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夢からの守り人  作者: kanisaku
8/22

守られる者

少し遅くなってしまいました。最近思ったことですが、会話シーンが長くて、書いている自分でも少し暇だと思っています。話しがまとまってきているので、次回からは少し戦うシーンが増えるかもしれません

 狼の妖怪「グオオー!」

 九月「うあああ!!」

斬られた方腕から血を流し叫ぶ妖怪と、裏切られた目から涙を流す九月。投げやりになりながらも戦う九月は、さらに妖怪へ斬りかかる。

 九月「なんで!…阿求!!」

刀を振る度に妖怪は傷つき、後ろに一歩、また一歩と下がる。

 狼の妖怪「ぐぅ!がああ!」

残った片手で刀を掴み、九月の右肩に牙を立てて噛みつく。

 九月「があ!!」

腕力では妖怪の方が人間である九月より上であり、刀で斬ろうにもその刀は妖怪に掴まれ、振ることができない。完全に攻撃と逃げる術を奪われてしまった。

 九月「~~~!!!うわおおー!」

噛まれている肩を無理矢理後ろに下る。ギチギチと鈍い音と地面に血がボタボタと落ちる。そして、ついに食い千切られるという形で、妖怪から離れる事に成功したが、その痛みは尋常ではなかった。

 九月「ぁぁああっ!ううううぅぅ…」

持っていた刀を地面に落とし、右肩を左手で覆う。右腕に力を入れることもできない状態でも、妖怪は容赦なく襲ってくる。

 九月「!っラァァ!!」

残った左手で腰に差していたもう1本の短刀燕返しを投げつけ、妖怪の喉に命中させる。妖怪も痛みで怯み、後ろに下がる。

 妖怪「ぐうっ、がああっ」

短刀が刺さったままで上手く声が出せず、息と一緒に漏れるような小さな声が聞こえる。その隙に左手で落した刀を持ち直し。

 九月「死ねええええ!」

殺意を持って妖怪に刀を振り下ろし、斬る。

今は、阿求を守る為の戦いじゃない、この妖怪に、自分が喰われてしまわない為、吐き所のない怒りと悲しみをぶつける為に戦うのだ。今までにないほどの激しい攻防、自分と妖怪が居た場所の地面には血が飛び散り、その激しさを物語っていた。

振り下ろした刀は妖怪の最初に斬った方の腕とは反対の腕を切断する。そして間髪いれずに喉に刺さったままの短刀を引き抜き、逆手持ちにして妖怪の喉を切り裂く。

ここまですると妖怪の喉も完全に使い物にならなくなったのか、声一つ上げず苦しむ表情をして倒れるだけだった。

 九月「はぁ…はぁ…。まだだ…死んでない、コイツは死んでない!こんな奴弱点突かなくても殺せる!」

返り血で顔と服を汚しながらも、肩の痛みを抑え妖怪に何度も刀を突き刺す。

刀を刺す度に鮮血が噴き出て、ビチャビチャと自分にかかるが、そんなものはどうでも良かった。

只々殺す。


しばらく経ち、内庭の中心辺りで、完全に妖怪が死んだと確信した。体には何十か所という切り傷ができ自分の肩から流れる血と妖怪の血が混ざって血の水溜りになって、自分は妖怪だったものの上に仰向けに倒れる。

 九月「痛い…痛い…」

肩の血は、最初より出血しなくなったが未だに痛む。そんな時に、自分を手当してくれる阿求の姿が思い浮かぶ。しかし、笑顔で接してくれている彼女の表情も、さっきの紫との会話で

