恵子の部屋
恵子を家に送った次郎は、恵子の母と挨拶し、家に寄ってしまいます。
今朝は海に行くため、早朝に起きた次郎は、恵子が風呂に入っている間にベッドで居眠りしてしまいます・・・
クルマに詳しくない方は、飛ばして斜め読みしてください・・・
9、恵子の部屋
「こんばんは」
僕は引き戸を右手で開けて、先に恵子に入って貰い、恵子の母を呼んでもらった。
間もなくして、母親が小走りにやってきた。
「恵子の母です、初めまして。三崎さんですね、先程栗田さんの家と電話でお話しまして、お聞きしました。今日は急にこの子がお世話になっちゃいまして、ありがとう御座いました」
「いえいえ、楽しかったですよ。二人が海で僕のサンダルを拾ってくれましてね、大変助かりました」
「まあまあ、こんな所ですけど、お上がりになってください」
「お邪魔します」
そう言って僕は脱いだ靴を揃えようとすると、母親はそれをさっと先に揃えて台所の方へ行った。
「うちは陽子の家みたいじゃないけど、ゆっくりしてって」
恵子はそう言って、一階台所の向いにある和室に案内した。
僕はそこの座卓に座って、用意されたお茶をすすった。
「あ、チーズケーキあったんだ。お母さん、紅茶?・・・がいいなぁ」
「じゃ、自分でいれて。三崎さん?恵子のこと、よろしくお願いしますね」
僕は恵子の母親にそう言われると、改めて言う言葉が見つからず、少し困ってしまった。
「え?・・・そうですね、こちらこそよろしくお願いします」
そう言う僕をじっと見つめて、恵子の母は目を輝かせた。恵子が海で最初に見せた目と同じだ。
「・・・あ、紅茶でしたね。恵子?私にも入れてちょうだい」
「母さんずるい・・・三崎さんは私の・・・」
「いいじゃないの少しくらい・・・恵子はやきもち焼きなんですよ、小さい時から。よく陽子さんと喧嘩してね、でも仲良しでしょ?」
「はい、見ていて面白かった・・・あ、すみません」
「いいのいいの・・・ねぇ、今でもそのまんま、なんだから」
恵子はお盆に、三つのカップに入れた紅茶を持ってきて、僕に最初にくれて、母親に置き、自分の座る僕の隣において、チーズケーキを取り出した。
「お母さんも少し食べる?」
「え?いいのかい・・・でも遠慮しとくよ恵子、自分の部屋に持っていけば」
恵子はお盆にチーズケーキと紅茶を置いて、お盆を持って僕を二階の恵子の部屋に案内した。
「次郎さんドア、開けてくれる?」
僕は恵子の部屋の、ドアを開けた。恵子の香りがする。シングルのベッドがあって、学習机と姿鏡、箪笥が二つとラジカセがある。女の子が部屋に張るようなアイドルのポスターなどはなくて、小奇麗な他は几帳面な男の部屋とたいして変わらない。
窓を見ると隣のラーメン屋さんに停めたセリカが見えた。
「・・・ふ~ん・・・」
「なによ次郎さん・・・」
「いや、彼女の部屋、って意外に聞こえるかもしれないけど、初めて入った」
「・・・そう・・・なんだ、なんか嬉しいな」
恵子は、そう言うと真ん中に折りたたみのテーブルを広げて、机に置いたお盆を其処に移した。
「じゃ、女の子の部屋、って初めて?」
「小学校の時は良くあちこち行ったね。小6の頃かな・・・」
「ああ、私も経験あるな、なんか食べ物作ってくれたでしょ」
「うん・・・よく分かるね」
「それね、好きだったんだよ、次郎さんのこと」
「え?そうなの?僕まだまだそんなこと考えもしなかった」
「そうそう。女の方がませてるよね、っていうかもう、体に変化がおきてね、あなたは女。あなたは女・・・って体が変化していく」
「・・・それでお母さんの真似みたいに・・・」
「そうそう、夫婦ごっこ、なんだよね。だから誰でもいいわけじゃないんだよ」
「へぇ~、なんか惜しいことしたね、僕」
「でも何をしていいか分からないし、ただ好きな男の子呼んでもそれで終わりなんだよね、多分、忘れてるよ。招待した本人は」
「ふ~ん・・・」
僕はチーズケーキを口に含みながら、返事をした。
「あ、ショップの服、どうした?」
「あ~、車の中!キー貸して!」
恵子は大切なものを忘れたかのようにキーを掴んで一階に下りて、セリカまで走っていった。
「お~い・・・あったか?」
僕は部屋から恵子に聞いた。
「うん!」
恵子は、袋を上げてこたえた。
少し息を切らして、恵子が戻ってきた。
「見てみる?」
