修練の弾幕
土曜日には投稿すると言っていましたが、遅れてすみませんでした;
理由は色々あるのですが、日にちを守れていないのは本当にもうしわけないです。
では、今回も暇つぶし程度にどうぞっ。
目が覚めると、阿求の部屋の布団で寝ていた。横を見ると、自分に気づいた阿求がよってきた。
阿求「大丈夫ですか?心配しましたよ…」
九月「あぁ、ゴメン阿求…妖怪、逃げちゃった…。しかも全然勝てそうに無かった」
阿求「九月さんが無事なら良いんです。今は治療に専念してください」
九月「ゴメン…本当に、ゴメン」
阿求「でもおかしいんですよ。表面の傷はそんなに無いのに、傷の内側がかなり酷い事になってます」
九月「ボロボロなの?」
阿求「うーん…ボロボロ。とまでは行かないですが、傷は大きいです。そんなに長い時間は掛からないと思いますが、よくて1日ほどかと…」
九月[1日か…またアイツが来たらどうしよう」
阿求「ところで九月さん、昨晩現れた妖怪は、どんな姿をしてましたか?」
九月「確か…体中が赤茶色?っぽい色の毛で覆われてて、顔に大きな目が一つだけあって、人の形をした奴」
阿求「…赤茶色の毛…一つ目…。わかりました。その妖怪の正体は赤目です」
九月「赤目?…随分率直な名前だね」
阿求「下手に名前を付けるより、この方が人には呼びやすいですから。でも、厄介な妖怪に狙われましたね…」
九月「そんなに厄介なの?」
阿求「私の前の前の代、7代目の時から、人里付近で悪事を働く妖怪として有名です。知能が高くて、妖怪としての力が強く、大抵の妖術は使えてしまう。その上、人を喰うということで、今まで妖怪退治を専門にしている人達から何度も退治の対象になっていますが、悉く返り討ちにするか逃れています」
九月「そんな奴が相手だったのか…でも、一応一回は攻撃当たられたから、マシな方かな…でも次はそう上手くいくかどうか…」
阿求「え、攻撃を当てれたんですか?」
九月「そうだけど…」
阿求「どこに当てたんですか?!赤目の弱点は未だに分かっていないんです」
九月「そうなの?えっとー、右肩と背中の間くらいかな?ほら、丁度、肩甲骨辺り」
阿求「そうですか、ありがとうございます。すぐに書物に書いてきます。あ、それと…」
九月「?」
阿求「そろそろ呼んでおいたお医者様が来るころです。その人がくれば、1日もかからずに傷は治ると思います」
九月「そうなんだ。安心した」
阿求が部屋を出てから数分後、使用人が二人の女性を部屋に案内してきた。
片方は、白衣を着て赤と青の帽子を被り、はたまた赤と青を基準とした服を着ている女性。身長は慧音と同じくらいの高めの身長。
そしてもう一人の女性は…ウサギの耳?を頭につけた自分と同い年に見える女の子で、救急箱を持っている。
永琳「医者の八意永琳よ。こっちが助手のうどんげ。貴方が九月ね?阿求から聞いてるわ。さっそくだけど、コレを飲んでちょうだい」
和紙に乗せられた薄緑の粉を水と一緒に飲み込む。粉っぽさが口の中に残って少し咳き込んでいると、ウサギ耳の子が説明してくれた。
うどんげ「その薬を飲めば1時間後には動けるようになるわ。でも、傷が治ったわけじゃないから気を付けてね」
九月「あぁ、わかった」
阿求「あ、永琳さん。結構早かったですね。それで…九月さんは…」
襖をあけた阿求は永琳に少し驚くが、すぐに容体を確認する。
永琳「外傷は殆ど無いわ。けどおかしいわね。こんなに痛がっているのに傷が殆ど無いなんて…どんな攻撃だったのかしら。殴られたとか?」
九月「いえ、なんか…光ってる玉見たいなの飛ばしてきて、当たったら凄く痛いんです。速いし重いし…2回当たっただけでこのザマです。」