 紫「随分惨たらしい倒し方…いや、殺し方をしたわね」

 九月「なぁ…アンタの言ってる事が本当なら、俺はどうすればいい…」

 紫「さぁね…貴方が元の生活を送りたいというのなら、返してあげないこともないわ。利用されたままで良いなら、このまま妖怪と戦う事ね」

 九月「…俺は、元の世界に戻りたい…。これ以上皆に心配をかけたくない」

 紫「ふーん…。でも、もちろん守り人としての役目は」

 九月「俺は守り人じゃない!!!」

上体を起こしながら紫に怒鳴る。が、それが右肩に響いてうずくまる。

 紫「困ったわねぇ…」

 九月「兎に角、俺はもう阿求を守らない…どうしても妖怪と戦えっていうなら、アンタが戦えばいいだろ!」

 紫「私も毎晩ここに来る程暇じゃないわ。それに比べて、いつも寝てばかりいた貴方の方が、暇でしょう?」

 九月「冗談じゃない。俺は帰る」

 紫「どうやって?」

 九月「朝になれば起きれる。それまで待ってる」

 紫「あら?私の力をさらに使えば、貴方を目覚めさせること無くここに留めておくことだってできるのよ?」

 九月「俺にどうしっていうんだ。このまま、死ぬまで戦い通せっていうのか!?」

口元を扇子で隠し、困った表情をしていた紫だったが、その扇子を袖にしまって。今までに無い程の威嚇するような表情で言う。

 紫「貴方の命なんてどうでも良い。ただ、彼女を守るという事だけをしなさい。それすら嫌だというなら妖怪と戦って朽ち果てるといいわ」

 九月「!?…。お前ぇー!!」

自分の命がどうでも良いという事を言われた事に怒りを隠せず、刀を振り上げて紫に飛びかかる。

しかし、紫は後ろに作った別空間への入り口ののうなものの中にスッと入り込み、姿を消した。

 九月「ちぃ!逃げるのかよ!随分臆病だな!」

右肩の痛みはまだ収まっていない。それでも、紫に一発でも攻撃を当てる為に辺りを見回す。

すると、後ろから一発の光の弾が飛んできて自分に当たり、火花を散らしながら自分を吹き飛ばした。

 九月「うぐぅ! こ、これは弾幕…?!」

 紫「あら、知っていたのね。まぁいいわ。あまり私の機嫌を損ねないでちょうだい。今日はもう帰してあげるけど…次聞き分けのない事を言ったら…」


最後の言葉を聞き終える前に意識が遠のき、目が覚めた。時刻は朝の6時。

嫌な事を聞いてしまった。自分は只利用されていただけなのだと…。

夢の世界、幻想郷と呼ばれる場所に突然呼び出され、負けて殺されるかもしれない戦いを強いられ、自分とは全く関係の無い少女を守るだけ。

 九月「…!」

しばらくして、看護師に聞くと自分は明日退院だそうだ。それまでにじいちゃんや太一に、学校生活を続けるという事を言わなければならないが、お金を持っているわけでもなく、携帯電話も無いのでどうしようもない。親が持ってきてくれてた本を読み漁って、一日の時間を潰す。

とても長く感じた一日だったが、それも過ぎてしまえば呆気ないもので、気づけば夕方の5時半にはなろうとしていた。

 九月「…」

紫と名乗る妖怪の言葉が、頭の中をグルグルと回る。「騙されている」んだと。

 九月(まてよ…アイツの言う事は本当なんだろうか、自分を妖怪だと名乗っていたのは本当だとして、本当に阿求が自分を利用しているのか? 確かめてみるか…)