恵子は、袋から小さい花柄のプリントの入った新デザインのブラウスと、少しボトムの広がりが抑えられてシルエットが太ももから真っ直ぐに出るように改良されたショップオリジナルのコーディネートを僕に見せたくれた。
「高かったでしょ?」
「ううん、半額にしてくれた。半分は宣伝費だって。次郎さんと歩けば自然に売れるからだって」
そのコーディネートはその後大ヒットして、ショップの看板になった。
「あした、学校に着ていこうかな」
「うん!そうしてあげてよ。ボトムの後ろポケットと、袖の右側に刺繍された僕のボードと同じデザインのマークが分かる人は、すげ~!って見ると思う」
「へぇ~、そうなんだ・・・」
「多分・・・」
僕はそう言って、恵子の肩を抱いて笑った。
「恵子?ちょっと入るわよ」
お母さんが来て、ご飯はどうするのか聞いていた。
「三崎さんラーメン食べる?」
母親が聞いて来たので、僕は隣ならそこで食べることにしようと、一階に下りてラーメン屋さんに入った。
「いらっしゃい!・・・おう、お二人さん」
おじさん、ラーメン三つ。もう一つは家で母さんが食べるから、玄関に置いてね。
「はいよ!ところで彼氏、あんた所沢サーキットじゃ常連だろう?」
「え?知ってるんですか?」
「知ってるも何も、あの車に名前が出てらぁ」
「え?おじさん三崎さん知ってるの?」
「ああ、すげぇんだぜ!カッコいいよ!ラーメン屋休んで一回見に行ったことあるよ」
「・・・そんなにカッコいいの?」
「離すんじゃねえぞ!こんな奴は探そうったって簡単には出てこねぇ」
僕は何か勘違いしていそうなオーナーの話を聞いて、事情を説明した。
「・・・いやいや違う。あんた、いつもはオレンジのギャランに乗ってるだろう?」
「・・・はい、今、エンジンブローでショップに入ってます」
「そうかい!やっぱりなぁ!あの旧いクルマで新型のランサーと競うんじゃなぁ」
「オーナー、クルマ好きそうですね」
「ああ、俺もダルマ(セリカのこと)シャコタンにして、よく走ったよ」
「おじちゃんね、私が高校受験で夜勉強してた時もうるさいクルマの仲間この駐車場に集めてね、あたしあんまりうるさいから、あそこの窓から怒鳴ってたんだよ!酷いよね?」
恵子は、ここぞとばかりに、昔の不満を話した。
「そうかぁ・・・それは酷いなぁ・・・オーナー、もうやってないよね?」
「え?・・・あんたに言われちゃなぁ・・・反省するよ、ほい、出来たよ」
「少し乗ってみますか?」
「え?いいのかい?悪いねぇ・・・」
次郎はそう言うと、オーナーにキーを渡した。オーナーは子供のようにウキウキして、のれんを内側に入れた。
「一速でいきなり吹くと滑るから、気をつけてください」
「そうかい!そりゃ凄そうだ」
オーナーはセリカに乗り込み、懐かしそうに計器を見て、始動した。駐車場を出て、スーッとセリカは滑るように小道を出て行った。
「恵子は、一人っ子なの?」
「ううん、お姉ちゃんがいるよ。去年結婚したから、今は私とお母さんだけ」
「お父さんは?」
「・・・帰ってこないの。離婚してないよ、私が短大合格した頃だからもう一年以上」
「生活費は入ってくるらしいよ。私、お父さんとはあまり話してないなぁ・・・冷たいようだけど、私は居ても居なくてももう同じ。次郎さんが居るしね・・・あは!」
「・・・そうなんだ、今夜、ゆっくりしってっていい?」
「え?嬉しい!ゆっくりしてってよ。お風呂、入っていって」
「・・・うん」
僕は、お店の電話から、遅くなることと食事は済ませた事を家に連絡しておいた。鈴木と高橋から、電話があったみたいなので、電話してみた。
「恵子、例の土井のことだけど・・・行きたくない、ってことだよ」
「そうなんだ・・・ちょっと後で陽子に連絡しようかな・・・それとも、来て貰う?」
「電話してからで、良いと思うよ。どうせ傘返すんでしょ?」
「そうだね、だめなんだから、後でも良いよね」
ラーメンを食べ終わって暫くしてから、セリカが帰ってきた。オーナーはエンジンをブリッピングして停め、上機嫌で帰ってきた。
「すげえなぁ、特に高回転が。鳥肌が立ったよ。これはチューニングカーだよなぁ・・・」
「TTSCの看板車です、フルチューンで1750にしてます」
(1600ccベースの1750ccボアアップチューン。ストロークは同じ、クランク、コンロッドなどは鏡面バランス、ピストンはTOM’s、ヘッドは擦り合わせ、薄型ガスケット、カム高回転型、クロモリフライホイールetc.)
