はじまり。
しょっぱなからグロテスク気味かもです。苦手な方はバックお願いいたします。
「なに、これ……」
不自然なほど赤い空。辺りに響くギャアギャアという耳障りな鳴き声。息を吸う度に広がる金臭いにおい。どれもこれも見覚えのないものだ。
じりと後ずさった足元でがちゃりと不快な音が鳴り、なにかが足元に転がってくる。まとわりつくような、その違和感に足元に目線を落とした。
「ひっ」
足にこつりと当たったのは目を見開いた頭部だった。女性のものなのか長い黒髪の合間から無機質な瞳が虚空を睨み付けている。足に張り付くべたつく黒髪に慌てて足を遠ざければ、支えを失いごとりと頭が傾く。しかし、見開いたままの瞳はぎろりとこちらを向いた気がしてまた一歩後ずさった。
ほとんど何も考えられないまま、辺りをせわしなく見渡す。
足元に落ちる薄汚れた布のかたまりから覗く肌色。まるで壊れたロボットのように不自然な形で地面から伸びる手足。よく見ればギャアギャアという鳴き声の正体らしき鳥がついばんでいるのは、ぎとぎととした油にまみれた髪の毛で。
「い、や……」
どれだけ後ずさろうと目に見える現実は変わらない。何度目をつむろうと目に映る景色は変わらない。
――――人だ。
まるでゴミのように積み上げられた山は全てニンゲンだったもの《・・・・・》だ。この足元にあるものですら。全て死体の山。血のにおいや腐敗臭がしないことが不思議なほどに積み上げられたヒトであったモノ。
「なんなの、これ……!」
高校からの帰り道。ただの瞬き一つで変わってしまった世界は、命の気配すら感じさせず少女を迎えた。