永琳「光の…玉…。もしかして」
永琳は手を広げ、その上に赤目が使っていたものと同じ光の弾を作り出す。
九月「!それです!それを使ってきました!でも、なぜ永琳先生もそれを」
永琳「弾幕よ…。妖怪同士なんかが暇つぶしで使う、戦いの道具ね。殺傷能力は無いけど、人は例外よ、当たりどころが悪ければ、最悪死ぬわ。でも、2回だけでそれはおかしいわね…何か細工がしてあるとしか」
九月「細工ですか…」
阿求「妖力と弾幕を合わせて撃ったのでは?赤目が元々持つ妖力は強力で、弾幕にそれを融合させて撃ったとするなら、この威力は頷けます」
九月「あ、あと、その弾幕が外の柱に当たったんだけど、全然傷ついてなかったんだけど」
永琳「それは弾幕の特性よ。生きているモノにしか威力を成さないの」
九月「そうか…だからか」
うどんげ「でも、どうするんですか?その妖怪、今夜も来るんじゃ」
九月「その時まで、対策をしておかないと」
永琳「目には目を、弾幕には弾幕を…といいたいとろこだけど、貴方は使えるのかしら?」
九月「いや、生憎刀を振るくらいしか」
永琳「そっか…じゃあ、弾幕を避ける練習でもしましょう。避けるくらいならできるでしょう」
九月「はい」
永琳「と言っても、練習は午後からよ。今が11時くらいだから、4時くらいから始めましょうか」
しばらくは布団の中で休み、永琳に言われた時間になったので、いつの間にか着ていた寝間着から横に置いてある自分の侍のような服に着替える。
永琳「私は戻って仕事をしてるから、うどんげ、また怪我をしない程度に相手してあげなさい。上手く避けられるようになったら、徐々にレベルを上げていくといいわ」
うどんげ「はい、わかりました」
永琳が屋敷を去り、うどんげと一緒に広い庭に出る。
うどんげ「最初は軽くいきますよ~。無用な事はせずに避けるだけをしてくださ~い」
九月「おーう」
うどんげが手を前に構えると、何もなかった筈のうどんげの周囲から、数十個という弾幕が現れ、どんどんこっちに飛んできた。速度でいえば赤目の方がまだ速いが、それをカバーするくらいの数だった。
九月「!?そんなに来るの!?うあぁ!」
横に走ったりしゃがんだりして避ける。ギリギリ当たりそうになる時もあったが、それも身体能力の上がるこの世界なら避けれることができた。
うどんげ「結構避けますね…なら、もっと量を増やして」
九月「待って、量を増やすんじゃなくて、もっと速く撃ってくれない?量は全然多いけど、赤目の弾幕はもっと速かったんだ」
うどんげ「わかりました。では、どんどん速度を上げていくので、赤目と同じくらいの速度になったら言ってくださいね」
九月「了解」
うどんげ「いきますよ~っ」
指を、ピストルを構えるようにして向けてきたうどんげは、さっきよりもかなり速い速度の弾幕を飛ばしてきた。
九月「おぉっ!?」
顔の横を掠る程危なく、血は出ないにしても摩擦でかなり熱い弾幕が何発も飛んできた。
九月「っとっと!危ない!もうちょっと速度落として!」
うどんげ「そんなに速いですか…?なら少し落としますね」
かなり調整が効いたようだ。速度は赤目の弾甘くよりも少し、ほんの少しだけ速く、避けるのに慣れるには丁度良い速さだった。
九月「大丈夫、かなり避けやすく思えてきた。もっと速度上げてもいいよ。でも次は、自分の攻撃もさせてもらうからね」
うどんげ「そうですね…避けるだけじゃ意味ありませんもんね。どんどん来てください」
九月「でも、本物じゃ危ないな…鞘でいい?」
うどんげ「もちろんです」