ベッドに横たわり、布団をかぶって目を瞑る。


 九月「阿求…」

縁側からは、必ず塀を見るようにここに立っている。そして後ろには阿求の部屋へ通じるふすまがある。

振り向いて襖に手をかけた瞬間、塀の奥から、妖怪の気配を感じてバッと後ろを振り向く。

 九月「…この気配…。妖怪か」

すると自分に気づいたのか、阿求が襖を開けた。

 阿求「九月さん、どうしたんですか?今日はやけに早いですね」

 九月「今はそれどころじゃない。隠れて、早く!」

九月の切羽詰った声に、困惑しながらも部屋の奥に隠れる阿求。それを見送って襖を閉め、刀を鞘から抜出し、構える。

 九月「…!」


5秒、10秒…30秒。どれだけ待ったかは分からないが、一向に姿を現さない。少し不思議に思いながら、縁側を降り、ジリジリと塀に、ゆっくりと近づいていく。

するとその時、九月のすぐ目の前に、奇妙な妖怪が降ってきた。

 九月「何だ!?」

 妖怪「ここかぁ!?稗田家の娘が居るという屋敷は!」

突如、空から現れた妖怪。四本の腕に不釣り合いな一本足で立ち、人間のように頭があるが奇妙な事に、頭の両側に一つずつ顔のパーツである両目、口、鼻が付いている。

 九月「何なんだこのカカシみたいなのは…」

 谷夜叉「俺はたに夜叉やしゃ、俺の弱点を知っている稗田の人間とそれが書かれた書物を取りに来た。お前も人間だろ…?稗田を喰う前にお前を喰ってやる!」

 九月「やってみろよ!俺だって阿求に聞きたい事があるんだ。喰われてたまるか!」

 阿求「…九月さん」

 谷夜叉「?…お前が稗田の人間だな」

後ろを振り向くと阿求が襖を開けて出てきている。そして谷夜叉は自分をそっちのけで、片足とは思えない速度で跳ぶように走り、阿求に襲いかかる。

 九月「速い!?」

とっさに谷夜叉に、腰に差した短刀を抜き投げる。

 谷夜叉「ぐっ!」

短刀は見事、谷夜叉の背中に命中。深く刺さり、谷夜叉の動きを止めた。谷夜叉の頭の側面に付いている二つの顔は、揃って同じ苦痛の表情を浮かべている。

 九月「阿求!逃げろ!」

 阿求「は、はい」

 谷夜叉「逃がすかぁ!」

逃げようとする阿求に飛びかかる谷夜叉の所まで走り、今度は刀で脚を横から斬り、切断する。

 九月「阿求を喰う前に俺を殺してからいけ!どうせ捨て駒みたいな命だ!かかって来いよ!」

 阿求「捨て駒…?」

逃げようと部屋に入りかけた阿求は、九月の一言で立ち止まった。

 九月「あぁ捨て駒だ。魂をこの世界につながれて、こんな化け物相手に阿求守る為に命を賭けなきゃいけない捨て駒!」

 阿求「どうしてそんな事を」

一本しか無い脚を斬られた谷夜叉は、斬られた脚の痛みをこらえながら背中を短刀を引き抜く。しかし、脚を斬られたのはかなりのダメージだったらしく、まともに動くことができない状態になっていた。その内に、阿求と話を進める。

 九月「紫とかいう妖怪から聞いた。守り人の家系なんて、俺が9代目だなんて全部ウソだってことを!この世界で殺されたら、外の世界での俺がどうなるかも説明してくれなかった…。どういうことだ!」

 阿求「違うんです九月さん、騙すつもりなんて無かったんです」

戸惑うように、必死な表情で阿求は訴えかけてくるが、自分が今信じられるのは、紫からの言葉だけだ。

 九月「じゃあ何で、俺に嘘をついて…」

 阿求「貴方が、突然この世界に連れてこられて、困惑してしまわないようにと…。色々考えたのですが、代々受け継がれてきたといえば、聞こえがいいと思いまして…」

 九月「…」

 阿求「本当に、騙す気は無かったんです…。九月さんがこの世界に慣れてきたら話すつもりだったんですが。それに、私は九月さんを捨て駒だなんて思っていません、九月さんは九月さんです。絶対に捨てられない、大事な人なんです!」

