ローマの休日
そう、いつも思い出すのは、空港でのクルミとの別れだった。ふとした場面で、彼女の真っ直ぐな瞳を思い出す。
高校を卒業したタカシとクルミ、クルミは大学進学、タカシは イタリアへ修業に旅立つ。
今日は、彼の住むローマに来ています。
下調べもせずに、軽い気持ちで飛んで来てしまいましたが、
見どころが沢山あり過ぎて、何日いても飽きそうにありません。
コロッセオ、スペイン広場、トレヴィの泉、サンピエトロ大聖堂、
ちょっと覗いただけて、ワクワクしてきました。
こんな素敵な街に住んでいる彼が羨ましいです。
毎日こんな景色の中で生活できるなんて、
ホームシックなんて無縁かな?
って、冗談ですよ~
パスポートも持ってないから、イタリアになんて行けません。
「google map で旅をする」のに最近ハマっています。
皆さんお元気ですか?
google map のストリートビューってまるでその場に行ってるみたいですね。
昨日はパパが学生時代に住んでいた場所を見てみました。
「パパが住んでたアパートが駐車場になっちゃってるぞ!」
なんて、パパは落ち込んでいました~
時が経つと、古いものは無くなってしまうんですね。
でも、心の中の記憶記憶として生き続けるのかな?
やっぱり行ってみたいな~
今日は映画「ローマの休日」を観ようと思います。
ではみなさん、ごきげんよう。
…………
タカシはクルミのブログを見て一瞬びっくりした。
本当にクルミが突然イタリアに来たのかと思ったのだった。
「クルミ、おはよう!
ブログ見たよ……まあ、観光地ばっかり見てる訳じゃないからさ……
でも、来れば案内してやるよ、夏休みで暇なんだろ?来れば?」
たまには自分の方からメールしてみようと、送ってみた。
しかし、クルミからはいつものように一方的なメールが返ってきた。
「タカシ、おはよう
昨日「ローマの休日」を観たよ~
タカシは観たことある?」
メールの行き違いかと思うタカシだが、
「来れば?」なんて軽い気持ちで誘った事をちょっと後悔した。
一人前になるまでは日本には帰れないという意地もあったが、
弱音を吐いてしまった事をクルミに見透かされた気がしたからだ。
「まだ見てないや…今度観よう。面白かった?」
クルミからは、相変わらず返信がない。いつもそうだ。
クルミから一方的にメールを送って来ては、タカシの質問には答えない。
「弱音を吐くな」って意味なんだろうか?
しかし、今日は違っていた。返信が珍しく来た。
「うん」
たったそれだけだった。
お~い…それだけか~
タカシは苦笑する。