刀をそばに置き、鞘を持ってうどんげの元まで走る。
うどんげ「わっ、速い…」
九月「うおおおお!」
鞘を当たらない程度に振り回しながら、弾幕を避け続ける。
それから1時間くらい経っただろうか。夕日が内庭を焼き、縁側に座る自分とうどんげの影を長く伸ばす。
うどんげ「凄いですね。こんな短時間でここまで避けれるようになるなんて…」
九月「うどんげの弾幕調整が丁度良いからだよ。本当に、ありがとう。ただのけが人の自分なんかの為に、ここまで手伝ってくれて」
うどんげ「いえいえ、人助けは医者と、その助手の役目ですから…。倒せるといいですね。赤目」
九月「そうだね…。君の協力があったんだ。きっと勝ってみせる…次は負けない」
うどんげ「頑張ってくださいね、応援してます。それじゃ、私はそろそろ帰りますね」
九月「うん、ありがとう。うどんげも、助手の仕事頑張って」
うどんげが帰るのを玄関まで見送り、阿求の部屋に戻る。
九月「あの人帰ったよ」
阿求「練習は終わったんですね。傷の方は大丈夫ですか?」
九月「あの薬と阿求が最初に手当してくれてたおかげだね。ほとんど大丈夫だよ」
阿求「そうですか、なら良かったです。夕ご飯を食べて、さらに元気をつけてください」
九月「美味しいご飯がまた食べれる…!さっそく貰えるかい?」
阿求「ふふ、急がなくても用意しますよ」
阿求が用意してくれた夕食を食べ、風呂にも入り、縁側に座る。あとは、赤目が来るのを待つだけだ
九月「…来るか」
塀を勢い良く飛び越え、中庭に着地する妖怪。月明かりに照らされた姿は間違いなく、赤目だった。
赤目「またお前か…。しつこいなぁ。俺と二回も戦おうっていう奴は、お前が初めてだよ」
九月「それは良い。お前を初めて二回も戦う相手であり、初めて倒す相手だ。俺の姿よーく覚えとけよ」
赤目「抜かせぇ!!」
赤目は片手で、たった一つの弾幕を作り出し、自分に押し飛ばしてくる。
九月「うどんげの弾幕に比べれば、速度も数も無い!」
刀を引き抜き、弾幕の軌道に刀を構えてぶつけ、弾幕は火花を散らしながら消滅した。
赤目「!?」
九月「修行のおかげだ。せこい妖術を只々覚えてたお前とは違う!うおおーー!!」
刀を構え、赤目との距離を走って縮める。
少し動揺しているようにも見えたが、すぐに2発の弾幕を撃ってきた。
それを飛び越えながら刀を構え、赤目の首を切断する。
赤目「そんなのじゃ死なないぜ!」
九月「知ってるよ!お前の弱点も!」
横、後ろと身軽な足取りで回り込み、頭と胴体が元に戻る前に、背中の弱点に刀を振る。
九月「ぐっ!!…」
刀が赤目の弱点に当たる前に、赤目が後ろに回していた手の指の爪が異常に伸び、30センチ程の長さになって自分の腹部を刺していた。その部分から血が滲み出て、痛みで後退してしまう。
赤目「俺が使えるのが弾幕だけだと思うな。弾幕はただ最近覚えた技ってだけだ。昔から使ってる技の方が強いんだよ!」
片手だけだでは無く、もう片方の手の爪も伸ばし。連続で突いたり引っ掻く攻撃を繰り出してくる。
速度としては、自分が刀を振る方がまだ速いのだが、相手の爪は合計10本、対してこっちは一本の刀と短刀。数が足りなさすぎる。
たまらず3m程後ろに跳んで、距離を離す。
赤目「俺の妖力があれば、こんな事もできるぞ!」
額に手を当てたかと思った瞬間、それを地面にパンっと付ける。すると、自分の周りを火が囲んだ。
九月「熱っ!うぐぅ…」
赤目「ケケケケ、上に跳んでみな、この弾幕で撃ち落してやる…!」
九月(このままじゃ、いずれ服に火が燃え移って火だるまになる…!)
