第6話
司の妹である天賀谷蒼が殺され、どうしても自分の手で犯人を捕まえたかった彼は子どもながら色々と考え、その結果辿り着いた結論はリバーシの一員になる事。
リバーシになれば活動範囲や人脈だけでなく、情報収集方法も桁違いに広がる。何よりアルカナ・ヘヴン最高機関と名高いエンペル・ギアの寵愛を受けられると考えれば、それだけで価値は十分にあるのだ。
当然リバーシになったからと言って蒼を殺害した犯人を必ず捕まえられる保証は無いのだが、手をこまねいているよりは何百倍もマシだろう。
そう考えた司は即行動に移し、チャンスは人生で一度きりという厳しい制限を知った上で今回の試験に挑戦する事を決めた。
吐き気に近い程の緊張感が襲い掛かり、合格した時の自分をイメージしておかないとプレッシャーに押し潰されそうだった。
そんな中でも何とか自分を保てているのはやはり蒼の存在だろう。もしも試験に落ちてリバーシになれなかったら、死んでしまった蒼に顔向けできない。そう思うと緊張に負けている場合では無いという気持ちも同時に湧き上がってくるのだ。
「それにしても、いつまで待たせるんだ? 体感三十分は経ったけど……やっぱり早く来すぎたのかな……」
試験開始が近くなったらセレーナの技術で生まれた案内AIロボがドアをノックする手はずになっているのだが、その気配は全く無い。ここまで遅いとなると司の予想通り早く到着し過ぎた可能性が濃厚だ。
この緊張感の中で何十分も待たされるのは正直地獄なのだが、ここは我慢するしかないのだろう。そう思った矢先だった。
コンコンとノック音が狭すぎる室内に響き、司の心臓をドクンと波打たせる。
「き、来た……! は、はいっ!」
手を震わせながら司はドアを開けて案内用ロボを迎える。
はずだったのだが。
「お。やっぱりここだったか! ほらな、俺の言った通りだっただろう?」
「それくらいでそんな得意気な顔をしないでください」
「ひぃちゃん、たまには褒めてあげなよ~」
「……。え?」
司の目の前に立っていたのは若い男性一人と女性が二人。
男性の方はふんわりとしたエアリーショートヘアの黒髪で、サングラスをかけ、笑顔が良く似合う元気系を印象付けさせる青年だった。身長は170後半程だ。誰とでも仲良くなれそうな雰囲気がありガチガチに緊張している今、彼のような人が一人居るだけで空気が変わりそうだ。
敬語で話す方の女性は黒髪三つ編みであり、眼鏡をかけている。眠そうな目をしていてどこか怠そうだ。身長は160後半はあるだろう。
もう一人の方は前髪を斜め分けしたボブヘアの女性であり、頭頂部付近に猫耳が生えている。本来あるべき位置に耳が無い事から恐らく本物なのだろう。生意気そうな目と表情をしていて人をからかったり弄ったりするのが好きそうな印象を与えてくる。身長は150後半程だ。
男性と猫耳少女は私服だが眼鏡少女は白衣を着ており、研究者や理系学生を彷彿とさせる出で立ちだった。
三人とも司よりは歳上のように見えるが成人はまだしていなさそうだ。とは言え幼過ぎる様子もなく十代後半といったところだろう。
どこをどう見ても案内用ロボには見えず、彼らは一体何者なのだろうかと司は困惑してしまった。
思考が停止して固まってしまった司を見た男性は、サングラスを片手で外してから笑みを見せ、頼んでもいない自己紹介を始める。
「おっと。悪いな、いきなり。俺の名前はシュレフォルン。自分で言うのもあれだけど、長いしシュレって呼んでくれて良いぞ!」
シュレフォルンと名乗る男性を筆頭に、彼の後ろに居る女性二名も続いて軽い自己紹介をしようと口を開いた。
「氷雨です。私を呼ぶ時は『呼び捨て』か『さん付け』でお願いしますね。間違ってもこの女のように気色悪い呼び方はしないで頂けると。彼女の場合、何度言っても止めないので諦めているだけですが」
自己紹介の最後に小さく溜め息を吐き、猫耳少女には手を焼いている事を窺わせる。




