8
黒沢
「先輩、おはようございます」
私より少し遅れてきた先輩は、やはり元気が無い。苦笑いで返されるだけ。
先輩に邪魔した奴らは消えた。私に頼っていいはずなのに、弱みを見せない先輩。
そんなところも好きになったから、弱みを、全てを見せてくれる日が楽しみでうずく。
休校になったから、先輩と会えるのはバイト先だけ。先輩は何をするんだろう。
スポーツかな?読書かな?映画鑑賞かな? 映画か・・・
私は先輩とデートしてみたい。いや、したい。
どんな感じで声かけたらいいんだろう。それよりも今は何の映画やってるのかな。
先輩へ視線を送ると、レジ横に置かれた前売りチケットを手に取って眺めていた。
「その映画見たいんですか?」
「あぁ、人気あるからどんな映画かなと思って」
それは実写化された純愛物語。妄想から生まれた恋愛ほどつまらないものはないのに、大ヒットした漫画。
それを真似する子だっていた。くだらないけど、先輩が興味を持っている。
「私も気になってたんです、一緒に観に行きませんか?」
「え?」
「休校になって暇というのもありますけど、たくさんの方が亡くなって悲しくて・・・怖いんです。
もしかしたら、明日が来ないんじゃないかとか、そんなこと考えてしまうんです」
「俺も・・・いや、観に行こうか」
「はい!観に行きましょう」
「明後日、バイト休みだよね?その日でいいかな?」
「大丈夫ですよ」
先輩とデート出来るなら、どんな予定が入ってても絶対空けますよ。
今日も先輩に、家まで送ってもらった。
待ち合わせ時間と場所、その会話がとても嬉しくて、明後日が待ち遠しいよ。
もちろん、先輩好みの服装や髪型は把握済み。
どんなデートにしようか、計画を立てる。