「そうかぁ・・・半端じゃないよなぁ・・・いい体験、させてもらったよ。ありがとう」
「きょう、ちょっと遅くなるかもしれないので、すみませんクルマ」
「おっ!いいなぁ恵子ちゃん・・・おじちゃんも女になりたいよ・・・」
「じゃ、ごちそうさま」
「おじちゃん、御代は請求しといてね」
「ああ、いつもどうりで・・・毎度!」
僕は恵子と部屋に戻り、お風呂を頂いて来てから眠くなってしまい、恵子が風呂に入っている間ベッドに足を下にしたまま、横になった。そのまま、スーッと眠くなり、寝てしまったようだった。考えてみれば、早朝に起きて、昨日の睡眠は少なかった。
気がついたとき、部屋の蛍光灯は消えていてジーンズはたたんで置かれていた。
足は、ちゃんとベットに入っていて小さい電球が目に入ってきた。
「・・・あ、ごめん。寝ちゃったみたい・・・」
「えへへ・・・いっぱいしちゃった・・・キス」
恵子は隣にTシャツとジョギングパンツで、ノーブラで横になっていた。
「お母さんには、言っといたから。泊まるって」
「え?僕?・・・帰んなくちゃ」
「やだぁ!帰さない」
恵子は部屋のドアのノブをロックして、戻ってきた。
ベットに再び入って、僕に胸を預けて来た。
「さわって・・・」
言うとおり、僕はそっと胸をなでた。恵子はスーッと息を吸い、僕が敏感な先端を少しつまむと、声を小さくあげながらTシャツを脱いだ。
「ジーンズ、きつそうだから脱がしちゃったんだよ」
「え?」
「足をベットに置く時・・・硬かったの、それできつそうだったから・・・」
「触ったの?」
「うん。パンツの上から。少し出てるよ。外に。」
僕は、寝たまま確認すると先が少し湿っていた。
「あたし自分で・・・一回イッた・・・」
「そうなの?」
僕は全てを脱いで、ジーンズの隣に置いた。
恵子も、ジョギングパンツと最後の一枚を同じ所に置き、ベッドに入った。綺麗な乳首がツンっと硬くなって僕を釘付けにした。
「綺麗だね恵子。本当に綺麗。自信はあるよね?」
「・・・次郎さんの前では少し恥ずかしいな、でも・・・嬉しい」
僕は暫く恵子の乳房を愛して、キスした。
「次郎さん・・・一回だけ・・・ね、・・・いれて」
「うん・・・」
ゆっくりと恵子に体を埋めて行った。
少し中心を合わせながら乳首を一緒にキスしていると自然に恵子の中に入って、深く一つになって恵子の体が締め付けた。ぴくりと反応すると、吐息を僕にかけながら、ゆっくり、ゆっくり、恵子が喋る。
「次郎さん・・・嬉しい・・・私は・・・恵子・・・だよ」
「うん・・・恵子だよね・・・気持ち・・・いいね・・・いこうか・・・大丈夫?」
恵子は頷いて僕の背中を強く抑え、しばらくそのままいたが、恵子の腰が少し痙攣しはじめ、一つになった感触を確かめていた。夢中で時が過ぎて、何度か楽しんだ後、最後は横になって繋がったまま寝てしまい、気がついた時には辺りが明るくなり始めていた。