽ち果てるまで必死に走った
走った、ただひたすら走った
走った
走った
走った
走った
走った
・
・
・
・
・
・
しばらくたったころだろうか
兵士は追ってこなかった
「ふう、危なかった」
「もう! お兄様ったら強引なんだから!」
「仕方ないだろ、追いかけられたんだから」
「足が痛いよぅ」
「ああ、すまなかった、ここいらで休憩しよう」
僕たちはしばらく休むことにした
しかし逃げるためとはいえ
リュックを置いてきたのは痛手だった
また草花を食べるのか……
そう思っていると”ラタルタの予言”が開いた
”少年は北へ向かう
そして何かを見つける”
ここから北?
何があるのだろう?
僕はそう思いつつ
足が回復するまでしばらく休んだ
「お兄様、今度はどこに行くの?」
「北だ、行けば何かがあるらしい」
「何かがあるんだあ、楽しみ♪」
「ああ、そうだな」
しばらく休むと足が動くようになった
北に行けば何かがある
僕は期待と不安を胸に秘め
アリサと共に北へ向かうのだった
~見覚えがある景色~
北へしばらく歩いていると
門が見えてきた
開いている
屋敷でもあるのだろうか?
しかし開いているのはおかしい
そうこう考えているうちに
また”ラタルタの予言”が開いた
これで6回目
”少年は門の中に入る”
門は目の前のこの門しかない
「アリサ、門の中へ入ろう」
「勝手に入っちゃまずいよぅ」
「僕たちが探しているものはこの先だ」
僕はアリサを説得し門の中へ入った
しばらく進むと花畑があった
あれ?この風景どこかで見たような
「わあ!お花畑だあ」
「そうだね」
「この場所、私たちがよく行ってるお花畑にそっくりじゃない?」
言われてみれば確かにそっくりだった
しかしなぜこんな場所に花畑なんてあるんだろう
気にはなったが考えても仕方がなかった
僕たちはそのまま先に進むことにした
しばらく進むと
”ラタルタの予言”が開いた
”少年は目の前に大きな木を発見し
その木の根元まで向かう”
目の前には確かに大きな木があった
”その木の根元”?
またなんでそんなとこに行く必要があるんだろう?
まあ細かいことは気にしないでおこうか
そのまま僕たちは大きな木の根元まで進んでいった
「わあ! おっきい!」
「ほんとだ、近くで見るとすごいな」
僕たちは大きな木の目の前までたどり着いた
体長100mはあってもおかしくない程の木だった
この木だったらギネスや世界遺産に載るんじゃないかな
「いつかここでお兄様と結婚式をあげたい!」
「あのなあ」
「ね! お兄様!」
「まあいいだろうな、いつかアリサが素敵な男性を見つけてここで式をあげるといい」
「お兄様! 私の話聞いてた!?」
「すまないが、君とは結婚できない、君は僕の大事な妹なんだから」
「なによ……それ……」
「アリサ、君は美人で可愛い、だから僕よりいい男なんてすぐ見つかるよ」
「お兄様の意地悪」
「別にいじめてるつもりじゃないんだけどね」
「お兄様、目を瞑って」
「どうした?急に」
「いいから」
「はあ、分かったよ」
僕は言われた通りに目を瞑った
しばらくすると
唇に感触があった
って
「おいいいいい!!!」
「うふふ、ファーストキス奪われちゃった///」
「もう、勘弁してくれよ……」
「今はこんなんだけどいつか大人になってお兄様を魅了するんだから♪」
ある意味楽しみだな
まあさすがにその頃になると兄離れしていることだろう
「そうだ! お兄様、ここで花摘みしましょ!」
「そうだな久しぶりにやるか!」
僕たちはこの見覚えのある景色で
花摘みをはじめる
「見てみて!お兄様!」
ああ、なんて幸せなんだろう
「おっ!またいい花見つけたなあ」
ここでアリサと花摘みをしてるとそう感じる
「えへへ//私、すごいでしょ」
いつまでもこの幸せが続いて欲しい
「僕も負けてられないな」
ずっとーーー
「お兄様が私に勝つなんて百年早いわよ」
「何を!」
ずっとーーーーーーーーーー
「あっ”ラタルタの予言”が開いた」
「もう!いいとこだったのに!」
”ラタルタの予言”には新しい文字が追加されていた
”少年はこの木の前で祈りを捧げる”
は?この木の前で祈る?
はたまた何でそんなことをしないといけないのだろう?
しかも何を祈ればいいか書いていない
これじゃわからないじゃないか
「何を祈ればいいんだろう」
「どうしたの?」
「いや、木の前で祈れって……」
「お兄様が1番叶えたい願いを祈ればいいと思うよ!きっとこの木が叶えてくれるんだわ」
「分かった」
僕は木の前に立った
そしてしばらく考えたあと
ある願いが心のそこから湧き上がってきた
なんだろう
この気持ちは
「お兄様、願い事は決まった?」
「ああ、アリサは?この木に願い事をしていたみたいだけど」
「願ったよ! お兄様と結ばれますようにって」
「お前なあ……」
ほんとこの妹のブラコンには困ったものである
「ほらお兄様も願って」
「ああ、わかった」
僕は心のそこから湧き上がってきた願い
それをこの木に祈った
その願いは
・
・
・
・
・
「神様、どうかこの世界が幸福で満たされた平和な世界になりますように」
~誕生~
空が眩しく感じた
「ん?」
私はふと花のペンダントを見た
光っている
「なに? これ??」
それは紛れもなくあの人からもらったペンダントだった
このペンダント、今まで光ることなんてあったっけ?
