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第76話

 レギュラオンはこれで話は終わりだとでも言いたげに再び書類に目を通し始めた。普通ならばこの時点で大体の者はこの空気に負けて引き下がるのだが、彼女と少なからず交流があるシュレフォルンはこのような対応に慣れているのか簡単には引き下がらない。


「ちょっと待てって! まずは話を聞いてくれ!」


「その話とやらが終われば、先ほどのお前の要求内容は変わるのか?」


「え? い、いや、それは……」


「変わらないのだろう? ならば時間の無駄だ。もう一度言う。お引き取り願おう。これ以上私の時間を奪うな」


「……」


 血も涙もないとはまさにこの事だとシュレフォルンは感じてしまった。


 レギュラオンがティナを連れ出す事を許可してくれれば、シアは完全回復するはずなのだ。何時間と借りる訳じゃない。WPUナンバーワンの回復力を誇るティナであれば、恐らく転移時間込みで五分と掛からないだろう。


 それなのに何故その五分、10分の時間さえも捻出できないのか。何故自分の仲間の危機に協力してあげられないのか。シュレフォルンの中に生まれたその疑問は、次第に怒りへと変わった。


「あんた……そんなにもこの世界の事を優先したいなら、何でWPUに加入したんだよ」


「……」


「確かにWPUの活動をサブで行う奴は多い。氷雨だって本業は研究者だしな。時には本業の方を優先する時だってある。だけど氷雨を含めた他の奴らは緊急事態の時にはWPUの方を優先して協力の姿勢を見せてくれるんだ。それなのにあんたら『黎園』……いや、このチームを動かしてる頭はあんただから、正確にはあんたか……レギュラオンさんはどうしてそこまで助け合ったり協力する事を拒むんだよ」


 シアの命が懸かっている事態だからか、シュレフォルンの語気は強まる。


 そんな彼を見たレギュラオンは至極冷静に言葉を返した。


「簡単な事だ。私や他の黎園メンバーでなければ解決できない唯一無二の状況で無いのであれば、わざわざ我々がそこに時間を割く必要は無いと考えているからだ。この世界の事は我々でなければ務まらない……だがそちらの事情は我々以外でも解決できる……さて、黎園はどちらを優先するべきか。考えるまでも無いだろう」


 レギュラオンにとって緊急性や事情は関係無い。彼女の中の天秤は、いつだって自分たちでなければ対処できない問題かどうかでその傾きが決まる。


「分かりやすいように例え話をしてやる。今お前の前にシアと氷雨が怪我を負って倒れていたとしよう」


「……」


「重症度の方はシアの方が圧倒的に上だ。氷雨の方は弱い來冥力の治療でも何とかなりそうだが、シアの方はどうにもなりそうにない。この状況でティナが現れた時、お前はどちらの治療を優先的にして欲しいと彼女に願う?」


 子どもでも答えられそうなその質問。当然シュレフォルンの頭の中に浮かんだ人物はシアの方だ。しかしそれはレギュラオンの思考回路そのものであり、答えを口にする事は憚られた。


「お前は今氷雨の治療を優先しろとティナに言っているような状況だ。分かったか?」


「五分から10分……それだけで良いんだ。たったその時間すら、異世界の仲間の為に作る事ができないってのかよ!?」


 レギュラオンの冷たい言動は今に始まった事ではなく、その振る舞いや思考回路を目の当たりにする度に彼は不満を募らせていた。そんな不満の蓄積に対し、今回の件がいわゆる最後の一滴となって滴り落ちたのである。


 しかもシアの命が懸かっているという状況もあってか、シュレフォルンの中の怒りは最高潮に達した。


 それでもレギュラオンの態度は変わらず、寧ろ火に油を注ぐような発言をする。


「物理的に作れるか作れないかの話をするのであれば、作る事自体は可能だ」


「……! なんだと?」


「現在この世界を回せるのは我々五大機関以外に存在はしないが、僅か五分程度の時間であれば、助けに行ってやる事も可能ではある」

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