終章
今回で完結?…ってことで(^^ゞ
後半は、早足で終わってしまいましたが、今回修正なしでそのまま投稿致します。
最後までお付き合い頂いた多くの読者様、ありがとうございました(^^ゞ
17 終章
僕は三位入賞の余韻を残したまま、チームのエントラントスペースで片付けをしていた。
「三崎君・・・だね?」
見ると40代位の紳士が、僕を見て笑っていた。
「あちらはフィアンセかい?・・・ああ失礼・・・私はこういう者です」
名刺には、D工業の宣伝部長という肩書きが入っていた。
「三崎です、よろしくお願いします。先程、和田選手から少し伺いました・・・はい、婚約者・・・」
「そうかい!・・・話は、じゃあ、だいたい聞いているね?本社に一度顔を出してくれないか・・・明日は時間、作れるかね?」
「え?明日ですか・・・髪の毛もこんなだし・・・スーツは有りますが・・・」
「ははっ・・・いいよいいよ、うちの社風を知らないな・・・卒業見込み証と成績証明書、写真付き履歴書。とにかくそれだけ持ってきて、受付で宣伝部長を呼んでくれ。午後には時間を空けておく」
「はい、ありがとうございます。失礼いたします」
翌日、僕はバイトの収入で気張ってオーダーした三峰のスーツに袖を通し、大学に寄って足りない書類を用意してから、D工業の本社ビル受付を訪ねた。
受付に座っていた、あまりに美しい、その女性に緊張しながらも、僕は宣伝部長をお願いした。
「三崎さんですね、伺っておりますよ・・・どうぞこちらに」
僕は傍らのソファーに招かれ、その女性にお茶を頂き、さらに緊張してしまった。
雰囲気が分かったのか、にっこり笑ってくれたが、緊張は解れるどころかドキドキしてしまった。
暫くして、宣伝部長は、人事部の課長と一緒に現れた。
「お待ちしていましたよ、昨日のレーシングスーツも良かったが今日はまた一段とセンスがいいね。うちの人事部の課長・・・」
人事部の課長からも名刺を頂き、僕は用意した書類を渡して、研修のスケジュール表などを頂いた。
「とりあえず、来週箱根で研修があります。それぞれの部門で選ばれた人が集まりますので、ご存知の方も参加者の中には居るかと思います」
「はい、承知しました。よろしくお願いします」
「少し会社・・・見ていくかい?」
「はい」
僕は部長に案内されながら、社内を少し見て歩いた。
中には僕のことを知っている社員の方も居て、部長も昨日の戦績を説明しながら紹介して歩いた。
「三崎君・・・受付の子も、君のこと知っていたよ」
「え?・・・そうなんですか」
「大丈夫、大丈夫・・・フィアンセの事は言っておいたよ・・・残念そうだったけどな」
僕は箱根の研修を終えて、宣伝部付の内定通知を貰い、その後結婚式はしていないが入籍を終え、卒業を迎えた。
恵子も無事、卒業単位を修得し、卒業が決まった。
おなかは目立ってきて、短大内は卒業ブライダル、苗字の変わった恵子が噂だったらしい。
卒業式は武道館で、式のあと学部の友人と銀座に出て、恵子と待ち合わせて恵子の短大の友人と、陽子も呼んで、合同で卒業打ち上げを銀座のライオンで行った。
僕は恵子に気を使ってあまり飲めなかったが、そのうち陽子が恵子をフォローしてくれて、僕は大学の友人と結構飲んだようだった。あまり覚えていない。
酔いが覚めて来たのは、田無の駅を過ぎた辺りで、僕は小平から来たのか所沢から来たのかさえ、思い出せない。恵子は、洋子と僕と三人で、海で出会った頃の事を楽しそうに話していた。陽子は、彼氏とはその後拠りを戻して、うまくやっているようだった。
僕と恵子は久しぶりに陽子の家に寄り、その後所沢の家に僕は泊まった。
そこに着替えがあることから、多分僕はここから武道館に行ったのだろうと思い、恵子に聞いた。
「今朝、僕はここで着替えて卒業式に行ったんだっけ?」
「え?そうだよ、きのう小平の部屋から着替え持ってここに来たじゃん・・・」
「そうかそうか・・・」
「もう・・・ボケるの早いからね!」
「ごめんごめん・・・」
恵子の母が笑って見ていた。
暫くして恵子は臨月を迎え、僕は会社の入社式を終えて出勤していたが、ゴールデンウィーク前の4月末、恵子は出産のため地元の病院に入院した。
ゴールデンウィークの終盤、5月初旬に恵子は、母子共に健康で、女の子を出産した。
「ドリフター」学生編・全17章・完