赤目「上に跳ばなくても撃つけどなぁ!」
火の中で苦しんでいても、赤目は容赦無く弾幕を飛ばしてくる。うどんげが展開してきた数よりは断然少ない2個や3個程度でも、速度と重さを兼ね備えた弾幕だ。油断は一切できない。
九月「…っ!うぉらああ!!」
地面に刀を刺し、押しあげるようにすくい出す。
地面を抉りながら刀は飛び出し、燃える地面が無くなった火は、抉られた部分だけだが火が消えた。
赤目「ちぃ!逃がさないぞ!」
弾幕をさらに激しく撃ってくるが、刀で防ぎながら火の円の外に出る。自分が出ると共に、火の円も消えた。
九月「もっと来いよ。お前の妖術なんてこんなもんだろ」
赤目「っうがああー!!」
怒りのあまり、我を忘れて突っ込んでくる赤目、それとは反対に、冷静にその場で刀を構える自分。
もう弱点を構う事なんて忘れているんだろうか。恐ろしい形相で両指の爪を伸ばし、一気に斬りかかってきた。
赤目「もう遊びは終わりにしてる!ここからは、お前の惨殺劇場だ!この大妖怪赤目が!お前を喰い殺してやるぅ!!」
九月「どっちが惨殺されるかな…!!!」
爪が自分を貫く前に、自分も赤目に突撃する。と同時に、回転して後ろに回り込む。
九月「2度も同じ技を食らってるんじゃ、大妖怪とは言えないなあ!」
前は下から斬りあげたが、今度は背中に思いっきり突き刺した。そして、鮮血が刀と自分に飛び散る。
赤目「ぎゃああ!!ぎぃいい!!」
ささったままの刀を上に振り上げ、右腕をほぼ切断したような状態にする。
赤目「ヒィ、ヒ、ヒギャアアア!」
絶叫と共に辺りに飛ぶ赤目の血。赤目は、前と同じように塀に走って逃げようとする。
九月「っ!でりゃっ!」
塀を登り切り、飛び降りようとする赤目の弱点に、短刀・燕返しを投げ飛ばし、突き刺す。
赤目「ぐぅ…あああああああ!!」
塀の上で断末魔を上げ、月明かりに照らされながら赤目は消滅した。
九月「やった…勝った!」
翌朝。阿求が目覚めると、横には九月が添い寝していた。
阿求「え、九月さん…随分と大胆な…。でも、ここに居るってことは、勝ったのですね…。良かった」
同じ布団に入っている九月を優しく抱きしめ、もうひと時の眠りにつく。
阿求「って、そんな訳ないでしょ!取り合えず出てください!寝にくいです」
九月「そんな…大好きなの…」
阿求「え?今なんて」
九月「待って…くれ…」
阿求「お、起きてるんですか?」
九月「俺の朝飯だけは…大好きな…焼き魚だけは…」
阿求「…」
今までに出したことも無い程の力で思いっきり、寝ている九月の頬を平手打ちする。
九月「痛ぃ!…あれ、阿求起きたの?」
阿求「九月さんも、なんで私の布団で寝てるんですか?」
何の悪気も無さそうな九月に無愛想になりなが、そっぽを向く。
九月「たしか、赤目を倒して、それから阿求の部屋に入って…寝顔見てたらこっちも眠たくなって、そのまま寝るのも寒いから、阿求の布団で寝させてもらってた」
阿求「次からは押入れにある布団を出して寝てください。失礼ですよ」
九月「はーい」
シュンとなっている九月を少し心配し、さらに言葉をかける
阿求「でも、赤目を倒してくれた事には感謝しています…ありがとうございます…」
九月「阿求…!やっぱり君は優しいな!」
阿求「ちょっと、抱き着かないでください!動けません」
布団の中で、今日も平和な一日が始まりそうだ。
阿求「まったく…九月さんは…あれ、九月さん?」
しかし、自分を抱きしめていたはずの九月の姿が無く阿求だけが、その場に残されていた。
阿求「まさか、外の世界に」
九月「ん…ん?」
看護師「あ、目を覚ましました!」
母「九月!大丈夫!?まだ傷は痛む!?」
九月「お母さん…どうしたの?」
母「どうしたも無いわよ。貴方、一昨日の夜に机に頭打って、血を流して倒れてたのよ、良かった…生き来て、本当に良かった…」
涙をボロボロと零しながら、自分の手を握って喜ぶ母を大げさだと思いながらも、久々に思える外の世界に、安心感を覚えた。
血が出る程頭を強く打つっていうのも、中々度胸がいりますよね…。