「うぅ!!!!!」
突然だった
胸が熱い
頭が痛い
気持ち悪い
この3つが同時に来るような感覚だった
しばらくすると私の頭の中に何か映像みたいなものが写された
「あ、あ、あ、やめてえええええええ!!!」
その映像はあまりにも残酷なものだった
たくさんの人が殺され
たくさんの人が飢え死に
それを見て上流階級の人たちが嘲るように笑う
それらの映像がマルチディスプレイのように表示された
その数は一、十、百、千、万と膨れ上がった
「きゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
私はずっとこの映像を見せ続けられた
とても苦しかった
苦しい、苦しい
もうやめて
私に見せないで
苦しい
苦しい
苦しい
苦しい
苦しい
苦しい
助けて……○○……
・
・
・
・
・
どれだけ時が経ったことだろう
相変わらず映像は続いている
私はもうこの映像を見ることになれていた
気がつくとあの木が目の前に立ちはだかっていた
景色にはなんの異常もない
目を閉じるとまたあの映像が流れてくる
「一体私、どうなっちゃったのかしら……」
そうだ……○○は……
確かこの木の前で祈っていたはず!
私はその木からゆっくり視線を降ろしていった
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり
ゆっくり
ゆっくり
ゆっくり
ゆっくり
ゆっくり
・
・
・
・
・
目の前には一人の少年が倒れていた
少年の体はすっかり衰弱しきっていた
「そんな……まさか!!!」
私は少年のそばに駆け寄る
「○○、起きてください!!!!
○○!!!!」
少年は返事しなかった
「○○!寝たふりしないでよ!」
少年は返事しなかった
「きつい冗談はやめてよ!!」
少年は返事しなかった
「いつまで寝たふりしてるのよ!おいていくわよ!」
少年は返事しなかった
「こんなとこで寝ちゃ風邪ひくよ!」
少年は返事しなかった
「○○、返事して!」
少年は返事しなかった
「○○、私まだ○○に花飾りプレゼントしてないの」
少年は返事しなかった
「○○は私のプレゼント、楽しみにしてるって言ってくれたよね?」
少年は返事しなかった
「待っててね、○○、必ず作ってあげるから」
少年は返事しなかった
「そういえば、私、最近料理が上手くなったのよ」
少年は返事しなかった
「最初はよく失敗して○○と○○に怒られてたっけ」
少年は返事しなかった
「でももう失敗しないから大丈夫よ」
少年は返事しなかった
「いつか○○にもご馳走してあげるね」
少年は返事しなかった
「○○と冒険できて楽しかった」
少年は返事しなかった
「あの人、元気かな?」
少年は返事しなかった
「花のペンダントもらえて嬉しかったなあ」
少年は返事しなかった
「そういえば私が襲われそうになったときがあったよね」
少年は返事しなかった
「あの時私を助けてくれてありがとう」
少年は返事しなかった
「あの時の○○、かっこよかったあ」
少年は返事しなかった
「喧嘩もしたっけ、まあ私が悪かったけど」
少年は返事しなかった
「○○、やさしくていい人だったね、でも怒ったときは怖かったなあ」
少年は返事しなかった
「彼も私の好みだけど○○にはかなわなかったわ」
少年は返事しなかった
「○○がいなくなったら私の旦那は誰になるの?」
少年は返事しなかった
「私、絶対に○○のお嫁さんになってやるんだから」
少年は返事しなかった
「○○の意地悪なところも含めて私は○○が大好きよ」
少年は返事しなかった
「私とのファーストキスどうだった?」
少年は返事しなかった
「花摘み、楽しかったね」
少年は返事しなかった
「また二人で一緒にお花畑にいこうね」
少年は返事しなかった
「○○」
少年は返事しなかった
「○○」
少年は返事しなかった
「○○」
少年は返事しなかった
○○
少年は返事しなかった
○○
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「○○……約束……したよね……僕は死なないって……必ず二人で生きて帰るって……!!指切りまでしたのに……!! 私と永遠に結ばれるって約束したよね……
私……信じてたんだよ……○○の嘘つき!!! 裏切り者!!!! バカ!!!!!!」
私は泣いた
人生で一番泣いたかもしれない
どうして○○がこんな目に合わなければいけないんだろう
どうして私がこんな悲しい思いをしなければならないんだろう
私の中に憎しみが湧き上がってきた
その憎しみはある人物に向かっていた
「○○!! ○○を返して!!! ○○!!!!」
○○がこの本と出会わなければ○○は死なずに済んだのに
○○がこの本と出会わなければ私は悲しまずに済んだのに
○○がこの本と出会わなければ私は花飾りを○○にプレゼントできたのに
○○がこの本と出会わなければ私は○○に料理をご馳走できたのに
○○がこの本と出会わなければ私は○○と冒険を続けられたのに
○○がこの本と出会わなければ○○は私と結ばれていたのに
○○がこの本と出会わなければ○○は私と花摘みできたのに
○○がこの本と出会わなければ○○は私と……
○○がこの本と出会わなければ……
○○がこの本と……
○○が……
○○……
○……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
……
「○○がこの本と出会わなければ私と○○はずっと一緒にいられたのに」
「○○!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私の怒りと憎しみの声だけがお花畑に虚しく響いていく
ふと少年のほうを見ると
本を握っている
私はこの本と少年を引き離した
「こんな本!! 燃やしてる!!!」
私がそう言った瞬間
本が開いた
「え……?」
私は開いた本のページを見る
本にはこう書かれていた
「”おめでとう 君が産まれた”」
ーミハエル編ー
完
ここまで読んで下さり、ありがとうございます
随時更新、編集していく予定です
物語の設定に疑問や突込みがあれば
遠慮なく指摘してくださると助かります