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いいわけ

次郎は、恵子に元カノの手紙を少し見られてしまいます。

8~9話で、次第に次郎の過去を知り始める恵子。

ここで少し、子離れできない次郎の母親も登場します・・・


11、いいわけ


僕は恵子を送る帰り道を、ゆっくりセリカで流していた。

「ねえ、三崎さん、ちゃんと話すから、って言ったよね」

「え?なんだっけ・・・」

僕は覚えていたが、わざとその話題には触れたくないので黙っていた。

「相合傘した時だよ・・・」

「ああ・・・」

僕はできれば話したくない。

「あたし、三崎さんの事は何でも知っておきたい。ずっと一緒にいたい、まだ2日目だけど、長く一緒みたいに三崎さんが近いの」

「焦らなくてもいいと思うよ、僕は恵子が好き。それじゃだめかな」

「え?急に言わないでよ・・・ぜんぜん構えてないのに・・・ずるい」

「僕は思うんだけど、長く付き合ったから距離が近いとは限らないと思うよ。気持ちが分かる時が一番近い。長い短いは関係ないと思うな、それが長く続くように合わせる時も必要なのかもしれないしね、いつも恵子を思っていないといけないよね」

「あたしも次郎さん、好き。っていうか必要な人かもしれないな・・・多分」

「サンダルは神様が流してくれてさ、僕と恵子を会わせてくれたんだよね・・・こういう話、好きかい?」

「・・・うん!運命なんだよね、神様が・・・キューピットが波乗りして会わせてくれたんだよね」

「そうそう、そういうの絶対あると思う。でもそれを駄目にするのもちゃんと受け止めるのもそのカップル次第じゃないかな」


嘘をつく自分が、スラスラと言い訳が出る自分が不思議だ。


・・・忘れられるわけないさ、たった二日で何がわかるって言うんだ・・・。


少なくともアルバイトを一ヶ月一緒にやってみて、少し恵子の家にもまた泊めてもらって生活して・・・それでもたったの一ヶ月じゃないか・・・十分の一にもならない。それで比べられる訳がない・・・。


「あたしは、何人目?」

「・・・え?彼女?」

「やけにわかったようなこと言うじゃない?」

「そうかな・・・」

「ほら・・・また曖昧にするでしょ?・・・」

「一緒に寝た人?」

「・・・もう・・・いいや」

暫く言葉が途切れ、僕の家が近くなったので聞いてみた。

「僕の部屋に寄っていくかい?少しレコードでも聞いていけば」

「・・・うん」

僕は家の前にセリカを停め、部屋を開けて恵子を入れた。窓が締め切られていて、少しムッと蒸し暑い空気を感じた。

「なんか蒸し暑いね・・・窓開けようか・・・」

僕は西窓に手をかけ、開けた。その音に気がついたのか、母がやってきた。

「次郎?夕ご飯はどうする?」

「ああ・・・多分・・・いらないな、母さん、この子が鈴木さん。アルバイト一緒にする事になった。時々彼女の家にも泊まるかもしれない、お父さんがお留守で、母親と二人なんだ」

「鈴木です・・・よろしくお願いします・・・」

「ああ、次郎の母だよ、なんか大変そうだねぇ・・・」

母はいつもの調子で連れてくる人には冷たい。

「・・・なんか怒られちゃったみたいだけど・・・」

「うん・・・気にしなくていい」

「コーヒー、入れるかい?」

「うん、薄めに」

「わかった」

僕はサイフォンのポットをいつものように母屋に持っていった。

洗って水を入れ、カップを持ちながら部屋に入ると、恵子が机の一番下の半分開いていたところの手紙を見つけた。

「次郎さん!・・・これ!・・・」

「あ、いけね・・・」

僕が閉めようとすると体を盾にして引き出しをさらに開け、恵子がその手紙の量を見て固まった。どう見ても男からではない便箋の束が丁寧に束ねられ、奥まで入っていた。

「大野宏美って・・・誰?」

僕は観念して、ちゃんと喋る事にした。昨夜、忘れたはずの手紙を酔った勢いで少し読み返してしまい、そのまま閉めずにおいてしまったらしい。

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