 九月「…」

九月の睨みつけるような表情は変わらなった。自分の近くで未だに倒れ、這ってでも逃げようとする谷夜叉に刀を突き刺す。

 谷夜叉「ぎゃあああー!!」

 九月「許さねぇ…。絶対に!許さない!」

 阿求「九月さん…」

 九月「あの紫とかいう妖怪、絶対に許さねぇぞ!俺に阿求を疑うように惑わせやがって!次会ったら絶対に切り殺してやる!」

自分に刺さった刀を掴み、引き抜こうとする谷夜叉に対し、さらに深く刀を刺し込む。そして庭に谷夜叉の叫びが響き渡る。

 九月「阿求…コイツの弱点ってどこだ?」

 阿求「えっと…、確か、心臓に小さい石を入れていて、それが弱点ですので、取り出せれば」

阿求が言い終わる前に、谷夜叉から刀を抜き出した九月は、今度は心臓があると思われる左胸に刀を突き刺した。

 谷夜叉「ぐっ!ああああ!!」

 九月「夜叉なんて大層な名前があるのに、ずいぶんと弱いな」

そんな事を言いながら、なんの躊躇ちゅうちょも無く谷夜叉の傷口に手を突っ込み、中を探る。

 谷夜叉「ぎゃああ!止めてくれ!死ぬ!死ぬぅぁぁぁ!!」

 九月「阿求を狙ってきたからには、死んでもらうしかないんでね」

ドバドバと血が溢れる中、それも気に留めず中を手探りで谷夜叉の内蔵をかき回す。

そして、ついに石を掴んだらしく、突っ込んでいた手を空高く振り上げる。

 谷夜叉「はぁっ。か、返せ…」

谷夜叉の言葉も無視して、取り出した石を宙に投げる。そして、足元に落ちていた短刀を石に投げつけ、刺し、破壊する。

 九月「誤解が解けたんだ。阿求に手出しはさせない」

 谷夜叉「う、うぅ…」

力無く目を閉じた谷夜叉は、溢れ出た血と一緒に消滅していった。


その場にへたり込む九月の元に、心配して阿求が駆け寄っていくと、九月は安堵の表情を浮かべていた。

 九月「はぁ…なんか倒したらスッキリした。何か吹っ切れたような気もする」

 阿求「今日も、守っていただいてありがとうございます…」

 九月「…もう一回聞いておくけど、正直に答えてね…?阿求は、俺を利用しようとしてる?」

 阿求「私はさっき言いましたよ?九月さんは、私の大切な人です。そして、私の命の恩人です。青鬼や、いろんな妖怪たちから私を守ってくれました。どんなに傷ついても、それは変わりませんでした。だから、私が貴方に守られる者である限り、私は貴方を裏切ったりはしません」

薄らと目に涙をためる彼女を見て、安心した。彼女は嘘をついていない。証拠や信用する理由は特に無い、でも彼女がそう言っているのだから、そうなんだろう。

自分はちょっと戸惑っていたんだと思う。対峙する妖怪に話しを持ちかけられ、告げられたのが阿求の事、そして内容も、自分が操られているというものでかなり驚いていた。

 九月「ゴメンね、阿求…変な妖怪に騙されてたみたいだ。阿求が俺を利用してるって聞いて…」

 阿求「そうだったんですね…その妖怪、名乗ったりしてましたか?」

 九月「確か…紫って名前だった」

 阿求「え…?紫…さん?」

阿求は、ばつが悪そうな顔をし、ため息をつく。

 阿求「紫さんは、私の知り合いの妖怪です。いつも誰かをからかって、遊んでるような妖怪ですよ。でも、あの人の力が無いと幻想郷が成り立たないのが、偶に傷ですかね」

 九月「そうだったのか…でも今回仕掛けたのって、俺があの怒ったままで阿求をほったらかしにしてたら、どうしてたんだろう」

 阿求「多分、それは無いと思いますよ。私達の家系は、幻想郷では大事な役割を担っているので、私が本当に死んでしまうような事まではしないでしょう。本当は貴方の事を知った上で貴方を騙しにかかったんだと」

 九月「そうだったのかー。随分と厄介な事をするもんだね」

 紫「厄介も厄介、大厄介のつもりよ?今回のは、本当に関係切れるか阿求が殺されるかもしれないって予想してたわ~」

地面に座る二人の横に、いつの間にか紫もニコニコしながら座っていた。

 九月「あ!紫…お前」

 紫「こんな冷たい場所じゃ無くて部屋の中で話しましょう?少し寒いわ」

 阿求「それもそうですね、行きましょう九月さん」

 九月「うーん…。うん、そうだな」

場の雰囲気に流されながら、に落ちない気持ちと一緒に阿求に連れられて部屋に入る。


部屋の真ん中に座る紫と、それに向かって二人並んで座る阿求と九月。紫はゆっくりと話を始める。

 紫「今回の事だけれども、反省してない訳じゃないのよ?私だってあの後少し話しを盛りすぎたかなぁなんて思ったりして、その晩は眠れたけど昼寝もできないくらい心配したんだから」

