第78話
「さて。私がWPUに加入した理由も答えてやった以上、お前がここに留まる理由は完全に無くなった訳だ。早く別世界の人間に協力を求めるべく動いた方が賢明だと思うがな。お前だってここで私とお喋りに時間を費やした結果、治療が間に合わず仲間を亡くしてしまうなんて展開は不本意だろう?」
「~~~っ! そもそもあんたが素直に首を縦に振れば……!」
何故自分はこうも面倒くさいやり取りを強いられているのかという気持ちが急速に沸き上がったシュレフォルンだったが、その怒りが沸点に達するよりも前、この場にとある二人が登場した事によって彼の熱は冷めて行く事に。
「シュレくん! 良かった、まだここに居ましたか」
「あ? 誰だ……って……は? え?」
彼が困惑するのも無理は無い。後ろから声が聞こえた事で振り返ったシュレフォルンの視界に映ったのは、シアと氷雨だった。シアは完全に復活した様子であり、氷雨はシュレフォルンと入れ違いにならなかった事に安堵しているようだ。
「レギュラオンさんを説得するのは至難の業なので恐らくまだこの部屋で粘っているかと思っていましたが、予想通りでしたね」
「だねっ! さっすがひぃちゃん。レギュ姉の事よく分かってるんだね!」
「……」
何故シアが何事も無かったかのように完治しているのかは不明だ。だがその疑問を解決したい気持ちよりも、シアが元気な姿をまた見せてくれた事の嬉しさが勝った。
シュレフォルンは二人の元まで歩み寄り、そして無言でシアを見つめた。
「どったの、シュレくん。そんな顔して。あ、私が完全復活した事が嬉しすぎて言葉が出ないんでしょ? いや~私は愛されてますな~泣けてくるよホント……」
「シアッ!」
やがて目の前の光景が夢でも何でもない事を脳が完全に理解できたのか、シュレフォルンは涙目でシアを抱き締めた。
「ひゃぁっ!」
突然の抱擁にシアは頬を赤らめ、珍しく動揺する。
「良かった……本当に良かった……」
「ちょちょちょ、シュレくん! 女の子! 私人間じゃないけど一応女の子!」
「レギュラオンさんに断られた時はマジでどうしようかと……」
「うんうん、そうだね! 分かったから取り敢えず抱き締めるの止めて欲しいかな! 本当に恥ずかしいから!」
「ふふ。シュレくん。嬉しいのは分かりますが、一旦話を進めましょうか」
滅多に見られないシアの照れている姿や、心の底から嬉しそうなシュレフォルンを見て氷雨は微笑む。
「何だよ、氷雨。驚くほどに冷静だな」
「私は彼女が完治した時に十分喜びの感情を解放しましたので。今はもう冷静です」
「まぁそりゃそうか」
「はい」
「私を抱き締めた状態で二人で会話すんなー!」
「わ、分かった分かった。悪かったよ。本当にシアが死んじまったらってずっと考えてたからさ」
そう言ってシュレフォルンはようやくシアから離れる。シュレフォルンは特にシアを意識している様子はなく、本当に仲間の無事を心から喜んでいるようだがシアは未だに動揺している。
「もう~シュレくんは。ダメだよ? そんな急に女の子を抱き締めたら。今回はまぁ私が死の淵から生還した訳だから仕方無いとして」
「いや、ついな。すまん」
「あ、ちなみにひぃちゃんだったらいつでも大歓迎だから!」
「さて。シュレくんには取り敢えず、何故彼女が復活したのかという所から話しますね」
「 (ツッコんですらくれなくなった……) 」




