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唐錦
ある日、先輩が学校の購買でパンを買っているのを見かけた。たくさんの友達と楽しそうに取り合いをしている。
きっとこの後はみんなで昼食を食べるのだろう。私も先輩と一緒にご飯を食べられたら、どんなに幸せだろうか。
そうだ。明日は先輩にお弁当を作ってこよう。さくらさんが亡くなってからどこか元気がない先輩を応援するためにも、私が励まさないと。先輩も喜んでくれるに違いない。
決心した私は次の日、早起きしてお弁当を作った。先輩のために、たくさんの愛情を込めて。
それを鞄に詰め込む。そしてもうひとつの秘密道具も。
私は弾む気持ちを押さえて家を出た。
待ち望んだ昼休みに、私は先輩を待ち伏せしてお弁当を渡すことに成功した。先輩と一緒にいた一人の友達は、舌打ち混じりに肩をすくめると、購買へと歩いていった。どうやら気を使ってくれたようだった。勇気を振り絞った「一緒に食べませんか」のお願いにも、先輩は笑顔で答えてくれた。
昼休みの中庭で、話をしながら私達は昼食をとる。何気ない会話でも、私は幸せを噛み締めていた。
ああ、この時間がずっと続けばいいのに……。
私の想いも虚しく、お弁当が空になったころ、昼休みの終了を告げるチャイムが響いた。立ち上がりかけた先輩に声をかける。
「また一緒に食べてくれますか?」
私の問いに、先輩は苦笑いを返した。
「あいつらが許してくれればね」
冗談混じりそう言うと、ごちそうさま、と言って校舎へと歩いていってしまった。
私は立ち上がり、先輩の消えた方向を見ながらポケットに入っている注射器を手の中で転がす。
大丈夫ですよ、先輩……。あなたの友達は、邪魔なんてしませんから……。
その日、私達の学校で膨大な死者が出た。
無事だったのは生徒の三分の一。先輩といつも一緒にいる人達も、先輩以外はもれなく死亡した。購買のパンにこっそり注入したものが、うまく効いてくれたようだ。
学校はしばらく休校になった。世間は大騒ぎして学校のことを連日連夜テレビで報道しているが、原因は分からず、事件は迷宮入りとなった。
これで、誰にも邪魔されず、先輩とご飯を食べられる。
しばらく学校が休みになってしまったので、とても歯がゆい。それでも、バイトに行けば先輩に会える。
今日のバイトも楽しみだ。久しぶりだから、緊張してしまうかもしれない。
私はそんなことを思いながらコンビニへ向かった。