 九月「寝てるじゃん」

 阿求「バッチリ寝てますね」

 紫「…とりあえず、私もしたことに反省はしてるし、何より貴方達の絆?友情?…が深まって何よりだわ」

 九月「阿求じゃなくてコイツに利用されてるんじゃないかなー俺」

 阿求「コイツとは失礼ですよ?これでも幻想郷には欠かせない存在なんですから」

 紫「これでもって言葉も失礼よ阿求。とにかく、九月。今回私がした事は、謝るわ。それと…」

 九月「?」

 紫「貴方に一つ聞きたいのだけれど、初代守り人になる気は無いかしら?」

 九月「え?初代…守り人?」

 紫「そうよ、阿求が考えた作り話とはいえ、中々納得できるシナリオだったわ。代々稗田を守り続ける役割の人が居れば、私も毎晩式をそこの庭に放さずに済むわ。丁度いいの、どうする?」

 阿求「私から言えば、あまり良いものではありませんね…九月さんにも九月さんの世界がありますし、私なんかの為に、九月さんの子供まで危険にさらすというのも」

 九月「つまり…俺が初代守り人で、俺に子供が出来たらその子が二代目ってことだよね?」

 紫「そうよ、でも…ちょっと問題があるわね」

 阿求「問題?」

 紫「貴方は、特別綺麗な顔つきでもなければ不細工という程でも無く、100点で言うなれば57点くらいなの。それでも十分結婚のチャンスはあると思うのだけれど…」

 阿求「無理に子孫で固める必要もないんじゃないですか?」

 紫「阿求、物事は形が大事よ。只強いだけの人に守らせても、統一感の欠片も無くて不恰好じゃない。代々守り続けてるって形式ですれば、妖怪たちも多少攻め込みにくくなるでしょう。まぁ、気が遠くなるような時間がかかるけど…ね」

 九月「…阿求は、俺が守るって言ったんだ。外の世界もあるけど、俺は阿求と一緒に居たいんだ。紫、その話乗ったよ。俺は初代守り人になる」

 紫「そう…じゃあ、これを貴方に上げるわ」

紫は袖から小さな、消しゴムサイズのお守りを渡してきた。

 九月「これは…お守り?」

 紫「只のお守りじゃないわ。私は昨日、貴方に言ったわよね?貴方が幻想郷で死ねば外の世界でも死ぬ事になると…。あれは本当よ。だから、その為の保険みたいな物ね」

 九月「保険…?これ持ってると魂が二つに増えるとか?」

 紫「そうじゃないわ。貴方がこの世界で、本当に死にそうになった時、このお守りを付けていれば、魂を強制的に外の世界の貴方の体に戻すことができるわ」

 九月「一回だけ死なないんだね。少し安心した…でも、二度目は」

 紫「無いわね。これ1個作るのもかなり大変なのよ。私が寝る間も惜しんで作ってるんだから、今はそれ一個で我慢しなさい」

 九月「ふむ…」

 紫「首に巻いておくのが一番いいのかしらね」

 九月「そうか、じゃあそうておくよ」

 紫「わかった…。もう時間も遅いわね。九月も元の世界に戻りなさい。私は私で準備をしておくわ」

 阿求「九月さん、また会いましょう」

 九月「ああ。またね」


阿求と別れを告げると、意識が宙を浮くような感覚に包まれ、気づけば元の世界に戻り、病室のベッドで横になっていた。時計に目をやると、時刻は8時半くらいを指していた。

阿求との決意を新たに守り人として幻想入りする九月。しかし、彼を待ち構えていたのは、心も凍る猛吹雪だった。


次回、夢からの守り人『凍てつきからの挑戦』


次回も暇つぶし感覚で読んでください。

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