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第92話

 そう言って話すテトラは寂しげな表情になった。


「無理も無いよね。でも今は、WPUのみんなが居るから寂しくないでしょ?」


「うん! もちろん! 仁さんは寡黙だけど仲間想いで愛が伝わって来るし、シュレくんは気さくに話しかけてくれるから話してて楽しいし、氷雨さんはちょっと真面目過ぎるところがあるけれど自分の専門分野になると嬉々として語り始める所が本当に可愛いし、シアちゃんはムードメーカーって感じで場を盛り上げてくれるし! 確かに危険な活動だけど、みんなと過ごしている時間は本当に幸せなんだ! それに今回はこうして司くんとも友達になれたしね! えっと、まぁ何が言いたいかって言うとね? 私の人生の本番は今だし、これからって感じだよ!」


 そう言って嬉しそうに話すテトラは心の底から幸せそうだ。


 自分の居場所を見つけた事の嬉しさと安心感は、当時10歳だった彼女が本来味わうはずであった楽しい時間の埋め合わせをしているかのようだ。


 今が幸せであるならと安心した司だったが、ここでテトラはふと思い出したかのように話した。


「あーでも、恋愛できなかったのはやっぱり心残りかな。……えっと、引かないで聞いて欲しいんだけどね?」


「何?」


「わ、私、実は初恋もまだなんだよね~……」


 恥ずかしそうに、そして気まずそうにテトラはそんな事をカミングアウトしてきた。


「え?」


「あ、あはは~……私、もう15なんだけどね。こ、こんな女の子居る? 15歳で初恋もまだなんて有り得ないでしょ!? いや、まぁ居るには居るだろうけどさ……」


「まぁ確かに今話を聞いた限りだとWPUに入る前は学業を早く修了させる為に毎日勉強と授業漬けの生活を送って、入ったら入ったでWPUの活動で忙しいもんね。正直そんな暇無かっただろうし、考える余裕すら無かったと思うよ。仕方無いって」


「うぅ~……司くんのフォローが染み渡るよ~」


 司としてはフォローと言うよりも素直に思った事を口にしただけだったのだが、結果的にテトラの中の気まずい気持ちを溶かす事に成功したようだ。


「ちなみにテトラはどんな人がタイプなの?」


 初恋はまだでもさすがに好みの男性像くらいは形成されているだろうと思った司は、テトラにそんな質問をした。


「え? そ、そうだなー……え、えっとね……」


 そもそもこういう話を友人としてこなかったのか、テトラは答えるだけでどこか照れている。


 やがて彼女は意を決したのか、小さな声で答え始めた。


「礼儀正しくて……優しくて……周りに気を配れて……いざという時は頼りになるくらいの強さも兼ね備えてて……あ、えっと……が、外見の話をするんだったら、身長は私よりちょっとだけ高くて、笑顔を見るとどこか安心できる、歳の近い男の子……か、かな~……?」


「好みのタイプは随分と具体的と言うかガッチリ自分の中で固まってるんだね」


「ぁぅ……も、もう! 恥ずかしいから止めてよ! わ、分かってるよ? 私がそんなの求めるのは贅沢だって事くらい……」


 普段は妙に自信家なテトラだが、変な所でしおらしくなってしまうのは新たな発見かも知れない。


「いやWPUに所属してる時点で人類最高峰レベルの有能な人なんだから、全然贅沢じゃないでしょ。しかもテトラって凄いかわ……」


「え……?」


「……っ……ゔゔん! な、何でもない……!」


「え~~~!? なになに? 最後何て言おうとしてたの!?」


「だから何でもないってば!」


 この頃の司はまだ女の子に対して可愛いといった、容姿に関する誉め言葉を口にする事に抵抗があったようで言い切る前に飲み込んだみたいだ。

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